GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話は横島とドクターカオスの話にしようと思います。時間としては平和な時間の中にあった1幕だと思ってください。横島がドクターカオスをカオスのじーさんと呼ぶほどに仲良くなった理由をメインにしたいと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


別件リポート

 

別件リポート 未熟なGSと錬金術師

 

「ふむ。ゆっくり出来ると言うのは悪くないのう」

 

逆行前のあの狭いアパート。あれも悪くなかったが、今こうしてゆっくりと過ごせる今の家も悪くない

 

(あのばーさんは元気かのう?)

 

散々怒鳴られたりしたが、あれはあれで楽しかったと思う。なんせワシはマリアと2人で暮らしていた時間が長かったからの。ああやって怒鳴られると言うのはなかなかない経験で面白かったと思う。

 

「カオスー?今いい?」

 

ひょこっと顔を出したテレサ。前の時はもっと険しいし人間を見下した顔をしていた、でも今の柔らかい表情を見るのはなんと言えば良いのか判らないが楽しい

 

(これが親心か)

 

血の繋がった娘ではないが、やはりテレサもマリアもワシの娘だ。その成長を見るのが喜ばしいと思うのはどう考えても親心だろうと1人で納得していると

 

「1つ聞きたいことがあるんだ」

 

ワシに?珍しいな、普段はマリアに尋ねるのに……まぁ頼ってもらえるのは嬉しいので嫌な気はしないが……

 

「何を聞きたいんじゃ?」

 

「うん、横島は美神のことをさんってつけて呼ぶじゃないか?」

 

うん?呼び方?予想外の問いかけに思わず困惑しているとテレサは首を傾げながら

 

「でもカオスはカオスのじーさん、でも横島はカオスの孫じゃないからじーさんって言うのはおかしいんじゃないのか?カオスさんじゃないのかな?」

 

そう尋ねてくるテレサ。こういうところはまだ精神面が未熟だから気になってしまったということなんじゃろうな

 

「うむ、最初はカオスさんじゃったんじゃがな、仲良くなったからのう。カオスのじーさんになったんじゃ」

 

「仲良くなるとじーさんになるの?じゃあ美神も美神のばーさんになるの?」

 

「それは絶対に本人の前で言ってはいかんぞ?」

 

もしそんなことを言えばテレサが壊されてしまうからのと心の中で思いながら言うと、うん、判ったと返事を返すテレサ。

でも何かの拍子で言いかねないので、マリアに警戒するように伝えておこうと思う

 

「うむ、良い機会じゃから、ワシと横島が仲良くなったきっかけを話してやろうかの」

 

今のテレサには経験が足りない、特に人間関係と言うのはとても難しい物だ。話をするだけで判るとは思わないが、こういうこともあるんだと教えてやるのは良い事だと思う。テレサも興味があるようだし、丁度良い

 

「あれはのー。美神の事務所に除霊具を搬入した後じゃったなあ……」

 

ワシもあのときの事を思い出しながら、ゆっくりと口を開くのだった……

 

 

 

 

「うむ、今回も良く買ってくれたの……ひーふーみーよー」

 

美神の事務所を出て、受け取った札束を軽く数える。逆行前と違って呆けてない分ちゃんとした除霊具を作ることが出来る。美神もそれを知っているから若干値切り交渉をしてくるが、十分な料金を支払ってくれている。暮らすには十分すぎる金額だが……

 

(うーむ、それでもまだ足りんの……)

 

マリアのボデイを有機に交換し、テレサを作るにはまだ資金が足りない。美神1人に売るだけでは目的の金額に到達するまで時間がかかりすぎる

 

(六道……それに神代……神宮寺と夜光院……)

 

色々と候補はあるが、正直言ってどこも信用できる相手ではない。六道冥華は人当たりはいいが、その裏で何を考えているか判らないし、神代と神宮寺と夜光院はワシの記憶に存在しない人間であったり、名家だったりするので今の段階ではなんとも言えない……

 

(芦に連絡を取ってみるかのう……)

 

しかしなあ、マリアとテレサに人間と同じ機能を持つ有機ボデイを与えると言うことはお嬢ちゃんの敵を増やす事になるからうんと言わんかも知れんなあ……溜息を吐きながら歩いていると

 

「どわあー!チビ!タマモ!逃げるぞーッ!!!」

 

公園から聞こえてきた大声に思わず顔を上げると

 

「うっひいいいい!?」

 

「みむうううーッ!?」

 

「コーン!?」

 

小僧がグレムリンと九尾の狐を抱えて走っているのが見えた、その後ろからはぽんぽんっと言う乾いた音とバン!バンッ!!と鋭い音が交互に響いて来ている。しかし周囲の人間はこの音に気付いていない……

 

(ふむ、破魔札の制御に失敗したか?それとも霊力のコントロールに失敗したのか?)

 

どちらにせよ霊力に関するトラブルだろう。頭の上に狐を乗せて、グレムリンを手の上に乗せてズシャーっと滑ってきた小僧に苦笑しながら

 

「何をしてるんじゃ?」

 

良く顔を合わせているが、それは美神やお嬢ちゃんがいる時だけだ。こうして顔を見合わせて話すのははじめてかも知れんなと思いながらそう声を掛けるのだった……

 

 

 

 

 

あ、危なかった……破魔札の練習をしているときにうっかりくしゃみをして、買ってきた破魔札が全部誘爆した。タマモやチビが危ないと思い必死で逃げてきたが、俺も巻き込まれたら危なかったかもしれない

 

「何をしてるんじゃ?」

 

地面に倒れながら安堵の溜息を吐いていたら突然そう声を掛けられる。この声は……

 

「カオス……さん?」

 

黒いコートを纏った長身の老人。なんでも1000年の時を生きる凄い錬金術師らしく、よく美神さんに色々な除霊具とかを売りに来ている。こうして街で会うのは初めてかもしれないと思いながら、尋ねられた事について答える

 

「いやあ、破魔札の練習をしてて」

 

地面に寝転がっているので座りなおしながらそう言うとかオスさんは険しい顔をして

 

「なんじゃ?制御の失敗か?いかんぞ、霊力の扱いは難しいからの1人での練習は勧められんぞ?」

 

俺に手を伸ばしてくるカオスさん。俺が手を伸ばそうか悩んでいると

 

「ほれ、さっさと立たんか」

 

「ば、馬鹿な!?」

 

俺のGジャンの襟を掴んで猫のように持ち上げる。爺さんなのになんでこんなに力があるんだ!?と俺が驚いていると

 

「これも霊力の応用じゃな」

 

身体能力を強化できるとは聞いていたけどこんなことまできるのか……

 

「とりあえず……おろしてくれません?」

 

頭の上にタマモを乗せて、腕の中にチビ。そして俺はカオスさんに吊り上げられていると言う訳の判らない事になっているのでそう言うと

 

「ワシは今暇なんじゃ。少し話し相手にでもなってくれると嬉しいじゃが?」

 

これはあれだ。拒否できないパターンだと理解して俺は襟元を持たれたまま

 

「どうせ暇だし、話に付き合うっすよ」

 

だから降ろしてくれと言うとやっと地面に足がついた。持ち上げられるって落ち着かないんだなあと初めて知った

 

「ほれ、丁度近くにベンチもあるからそこで話をするか?」

 

そう笑うカオスさん。本当なら爺さんと話なんて御免だが、美神さんや蛍に聞けないことを聞けると思い、俺はチビとタマモを抱えてカオスさんの後ろをついてベンチへ向かうのだった……

 

 

 

 

案外素直についてきたの……ワシは小僧の性格を理解しているつもりじゃが、女好きである小僧が素直にワシと話をしようと言ってもついて来るとは思ってなかった

 

(未来よりも向上心があるということかの?)

 

ワシの記憶に今には存在しなかったタマモにチビと言うグレムリン。それにお嬢ちゃん……考えれば考えるほど小僧が前向きに霊能力に修行に取り組む理由が浮かんでいく

 

(うむ。いい傾向じゃな)

 

アシュタロスが味方だから神魔大戦が起きないと言う事ではない、アシュタロスの代わりの敵が出てくる可能性がある以上。あの時の神魔大戦の事を考えれば小僧が強くなる事は良い事だ

 

「さて、小僧。なんでそんなに慌てて強くなろうとするんじゃ?美神もお嬢ちゃんも1人での霊能力の修行を許可していないはずじゃが?」

 

うぐっと呻く小僧。霊能力の修行は精神的にも肉体的にも疲弊し、周囲にいる雑霊や浮遊霊にも影響を与える可能性が高い。美神達がその危険性を理解していないわけがない

 

「うーいやーあのー」

 

「はっきり喋れ」

 

口をもごもごさせている小僧にきっぱりと言うと

 

「霊能力を使えるようになりたくて」

 

ぼそっと言う小僧。向上心があるのはいいが、どうも焦りすぎているようじゃな……まぁ無理もないが……

 

(ここであったのも何かの縁か……)

 

ここにワシが訪れたのも偶然ではないかと思う。ここできっと小僧を諭すのがわしの仕事なんだろう

 

「俺なんにも出来ない、弱いし……いっつも蛍や美神さんに助けられて……足手まといにしかならない自分が嫌で……」

 

周りにいる人間が強すぎるから自分の弱さばかりに目立ってしまうんじゃな。まだ年若い小僧だからこそ仕方ないことじゃが……その焦りはどうやっても小僧にとってマイナスにしかならない

 

「お前はのう……焦りすぎじゃな。最初から美神やお嬢ちゃんが強かったとでも思っておるのか?」

 

霊能力と言うのは長い時間をかけて身に付ける物。無論才能や環境も大事じゃが、何よりも大事なのは心。すなわちその精神力にもっとも重きを置く

 

「言っては悪いが、今のお主では霊力の覚醒は絶望的じゃな」

 

「な、なんで!?」

 

訳が判らないという感じで叫び詰め寄ろうとする小僧を手で制し

 

「本当は美神と言う師がいるのだから他人が口を出していい物ではないが、特別じゃ。このドクターカオスが判りやすく霊力について解説してやろう。こんなこと滅多にないのだから心して聞け」

 

教えているとは思うだろうが、今の小僧の焦りを考えるとまた無茶な訓練でもして、本当に霊力の覚醒が遅れそうだ。

後で美神に話した内容を伝えるとして、軽く触り程度だけでも霊力ついて教えてやるとするか……

 

 

 

 

よいか?と前置きしてからカオスさんは俺に霊力について色々教えてくれた

 

「霊力とは精神の力じゃ、肉体的な力である腕力や体力とは根本的に違う」

 

まぁ霊力を十全に使うにも体力や腕力が必要じゃが……健全な精神は健全な肉体に宿るというじゃろ?と笑う

 

(そう言えば蛍の訓練もそういう基礎訓練が多い気がする)

 

カオスさんの話がつまらないのか、チビとタマモはベンチの上で寝転がって眠っている

 

「つまりじゃ焦りや動揺は霊力を引き出す上では邪魔にしかならぬ。それにそもそも霊力を扱うというのは口で言う以上にはるかに難しいものじゃ。気ばかり焦ってもいい結果は出ない、判るか?」

 

それでも焦る物はあせ……

 

「あいだ!?」

 

バシッとデコピンをされる。老人とは思えない威力で思わず額を押さえると

 

「焦るな時を待て、焦る気持ちは分かるし早く1人前になりたいと思うのも判る。じゃがな?ワシが錬金術師になるのに何年掛かったと思う?霊力を扱えるようになるのに何年掛かったと思う?」

 

そう問いかけられる。だってドクターカオスは天才錬金術師なんだろ?だから

 

「10代くらいで両方出来たんじゃないのか?」

 

俺がそう言うとカオスさんはがっはははっと笑い出し

 

「ワシが錬金術を使いこなせるようになったのはもう30歳くらいのときじゃ、そして霊力を使えるようになったのは100歳を過ぎた頃じゃ」

 

「嘘だろ!?」

 

とても本当のことだとは思えずそう言うとカオスさんは本当じゃと笑い

 

「錬金術師としても霊能力者としてもワシは才能は殆どない。ただ一瞬のひらめきとそのひらめきを生かすだけの資金が偶然手元にあった。だから様々な研究を行い、錬金術を霊力に転用する方法を導き、そのときのノウハウを生かし今は除霊具開発などしておるが、運がよかっただけじゃ。今思えばあの時……」

 

ここで口篭るカオスさんは首を振る。その表情は少しだけ寂しそうに見えた

 

「いい出会いが出来た、親友と呼べる相手が居た。1人で出来る事など高が知れている、だが仲間が親友がいれば……1人では出来ない事だって出来るようになる!今は弱くていい、護られてもいいんじゃよ」

 

そう笑って立ち上がるカオスさんは

 

「長話に付き合わせたな、じゃが焦るな。時を待て、良いな?」

 

俺の頭をくしゃくしゃと撫でるカオスさんに

 

「カオスさん……えっとありがとう。なんか気が楽になった」

 

蛍や美神さんには話せない内容だったから、こうして話すことが出来てとても気が楽になった

 

「気にするな。後な、1個だけ言いたい事がある」

 

俺に背を向けながらカオスさんは苦笑しながら

 

「カオスさんって言うのは落ち着かん。どうせならじーさんとでも呼んでくれ、見ての通り爺じゃから」

 

そう笑うカオスさんに吊られて笑いながら

 

「判った。ありがとな!カオスのじーさん!」

 

「うむ!またな。焦らずゆっくりと力をつけるんじゃぞ!」

 

そう笑うカオスのじーさんと判れた俺は、眠っているチビとタマモを起こさないように抱えて家に向かって歩き出すのだった……

 

 

 

「んー」

話し終えるとテレサは腕組してんーと唸っている。この反応は予想の範囲内だった、まだ稼動したばかりのテレサが細かい人間の心の機微を理解できるとは思ってはいない。だがテレサには必要だと思いこの話をしたのだから

 

「良く判らんか?」

 

ワシがそう尋ねるとテレサは少しだけ申し訳なさそうな顔をしてから

 

「うん。全然判らない」

 

ははは、まだテレサにはそういう気持ちが判らないか、これがマリアだったのならば理解していたのかも知れんな

 

「いつか判るようになる、テレサも焦らずゆっくりと育って行けば良いんじゃ」

 

テレサもまだ生まれたばかりなのだ、人の心の機微なんて判るわけがないのだから

 

「そうなのかな?もっと勉強したら今のカオスの話もわかるようになる?」

 

小首を傾げるテレサの頭を撫でながらなると断言すると

 

「そっか、じゃあもっと勉強する。判らないことも判るようになる」

 

にこっと笑いありがと!っと言って部屋を出て行くテレサの背中を見て

 

「何じゃろうなぁ……この気持ちは……」

 

テレサが頑張るというのが嬉しいような、寂しいような……それでいて安心するような……いままで感じたことのない気持ちは……

 

「うーむ……これが親の気持ちなのかのう……」

 

マリアが置いてくれた急須に手を伸ばし、少し温くなった緑茶を啜りながらそう呟くのだった……

 

 

リポート17 ハメルーンの悪魔 その1へ続く

 

 




マリアがおキヌとどんな生活をしていたのか?は秘密です。正し精神的なダメージが大きかったと言うことだけ悟ってあげてください。ハメルーンの悪魔では、くえすも登場させるので更に面白い感じにして行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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