アンフェンスさん、ありがとうございました!
俺はひょんなことから幻想郷…ならぬ幻相郷に入ってしまった外来人である。
しかし、幻想郷にも行ってみたいという思いは少なからずあるわけだ。そこで博麗神社に足を運んで、霊夢に聞いてみることにした。
「俺、幻想郷に行ってみたいんだけどいいかな?」
「うーん…」
霊夢は時々俺の相談に乗ってくれる、本当にいい人だ。
「紫ならできると思うわ。私から話してみるわ。」
本当にいい人だ。
打墨神社に戻って暫くたつと突然横にスキマが開くが、すぐ閉じてしまう。
これが幻相郷の紫、ビビりで人見知りが激しい。俺には慣れたのだが、参拝客はなかなか慣れないのだろう。
俺は人の少ない神社の中へと足を運ぶ。すると紫がスキマからあらわれた。
「時夜、霊夢から話は聞いたよ。それで、何処へ行きたいの?」
「え?それは…」
そこまで考えてなかった…テヘペロ
「じゃあ、行きたいところを決めたら霊夢に言ってね。」
そして紫はスキマの中へ戻ってしまった。忙しいんだなぁ。
それで、だ。行きたい所を決めようか。そうだなぁ…
「みんなに聞いてみるか」
うん、それがいい。
その後、みんなを集めて俺は聞いた。
「今度、何処かみんなで行きたい所はあるか?」
「「山!」」
「うん、それは却下な。」
秋姉妹はいきなり山と意見するが、それはまずい。天狗に追いかけられる。しかも幻相郷には天狗はいない。みんなは未知の生物に追いかけられたと勘違いする可能性が高い。
「急に言われても思いつかないですよー」
「そうだな…」
リリーとともに頭を抱えていると、今まで黙っていたレティが口を開いた。
「みんなでご飯を食べにいったらどうかしら?いつも時夜が作ってるじゃない。」
「それだ!」
早速霊夢に伝える。紫は明後日に幻想郷一の居酒屋の席をとっておいたらしい。
竹やぶと人里の間にある『夜雀亭』というお店だ。
楽しみで夜眠れなかった…とみんないっていたが、大丈夫だろうか?
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当日
「ここが幻想郷一の居酒屋、『夜雀亭』なんだな」
「人がいっぱいいますねー」
「妖怪もそれなりにいるわね」
扉の前で呆けていると、扉が開いて従業員がやってきた。…本当に幻想郷なのか?
「えーと、打墨様でしょうか?」
「俺が打墨時夜だが、あんたがここの従業員だよな?」
「はい。私はここの従業員である鷲田進です。それでそちらの方々は?」
「うちの神社の巫女で、順に秋静葉、秋穣子、レティ・ホワイトロック、そしてリリーホワイトだ」
「合計で五名様ですね。ではこちらの席へどうぞ」
そう言って従業員は俺たちを奥の座敷へと案内した。
座敷に案内され、五人が各々の席につく。
…今まで幻想郷感0だったため、おれは鷲田進と名乗る従業員に聞いてみた。
「いきなり変な質問していいか?」
「はい?なんでしょうか?」
「えーとだな…あんたが知っている幽々子ってどんな奴だ?」
「幽々子さん?亡霊で、大喰らいで、冥界の管理人ですけど」
幻想郷感あるな、大喰らい。
しかしまだ断定はできない。
「あー…その、なんだ。彼女の家族とか知らないか?」
「いえ、私は知りませんが…西行寺という苗字も他に聞きませんし」
西行寺!?
「西行寺!?西行寺といったな!!」
「?えぇ、そう言いましたが?」
「あぁ、いや。俺たちがいつもいる世界は幻
「具体的にはどのような世界で?」
「幻想郷の人たちがこうありたい、と願った世界だ。具体的に言うなら妖精が最強だったりとかな」
「そんな世界があるんですか…ということはそこの四人は?」
「勿論幻相郷の人たちだ」
「そうですか…それでどうしてさっき幽々子さんについて聞いたんですか?」
「あぁ、確認のためだよ。こっちの幽々子は妖夢の母だからな」
「へ?ということは西行寺妖夢ということですか?」
「違う違う。魂魄幽々子だ」
「確かに私の知っている幽々子さんとは違うようですね」
「それを確認したかっただけだ。変な質問してすまなかったな」
確かにここは幻想郷だ。うん。
「いえいえ。面白いことが聞けましたので」
「ならいいが…注文いいか?」
「構いませんよ」
「それなら…それぞれの季節にあった物を作ってくれないか?」
「つまり秋姉妹が秋の物で、リリーが春の物で、レティが冬の物ということでいいですか?」
「そういうこと。俺は夏の物を頼む」
「はい、ご注文承りました」
注文を受けた従業員はそれに答える料理を考え、作り上げた。
その料理を持って行き、それぞれの客の前におく。
「これは…?」
「なるほど。カレーライスか」
「姉さん!お米の上に何か乗っているよ!」
「これはキノコとサツマイモかしら?」
「おしそうな料理ですねー」
五人の前におかれた皿にはご飯の上にとろみのついたスープがかかった料理。
全て置き終えた従業員は説明を始めた。
「これはカレーライスという料理です。少し辛めのカレールウをご飯にかけた料理になります。それでそれぞれ違う具材が入っています。まず、打墨さんのには茄子とピーマンを、レティさんのにはカボチャと白菜を、リリーさんのには筍とさやえんどうを、秋姉妹さんのにはキノコとサツマイモを入れたルウをかけました」
なるほど、春野菜カレーと夏野菜カレーと秋野菜カレーと冬野菜カレーか。
「これは箸で食べるのは難しそうな料理ね…」
「はい。スプーンでご飯とルウをすくって食べるのが一般的ですね」
「スプーンって…あぁ、これね」
そういや、幻相郷ではスプーンやフォークを使うことはなかったな。
フォークやナイフをとらなくてよかった。
「それではお召し上がりください」
「「「「「いただきまーす」」」」」
その言葉とともに俺達は各々のカレーを食べ始める。
おいしい料理を食べた俺達は笑顔を見せる。
ここに来てよかった。
料理を食べ終えた俺達は会計を済ませ、店の入り口に立つ。
見送りのために、と従業員がその傍に立っていると、目の前にスキマが開いた。
「帰りますよ…って、うわぁ!」
そこから現れた少女は従業員を見るなり驚いて中に戻ってしまった。
「…今のは?」
「…幻相郷の八雲紫だ。ビビりで人見知りだからな」
「帰ってしまいましたが…」
「すぐ戻ってくるからいいだろう」
その言葉通りに先ほど帰っていった少女が戻ってきた。
彼女が涙目で開いたスキマに入りながら時夜が従業員に話しかけた。
「それじゃ、またお邪魔するかもな」
「またのご来店、お待ちしております」
そういや夜雀亭なのに夜雀出てこなかったが…ま、いいか