GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はモグラの妖怪との対峙の話になりますが、倒すとか除霊するとかの流れにはならないと思います
平和的な解決が出来るように進めて行こうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その3

 

 

リポート10 無垢なる土竜 その3

 

光の無い暗い道を選んでいる小柄な老人。茶色の古い民族衣装のような物を着込んだ老人は顔を少し上げて

 

「手遅れになっていなければ良いが……」

 

老人はそう呟くと闇に溶ける様に消えて行ったのだった……

 

 

小脇にシズクと名乗る、見た目幼女のミズチと頭の上にタマモ、肩の上にチビを乗せたまま俺は全力で美神さんの事務所へと走っていった

 

(蛍の話だと結界を張ってくれているそうだから気付いてくれてるはずだ)

 

俺を護る為にと蛍がそんな話をしていた、だから美神さんも蛍も気付いてくれているはずだ

 

「キューン!キューン♪」

 

コンクリートをぶち破りながら跳ねるように俺達を追いかけてくるモグラ。最初は怖いと思ったが、徐々に冷静になってくると別の側面が見えてくる

 

(敵意がない……逃げてるから追いかけてきているのか?)

 

除霊の現場で何回も経験したが悪意とか敵意とか殺意を感じないのだ。どっちかと言うとチビとか近所の子供と同じで遊んでいるという感じがする

 

「お前なんかしなかったか!?」

 

小脇に抱えているシズクに尋ねる。もしあれが子供だとしたら……もしかするともしかする

 

「……私は何もしてない。向こうが襲ってきただけ」

 

淡々とした声で返事を返すシズク。本当か?と俺が見つめていると

 

「……急に飛び出してきたから驚いて水で攻撃した」

 

しれっと言うシズク。その言葉に俺は激しい頭痛を覚えながら

 

「それだッ!!!馬鹿やろうううううう!!!」

 

多分あのモグラはシズクが自分と同類だと思って顔を出した、ところが攻撃された事でそれが挨拶または遊びだと認識してしまったのだろう。だから敵意も何もない、だけどあのサイズと力で攻撃されれば人間では耐え切れるわけが無い

 

「ちっくしょおお!死ぬ!死んでしまう!!!」

 

俺が走る速度よりも圧倒的にモグラの方が速い!しかも逃げる物を追いかけるのを楽しんでいるのが判る

 

「キューン♪」

 

鳴声自体は可愛いが、ガードレールを粉砕し、コンクリート塀を容易に粉砕するその爪。人間に当たれば死にかねない、今は何とかよけることが出来ているが、その内捕まるのは目に見えている

 

「美神さーん!蛍うううッ!!!早く助けてええええ」

 

破魔札もないので攻撃は出来ないし、あれが赤ちゃんだとしたら攻撃するのも可哀想だ。何とか攻撃が駄目な事なんだって認識させる事が出来れば何とかなるかもしれないが……

 

「ミューン!!」

 

飛び掛ってこないなあと思った瞬間。足元から声が聞こえると同時にモグラが飛び出してくる

 

「ぎゃあああ!!!下から来たアアアア!!?」

 

咄嗟によけるがGジャンが爪で引き裂かれる。脇のシズクが両手に水を溜めて球状に作り変えながら、そう尋ねてくる

 

「……反撃する?」

 

確かに反撃すれば逃げる隙は出来るかもしれない、だけど身体は大きくても赤ちゃんのモグラを見て

 

「駄目だ!」

 

そんな事は出来ない、嫌、してはいけない。美神さんと合流して何とかしてもらおうと思い走っていると

 

【横島さん!大丈夫ですか?探し……】

 

俺を心配して探しに来てくれたであろう、おキヌちゃんだが……俺の脇のシズクを見るとどす黒いオーラを発生させながら

 

【浮気!浮気なんですね!?そんな小さい子を!!横島さんの獣!!!】

 

浮気ってなんだ!?シズクのせいか!?だけどシズクを解放すると絶対モグラを攻撃する。それが駄目だからこうして抱えているのに、そのせいで浮気呼ばわり、そもそもなんでここで浮気って言葉が出て来るのかが判らない

 

「違う!誤解だああ!!!」

 

どす黒い瘴気を放つおキヌちゃん、怒りのせいか周囲の石が浮かび上がり俺に向かって飛んでくる。そして更にモグラも追いかけてきている

 

「ちくしょおおおおおッ!!!!俺が何をしたあああああ!!!!」

 

どうして何にもしてないのにこんな事態になってしまったのか。おキヌちゃんを説得したいのに話を聞いてくれる気配すらない、しかも地面から追いかけてくるモグラ。そして

 

「……これはこれで中々楽しい♪」

 

「コン♪」

 

「みー♪」

 

俺が跳ねたり飛んだりして攻撃を避けているのが楽しいのか楽しそうにしているチビとタマモとシズク

 

「お願いだから早く助けてええええ!!!」

 

このままだと精神的と肉体的疲労で美神さん達と合流する前に力尽きてしまう……

 

「おキヌちゃん!話!話を聞いてくれ!!!!」

 

俺は若干疲れてきたことで上ずる声で何とかおキヌちゃんの説得を試みるのだった……誠心誠意を持って交渉すればきっと俺の声は

おキヌちゃんに届く筈だ!!!ぶつぶつ呟いて全身に黒いオーラを纏っていて、物凄く怖い!はっきり言って交渉が成立するかどうかも怪しいと思うけど、そうだと信じたい!!!俺は妖怪に追われている恐怖よりも、目の前のおキヌちゃんに対する恐怖で泣きながら、おキヌちゃんの説得を試みるのだった……

 

 

 

 

風に乗って聞こえてくる横島君の悲鳴とコンクリートの破壊音……

 

「こっちね!」

 

おキヌちゃんの連絡はないけどきっちこっちの方角だと判断し、コブラを無理やり曲げてその通路に突っ込ませ、ドリフトさせながら駐車場に滑り込む

 

「みみみ、美神さん!もう少し安全運転でお願いします!!!」

 

そう叫ぶ蛍ちゃんだけど、そんな余裕はない。

 

「横島君が危ないんだから急ぐわよ」

 

飛び降りるようにしてコブラを降りて神通棍を手に走る。狭い脇道を抜けると

 

「ウキュ?」

 

猪程度の大きさのモグラがコンクリートから顔を出していた。ひくひくと動く鼻とつぶらな瞳は愛くるしいとも取れるが

 

「キューン!」

 

私を見ると凄まじい勢いでコンクリートから飛び出して爪を振るってくる

 

(やっぱり邪悪な妖怪!)

 

そのモグラの爪に横島君のGジャンのすそが残っているのを見て、邪悪な妖怪だと判断し

 

「GS美神が極楽に送ってやるわ!!」

 

飛び掛ってきたモグラの胴体に神通棍を叩きつける

 

「ぎゃふう!?」

 

ごろごろと転がっていくモグラ。図体はでかいしパワーもあるけど全然対したことない、このまま数発殴れば終わりだろう

 

「キュ、キューンンンンンン!!!!!!」

 

悲しそうに鳴いてコンクリートの中に潜っていくモグラ。思ったよりも速い

 

「美神さん!あれが?」

 

追いついてきた蛍ちゃんの言葉に頷く。このまま力を蓄えられては困る

 

「蛍ちゃん、破魔札をお願い」

 

鞄からボウガンを取り出す、近接でも問題ないが、ここは確実性を取ろう。

 

「了解です。じゃあ行きます!」

 

モグラの潜った穴に破魔札を投げつける蛍ちゃん。穴の中で炸裂音がして

 

「キュキュウウウウウ!!!」

 

地面から飛び出してごろごろ転がっているモグラ。痛みで苦しんでいるのだろう、だけど直ぐに私と蛍ちゃんに気付いて逃げ出す。そうはさせないとボウガンを放つ

 

「クギュウ!?」

 

身体に刺さってさらに悲壮そうな鳴声を上げるモグラ。心が痛むけど仕方ない

 

「蛍ちゃんは良いわ、私に任せて」

 

まだ蛍ちゃんには動物の妖怪を倒すには早い。ボウガンを手渡し神通棍を手にし

 

「さあ!行くわよ!!!」

 

霊力を込めてモグラに振り下ろそうとした時

 

「美神さん!駄目だアアアアッ!!!!」

 

横島君が飛び出してくる。咄嗟の事に神通棍を止めるのが間に合わず

 

「がふっ!?」

 

私の神通棍を喰らって吹っ飛んでいく横島君に

 

「ヨコシマァッ!?」

 

【横島さんッ!?】

 

蛍ちゃんとおキヌちゃんの悲鳴が重なった。私も慌てて横島君に駆け寄ろうとしたが

 

「大丈夫っす!!!ここは俺に任せて!」

 

口元の血を拭い、足を引きずりながらモグラの前に歩いていった横島君。私は直ぐに止めようとしたが

 

「あなた何者?」

 

いつの間にか現れた少女が私の前に立っていた。姿形は子供だけど……そんな可愛い物じゃ無い……背筋に冷や汗が流れるのが判る。それに逃げろと私の中の霊感が叫んでいる……

 

「……黙って見てろ。横島はただの退魔師に収まる人材じゃ無い」

 

この霊力、この威圧感……私は覚えている。この少女は間違いない……あの山の中の神社で戦った

 

(ミズチ……)

 

私達を異界に引きずり込んだあのミズチだ。どうしてこんな大物が横島君と一緒なのかは判らなかったが

 

「判ったわよ。だけど横島君が危ないと思ったら行くからね」

 

助手を失うわけには行かない。私はいつでも飛び出せる体勢で横島君を見つめるのだった

 

 

「キュウ……キュウ……」

 

つぶらな目から涙を流すモグラ。刺さっているボウガンの矢が痛いんだろうなあ

 

「ちょっと待てよ」

 

シズクがくれた霊水を少しずつ傷跡に掛けながら矢をゆっくりと抜く。掠っているだけだから刺さりが甘くて良かった

 

「な?これで判っただろ?お前のやってるのは駄目な事って」

 

小さい子に言い聞かせる口調で言うとモグラはぷるぷる震えながら頷く

 

「よしよし、怖かったなあ」

 

美神さんの神通棍でしばかれたので正直身体が痛いが、そんな事を言っている場合ではない

 

「キュウウウ」

 

ぽろぽろと泣いているモグラを美神さんに見せて

 

「美神さん、このモグラは子供っす。姿は大きいけど、何が悪いのか良いのか判らない子供っす。怖くて泣いてるんです」

 

キューキューと泣いて擦り寄ってくるモグラの背中を撫でる。思ったよりごわごわしてるなあ……

 

「頼みます。美神さん、この子を逃がしてあげてください」

 

確かにGSを襲ったかもしれない、だけどこの子は今攻撃するのは良くないことって学んでくれたはずだ

 

「そりゃ無理に除霊しろって依頼じゃ無いわ。だけどその妖怪がもっと力をつけて今度こそ人間を殺したら如何するの?」

 

確かにそれは正論だけど!俺は……俺はそんな事はしたくない。そしてこの子もそんな事はしないと信じたい

 

「蛍!妖怪だって悪い妖怪ばかりじゃない!そうだろ!?」

 

この子はきっとまだ間に合う、だから……逃がしてあげて欲しい

 

「ええ、私もそう思う。美神さん私からもお願いします」

 

【私もあの子は悪い子には思えないです】

 

蛍とおキヌちゃんも美神さんに頼む。美神さんは腕を組んで考え事をしているようだ

 

「……殺すな。何も知らぬ無垢な物を殺すんじゃない、人間」

 

シズクがギロリと美神さんを睨む。だけどお前が原因の6割くらいを占めているんだと言いたかったが、話がこじれるので黙っておく

 

「コーン」

 

「みみ」

 

「きゅ?」

 

モグラに近寄ってきて会話をしているタマモとチビ。この2匹が頼りだ。俺達には判らない、動物の言葉で何とかしてくれと思っていると

 

「退魔師の方よ。申し訳ないが、我が一族の幼子。この場は見逃してもらいたい」

 

民族衣装を着込んだ小柄な老人がどこからともなく現れる

 

「……龍族がなんのよう?」

 

龍族!?じゃあこのじいちゃんは人間じゃ無いのか……人の良い笑顔を浮かべてるのになあ……街であったら普通に話をしてもおかしくないと思うほどの人の良さそうな老人だった

 

「我が一族の幼子を迎えに参ったのじゃ、この度は申し訳ないことをした。しかし数が少ない我が一族、殺すのだけは許していただきたい、このこはワシが責任を持って育てるゆえ」

 

あ、良かった……保護者が来てくれたのか……

 

「良かったな、これで大丈夫だぞ」

 

「キュー」

 

擦り寄ってくるモグラの背中をぽんぽんと叩いていると

 

「あーもう!判ったわよ!これじゃあ私がまるで悪者見たいじゃない。今回は何もしないわ」

 

美神さんが頭をかきながら言う、良かったなあ……これで一安心や

 

「ほれ、じーちゃんの所にいきな?」

 

モグラの後ろに回りこんで、背中を押しながら老人のほうに行くように言うが

 

「キュー」

 

俺の後ろに回りこむモグラ、あ、あれ?また後ろに回るが、回り込まれる。ええ、俺どうすれば良いんだよ……

 

「ほほ、随分と懐いたようじゃな。じゃがの?今のおぬしは小さくなる事も、人の姿になる事も出来ぬ。ワシらの所においで」

 

老人が手を鳴らすと名残惜しそうに老人のほうに這って行くモグラ

 

「助かりましたぞ、少年。いずれ礼をしに参る。ではこれにてごめん」

 

最初からいなかったように消えていく老人。良かったと安堵した瞬間、全身に凄まじい激痛が走る

 

「そ、そやったああ……わ、ワイ。神通棍で殴られとったんやぁ……」

 

ゆっくりと倒れていく身体と薄れていく意識。

 

「きゃあああああ!よ、横島あああああ!!!」

 

【横島さーん!!!!】

 

蛍とおキヌちゃんの絶叫を聞きながら、俺の意識は闇の中へと消えていくのだった……

 

 

 

倒れている横島を見て慌てている狐や少女。確かにあれだけの霊力で殴られれば意識を失うのは当然

 

「……なにをぼさっとしているの?速く横島の家に運びましょう」

 

おろおろしている黒髪の女が振り返る

 

「えっとミズチ?」「……シズク」

 

ミズチは種族の名前だから、そうひとくくりにされるのは面白くない

 

「えーと治せるの?」

 

不安そうに尋ねてくる黒髪の女。ゆっくりと横島に近づき触れる

 

(……まだ私の加護は生きてる、回復力が高いのはそのおかげ)

 

だけど長い年月のせいでリンクが途切れかけている、再び加護を授けなおせば、私の能力で回復させることが出来る

 

「コーン!コーン」

 

必死に舐めてヒーリングをしているタマモを掴んでふよふよ浮いている幽霊に投げつける

 

【わわ!?】

 

驚いた様子で宙を舞うタマモを空中で抱っこする幽霊。中々器用な幽霊のようだ

 

「グルルル!!」

 

抗議の唸り声を上げるタマモを無視して横島を抱える、水が満ちているので体格差なんて関係ない

 

「なんで貴女が横島君を助けるの?」

 

訝しげに見ている緋色の髪の女に私は横島を抱き抱え

 

「……横島の先祖に私は加護を授けた、だから横島にも私の加護は残っている。加護を授けた者として、面倒を見るのは当然のこと」

 

ぎょっとしている女達は無視して、半分引きずるようにして歩き出す

 

「判った!今車を回すからまってなさい!横島君の家で話を聞くから」

 

判断が早くて助かる。走っていく緋色の髪の女を見ながら

 

「……これは私のにする、文句ある?」

 

私の言葉を聞いた幽霊と黒髪は鬼の様な顔をして

 

【「あるに決まってるだろうが!!!」】

 

がーっと吼える幽霊と黒髪。どうもこの時代でも高島はとても良くもてるようだ、だけどこれは私の物……絶対に手放さない。

私と幽霊と黒髪とタマモは緋色の髪の女が車を運んでくるまでの間お互いにらみ合っているのだった

 

「うーんうーん」

 

その圧力に魘されている横島を看護していたのは

 

「みーみー!」

 

チビが小さい身体を必死で動かして横島の汗を拭っていたりするのだった……

 

リポート10 無垢なる土竜 その4へ続く

 

 

 




次回でリポート10は終わりですね、柩は次の話で出すつもりです。この修羅場を見て楽しそうにしている柩とかですね。モグラが再登場をするかどうかは楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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