神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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今まで影も形もなかった神機兵がやっと話題に上がったよ。
そんな感じの第十七話。


第十七話


さて、その後の事を少しだけ語ろう。
俺と友達になったことで色々吹っ切れたのか、ナナ主催の第二回ブラッドメンバーおでんパンパーティーにおいて彼女は今までのキャラを崩壊させるレベルで騒いだ。
決闘者風に言えば、奴ははじけた。


その甲斐あってか、ギルさんとの関係も修復されつつあるしロミオ先輩もシエルの雰囲気が明るくなっていることを喜んでいた。
ナナはもうおでんパンを交わしたので、ソウルメイトみたいに考えているだろうし初めから彼女の事を心配していたジュリウス隊長は今更上げるまでもない。


こんな感じでシエルは真にブラッドの一員となることができたのである。
いやーめでたい。


「これまでご苦労だったな。仁慈。お前のおかげでシエルもようやく真の意味でブラッドになじむことができたようだ」


「別に俺は何もしていません……とは言いませんけど、頑張ったのはシエル自身ですよ」


おでんパンを両手に装備したナナからの質問に右往左往しながらも頑張って答えようとしているシエルを視界の端に納めつつジュリウス隊長の方を向く。


「フッ、正直な奴め」


どこかの誰かが俺に丸投げするせいでそうせざるを得なかったことを少しは自覚してほしいんですけどね。


俺の言った皮肉は生憎とジュリウス隊長には通じなかったらしく、クスリと笑って右手に持っていたおでんパンを齧った。
……ジュリウス隊長がおでんパン齧るのってなんかシュールだな。
なんて、くだらないことを考えつつ俺もおでんパンを齧る。しばらくブラッドの皆の行動をつまみにおでんパンを齧る時間が続くが、となりにいるジュリウス隊長がふと口を開いた。


「そういえば仁慈。俺、一回目のパーティー呼ばれていないんだが」


「ジュリウス隊長が勝手に居なくなったんでしょう」


俺にロミオ先輩とギルさんの問題を押し付けて。
この人戦場でアラガミに対しては無敵なのに、人間関係になるとたんに役立たずになるからなぁ。


「次ある時は必ず呼べよ」


「わかりましたよ。だから、離れてください」


どんだけガチなんだ。この隊長。


「お前には分かるまい。少しの間、仕事でいなかっただけで俺以外の隊員がみんな仲良くしている光景と、それをはたから見る虚しさを」


「なんかすいません」


あまりに空虚な瞳で語るジュリウス隊長に俺は心の底から謝った。




























……図らずともジュリウス隊長が抱える闇の一端を目撃してしまった日から一日たち、休日なき俺達神機使いは今日も今日とてアラガミを狩る作業に入ろうとしていた。
ちなみに、今日の任務のお供である愉快な仲間たちはシエルとロミオ先輩である。


「今回の任務は民間人の避難誘導及びその進路の確保です。民間人の保護にはジュリウス隊長が率いるチームが向かいますので、仁慈さんのチームは進路の確保。すなわち、周囲にいる小型アラガミの掃討をお願いします」


「わかりました」


「注意事項としましては、付近に不確かなアラガミの反応があるとの情報が入っております。このアラガミからの奇襲に警戒しつつ戦ってください」


「まーた、そういう系ですか」


「もう慣れたものでしょう?」


想定外のアラガミの乱入を予感させる前情報に思わずため息を吐く。
それに対しフランさんはからかうように言った。
確かに、慣れ始めてはいますけどあまり体験するような事じゃないと思うんですよね。
想定外のアラガミの乱入は。
だがまぁ、前情報があるだけ今回はましだと思える。いつもは目標を倒した後のほんの少し油断したタイミングで入ってくるからな。
もう完全に殺しに来ているとしか思えん。


「確かに普通ならそうなんですけど……仁慈さんですから……。大丈夫です。このフライアではあなたのことは殺しても死ななさそうな奴として取り上げられていますから」


「それのどこに安心する要素を見出せと……」


何一つとして安心できる要素がないんですけど?
しかも、死ぬところが想像できないから危ない任務を回しても大丈夫ってか?ふざけろ。


「心配いりませんよ。頼りになる仲間もいますし、私も精一杯バックアップさせていただきますので」


「……ホントお願いしますよ」


ビィ!と音が鳴り、任務がしっかり受注されたことを確認した俺は、フランさんとの会話を打ち切り、ターミナルの方へと足を運んだ。



ちなみに余談だが。
結局刀身についてはヴァリアントサイズで固定することに決めた。
別に常に咬刃展開状態にしているわけでもないし、いたずらに刀身を変えるのも良くないという結論に達したからである。
ちなみに、最終的にはシエルと二人でこの結論を出しました。
……最近シエルが俺の後ろをずっとキープしてきて微妙に生活しにくいんだよなぁ。
初めての友達ができて嬉しいのは分かるけどさ、一歩間違えたらストーカーだから気をつけようね、シエル。




















と言うわけで、今回の場所は嘆きの平原です。


「相も変わらずすごい竜巻だこと…」


「これの原因はいまだ不明なんですよね」


「これその内外に出てきたりとかしないよね?」


何時もと変わらず物凄い勢いで渦巻いている竜巻を見て三者三様の反応を見せる。
本当にこれ、なんなんだろうねぇ。


「……さて、今回の任務内容ですが民間人避難の経路を確保するために、周囲の小型アラガミの掃討です」


「うじゃうじゃいるもんな、パッと見でも」


シエルの言った任務の内容にロミオ先輩が反応する。
実際、彼が言った通り俺たちの視界には多くの小型アラガミがその辺をてくてく歩いている。
んー、オウガテイルにドレットパイク、その辺の建物の壁から生えているコクーンメイデンが三体にザイゴートが五匹か……。


「全部合わせて大体三十ってところかな。結構多めだね」


「はい、確かに多めですがブラッドの戦闘力を見れば問題ないでしょう。実際、貫通に弱いドレットパイクとザイゴートはここから仕留めるつもりですし」


まぁ、全員をバカ正直に相手する必要はどこにもないからな。
シエルの言い分に頷いて神機を銃形態へと移行する。


「ロミオ先輩、少しの間暇ですけど我慢してくださいね」


「俺は子どもか。そんなこと言われなくたって飛び出して行ったりなんてしないよ」


「念のためですよ。念のため」


軽口をたたきつつも俺はてくてく一生懸命歩いて進んでいるドレットパイクに照準を合わせる。
そして、そのまま容赦なく引き金を引いた。
俺が放った弾は正確に飛んで行き、見事にドレットパイクの体を貫通、その命を刈り取った。


横をチラリとみてみるとシエルは面倒くさいことで有名なザイゴートを集中して狙っているようだった。
わぉ、効率的。
ザイゴートは任せても平気そうだったので俺はまた、ちまちまとドレットパイクを撃ちぬく作業に戻った。




前回の任務でシエルをバーサーカーソウル状態にしたOアンプルを飲みつつひたすらに弾を撃ちだす作業を繰り返していると、何という事でしょう。三十匹はいた多くのアラガミ達が、たったの半分以下にこれぞ匠の技ですね。


「うわぁ……。俺の仕事が殆どなくなった……」


「どうしたんです?先輩。そこまで働きたいんだったら、残りの奴ら全員殺ってもいいんですよ?」


「……いや、遠慮しとく」


「そうですか。それでは、」


「お仕事を始めましょう」


とっくに始まっているとか言うツッコミはこの際なしね。






















シエルが仕事開始宣言をしてからわずか五分後、俺たちの目の前に広がっているのは先程まで元気にその辺を捕食していたアラガミがドロドロと地面に溶けていく光景だった。


「……やっぱり、こんなの絶対におかしいよ……」


思わずそう呟いてしまった俺をいったい誰が責められるというのか。責められるとか言ったやつは今すぐ俺の前に来るんだ。拳をくれてやる。


通常、いくら小型アラガミとはいえ数十匹もいれば神機使いにも脅威となる。神機使いになって日が浅い人ならなおさらそうだと思う。実際、俺も怖い。
しかも今回は想定外の中型アラガミまで出現したんだ。怖くないわけがない。
しかし、目の前にいる新人二人はどうやら例外のようで、


「あー……暇だったなー、手応えないなー」


入隊してそれほど日も経ってないはずなのに、ブラッドアーツが使えたり、副隊長やっていたり、アラガミ絶対殺すマンだったりする樫原仁慈はそんなことを言って戦場のど真ん中で垂れていた。


一方もう一人の新人であるシエルは、帰投の準備をしたり、通信を聞いてどのタイミングで迎えが到着するかと言ったことを確認していた。


……二人とも色々な意味で新人じゃないだろ。


全体的に黒いが所々にオレンジ色のラインが入っている自分の神機を担ぎながらそう思う。
仁慈は発言や行動がもうキチってるし、最近ずっと一緒にいるためかシエルにまで微妙に伝染している気がする。
今日だって「神機を振ってその慣性を利用し、素早く動くことができるのです」とか若干ドヤ顔で変態軌道を見せられたし。
何かこいつらといると自分の中にある常識がどんどん剥がれ落ちていくんだよなー。


「……どうやら帰投準備が整ったようです。帰りましょう」


「はーい」


「仁慈さん、ちょっとたれすぎやしませんかね」


そんなにあのアラガミのバーゲンセールがお気に召さなかったか。


ガタゴトガタゴトと揺れる帰投用の車の中で仁慈やシエルと特に中身のない会話をして時間を潰す。
……こういう時、しっかりとシエルが返事を返してくれるとこの子は変わったなぁと改めて実感する。
そして、俺の隣で笑っているコイツ(仁慈)が変えたんだと思うと、やはり副隊長にしたジュリウスの判断は間違っていなかったのだと感じる。


……本当にすげぇよな、仁慈。俺より遅くにブラッドに入隊したのにブラッドアーツが使えて、副隊長と言う役職についても頑張って成果を残している。普通、ここまでされると一応先輩の身としては面白くなく感じるし、嫉妬したりするんだろうけど……。


「ねぇ、君。今回の任務はすごかったですね!どうやったらあんな変態的軌道をたどってアラガミを倒せるのか、ぜひ教えてほしいです!」


「それ褒めてるんだよね?まったくそんな気がしないけど褒めてくれているんだよね?」


「もちろんです!あんな動き、君以外はアラガミくらいしかできないでしょう!」


「言外に『お前は人間じゃねぇ!』って言ってるよね。それ」


純粋無垢な笑顔と共に放たれる、無自覚の刃が仁慈の精神を切り裂く。
こうかは ばつぐんだ!


……多分、色々と苦労しているのを知っているからそこまで気にしないでいられるんだろうなぁ。
ジュリウスの訓練とか副隊長の仕事とか少し聞いたことあるけど、俺には絶対無理だと思ったし。
シエルと仁慈のコントじみた会話を聞きながら俺はそう思った。


「やっぱり仁慈は人外。はっきりわかんだね」


「解せぬ」



さて、そんなこんなでフライアに帰ってきた俺達だが、帰ってきた俺たちにかけられたのは労いの言葉ではなく、今すぐ局長室に召集せよという業務連絡だった。


局長室かぁ……。ってことはつまり、グレム局長からの招集だよな。
ユノさんの時の件があるからあんまり会いたくないなぁ……。
何の迷いもなく局長室に向かう仁慈とシエルの後ろで俺はそんなことを考えていた。


「失礼します、ブラッドの隊員三名、到着いたしました」


仁慈が俺たちを代表して、扉に向けて言う。
しばらくすると中にいるのであろうラケル先生から許可が下り、俺たち三人は中に入った。
中に居たのは、ラケル先生にレア博士の姉妹にジュリウス、ナナ、ギル……つまり俺たち以外のすべてのメンバーがそろっていた。
しかし、グレム局長が来ていないからか話は始まらず、手持無沙汰になってしまった。
あまりに暇だったので隣りに立っている仁慈に小声で話しかけた。


「なぁ、仁慈。あの二人、本当に姉妹なのかな。あんま似てないけど………」


「ロミオ先輩。家庭にはそれぞれ事情というものがあります。ラケル博士の格好から見るにあの二人の家は結構なお金持ちと見て間違いないでしょう。そう言った貴族じみた家庭では愛人などを作ることが稀によくあるそうですよ?」


「稀なのか、よくあるのかどっちだよ……。ってまさか…!ラケル先生とレア博士は……腹違いの姉妹……っ!」


まさか、そんな真実が隠されていたなんて……っ!
戦慄する俺をよそに仁慈はクスリと笑って、


「冗談ですよ」


「無駄にリアリティのある嘘やめてもらえませんかねぇ!」


思わず叫んで、みんなの注目を集めてしまったが、そんなこと今は気にしていられなかった。
仁慈のせいでこれからあの姉妹を見かけるたびに今回の話が頭をよぎり、微妙な対応しかできなくなる未来が見えてしまったからである。
俺が仁慈に向かい抗議しようとしたところで、扉の外から聞き覚えのある嫌な声が聞こえてきた。


「一括で請けるからこそ、利ザヤが取れるんだろうが!そんな弱気でどうする、競合なんぞ潰してしまえ!」


そんなことを怒鳴りながら局長室へと入ってきた人物がグレム局長である。























「一括で請けるからこそ、利ザヤが取れるんだろうが!そんな弱気でどうする、競合なんぞ潰してしまえ!」


ロミオ先輩をからかって遊んでいたら高そうな装飾品で小奇麗に着飾った顔面が汚いハンプティ―ダンプティーといかにも研究一筋、三食毎回ウィダで済ませていますっといった今にも死にそうな風貌の研究員……っぽい人が現れた。


その汚い顔面のハンプティ―ダンプティーは部屋の状況を見て研究員っぽい人との会話を打ち切り、手に持った葉巻?を吸った。


「えっほ、えほ……」


煙の近くに居たナナはそれで咳き込んでしまう。
分かるわ。
たばこの煙って吸うと咳がよく出るんだよね。


「ご足労いただき、感謝します。グレム局長」


「お忙しいところ時間を取らせて、申し訳ありません」


クラウディウス姉妹が汚いハンプティ―ダンプティー改めグレム局長にそういう。
あ、ヤバい。葉巻の煙のせいで咳でそう。


「挨拶はいい、とっとと理由をk「ゲッホ、ゲホ!」………」


自分の言葉を遮られたからか、咳き込んだ俺の方を睨みつけるグレム局長。


「失礼しました。ハンプtじゃなかった、グレム局長の持っている葉巻の煙に少々むせてしまいまして……」


「……そうか。では、気を取り直して。何故このフライアを最前線の極t「ゲッッホ、ゲッホ、えほ…」……君ィ、いい加減にしたまえ……」


さすがに二回も会話を遮られて激おこ寸前のグレム局長。
わざとじゃないんですよ。


「一度ならず二度までも申し訳ありません。葉巻が……」


「もう、これでいいだろう!」


グレム局長はその豊満な腹から携帯用灰皿を取り出し、葉巻をぐりぐりと潰した。


「ありがとうございます」


「フン……で、このフライアを最前線の極東地域に向かわせる理由はなんだね?」


ようやっと話が進んだな(他人事)。
……にしても極東に向かう?そんな話聞いたことないんだが。
俺以外の人も初耳だったのかナナやロミオ先輩、ギルさんまでも顔を見合わせて驚いている。
グレム局長に問われた本人であるラケル博士は彼の会話をぶった切り、こちらを向いて口を開いた。こっち見ないでくれませんか?


「こちらは、フェンリル本部特別顧問であり、このフライアを総括する、グレム局長です」


「相変わらず話を聞かない……少しは君のお姉さんを見習いたまえ」


額に手を当ててラケル博士に言うグレム局長。
いっても無駄だと思いますよ?その人、究極のゴーイングマイウェイですから。
ここからの会話は長かったので簡単に纏めよう。


アラガミの動物園とも言われている最前線の極東に行く理由はブラッドと神機兵の運用実績が欲しいのだとラケル博士は言った。
しかし、グレム局長はこれに反対。理由は実績ならその辺のアラガミで十分だろうとのこと。
これに対しラケル博士はさまざまなアラガミのデータがなければ本部も認めてくれないだろうといった。
それでもなお渋るグレム局長にレア博士からの追撃が入った。
何でも、極東には本部に対して強い発言力を持つ葦原ユノと言う人がいるらしい。彼女へ助力すれば見返りも大きいのでは?と進言した。
これが決め手となり、フライアは極東に向かう事となったのである。










「はぁー……極東かぁ……やだなぁ」


「どうしたんですか、ロミオ先輩」


局長室から追い出され、フライアの通路を歩いているとロミオ先輩が腕を組みながら急にそんな事を言い出した。


「だって極東って、同じアラガミでもほかのとこよりはるかに強いし、想定外の大型種の乱入も当たり前なんだぜ?」


「へぇー」


「雑っ!?」


別にそんなこと今考えてたってしょうがないし。
と言うより俺には別に気になることがあるんだよなぁ。


「ねぇ、シエル。神機兵って何?」


「神機兵とはラケル博士やレア博士のお父様であるジェフサ・クラウディウス博士によって考案された人型機動兵器です。そのポテンシャルは大型アラガミにも匹敵するもので、一撃の強さは平均的な神機使いの上を行きます。また、神機を扱う事の出来ない人でもアラガミに対抗できる手段として注目されています。一方で神機兵に搭乗する人の負担が大きいために批判されている部分も多々あります。今は、先程グレム局長と一緒にいらしたクジョウ博士が神機兵の無人化を試みているようです」


「さすがシエル」


「ありがとうございます。画像もありますけど……見ます?」


「うん、見せて」


言うと、シエルは端末を取り出すとパッパッパと端末を操作し、神機兵の画像を見せてきた。
搭乗できるロボットとか胸熱。
きっとガン〇ムみたいなやつだったりするのだろうか?
なんて、期待したのがいけなかったんだろう、俺は視界に入ってきた画像に思いっきり落胆した。


「……なんだこれ」


そこに映っていたのはごつくて丸っこい何かだった。


「神機兵ですよ?」


「……マジかー」


期待した分だけ余計にダメージを喰らったぜ。
けど、なんかこれを見ると嫌な予感がするんだよなぁ。


「どうかしましたか?」


「いや、無人機化した途端にこっちに反逆してきたりするんじゃないかなって考えてた」


「フフ、心配性ですね君は。これを作っているのはラケル博士やレア博士ですよ?そんなこと起きませんよ」


それが一番心配なんだけどね……。
心の中でそう返しつつ、俺は部屋に戻った。



神機兵のデザイン、もう少し何とかならなかったのかなぁ……。