別件リポート 横島争奪戦トトカルチョ 途中経過 その2
横島のトトカルチョが始まってから早2年……暫く動きがなかった時期もあったが、最近はとても大きな動きが続いている
前回の参加者増加からの知らせからたった2ヶ月で3人の増加者の増加
動きがますます読めなくなってきた事で、参加している神魔族はその予想に頭を抱えていた。それなのに今回発表された新システム導入で更に頭を抱える事態に陥ってしまったのだ
1ヶ月に1度の賭けの対象の増加日。この日は賭けに参加している魔族・神族の全員がトトカルチョの一覧に目を通す
横島が1ヶ月の間にどんな出会いをしたのかや?それに伴う倍率の変化。それを参考にし更に賭金の増減を行う大事な日だ。そして様々な神魔族が興味を持つ中、最高指導部による賭けの対象者の発表とそれに伴う新システムの導入が発表されたのだった
『最高指導者よりトトカルチョに対する重大な連絡』
横島争奪戦トトカルチョに参加してくれている全ての方にご連絡します。今回より、連単式の賭けシステムを導入いたします。複数人が横島忠夫を入手する可能性が高く、そして参加者同士が目的の一致などで結託する可能性も出て来たため導入します。この人とあの人が組むなどの特定がまだ出来ていない為。運営本部からの連単式の賭けのテンプレートの発表は未定ですが、皆様の勘を信じて賭けてみる事も可能です。それでは今回のトトカルチョの新規参加者の連絡を致します。それでは今後も皆様の多数の参加を期待しております
新規トトカルチョ参加者
シルフェニア・ド・ブラドー 倍率7.8
あの始祖の吸血鬼ブラドーの娘。双子の兄であるピートと違い、吸血鬼としての面が強く。若干吸血鬼としての弱点が残っている。自分の父を助けてくれた横島さんに若干の好意を持っていると思われる。性格は押しがかなり強いようだ。但し今の段階では判断が難しいので倍率はかなり高めとなっている。今後の活躍に期待が持てる
アリス 倍率6.5倍
最近魔界で有名になりつつある死霊の少女。ベリアルとネビロスに育てられている少女、非常に純粋で無邪気な性格をしており、ゾンビとなった犬や猫を友達として大事に育てている。横島をアリスの初めての生きたお友達と呼んでとても気に入っている。だが魔界の諸君は知っているとおもうが、ベリアルは最近駄目魔神となってきているのがアリス嬢の所為であり、かなり駄目な親馬鹿となっている為アリス嬢の恋路はとても厳しいと思われる、あと横島さんよりも外見が幼い為。更に厳しいと予測されているが、横島が子供に優しい為この不利を弾き飛ばせる可能性もある為、倍率はやや低め
神宮寺くえす 倍率124.9倍
これも魔族の方々ならば名前を知っている方が居られるかも知れないですね。今人間の中で最も魔術や魔法を扱う技量が魔族に近い魔女。ただしその反面魔力により精神異常が見られ非常に凶暴な性格をしているのですが、何故か横島さんには優しさを見せている為今回特別に参加者としてエントリーしましたが、倍率を見るとおり現在彼女が勝つ可能性は0であり、今後の横島さんの動きに期待が持てると言う所でしょう。勝負師の方は掛けて見るといいかもしれませんが、倍率が変動する可能性もあるためご注意ください
今回の新規参加者はこの3名です。では今後の動向をお楽しみに 最高指導者きーやん&さっちゃんより
~神界~
竜神王の宮殿
最高指導者達から回されてきた新規のトトカルチョの参加者を見ながらお茶を口にする
「連単式か……うーむ。これはまだ手を出すか悩む所だな」
連単と言う事で複数の人の組み合わせが出来るのはかなりの利点があると言えるが……これと言う組み合わせが発表されて無い以上手を出すのは中々厳しいものがある……もし今強いて賭けるとすれば
「小竜姫とシズクの組み合わせか……」
とは言え、今の段階では小竜姫とシズクはそれほど仲が良いとは言えんしな……
「まだ今は見送るとするか……」
新システムが導入されたからと言って、直ぐに使う必要も無いからな……
「追加で賭ける必要も無いだろう」
私が賭けているのは同じ竜族のよしみと言う事と、芦蛍の悲恋を知っているからで、別に金を増やそうという意図はないのだから……
「さてと……では書類整理をするか」
机の上に山となっている書類に手を伸ばし、私は思わずまたかと呟いた
【シズク様が戻ってくるように説得してください】
【我らの指導者を!】
【どうかよろしくお願いします!】
ミズチからの嘆願書の数々。出来ればなんとかしてやりたいとは思うが……これは無理な話だ。今のシズクは横島少年の傍にいることを望んでいる。それを無理に引き離せばどうなるか判らない、それこそ私の身も危ないので
【却下。どうしてもと言うのなら自分達で交渉に向かうが良い】
返答文を書いて送り返す。そもそもシズクはミズチの中では今最も霊格が高い存在ではあるが、別に仲間意識が強いと言う訳でもなく、むしろそうやって祭り上げられることを嫌っている。だからこそ私に説得を頼んでいるのだろう
(そんなに自分達を纏めて欲しいと言うのなら自分達で交渉に行くのが筋と言うものだ)
大方私の言うことなら聞いてくれるだろうとか思っているんだろうが、シズクは私の言うことも録に聞いてくれた事が無い
のだから
「さてと……次はっと……」
ミズチ達の嘆願書の枚数がとんでもない物で、書類の大半がそれだった。それを全て処分してから次の書類を見つめる
「ふむぅ?これは中々気になる件だな」
次の書類は天界のブラックリストに載っている竜神族2人に関する書類だった
「メドーサか……彼女には悪い事をしてしまった……」
メドーサはかなり前に天界の要人暗殺の首謀者として指名手配となっているが、それが実は冤罪だったのではないか?と言う話が最近出てきている。証拠も多数出ており、その件については正式に冤罪が確定しそうなのだ。それについて反対意見を出している竜神族からの嘆願書
(馬鹿馬鹿しい、誰がお前らの意見を聞くものか)
その嘆願書を破り捨てる。あの一族がメドーサを嵌めたのは判っている、メドーサがもしも冤罪になれば自分達の罪が全て明かされることを恐れての行動だろうが、もう遅い。既にヒャクメが動いているので近いうちに証拠が見つかるだろう。冤罪事件に対してはだが
「……その後が……な」
堕天させられたことに対する復讐としてテロ等に関わっていてブラックリストに載ってしまった。そしてそのメドーサの神界追放を決めたのが私なのでそれに対する責任を感じてしまう
「なんとか出来ればいいが……」
今の段階では私には何も出来ない。メドーサが改心し、出頭してきてくれることを願うしかない。書類にメドーサに対する対応の指示を書く
【交渉する余地がある場合戦闘行為に突入することを禁ずる。また本人に自首する気があるのならその気持ちを考慮せよ】
そしてブラックリストではなく、警戒者リストへとメドーサの名前を移動させる。最近は犯罪行為に手を出してないことを考慮して、本人に自首の考えがあるかもしれないと考えたからだ。甘い考えと言うのは判っているが、最近魔族の動きが活発な事を考えると、下手に刺激して敵を増やすような真似をしたくないからだ
「もう1人は……」
書類を見て眉を顰める。その書類には現在保護観察中の竜族に対する監視役の報告が纏められていた
「極めて従順で大人しく、暇な時は裁縫をして時間を潰すなど非常に大人しい性格をしており……か」
あの竜族は確かに大人しいのだ、そして性格も穏やかだ。だがとある切っ掛けで竜族の中でも有数の気性の荒さを見せる
【警戒を怠らず、しっかりと監視をしておくこと、間違っても牢の外に出したりするな】
監視役の報告書を途中で読むのを止め、対応を書き牢獄へと送り返し、残りの書類に処理を始めるのだった……最近はぶっちゃんがきーやんを監視してくれているから書類がスムーズに処理されるから楽だなあと思いつつ、ぶっちゃんはかなり厳しいのでキーやんがどんな扱いを受けているのかを想像し、心の中でご愁傷様と手を合わし、地上の竜族との会談に向けての書類を纏め始めるのだった……
~魔界~
神界が今回は魔族に近い存在が多くトトカルチョに追加されたということもあり、あまり大きな動きがなかったのだが、それに対して魔界側は凄まじいまでの大騒ぎになっていた……それは顔見知りの娘だからや、同じ吸血鬼だからとかと言った理由からだ……それでは今回の魔界側の動きを見てみよう……
恋愛の魔神
今回のトトカルチョの発表があってから、俺の宮殿に突っ込んでくる馬鹿野郎が増えやがった。
「「「ビュレト!トトカルチョで「黙れ!とっとと帰りやがれ!」ふぎゃあああッ!!!」
凄まじい勢いで突進してくる知り合いの魔神や悪魔共を手にした剣から放った魔力刃で纏めて吹き飛ばす
「ふん!くだらねえ。大体だな……恋愛っつうのはもっと神聖でだな。賭けとかにするようなもんじゃねえんだよ」
サタンのクソ野郎が魔界を総べ始めてから、俺は無理に魔界の軍勢を率いることも無く、自由に暮らす事が出来ているのはいいんだが、たまにこうしてトンでもねぇ事を始めやがる。その所為でこうも馬鹿どもが集まってくるのは面白くねえ
(あいつらもどっか行っちまったしなぁ)
まだ魔界が統一される前、俺と一緒に魔界を荒らしまわっていた仲間の魔神2人はどっかに行っちまった……まだ1人同じく俺と同じで魔界の宮殿で楽隠居するって事を選んだ奴はいるがそいつも滅多に遊びに来ねぇしな……
(たっく……何してるんだが、あいつらは……)
馬鹿共が押し寄せてくる所為で昔の事を思い出しちまった。執事に酒を持ってくるように指示を出し
「これが良くねぇ。なんだ誰と誰がくっつくトトカルチョだぁ?恋愛をなんだと思ってやがる」
恋愛っつうのはもっと神聖で誰も邪魔をしたり、介入していいもんじゃねぇ。その当人同士が頑張るもんだ……
「ったく、大体人間と神魔族って……どういうつなが……んなあ!?」
暇つぶしのつもりでトトカルチョの一覧を見て思わず噴出す
「おいおい……なんの冗談だよ……アリスってあれじゃねえか、ベリアルの馬鹿野郎の娘じゃねえかよ」
前に私の娘だ!とか行って連れて来た金髪のガキが居たな。俺の馬をくれとか言って騒いでたっけなあ……しかもベリアルの野郎も持って行こうとするから思わず魔界の炎を打ち込んじまった……まぁあいつも炎の扱いには長けてるから大したダメージは無かったがな……
(大事に育ててるのかねぇ?)
俺の愛馬は当然俺しかその背中に乗せねぇ。だから生まれたばかりの子馬をやったんだが、大事に育ててるのかが気になる
(今度行って見るかあ)
こうして宮殿で楽隠居しているのも飽きたし、偶には顔を出しに行くか。確かネビロスの野郎と一緒にいるらしいしな
(なんか土産でも持ってくかな)
顔を出すって言うのに土産の何もないっつうのは礼儀に反するよなあ。俺が頬をかいていると
「ビュレト様。お待たせいたしました」
「おう。ご苦労」
執事として雇っている魔族がワインを運んでくる。トトカルチョの一覧を見ながら、グラスを手にワインを口に含む
「む?これは普段俺が飲んでいる物じゃ無いな?」
俺が飲んでいるワインよりも大分甘口だ。それに果実の香りが強い
「も、申し訳ありません!先日いい物を見つけた物で!直ぐにお取替え致します」
青い顔をしている魔族の青年。どうやら勘違いしているようだな
「いや、構わん。これは良い物だ、どうも貴様は随分と酒に詳しいようだ。今後俺のワインの買い込みはお前に任せよう」
「は、はい!ありがたき幸せ」
深く頭を下げる執事。俺は確かに魔王と呼ばれる存在ではあるが、既に楽隠居している身だ。そこまで恐れ敬う必要は無いのだがな
「これに合うつまみを持ってこい。何かあるのだろう?」
「は、はい!お任せください!」
そう叫んで俺の部屋を出て行く執事の背中を見ながらトトカルチョを見る。神族に魔族に人間に巫女……なんとまぁ随分と節操がないな
「ん?神宮寺?」
一覧の一番下に書いてあった名前に目が止まる。神宮寺?どっかで聞いたような……
「あーどこだった?つうか何時だ?あー思い出せん」
どっかで聞いたような……どこだったかなあ?と俺は首を傾げながらワインを口へ含む。もう少しで思い出せそうなんだが、そのもう少しが思い出せん
「まぁそのうち思い出すだろうよ。それよりも今やらねえと行けねえのは……」
机の上に乱雑に撒き散らしてある書類に手を伸ばす。それに記されているのは最近アスモデウスとガープを見かけた魔族や神族の目撃情報だ。今あいつらが何をしようとしているのか?それは俺は知らない、そもそも俺自身過激派魔族として行動しているアスモデウスとガープにあわなかったか?と魔界正規軍に聞かれて初めてあいつらが今過激派として行動しているのを知ったくらいだ
「何をする気か知らねえが……止めさせて貰うぜ」
今の世界はこれで良いんだ。神も魔族も争いをせずに平和を求める。騒乱の時代は終わったんだ……だから再び争いを起こそうと言うのなら、俺が止める。それがかつてデタントが成立した時に、真っ先に剣を置き宮殿に戻った俺が償わなければならない罪。最後まで神との停戦に反対していたアスモデウスとガープも、時が来れば落ち着くだろうと思い込んだ俺の浅はかな行動の結果だ。それがあの2人を過激派に身を落としてまで、まだ戦うことを選ばせてしまった……
「止めてやるよ。お前らは……俺のダチだからな」
まだ魔界がサタンの馬鹿野郎に治められる前、俺達は最後までデタントに反対すると誓ってサタンの軍勢と戦った。その誓いを裏切って俺はデタントを認めた。ベリアルは怪我で宮殿に戻り、休養中にデタントが成立したので仕方なく剣を置いた。だが自分の意志で剣を置いた俺はあの2人からすれば裏切り者だ。だから……だからこそ俺が止める。2人がああなってしまったのはきっと俺の責任なのだから……
魔界正規軍指令は不安です
魔界の中でも取り分け力のある魔神が住むエリアの中でも取り分け目立つ宮殿。魔界正規軍指令「オーディン」の居城だ
本来は神に属するオーディンだが、娘と息子が魔界正規軍に入ると言う事で、デタント促進の為神界から魔界へと居を移したのだ。そしてそんなオーディンの城では
「うおおおおお!聞いてくれえ!アリスが!アリスがああああ」
「ああ。聞いてる、聞いているから少し離れろベリアル」
この世の終わりだと言わんばかりの顔をして私を訪ねてきたベリアル。私の酒蔵から黄金の蜂蜜酒を持って来て煽り続けている
(とんだ駄目親父だな。こいつは)
ベリアルが荒れているのは自分の娘がきーやんとさっちゃんが進めている、横島と言う人間の男に対する恋愛トトカルチョに名前が記されたのが原因だ
「何度も言うが、喜ぶべきなのだぞ?ベリアル」
「何故だぁ!何故喜べる!?娘!私のアリスゥがぁ!」
頭が痛くなってきた。早くネビロスに迎えに来て貰いたい物だな。先ほど連絡したからもう少し出来てくれるとは思うのだが……まぁとりあえずベリアルの説得を進めるか
「いいか?娘と言う物はだな、いずれ手元から離れ、自分の愛する者を見つけ次代へと命を繋ぐのだ。判るか?」
娘が可愛いのは判るが、いつまでも子供。しかも女の子は自分のそばには居てくれないのだぞ?と言うとベリアルは一気にグラスの中の蜂蜜酒を煽り
「アリスにはまだ早い!」
この駄目親をなんとかしてくれ、私にどうしろと言うのだ……偶に酒を飲む仲だが、話を聞かないで愚痴り続けるので正直疲れた……いつの間にか空になっていたグラスに追加の酒を注ごうとして
「どうぞ、お父様」
脇から差し出された瓶と娘の声。ベリアルの話を聞いていて、帰って来たのに気付かなかったようだ
「ん?すまないな、ブリュンヒルデ」
長い銀髪とそれに映える黒いドレスを着込んだブリュンヒルデがグラスに酒を注いでくれる。こうして娘に酒を注いでもらうのもまた良い物だ
「また荒れておられるのですか?ベリアル様」
「んおう!ブリュンヒルデかあ」
酔っているベリアルに丁寧な口調で問い掛けるブリュンヒルデ。長女と言う事で厳しく躾けたが、今見るとどこに出しても恥ずかしくない淑女として育ってくれたとおもう
(あれは気にしない事にしよう)
広間の入り口の近くに立てかけているブリュンヒルデ愛用の大型の槍に鮮血がついているのは見間違いだと思いたい。そもそも今日はパーテイに出かけたのだから、あんなものを使う必要はなかったはずなのだから
「私はアリスがとても大切なのだ」
「判りますわ、アリスちゃんはとても可愛らしいですから」
酔っているベリアルの話を聞いているブリュンヒルデ。私だと感情的になってしまうから、ブリュンヒルデが適任……
「お前は好きな相手はいたり「……困ってしまいますわ」へがあっ!?」
手にしていた大瓶でベリアルの頭をごすごすと強打しながら困ってしまいますわと繰り返し呟いている、見ているこっちがよっぽど困ると言いたい。瓶が砕けてざくざくと頭をえぐっているのが見える。かなりスプラッタな光景だ
「すまない、うちの馬鹿が迷惑をかけた」
そしてネビロスが迎えに来たことで鮮血まみれのベリアルは引きずられながら去って行った。出来れば今日の記憶は忘れて貰いたい者だな……
「それで今日のパーテイはどうだった?」
「はい、とても楽しい物でしたが、いきなり手を握って、ドレスの中に手を入れようとした馬鹿な貴族を思わず槍でぶすりと……」
……ワルキューレを見張りにつけるべきだったな。御淑やかなのだが、突然暴力的なことをすることもあるから警戒するべきだった。だがまぁセクハラをしたのだから自業自得と諦めてもらおう
「あら?お父様これは?」
机の上のトトカルチョの紙を見つけたブリュンヒルデはそれを見て
「あら?あらあら……横島忠夫……ですか?」
名前を見て雰囲気ががらりと変わる、これは不味い事になったか?
「この英雄。私が見てきても構いませんか?」
始まった……ブリュンヒルデは英雄を好む、英雄の定義は難しいが気高い魂を持つ者や、強い者を好むと言える。
「それは駄目だ」
料理に始まり、武芸にも秀でたブリュンヒルデの悪い癖だ。英雄を好み、そして英雄を育てることを好む。もしここで良いと言えば、今にでも人間界に行って横島を自分好みの英雄の育てようとするだろう。それはとてもではないが、許可出来る事ではない。それに以前ジークを徹底的に鍛えて、英雄にしようとして廃人寸前まで追い込んだと前科がある。とてもではないが人間では耐え切れないと思いそう言うと
「何故でしょうか?」
首を傾げながら尋ねてくるブリュンヒルデ。穏やかな表情をしているが、その表情から納得行ってないと言うのが良く判る。私は溜息を吐きながら
「ワルキューレが想いを寄せている相手だからだ」
私は知っている、娘のワルキューレが逆行の記憶を持ち、再会出来る時を楽しみにしていることを……だから会いに行くことは許可できないと言うと
「そうですか……残念です。名前から感じたのですが、英雄の気配を」
どんな気配だ……と言いたくなったが、下手に言うとブリュンヒルデの価値観を聞く事になるので尋ねない事にした。
「ではお父様。失礼致します」
愛用のミスリルの槍を手に広間を出て行くブリュンヒルデ。今は納得してくれたようだが、今後どうなるのか判らない
「とりあえずジークに頼んでおくか」
それとなくブリュンヒルデを警戒してくれと息子に頼む事にし、ふとトトカルチョを見る、ワルキューレの下にうっすらと文字が浮かんでくる
【ブリュンヒルデ 参戦予定?】
「大変なことになるから止めろ!」
ブリュンヒルデまでトトカルチョに参加することになったら、間違いなく大変なことになる。どうかブリュンヒルデと横島忠夫が遭遇することがありませんようにと私は心の底から祈るのだった……
最高指導者の不安
最近横島さんのトトカルチョに参加する人物がかなり増えて来ている。それに伴ってから参加している神族・魔族からのたくさんの嘆願書が私ときーやんの元に届いていた。1人に賭けるシステムはそのままで、2人や3人が纏めて横島さんと結ばれることに対しても賭けさせて欲しいという物だ
「これは正直予想外やったな」
机の上ノ山の上の嘆願書を見て呟くさっちゃん。だけどこれにしては私としては当たり前の結果と言える。なんせ賭けの対象がかなり増えていますからね。しかし私が気にしているのはそこではないのですよ。むしろ連単システムの導入は賛成だ、それがあればもっと賭けの幅が広がりますからね。だからこそ導入を即了承した。だけど今回さっちゃんを呼んだのはそれが理由ではない
「おかしいと思いませんか?さっちゃん。この世界は逆行前の世界を複製して逆行した。それなのにこんなにもイレギュラーが多い」
あの世界と同じ歴史を歩むはずだったのに蓋を開けてみれば、この有様。これは明らかにおかしい
「そやなあ……それに過激派も全然減らないしなぁ」
私とさっちゃんの知っている過激派魔族・神族はほぼ監視下に置いた筈なのに、どこも代わっているとは言えない
「なにか起きているのかもしれんな、元の世界に」
私と同じ結論を出したさっちゃん。ここまで世界が乱れると言う事は逆行前の世界、もしくは宇宙卵になんらかの異常が起きているのかもしれない
「とはいえ調べる方法も無い。こればっかりはどうしようもないで?」
すでにこの世界はあの世界とは別の世界になっている。つまり今のこの段階ではもう調べようが無い
「また後手に回るしかないのですかね」
アシュタロスが味方だから神魔大戦は起きないと思っていた。だけどそうではないようだ……だがなんとしてもあの神魔大戦の悲劇だけは避けなければならない
「さっちゃんの方も気をつけてくださいね」
「わーってる。きいつけるわ」
可能性としては魔界の魔神が関わっている可能性が高い。まずは何としても過激派の先導者を見つけることだ。お互いに筒状の職務だけではなく、この世界の異変の原因を調べる打ち合わせをし、お互いの世界へと戻ることにしたのだった……
リポート14 ちょっぴり危険な恋する龍神様♪ その1
今回の話は伏線大目でした。何故こんなにもイレギュラーが起きているのか?その理由がどんなものなのか?を楽しみにしていてください。それとオーディンの娘のブリュンヒルデは「Fate」のブリュンヒルデで行こうと思っています。伽羅として面白いのが多いので、これからもしかすると少しだけ「Fate」のキャラが出るかもしれないと思っていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします