GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話は「芦優太郎の捜査録」って事で優太郎がリポートの間にある事件の裏を調べていくのを書いていこうと思います。これは大きな物語の後にその補足として入れて行こうと思います。かなりの独自解釈などを含む「世界線」や「修正力」の話もありますが、こういう考察も出来るな程度に思っていただければ幸いです。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


別件リポート 

別件リポート 芦優太郎の捜査録

 

~何故知らない人間ばかりが増えるのか?~

 

薄暗い部屋の中でキーボードを叩き続ける……一息入れる為にマグカップに手を伸ばしコーヒーを1口含む。普段は砂糖1つとミルクを入れるのだが、今は眠気醒ましと集中力を高めるためにブラックコーヒーだ。

 

(ふう……大分確証が掴めて来たね)

 

砂糖の入っていないコーヒーの苦味に少しだけ眉を顰めて、背もたれに深く腰掛け溜息を吐く……長い事調べ続けて漸く確信が持てた。私が調べていたのは「神宮寺くえす」「夜光院柩」「神代琉璃」前回の歴史に存在しなかった人物が何故この世界に存在しているのか?である。少しの変化なら多少の差異と割り切れるが、ここまでイレギュラーが続くとなにか別の理由があるのでは?と考えたのだ。そして私の考えは当たっていた、しかも最悪の結果として

 

「世界線が揺らいでいる……か……これは不味いね」

 

この世界は魔神大戦……いや、私芦優太郎ことアシュタロスが自分が死ぬ為に起こした「神界」「魔界」「人間界」を巻き込んだ。壮大な自殺劇だった……まぁそれはどうでも良い、今私は救いを得ているのだから魔神大戦を起こそうなんて考えてはいない。今私が考えているのは蛍の幸せそれだけだ……その為には何としても横島君の女難体質をなんとかしないといけない、一体どうすれば良いのだろうか?っと話が逸れたな……世界線。それは言葉にすれば陳腐な物だが、魔神や神と呼ばれる者にとっては最も警戒しなければならない物の1つだ。世界の修正力と同格かそれ以上に厄介な物が世界線……

 

そう、例えばの話だが……

 

神宮寺くえすの先祖がその血に流れる魔力に負けて、魔族として先祖返りすれば神宮寺くえすは当然生まれない

 

夜光院の一族が持つ「未来視」等の特殊能力。しかしそれは人間の脳を圧迫する。その一族の誰かが狂えば「夜光院」の一族はその能力を危険視されて時の権力者に殺害されるだろう

 

神代幽夜が神代琉璃を幽閉するという道ではなく、殺害すると言う道を選らば当然神代琉璃は存在しない

 

例を上げれば切が無い様々なIF。平行世界とはそう言うものだ。私の本願が叶い死ぬことが出来た世界もあれば、もう1つの目的である「神族」と「魔族」の立場の逆転……世界とは木の枝とその葉に例えられる事がある、つまりある大本の世界が幹であり、その葉が無数の分岐で生まれた世界。では枝が何か?それは「世界線」と呼ばれる物だ。世界線とはすなわち「平行世界」同士を繋ぐ物……世界を木に例えるなら木の枝に当たる部分だ。つまり極論を言えば、だが魔神大戦のあった世界でも「神宮寺くえす」や「神代琉璃」が存在した可能性はあるのだ、ただそう……奇跡的な確率でその存在した・しないに分かれる。恐らく魔神大戦のあった世界では「存在しない」と言うことになり、それに伴い「神宮寺」の家系や「神代家」が修正力によって消去された。修正力は世界の矛盾を認めないからだ、では何故この世界ではその矛盾が認められているのか?それは

 

「修正力が修正しきれないほどの矛盾が生まれているから」

 

その可能性に思い当たった時。何かがきっちりと嵌まったような感じがした。修正力でも修正しきれないほどの矛盾……そうなれば答えは1つ。この世界は1つの世界ではなく、複数の世界が繋がっている可能性だ。しかもそれは互いが行き来できるような繋がりではなく、ほんの少しの情報同士が行き来する程度の小さな穴だ。それでもその穴は存在している、そしてその穴から異なる世界の情報がこの世界に入り続けているからこそ、世界はこの矛盾を認めている……

 

「世界線の歪みの修正は……恐らく不可能」

 

どのレベルで歪んでいるかは判らないが、恐らく修正力が修正しきれないと考えると1つや2つではないはずだ……しかしそれだけの世界を歪めることが出来る存在となると神族・魔族でもその数は限られる……

 

「誰だ。誰が世界を歪めている……かつての同胞達よ……」

 

脳裏に浮かぶのは71人の魔神達の姿。かつて同胞とし、共にソロモン王に従っていた者達……世界線を歪めるような真似が出来るのは私の同胞たる「ソロモン72柱」しか無いと確信していた。ムルムルやネビロスに聞いたが、今は互いに連絡を取るような真似をしておらず、誰がどこにいるかも判らない、72の中から特定の魔神だけを絞り込むには情報が足りない……

 

「今出来るのは最高指導者に連絡する事だけか……」

 

コスモプロセッサも宇宙卵も蛍が来る前に既に製作が完了しており、今は封印処理をしているが、それが破られないと言い切ることが出来ない。現に過激派魔族が渡せと来た事もある、まぁその魔族は丁寧に魔界にお帰り願ったが……

 

「今思うとどうしてあんなものを作ってしまったのやら……」

 

私は未だに過激派魔族として思われている。だからこそ魔界の情報を得ることが出来るのだが、やはり手に出来る情報は限られる。むしろどんな風に世界を破壊するつもりだ?と聞かれる始末でほかの魔族の動向を知ることが出来ない

 

「やはり部下が欲しい……」

 

作り上げた「世界線の歪み」に対するリポートを直接最高指導者の元に送りながらそう呟く。適度な力を持ち、魔族の中でも顔が広く、私の目的に賛同してくれる魔族。そんな条件を満たすのは1人しかいない

 

「メドーサ……早く記憶を取り戻してくれ……手遅れになる前に」

 

今ならまだ何とかなる。メドーサが記憶を取り戻して、他の魔族の作戦を調べてくれれば……まだなんとか出来る可能性がある。最近は逆行記憶の影響が大きいのか、録に行動できず、私の宮殿で休んでいることが多い。それが記憶の蘇る前兆だと考えると、もう少しで記憶を取り戻すはずだ。今は悔しいが後手後手に回ってしまっている。このままではかつての魔神大戦と同じ結末……いや、もっと酷い事になりかねない。だが今なら何とか出来るかもしれない……だからこそメドーサが記憶を取り戻す事を祈らずには居られないのだった……

 

 

 

~ブラドーに取り憑いた悪魔の謎~

 

私はその日ある場所に訪れていた。そこは唐巣神父の教会……先日ブラドー島で戦った魔族の魔力の分析をしていて、その魔族の特性と魔力のパターンを調べある一体の魔族にたどり着いたのだ。そしてその当事者の1人に会って話を聞こうと思い私はこうして唐巣神父の教会を訪れたのだ

 

「良くいらっしゃってくれました。芦さん」

 

笑顔で私を出迎えてくれた唐巣さんに小さく頭を下げる。今日の午前中にも除霊をして疲れているはずなのに笑顔で出迎えてくれたことに感謝し、少しの間世間話をしてから本題を切り出す事した

 

「ブラドー島の魔族の事を蛍に聞きました。唐巣さん……貴方はその魔族の事を知っているのではないですか?」

 

ピクリと眉を動かした唐巣さん。やはり知っていたか……でも敢えてそれを口にしなかったのはきっと美神君を考慮したからだと推測している

 

「正式な除霊記録にはありませんでしたから調べるのに苦労しました、美神君の母親に取り憑いていた魔族ではないのですか?」

 

私が畳み掛けるように言うと唐巣さんは溜息を吐きながら、美神君には秘密でお願いしますと前置きしてから

 

「……確かにその通りです。美神君の母親「美智恵」君に取り憑いていた魔族チューブラーベルがブラドーに憑依していたと思います。ですがそれはおかしいのです」

 

きっぱりと言い切った唐巣さん。ここまで言い切ることが出来るのは何か理由があると思い、その確信の理由を尋ねることにした

 

「おかしい……とは?」

 

私がそう尋ねると唐巣さんはそのときの事件のあらましを教えてくれた。

 

美神君の母親である美神美智恵に取り憑いていた魔族は父親の「公彦氏」の力を奪い、実体化するほどの力を得たが、それが災いし美神美智恵によって除霊。魔力の大半と霊核の半分を失い魔界に強制的に送り返された、唐巣さんの説明を聞いて私は眉を顰めた

 

「悪魔学に詳しい芦さんならば判ると思いますが、霊核を損傷しているチューブラーベルには人間は疎か、動物にすら憑依出来る力は残ってないはずなんですよ。とてもではないですが、ブラドーに憑依出来るとは思えないのです」

 

確かにその通りだろう。霊核を損傷したとなればよほどの高位の神魔族で無ければ、2度と元の力を手にすることは無いだろう……チューブラーベルは良くて中級の魔族だ。霊核を損傷して回復出来る様な魔族ではない……

 

(それに確かチューブラーベルは魔界正規軍でその寄生に対抗する手段を解析されたはずだ)

 

元々チューブラーベルは希少種に分類される魔族だ。自分の身体を持たず、精神寄生と言う極めて珍しい魔族だ。魔族と言えば強靭な身体と魔力を持つことが特徴だ。自分の身体を持たない魔族自体極めて稀少だ……チューブラーベルは精神寄生と言う能力を最大限に利用して、他の魔族に寄生し、犯罪を犯し自分は逃げるということを繰り返していた。だからこそ魔界正規軍がその寄生能力について解析し、チューブラーベルが魔族に寄生出来ないように対策を取った。だから人間界に逃げ、そこで美神美智恵に取り憑いたのだろう……結局それで自分の能力の大半を失っているのだから何の意味もないが……

 

「考えられるのは霊核の損傷を補うことが出来る何かを手にしたと言う可能性なんですが……」

 

「その可能性も窮めて低いですね」

 

霊核の損傷を補えるような物質は殆ど無い。もしあったとしてもよほど高位の神魔族の所有物であることが多い……チューブラーベルが持てるような物ではない筈だ。そもそもこの私でも持っていない稀少な物だ……最上位に数えられる魔神でも持つことの出来ない稀少な物を中位魔族程度のチューブラーベルに分け与えるような魔族はいないだろう……

 

「ではブラドー島で言わなかったのはやはり美神さんの事を考えて?」

 

私がそう尋ねると唐巣さんは首を振りながら

 

「彼女はまだチューブラーベルの事を知りませんから……特殊な魔族が取り憑いたとは話しましたが、その情報だけでチューブラーベルにはたどり着けないでしょう」

 

では唐巣さんがブラドー島に向かったのは、ピート君から話を聞いてもしやと思ったからですか?と尋ねると

 

「その通りです、チューブラーベルではありえないと判断したからです。そもそも私がブラドー島に向かったのは、万に一つの可能性を考えての事でしたしね。まさかチューブラーベルとは思っても居ませんでしたが……しかし向こうが気づかなかったのはやはり髪なのかな?」

 

酷く落ち込んだ様子で自分の髪を撫でる唐巣さん。こればっかりは私では何も出来ないので何も言うことは出来ない。しかし若い時はもっとふさふさだったのだろうか?もしそうなら毛生え薬でも開発することを真剣に考えるのだった……

 

「お忙しい中どうもありがとうございました」

 

「いえいえ。またいつでもいらっしゃってください」

 

午後からも除霊があると言う唐巣さんに礼を言って教会を後にする。そしてビルへと向かいながら

 

(霊核を失った中位の悪魔が始祖の吸血鬼を操る……これはどう考えても不可能だ)

 

始祖の吸血鬼。それは既に上位の神魔族と同格かそれ以上だ。いくら自己封印で眠っていたとは言え防衛本能は生きている、つまりチューブラーベルが取り憑ける可能性は0%だ。仮に取り憑く事が出来たとしてもその魔力で吹き飛ばされて終わりのはずだ……何か魔族の力を上昇させる何かが出回っている?ゆっくりと歩きながらチューブラーベルがどうやってブラドーに取り憑けたのか?を考えていると

 

「こんにちわ。芦優太郎さん?いえ……こう呼びましょうか?アシュタロス」

 

突然背後から聞こえてきた声。この声は……どうしてここに?様々な疑問が頭の中を過ぎる中。向こうに敵意が無いのは判っているので私も笑いながら振り返り

 

「どうも美神美智恵さん、それとアシュタロスと呼ばれるのは好きではないので、芦か優太郎とでも呼んでください」

 

トレンチコートを着込んでいる女性……いや、美神美智恵に表面上は笑いながら、心の中でお互いの事を警戒しながらそう呟くのだった……

 

 

 

~美神美智恵との出会い~

 

駅前の喫茶店でお互いに向かい合いながら、話を切り出すタイミングを窺う。その表情は柔らかい物で、かつて私が対峙した時の表情よりも更に柔らかい……美神の家は時間跳躍の能力を持つ者が生まれる。ではこの美神美智恵は何処かの時間軸からこの時間軸へ移動してきたのか?ではもしそうなるならどうやって?最高指導者が逆行は禁止しているはずなのに……

 

「娘さんはお元気?それとも私の孫が?って聞くべき?」

 

笑顔を浮かべながら尋ねてくる美神美智恵。その言葉にこの美神美智恵は蛍が逆行してきた時間軸の美神美智恵だと確信する。

 

「どうやってこの世界へ?」

 

私がそう尋ねると美神美智恵は小さく首を傾げながら

 

「んー事故に近いかも?と言うか私もあんまり理解してないんだけど……」

 

そう前置きしてから逆行してきた時の話をし始める。オカルトGメンに新しい霊能シュミレーターを起動させた時に偶然そのシュミレーターがショートして膨大な電力が逆流してきて、気がつけばこの時間軸に居たと……

 

「故意ではなかったっと……」

 

「私自身は逆行するつもりは無かったんだけどね。こうして逆行してきたのは何か意味があるのかなあって……だから貴方を探してたのよ」

 

そう笑う美神美智恵。逆行してきた意味……確かにこのタイミングでの逆行には何か意味があるのかもしれない……それこそ最高指導者がこの逆行に関与した可能性もある

 

(もしそうならば……彼女は頼もしい味方になる)

 

私と同じ結末を知っていて、彼女は人間社会に強いパイプを持っている……もしも、チューブラーベルに霊核を修復する力を持った何かを与えた魔族が人間が操ろうとしているとしたら……?その情報は当然私が手にすることが出来ない情報だ

 

「……かなりの数のイレギュラーが起きています。もしかすると前の物よりも酷い魔神大戦が起きるかもしれません」

 

今の段階でもかなりの数のイレギュラーが起きている。それに私以外のソロモンの魔神がかなりの数動いている可能性があると言うと

 

「へえ?」

 

穏やかな表情だった美神美智恵の瞳に鋭い光が宿る。人間など恐れるに足りない魔神たる私だが、若干の恐怖を感じる。この美神美智恵と言う女性は目的のためなら何でもする。それは前の歴史でも知っている、敵にするには恐ろしいが味方に出来るのならこれ以上頼もしい相手はいないだろう

 

「詳しく話を聞きましょうか」

 

「そう言って貰えると思ってましたよ」

 

私は直ぐに返事が貰えると判っていた。魔神大戦のキーとなるのは「横島君」「美神さん」の2人だ。これは恐らくどれだけ歴史が変わっても変わる事が無い事だ。それは美神美智恵も知っている事だ、だからこそ直ぐに協力を得れると確信していた。会計を済ませ、私の拠点に案内すると

 

「こんな近くだったの?」

 

信じられないという感じで呟く、美神美智恵に笑いながら

 

「ええ。灯台下暗しって言うでしょう?」

 

まさか魔神アシュタロスの拠点が東京の立地の良いビルの中にあるとは誰も思うまい。驚いている美神美智恵をビルの中に案内し、私が調べた前回と今の差異を纏めたリポートを手渡すと直ぐに目を通し始め

 

「チューブラーベルがね……これは確かにおかしいわね。私はちゃんとあいつの霊核を砕いたはずだもの……」

 

凄まじいスピードでリポートを読んでいる美神美智恵はリポートを読む姿勢のまま

 

「私がやるのは人間側ね?」

 

私ではどうやっても調べる事が出来ない人間側の情報。それを入手出来るのは、人脈があり、各国の権力者とも交流の深い人物でなければならない。その条件を満たすのは目の前に居る美神美智恵意外ありえない

 

「ええ、お願いします。魔族の力を強化する何か……人間なら確実にその傀儡になる」

 

仮に魔族を強化する何かがあるなら、それを人間に持たせるだけで正気を失い。その物質に操られるだろう、そうなれば私達はますます後手に回らずを得ない。それを回避するには操られている可能性のある人間の特定をしなければならないならない。美神美智恵はそのリポートを鞄の中にしまい

 

「じゃあ、早速調べてくるわ」

 

私の返事も聞かず出て行くその後姿に思わず苦笑する。こういう行動の早い所はやはり親子と言うところだろうか?とりあえず頼りに成る仲間が増えた事に笑みを零し、私は魔族の魔力を増幅させる何かが魔界で流通していないかを調べ始めるのだった……

 

 

 




リポート15 予知探偵と見習いGS その1へ続く

次回は愛子を出して行こうと思っています。それと柩と横島の顔合わせとかも書いていこうと思っています、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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