GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回もやはり前回に引き続きシリアスになります。本編に入ればギャグテイストで勧めれるので、それまではシリアスで行きます。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



その3

プロローグ3

 

夜景を見ることの出来るホテルで久しぶりに親子水入らずの食事をしていると令子が

 

「ママ。蛍も生まれて15年ね」

 

「そうね。可愛い初孫よ」

 

横島君と令子の娘は、多数の神族・魔族の予言通り。魔神大戦の時に死んだ「ルシオラ」さんの転生体であるのは間違いないのだが、記憶を取り戻す様子もなく横島蛍として幸せに暮らしている。

 

「どうしたの?何か気にしてる様子だけど?」

 

生まれた当時は横島君が蛍をルシオラとしてみてしまいギクシャクしていたのを、注意した令子がなんかもごもごと言いにくそうにしている。もう35になると言うのに、まだ言い難いことは話したくないのね……苦笑しながらワインに手を伸ばそうとして

 

「……私さ、横島君が如何しても欲しくて、文珠を飲み込ませて無理やり子供作って結婚したのよ」

 

「令子!?」

 

自分の娘の予想外の言葉に絶句してしまう。確かに横島君と令子の結婚は急な話だったけど、まさかそんなことをしていたなんて思っても無かったのだ。令子はアルコールが回ってるのかすらすらと自分のしたことを話す、何でも7年かそこら前に横島君には謝っているらしいけど……

 

「んで。横島君の記憶は文珠で少し弄って「令子!貴女は何をしたか判ってるの!」

 

思わずそう怒鳴る。ここがVIPルームでよかったと安堵する。私も令子もGS業界では顔が知られすぎている。そして横島君は私達以上の有名人だ。まさか美神令子が文珠で横島忠夫の気持ちを操作した。こんなのとてもではないが人に話せる内容ではない

 

「判ってる!判ってるけど!横島君は私を見てくれなかったし、この手段しかなかったのよ!神界にも魔界にも行かせたくなかったんだから!」

 

その言葉にはっとなる。横島君は人間界で唯一の「文珠」を作れる人間にして、その魂の半分には「魔族の因士」がある。彼さえ望めばどちらの陣営にも慣れるだけの活躍をしていた。そして当時では「小竜姫」と「ワルキューレ」の2名の神族と魔族との婚約を望む声があった。それに令子は焦ってしまったという事だろう……とはいえ

 

(自分でも悪いことをしたって思ってるのね)

 

成長してルシオラさんに似てきた娘を見て、罪悪感を感じているのだろう……とは言えこればっかりは私でもどうしようもない

 

「ママ。もし来世……ううん。やり直せるなら……私はこんな結末は嫌。ずるして、卑怯な事をして横島君を手にしたけど、嬉しくない……」

 

ぼそぼそと呟く令子。結婚したときは良かったとしても、色々考える事があった結果だろう……だけどやり直すことなんて出来はしない。美神の一族は「時間移動」の能力を持つが、それは神族・魔族両名の最高指導者に禁止され、今は私も令子も雷を受けても霊力には変換できたとしても時間移動は出来ない。だからこそこうして悩んでいるのだろう。アルコールが回ってしまって眠りに落ちた令子の髪をなでながら

 

(横島君。貴方は今何を思っているのかしらね)

 

私はそれだけが不安だった。確かに横島君と令子が結婚してくれたのは嬉しいし孫の存在も含めて幸せだった。だけどこれから横島君がどんな選択をするのか?蛍がルシオラさんと同じ背格好になったとき彼がそのまま令子を愛してくれているのか?それがどうしても不安だった。私は酔いつぶれた令子を見て

 

(上手く収まると良いんだけど……)

 

このまま令子と横島君が一緒にいてくれる事を願いながら鞄から携帯を取り出して、横島君の携帯に連絡を入れるのだった……

 

 

 

 

 

美神君が美智恵君と食事に行ってしまったと言うことで横島君と蛍君が珍しく私の教会に遊びにきていた

 

「唐巣神父。GS協会の会長を辞任してまた神父って本当に良かったんですか?その……お金的に」

 

蛍君を寝かしつけてからそう訪ねて来る横島君。確かにGS協会の会長をしている時はコンスタンスに収入があった……だけど

 

「破門されたとは言え、やはり私は神父なのだよ。協会の会長をやっているよりこっちの方が性に合っているよ」

 

それにGS協会だとやはりお金を貰わないと除霊が出来ない。貧しい人の為に働くならフリーの方が良いんだよと付け加えると

 

「唐巣神父らしいっすねえ」

 

苦笑されてしまったが、仕方ない。今は協会長の職で貯金したお金を切り崩しながら生活している。今は殆ど礼金を貰ってないから昔のままでは直ぐに生活が苦しくなっていただろう

 

「横島君はどうだい?今の生活は苦しくないかな?」

 

世界で唯一のSSSランクのGS。魔神殺しの英雄。そして神族・魔族の両方につながりのある横島君は私よりも多忙な日々を送っているだろうと思いながら尋ねると

 

「……まぁあえて言うなら悩みが1つだけ……相談乗ってくれます?」

 

やっぱりかと小さく心の中で呟く。こうして横島君が来た事で何かあるような気がしていた、私の所に行くよりかは冥子君の所にでも行けばもっと良い食事も出来ただろう。蛍君が六道女学院の優等生でもあるしね……それに冥華さんはなんとしても横島君を六道の人間にしたがっていた。それが無理だと判った今は非人道的なことをやりかねない。遺伝子だけでもとか……もしかしたらそれを恐れこっちに来たのかもしれないね

 

「最近美神さんが蛍によそよそしいんっす」

 

「それは……」

 

さすがの私も返答に悩んだ。横島君と美神君の娘の蛍君は魔神大戦で亡くなった魔族にして、横島君の恋人だったルシオラ君の転生者だ。記憶はさすがに引き継いでないが……

 

「14歳になった今。確かにルシオラ君の面影が出てきているからだね」

 

私の言葉に頷く横島君。子供のときから確かにその片鱗は出ていた、だがこうしてあの時の年齢に近づいてくるに連れてどんどん蛍君はルシオラ君に似てきている。美神君が気にしてしまうのも無理は無いだろう

 

「それに蛍の霊能力も美神さんと全然違いますし」

 

「幻術系とソーサー系かい?」

 

私がそう尋ねるとそうっすと頷く横島君。ルシオラ君が得意としていた幻術系は当然といえば当然だが

 

「ソーサー系とはまた珍しいね。教えてあげたのかい?」

 

「んなことしませんよ、ソーサー系は危険っすから」

 

横島君が即答する。ソーサー系の霊能は簡単に言えばハイリスク・ハイリターンの典型的な例だ。本来自分のみを護る「霊力」を盾の形状に圧縮し、ブーメランのように扱ったり、地面に設置して地雷として使ったりと応用力は高いし、その気になれば誰でも使える霊能だが。その盾以外の霊的防御力がなくなる事それが「サイキックソーサー」系の弱点なのだ。

 

「遺伝的に、もしくは魂のレベルで横島君と同じ様になりたいと思っているのかも知れないね。もしかすると「栄光の手」もそのうちに使えるようになるんじゃないかな?」

 

栄光の手 横島君の代表的な霊能力の1つ。霊力を圧縮し、篭手として扱うだけではなく。霊波刀や鉤爪・ロープなど。イメージ次第では斧や槍の形状にも変化する、万能型の霊能力だ

 

「いやーさすがにそれは無理じゃないですかね?俺の能力って他に使える人間いないじゃないですか?」

 

「血縁関係だからこそ出来るという可能性の話だよ」

 

栄光の手を真似しようとしたGSは山ほどいるが、それをマスター出来た者はいない。霊波刀くらいは出来るが、どんな形にも変化する栄光の手がつかえるのは横島君の特性。霊力の圧縮・形状変化の特性があるから出来ることなのだ。そして横島君と美神君の血を引く蛍君は言うならば霊能力のサラブレッド。普通のGSなら身につけることの出来ない能力を身につける可能性は充分にあるだろう

 

「俺としてはGSなんて仕事はしないで欲しいんですけどね。危ないから」

 

「あはは。それは親としては当然だね」

 

GSといえば華の職業と思われがちだが、その実死亡率が高く危険であり、大成できるのは一部の人間だけだ。普通の親ならば息子や娘がGSになるといえば反対するのが当然と言うものだろう

 

「それで俺はどうすれば良いんですかね?美神さんと蛍の仲が悪いのはどうにも嫌なんですよ」

 

若い時は女好きで馬鹿で有名だったが、彼はその実とても優しい上に、判りにくいフェミニストだ。そして愛妻家であり娘の蛍君も溺愛している。そんな2人が仲違いするような事はしないで欲しいのだろう

 

「私としては時間が解決するとしか言いようがないね。昔の横島君と同じだよ」

 

蛍君が生まれたばかりのときは神界・魔界に行く依頼ばかりを受けていて、家に帰ることのなかった横島君と同じだよと言うと

 

「そ、それは手厳しいっす」

 

苦笑する横島君。横島君の不安も当然だが、それは美神君の覚悟を知らない

 

「美神君だって自分の娘がルシオラ君の転生者になると判って……「美神さん。俺に文珠呑みこませて、んで自分に「妊」「娠」の文珠を使ってたそうなんっす」

 

「なぁ!?」

 

横島君の淡々とした口調で語られた言葉に思わず絶句する。だがそう言われると思い当たる節があるので確かにとも思ってしまう

 

「それで美神さんって意外に子供っぽいじゃないですか?気持ちの整理がつかなくなってしまったんじゃって」

 

「そ、その可能性はあるね。しかし流石にそれは私や横島君じゃ無理だ。美智恵君じゃないと」

 

夫婦であれ、美神君の複雑な心境を全て把握するのは難しい。それが出来るのは母親の美智恵君の者だろう

 

「ですよねー……だから今日2人で出かけて……ん?すいません。電話っす」

 

携帯を手にして立ち上がって二言三言話をした横島君は

 

「すんません、隊長が美神さんを迎えに来て欲しいって言うんで、今日はこれで失礼します」

 

奥の部屋で眠っていた蛍君を抱えて出て行く横島君の背中を見ながら

 

「美神君……それに横島君」

 

あの2人が挙式の際に神父を勤めたのはこの私だ。あの時は2人とも幸せそうに見えたのに、今ああして見える横島君の背中は妙に小さく見える。今彼の中にはかなりの葛藤が繰り広げられているのだろう

 

「どうかあの2人に祝福を」

 

小さくそう呟き十字を切ろうとして、やめた。今の私ではとてもではないが、あの2人を祝福する事はできない。横島君の気持ちを操作してまでも結婚に持ち込んだ美神君がどうしても許容できなかった

 

「はぁ……どうなることやら」

 

自分が祝福した夫婦がもしかしたら離婚するかもしれない。そう思うと溜息を吐かずに入られなかったのだった……なお唐巣は気づかなかったが、その髪がゆっくりと数本抜け落ちているのだった……

 

 

 

「あーまた来ちゃったなあ」

 

高校生になってから何故かお母さんが私を避けているような気がして、お父さんは気のせいだというがどうしても気になる。そしてこうなると私はいつも夕日の見える時間帯に東京タワーに来ていた

 

「誰もいないよね?」

 

周囲に誰もいないことを確認してから幻術を使い、更にお父さんと同じ霊能力のサイキックソーサーを空中に作り出し、それを蹴るようにしてどんどん上へ上へと上っていき

 

「ここだと尚のこと綺麗よね」

 

東京タワーの展望台の上に腰掛け、鉄骨に背中を預ける。何故かこの場所が好きで東京タワーで夕日を見るときは必ずここだ。

もしも、もしもここに横島がいたら驚いただろう。蛍が背中を預けている場所はルシオラが死んだ場所と同じであり、割り切ったとは言え横島が動揺する光景だからだ

 

「あーここで夕日を見ていると本当に落ち着くのよね」

 

なんでか判らないけど、夕日は凄く好きだ。見ていると凄く落ち着く……お母さんが如何して私を避けるのか?それが判るまでここで夕日を見ていようかな?なんて考えていると

 

「えっ!?」

 

急に私の中の霊力が活性化していくのが判る。もしかして霊的成長期♪それならお父さんと同じで栄光の手を使えるようになるかも♪なんて思ったのも束の間

 

「いた!いたたたたたた!!!痛い!全身がちくちく痛いいッ!!!」

 

直ぐに全身に走るちくちくとした痛みに代わり悶絶していると

 

「大丈夫かい!?どうしたって言うんだい!べスパ!べスパッ!!」

 

「姉さん!?大丈夫!しっかりして」

 

空気から浮き出るように現れた2人の女性。オレンジ色の髪に昆虫を思わせる触手を持つ気の強そうな女性で、もう1人は薄紫に蛇を思わせる金の目をした女性

 

(誰?ううん……知ってる!私はこの2人を知っている!)

 

知らないのに知っている。そんな奇妙な感覚と共に全身の走る痛みは既に鈍痛に変わりつつある

 

「どうすりゃいいんだい!?あたしは治癒術は苦手だよ!?」

 

「ヨコシマのところに連れて行くか、妙神山に連れて行けば!」

 

私を見て動揺している2人の声。だがそれとは別にもうひとつの声が聞こえる。私の目にはその2人の後ろにバイザーをつけて、頭に虫の触覚のような物を生やした私の姿が見えていた

 

(なに……これ)

 

知らないのに知ってる記憶がどんどん頭の中に浮かんでは消えていく、その内容の殆どは私と同じ年くらいのGジャンにジーパン。それに紅いバンダナ姿のお父さんばかりだ。懐かしいと感じる間もなく、どんどん記憶は流れて行き、最後には今私が横になっているところで消えていく私の姿……

 

(私は……私は!)

 

私はヨコシマの事が好きで。それで……それで私の名前は!!!全身に走っていた激痛が消え、今までの記憶とは別の記憶が私の中にある。そして目の前の2人のことも思い出した

 

「メドーサ、べスパ。久しぶりね」

 

「「!?!?」」

 

驚いている2人を見ながら服の埃を払っていると

 

「ね、姉さんなのか!?蛍じゃなくて!?」

 

「んー違うとはいえないわね、私は横島蛍でもあるけど……それと同時にルシオラでもあるわ」

 

これは何故か判らないが確信があった。蛍でありルシオラ。そして同じ外見になった事とこの場所に来た事で閉ざされた記憶が開いたのかもしれない

 

「さてと、メドーサ・べスパ。頼みがあるんだけど良いかしら?」

 

今はとりあえずお母さん……じゃなくて、文珠なんて非道な手で横島を自分の物にした美神さんに逆襲しなけば納得行かないし、それに何よりも

 

(この状態で納得できるかあ!)

 

横島と再会できたのは嬉しいが、娘という立ち位置では自分の望む関係になる事は出来ない。法律的にも道徳的にもだ、だがそんな結末は認めない、認めるわけにはいかない!

 

「何をしろって言うんだい?」

 

「そんなに難しい事じゃないわ。私を妙神山に連れてって、それだけで良いわ」

 

「ねえ……ほた……」

 

私を呼ぼうとして戸惑っているべスパの頭を背伸びして撫でながら

 

「どっちでも好きなほうで呼んでべスパ」

 

「ね、姉さん……姉さん……」

 

子供のように泣きじゃくるべスパの頭を撫でながらメドーサに

 

「それでお願いできる?」

 

「まぁ……構わないよ。あたしは横島の護衛任務をするだけだし、報告のついでに連れてってあげるよ」

 

そう笑うメドーサにありがとうと返事を返し、泣きじゃくるべスパに

 

「私はメドーサと一緒に妙神山に行くわ、戻ってくるまで横島をお願いね?」

 

小さく頷くべスパの頭をもう1度撫でて、私はメドーサに抱えられるように東京を後にし、妙神山に向かうのだった。その目的は1つ

 

(こんな結末認めないだから!)

 

何もかも認める事ができない。じゃあ如何する?時間移動をするしかない、でもそれは最高指導者に禁じられている。ならば

 

(直談判してやる!何回でも何十回でも!!!)

 

そして逆行を無事に成功させて私は!私は!!

 

「今度こそ幸せになってやるうううう!!!」

 

「耳元で叫ぶんじゃないよ!」

 

メドーサに怒鳴り返されながら、私は妙神山へ向かったのだった……

 

 

プロローグ その4へ続く

 

 




ルシオラ復活です。蛍だけどルシオラでもある状態ですね。次回でプロローグは終了です。シリアスはそこで終わり、この後は私の大好きな「ヤンデレ」の時間になります!みんなヤンデレ状態ですよ、YES!と言うわけで次回の更新もどうかよろしくお願いします

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