プロローグ その4
メドーサと共に妙神山に入ろうとしたんだけど、鬼門とやらがテストだなんだのと騒ぐので
「腕が~ぼきんとなる~♪」
お望み通り鬼門と組み手をしてあげることにした(断じて八つ当たりなのではない)
「「ッギャアアアアアッ!!!」」
サイキックソーサーで先制。制服の下のロープで足を縛り関節技を一通り決めて戦闘不能に追い込んでおいた。今の私の邪魔をする存在する手加減なんて存在しない。とりあえずあの巨体の手足を全部明後日の方向にへし折っていると
「なんかあんた随分性格変わってない?」
メドーサの問い掛けに私は鬼門の左足の関節をしっかりスピニングトゥホールドに極めながら
「美神さんがッ!覚えておけって!!」
私自身の霊力は高いが、身体能力は若干低い……だからこそ覚えておけといわれていた戦闘技術がこうして生きている。あと美神式交渉術(脅し)のスキルも充分に高い
「ギブッ!!ギブうううううッ!!!」
「左の!?見捨てるのか!?」
左のほうはギブアップしたので、右はそうはさせまいとキャメルクラッチに切り替え、タップも出来ないように手を足で抑えてしっかりと背骨を極めていると
「蛍!?いやだけどこの気配は……」
門から顔を見せた緑色の髪の少女。一瞬誰?と思ったが直ぐに判ったパピリオだ
「パピリオ。つもる話はあるけど少しまってて、こいつの頚椎へし折るから」
主に美神さんに対する怒りとかその他もろもろの知ってしまった現実を忘れるためには、知ってしまったことによるストレスを発散するしかないのだ。と言うわけで締め上げる手に力をこめる
「ツギャアアアアアア!!!」
「ま、まつでちゅ!ルシオラちゃん!ルシオラちゃんなんでちゅよね!?うわあああああんっ!!!」
泣きながら走ってきたパピリオの突撃で私は鬼門の上から投げ出され、地面で強かに背中を打ち付けたが
「ルシオラちゃんなんでちゅよね!?記憶が戻ったんでちゅね!?」
号泣しているパピリオを抱きしめながら立ち上がる。私と同じくらいの背丈なのが胸は2サイズは大きい、それに若干切ないものを感じながらも漸く再会できた妹を抱きしめる
「これは一体何の騒ぎなのですか?」
門から顔を出して困惑している小竜姉……っじゃなくて、小竜姫を見ながら立ち上がると
「蛍……いや……ルシオラさんですか!?どうして」
困惑している小竜姫に私は笑みを浮かべながら
「あのさ、最高指導者に会わせてくれないかしら?こんな認めたくない結末をぶっ壊してやり直してやるのよ!!!」
握り拳を作りながら叫ぶと小竜姫は一瞬驚いた顔をしてから
「説得できるのですか?私は無理だったんですよ?」
「やり遂げて見せるわ、私を信じて」
互いに目の前の存在は敵だと判っている。そしてついでに言えば
「メドーサ。手伝ってくれるよね?」
「な、なんであたしが!もう報告も終わったし帰るよ!」
そう言って出て行こうとするメドーサの背中に小さく
「擬態・夜・窓の外」
びっくう!?っと肩を竦めるメドーサ、度々横島の部屋を見ている白い蛇を見た。それは間違いなくメドーサだ……蛍の時はめずらしいへびがいるていどにおもってたけどね……今は判る。部屋の中を観察していたのだと、時折部屋の中に入って行くのも見たしね……
「暴露して欲しい?」
「しょうがないね!手伝ってやるよ!」
そう言って建物の中に入って行くメドーサを見ながら、私は泣きじゃくっているパピリオを抱っこし小竜姫と共に最高指導者を説得する。情報を集め始めたのだった
小竜姫・ワルキューレの連盟でどうしても会って欲しい人間がいるというんでわしときーやんが時間を空けて待っていると
「お初にお目にかかります、最高指導者さん」
にっこりと笑う少女を見てわしときーやんは困惑した。目の前にいるのはよこっちと美神の娘である筈の「横島蛍」なんやけど……
「もしかしてルシオラさんですか?」
「はい。外見年齢が元に戻ったので記憶も取り戻しました」
にっこりと笑っているのだが、不思議とわしの背筋に寒気が走った。信じられないほどの瘴気やな
「実はですね。時間移動の許可をいただきたくてですね」
その言葉にわしときーやんは首を振りながら
「流石にそれは許可できへんなあ」
「ええ。歴史改変はとても危険なのですよ」
わしときーやんがそう言うと蛍。いやルシオラはにっこりと笑いながら
「アシュ様の南極の基地・宇宙卵・トトカルチョ」
淡々と語られた言葉にわしときーやんの顔が引き攣る。この娘……何を知ってるんや
「……なんのことかわかりませんね。それよりも時間移動の許可は「トトカルチョ失敗して大損したんですよね?」
その言葉にきーやんの顔が凍る。本当はよこっちとその周囲の人間で誰がよこっちとくっつくか!?でトトカルチョをやる予定だったのに、それは実行する前に終わってしまった
「もしそれを再開できるとしたらどうですか?私がしっかりと考え直したのです。宇宙卵を使えば実行可能ですよ」
その言葉に若干心が躍ったが、わしときーやんは最高指導者。私情で決まりを変える訳……
「詳しく聞きましょう。ルシオラさん」
「ちょっちまちい!?」
まさかのきーやんがわしより先にGOサイン。きーやんは神族の最高指導者の癖に何を言ってるんやと思ったものの
「もうええわ!わしも聞く!聞かせてくれや!」
とりあえず聞くだけ聞いてみてからやと思い尋ねる。ルシオラはわしときーやんに何かの書類を手渡してくる
【横島忠夫 トトカルチョ】
と銘打たれた書類の1番最初のページを見る。最初の失敗は文珠が原因と書かれていた
「時間逆行は確かに危険です。しかしアシュ様の南極の基地と宇宙卵を使えば出来ることはあります」
次のページに書かれていた宇宙卵を使う。時間逆行ではなく、殆ど同じ世界を宇宙卵の中に作ることで可能性世界をつくり、そしてその世界を進ませ、元の世界であるわしらが今存在しているこの世界の時間を逆行させる……
「平行世界を作るわけですね?」
宇宙卵はそれ1つが別の世界になるとも言える神秘の存在。平行世界を作ることも充分に可能な神秘や。アシュタロスの基地から数個回収しておいたけど、まさかそれを知ってるとは思わへんよな……逆に言えばそれを調べきる事ができるほど本気と言う事だ
「はい。この世界は既に存在しているので、いま逆行させても大丈夫になるというわけです」
同じ世界は2つ存在できへん。片方を逆行させるのなら確かにそれならば宇宙意思も回避できるかもしれへんけど……
「アシュ様には別の仕事をしてもらい。その功績で魂の牢獄からの解放を認めて欲しいのです」
「そりゃあかんわ。平行世界といえどその縛りはそう簡単に蔑ろに出来ん」
この世界をベースと言う事はデタントの事も関係している。アシュタロスを牢獄から……
「抑えきれてない過激派による強襲10回・時空内服消滅液を転移で飛ばすこと7回・神魔結界で世界からの追放17回。これを全部美神さん達に言えばどうなるんですかね?」
「「すいませんでした」」
あかん!完全にわしらの後手に回ってしまった事件も調べとる!?よこっちを愛している妖怪・神族・魔族にこのことをしられたら命が無い。あの連中ならそれくらいやりかねん。それを知っているからこそ、わしときーやんはギブアップした。ヒャクメが見ていて知られたら本当に危険やからな……
「その過激派神族・魔族をおびき出すためにアシュ様にはこの世界と同じように動いてもらいます。だけど最高指導者の命で動いて貰います、その報酬に牢獄からの解放。その後はトトカルチョの胴元をしてもらう……これが私のプランですが?」
書類には本当に様々な条件をクリアすることが出来るように何重にも何重にも策を練っているのが判る……
「で、この逆行者の記憶封印ってどういうこっちゃ?自分だけ回避してるみたいやけど?」
わしが気になったのはそれだ。平行世界を作り上げ、この世界を逆行させるのはいいやろ、だけどしれっと記憶封印者の欄にルシオラの名前が無いことが気になるそう尋ねると
「ここまで完璧に考えたんですよ?それくらいのご褒美は良いじゃないですか」
しれっと言い切ったルシオラ。しかも記憶が戻る確率はよこっちを想う気持ちが強ければ強いほど。もしかすると戻らない可能性もある。そうすれば自分が有利になると判っているのだろう。確かにそれくらいはしても良いおもうやろ、それにあの悲恋を考えるとそれくらいのサービスはしても良いはずだ
「あっははは!良いでしょう、ルシオラさん。その願い聞き届けますとも」
きーやんが大笑いしながら告げる。確かにここまでされてたらわしらも動かないわけには行かない
「ではすぐに準備に入ります。アシュ様に渡す手紙を忘れないでくださいよ」
そう笑って消えていくルシオラを見ながらわしは
「あそこまで一途やとこじれるよなあ?」
「こじれるでしょうねえ」
病みと言う状態になりかねない。そうなればとっても面白いことになるだろう
「もしかすると小竜姫とかも?」
「いやいやメドーサやろ?」
よこっちの周りの人間がどんどん病んでいく。そう考えると笑みが零れてくる、これは面白いことになる。そう判断したわしときーやんは早速ルシオラの持ってきた資料を基に平行世界を作る準備を始めたのだった……
蛍に呼び出されてきた妙神山に来て私は驚いた。蛍なのだが、その感じは違う。そうルシオラの気配と同じなのだ
「お母さん。いや美神さんと呼びますね」
「ええ、それで構わないわよ」
最近家に帰ってこないと思えば。記憶を取り戻していたのね、帰ってこないわけだ。横島君は家出とか騒いで必死に探してるみたいだったけどね
「さてこれで全員集まりました。今から話すことは多分忘れますが、ちゃんと聞いてくださいね」
蛍。いやルシオラは淡々とした声でそう告げる。周囲を見るとメドーサや見たことの無い魔族に加えて、姿が見えなくなっていたおキヌちゃんの姿があった
「では単純明快にいいます。今から記憶を封印して全員逆行します」
「「「はあ!?」」」
予想外の言葉に私達全員が驚く。逆行は最高指導者に禁止されているはずなのに何を言っているのだろうか
「私は文珠を使いお父さんと結婚し、私を生んだ美神さんを認めません。いやむしろ全員がそう思っているはずです」
「はっ!?」
さすような視線に身体を小さくする。良く見ると小竜姫やワルキューレも鋭い視線を向けている。とんでもない針の筵だ……と言うか知らなかったけど、小竜姫も横島君の事好きだったのね、その目は明らかに敵を見る目をしていて、とても居心地が悪い
「最高指導者の許可は得ています。宇宙の卵を使いこの世界をコピーして、この世界の時間を巻戻します。いやとかはないです。もう機械は動いてますからね」
とんでもない霊力が部屋の奥から解放されていることに気づいていたが、まさか時間逆行の機械とは思ってなかった。そして
「シロ!?」
「ってタマモちゃん!?」
皆の驚く声が聞こえたと思った瞬間には小竜姫やヒャクメ。それにシロにタマモにオキヌちゃんと次々を消えていく、そして残ったのは私とルシオラ
「美神さん。今度は貴女の思うとおりに「いや、ありがとう。凄く嬉しいわ」
呆然としているルシオラを見ていると手がうっすらと消え始める。何度も願っていたやり直す機会が手に入ったのだ。嬉しくないわけが無い
「私自身もあんな方法は嫌だったのよ。もしかしたら今度は結ばれないかもしれない、ずっと意地を張り続けるかもしれない。だけどこうしてやり直せる機会が来たんだもの。凄く嬉しいわ」
私はそう言うと同時にこの世界の時間軸から姿を消した。自分に掛かる鎖のような重圧を感じながらも、もう1度やり直せることに歓喜し、直ぐに何に喜んでいるのかも判らなくなったが。不思議なほどこころは安らかなのだった
「やっぱり納得してなかったか」
消えていった美神さんを見送りながら小さく呟く。私だけは記憶を残した逆行だ。他の人間よりも時間が掛かったが、漸く私の逆行が始まった。薄れていく景色、なくなっていく手足の感覚を感じながら私はにっこりと笑いながら大きく息を吸い込み
「私は!今度こそ!絶対に!文句なしの幸福を掴んでやるんだからぁッ!!!!」
今まで出した事の無い大声で力強く叫び、私の魂がどこかに引っ張られていく感覚と共に意識を失ったのだった……
GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!始まるよ!!
リポート1 もう1度始めよう その1に続く
長いプロローグでしたが。これにてシリアスフェイズは本当に終わりです。ここからは私の世界観で「GS美神」を書いていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします