GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話は妖怪組み【?】がメインになります。チビとかタマモとか前回横島が助けた少女とかですね
新しい騒乱はもう直ぐ近くまで迫っています。ええ、主に修羅場と言う壮絶な争いが待っていますとも……


それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



その2

 

リポート2 無垢なる土竜 その2

 

横島が川岸で助けた少女。私はそれを見て直ぐに判った、こいつは蛇だと

 

「みゅーん」

 

チビもそれに気付いているのか頭を低くして怯える素振りを見せている。今は霊力を抑えているが、それでも私よりは霊力は多い

 

「ひゃっ冷たいなあ……えーとタオルタオル」

 

押入れから来客用の布団を取り出し引いて、少女を寝かせタオルを用意している横島

 

(うー!どうして私は今喋れないのよ)

 

喋れたのなら警戒しろって言うのに!あの蛇……私はあいつの事を良く知っている

 

(あいつはミズチなのに!!!)

 

前に横島達を襲った水龍ミズチ。どうしてあいつが倒れていたのかは判らないけど、危険と警戒するのは当然だろう

 

「とりあえずあれで大丈夫かな?」

 

布団に寝かせた所で部屋をでてくる横島。慌てて足元に駆け寄り

 

「コン!コン!!!」

 

危ないから美神達に連絡するべきだと鳴くが、横島はうんうんと頷く、もしかして判ってくれた?

 

「そうかーお腹空いたかぁ、良し良し直ぐきつねうどん用意するからなあ」

 

「コーン♪」

 

って違う!!!!!きつねうどんは確かに魅力的だけど、今はそんな事をしている場合じゃ無いの!危ないのよ

 

「チビはりんごか?」

 

「みー!」

 

横島がそばに来てくれたことで安心したのか、さっきまでの怯えた素振りはどこへやら尻尾を振っているチビ

 

(どどどど、どうしよう!?)

 

私が何とかしないといけないのに、どうすれば良いのか判らない、こういう時にしゃべることができないと言うのは余りに辛い

 

「じゃあ用意しようなあ」

 

私とチビを抱えてキッチンに歩いていく横島。前足で横島の頬を叩き危ないと言うのを伝えようとするのだが……

 

「コーン!ココーン!!!」

 

「良し良し、そんなにお腹空いたんだな、直ぐ用意するからなあ」

 

違うのにー!!!っ言うか横島の中では私ってそんなに食いしん坊ってイメージなの!?その事に軽くショックを覚えながらも

 

「ほれー出来たぞー」

 

「コーン♪」

 

横島が私の目の前に置いてくれたきつねうどんを前に、歓喜の鳴声を出してしまう自分がいて……少しだけ切なくなった……

 

 

 

普段より大分遅いぺースできつねうどんを食べているタマモ。どうしたんだろうか?と思いながら俺もきつねうどんを啜る

 

(あーおキヌちゃんが出汁と揚げを作っていてくれて良かった)

 

うどんを入れて暖めるだけで作れるうどん。これは確かにありがたい、チビもりんごを小さく切った物を小さい手で抱えて

 

「みーぬみー」

 

口の中にりんごを詰め込んで間延びした鳴声を出している。その仕草も愛らしい

 

「ふーごちそうさん」

 

「みーみー」

 

「クウ」

 

夕食を終えたのでちゃっちゃっと洗物を済ませて、美神さんと蛍が厄珍堂から買ってきてくれたお札を手にする

 

「チビとタマモは少し離れてろよ?」

 

判ったと言いたげに鳴いてチビを咥えて離れていくタマモ。なんかチビが狩られたように見えるのは何でだろうな?

 

「よしっとこれでOK」

 

部屋の隅に浄化札。空気を清浄にする事で霊力の効率を上げてくれるらしい……それと5枚の札を机の上において

 

「火精招来」

 

手にした赤い縁取りの札に赤い光が灯る、それと体から少しだけ霊力が出て行くのが判る

 

「雷精招来」

 

緑の縁取りの札に緑の光が灯る。ここまではOKだ……問題はここからだ。大きく深呼吸をしてから

 

「水精招来」

 

水色の縁取りの札が僅かに光りかけるが、直ぐに消える……

 

「土精招来」

 

茶色の札にいたっては何の反応もなし……そして最後の金色の札を見て

 

「止めとくか……」

 

最後の札は金精の札。なんでも金属を意味する札らしく、防御や守りに強い効果があるらしいが、上の4枚と違って見た目が変化しないので自分ではわからない

 

「あーまだ火と雷だけかぁ」

 

札を光らせる事ができれば、その属性の精霊の力を借りる事ができたという証明らしいので、少しでもと思い練習しているのだが……火と雷だけで後はさっぱりだ……

 

(火が使えるのは多分タマモのおかげだよな)

 

タマモが俺に授けてくれたという加護、そのおかげで同じ火に属する精霊が好意的らしい、雷が使えるのは俺の才能らしいが……今一信用できない。水が光りかけているのでもう少ししたらヒーリングとかを使えるかもしれないなあと思いつつ、浄化札を外す

 

「みみ」

 

前回りで転がってきたチビを抱っこする、最近TVを見ているからかほっておくと何か色々な遊びを覚えている。それだけ知能が高いという事なのだろうか?

 

「さてと……迷惑だと思うけど、美神さんに電話するか」

 

川岸で拾った少女。人間にしては異様に体温が低いから人間ではないと思う……多分妖怪だと思うんだけど……一応連絡したほうが良いだろうと思い電話をかける為に廊下に出て、受話器を手にした所で

 

「……連絡はするな」

 

小さな声だがやたら通る声が聞こえたと思った瞬間。俺の腕と首に水が伸ばされていた。ゆっくり振り返るとやっぱりと言うべきなのか、俺の助けた少女。その少女の手から伸びている水の鎖……やっぱり妖怪だったかと思いながら

 

「判った電話しない」

 

ゆっくりと受話器を電話に戻す。すると水も少女の手の中に戻る……なんかこれ見たこと……!

 

「まままままま!!!まさかお前ミズチか!?」

 

あの時のミズチもこんな事をしていた、足元のチビとタマモを抱き抱えて後ずさる。さっきからタマモが何度も鳴いていたのってもしかして危ないって事を俺に伝えようとしていたのか……てっきりお腹が空いているのだと思ってたけど……

 

「……ミズチのシズク。そこの狐とはそれなりに知り合い……」

 

そう呟くと力なく倒れるシズクと名乗った少女を慌てて抱きとめる、そして服越しにも判るその冷たさに驚きながら

 

「つめた!?おいおいどうすれば良いんだよ!?」

 

氷みたいに冷たいシズクをどうすれば良いのか判らずうろたえていると

 

「……水が欲しい。沢山」

 

ぼそりと呟くシズク。水!?えーと俺は慌てながらも財布を掴み

 

「ちょっとでてくる!」

 

近くのスーパーへ走り、2Lのペットボトルの水を3個買ったのだった。なお戻っている途中に蛇口を開ければよかったんじゃ?と思ったのは明らかに遅いだろう……

 

 

 

高島の転生者に拾われたのは幸運だった。心配そうな顔をして差し出された水のペットボトルとか言う物の封を開けて

 

ザバア

 

全部自分の上に掛ける、畳と布団が水浸しになったのを見て

 

「ノオオオオオ!!俺の部屋がって……ってあれ?水が消えた」

 

私が触れている所から私の中に吸収されていく水。本当は飲んでも良いんだけど、弱っているからまずは全部かぶる事にした。2本目は口を切り一気に飲む

 

「すげ……」

 

驚いているようだけど、私にとってはこれは普通の事だ。水に属する妖怪にとって水は命そのもの、体内に大量の水を蓄えておけば、それだけ霊力も使ええるし、再生能力も増す。4Lのも水を飲み干した事で漸く落ち着く事ができた

 

「えーとじゃあ聞くけど、美神さん達と戦ったミズチで良いんだよな?」

 

確認するかのように尋ねてくる少年に頷きつつも、少しだけ眉を顰めて

 

「……ミズチは種族の名前。私はシズク」

 

ミズチではあるが、私の名前はシズクだ、ミズチと呼ばれるのはあまり好きではない

 

「あーそれは悪い。俺は横島、横島忠夫。んで、タマモとチビ」

 

狐と丸っこい悪魔?と私の前に座らせる横島。狐がタマモで丸っこいほうがチビか

 

「……横島」

 

高島の転生者だから名前も良く似ている。それになによりも魂が似ている……観察している間にタマモは横島の頭の上に上り私を見下ろしている

 

「それでなんで東京に?あの神社にいるんじゃないのか?」

 

まぁ確かに私の聖域だけど、あそこにいても横島は来てくれないし、あそこは家だけどじっとしているのは余り好きではない

 

「……私はお前に興味がある。だから来た」

 

横島の顔を見ながら言うと横島はニッコリ笑い、HAHAっと変な風に笑いながら親指を立てて

 

「もう少し育ってからそう言うことは言おうか?ワイはロリやない!」

 

ロリ?……なんの事か判らないので横島の頭の上にいる狐を見て

 

「……狐。どういうこと?」

 

知っていそうな狐に尋ねる。すると脳裏に声が響く、人の姿をしていても私はやはり妖怪。念話が出来るのは当たり前の事だ

 

(お前みたいな絶壁ちびっ子は嫌いって事よ!あと狐言うな!!!)

 

その大きな声に軽い頭痛を覚えつつ、驚く。高島はそう言うのは全然気にしなかったのに……

 

「……本当にロリは駄目?これでも?」

 

着ているワンピースの裾を掴んでめくりあげると

 

「おおっ!ってワイはロリコンでもぺドフィリアでもないんやー!!!」

 

一瞬私の方に目を向けたけど、直ぐに柱にガンガンと頭を叩きつける横島。その反応を見れば判る

 

(これくらいなら大丈夫)

 

魂が物凄く揺れている。これならば頑張らなくても横島の精神に手痛い打撃を与える事が出来る

 

(ロリでも平気そう)

 

(うっさい!満月になれば私の方があんたよりも横島に好かれるんだから!)

 

それはきっと平安時代の姿のことを言っているのだろう、確かにその姿ならと思うが

 

(それまでに横島は私のものになる)

 

(横島は私のなんだからね!!!)

 

人化も出来ないタマモなんて私の敵ではない、その前に横島に取り入る事が出来れば何の問題もない。それに高島には私の加護を授けた、その転生者である横島にも私の加護は僅かながらに残っているのだから、充分私の物と言える

 

「それでなんで怪我をしていたんだ?」

 

今では回復しているけど僅かに怪我をしていた。それもこれもあのモグラのせいだ

 

「……モグラが変化した龍に襲われていた」

 

本来の霊力があれば迎撃する事も不可能ではないのだが、今の私では逃げる事が背一杯だった

 

「モグラってあれか?地面の中の?」

 

不思議そうな顔をしている横島に頷く、長い年月を生きたので竜気を取得していてとても危険で逃げるしかなかったと話していると

 

「キューン!!!」

 

バリーン!!!

 

「ぎゃああああああ!!!窓があああああ!!!」

 

窓を突き破って小型の猪の様な妖怪が飛び込んでくる。黒い毛むくじゃらのモグラだが、その手には鋭い爪が光っている

 

「キュー!」

 

飛び掛ってくるモグラの爪を転がって回避して、ペットボトルを掴むと同時に浮遊感を感じる

 

「ちくしょおおおおお!ワイが何をしたあああああ!!!」

 

私とチビとタマモを抱えて走り出す横島。荷物のように小脇に抱えられているが

 

(……これは悪くない)

 

うん、暖かいし、横島の霊力の波長を感じて安心できる。私はペットボトルの封を開けて

 

「……水を補充すれば戦えるから頑張って」

 

体力は回復したが、攻撃するほどの力は回復していない、それまでは頑張ってくれと言うと

 

「なにを!?ワイに何を頑張れっていうんやあああああ!!!」

 

号泣しながら叫ぶ横島。おかしいな?あの時は随分頼もしく見えたけど……

 

(まだまだこれからゆっくり育てればいい)

 

横島は高島の転生者なのだから陰陽術の才能はある。ゆっくり霊力が覚醒するのを待てば良い

 

「フー!」

 

私の考えている事が判っているのか唸り声を上げているタマモ。繰り返すが人化も出来ないタマモが悪いのだから

 

(悔しいなら人化出来るようになれば良いの)

 

馬鹿にするようにそう返事を返し、ペットボトルの水を飲み始めるのだった……

 

 

 

 

横島の家に設置してあった結界が砕けた。私と美神さんの顔が引き締まる

 

「どうも横島君の方に来た見たいね」

 

東京にいるGSは多いが、ある程度の霊力を持っているGSとして美神さんが自分のところに来るかもしれないと思っていたが、現れたのは横島の所。タマモに惹かれたのかもしれない

 

(こんな事なら待機して貰っていれば良かった)

 

家に返すのではなく、美神さんに頼んで事務所にいさせてあげれば良かったと後悔していると美神さんが素早く指示を出し始める

 

「おキヌちゃん、横島君と合流して私達の所に案内して、私達も準備をして直ぐ行くから」

 

幽霊のおキヌさんが一番早い。おキヌさんは御盆を机の上において

 

【直ぐ見つけます!美神さん達も急いでくださいね!】

 

言うが早く窓から飛んでいくおキヌさん。私も鞄から破魔札とかの準備を済ませ

 

「行きましょう。美神さん」

 

「ええ!うちの助手を怪我させる訳には行かないわ」

 

凛々しい顔で言う美神さん。やっぱり私の知っている美神さんよりも

 

「労災も馬鹿にならないんだから!今柩に電話して場所を聞くから」

 

労災って……いや、まぁ労災であってるんだけど……

 

「ソウデスヨネ……」

 

期待していた言葉と全然違う言葉に深い溜息を吐く、だけどそれも美神さんらしさだと思い。私は除霊具をつめた鞄を肩から提げる

 

「もしもし!柩!?横島君の」

 

未来予知を持つという柩さんに電話していたのだが

 

「あのやろう!どこ行きやがった!!!」

 

憤怒して電話を叩きつける美神さん。怒り心頭と言う感じで

 

「なにがプリテイなボクは急用があるので失礼する!よ!!!私が電話するって知ってるくせに!!!

 

どうやら柩さんはいないようだ、場所の特定は難しくなるけど、きっと騒動が起きているので直ぐ見つけることが出来るだろう

 

「行きましょう!美神さん。横島が危ない!」

 

「ああー!もう!そうね!探せば何とかなるわよね!急ぐわよ!」

 

美神さんと一緒に事務所を後にしたのだった……なおその頃横島は

 

 

 

「キューン!ミューン!!!」

 

「わああああ!!!!」

 

弾丸のような勢いで飛び出してくるモグラの爪を小脇に抱えたシズクと頭の上のタマモと肩の上のチビを落とさないようにしながら全力で走り回っていて

 

「みがみざあああん!ぼだるううう!!!だずげてえええええ!!!」

 

泣いているせいでまともな発音になっていないが、美神と蛍に助けを求めているのだった……だが

 

(なんか楽しそうだよなあ……もしかして)

 

動揺し泣いている部分とは逆に冷静な部分もあった。これは美神や蛍と除霊をしているうちにマルチタスクとは言わないが、それに似たものを身につけていた。だから恐怖を感じつつもある程度考え事が出来るようになっていた……まぁ表面上はとんでもなくみっともないが……

 

(もしかしてあのモグラ赤ちゃんなんじゃ?)

 

今日昼間に見た妖怪変化の事を思い出しながら、美神の事務所の方向へと走っていくのだった……

 

 

小脇にシズクを抱え、頭に狐を載せた横島を見つめる1つの視線

 

「くひひ、やっぱり見に来て良かったよ」

 

精霊石の首飾りと結界札を手にしている柩は楽しそうに笑う。彼女の持つ未来予知の力で彼女は確かにここまでの未来を見ていた。

 

「くひひひ、ここからどう変わってくれるんだろうねぇ……」

 

柩が見た未来ではモグラの妖怪は殺される。だけど今は見えなくなってしまっている。そんな事は今までなかった、だからこそ柩は横島に興味を持った……

 

「くひひ、未熟なGS君……君がボクにどんな未来を見せてくれるのかな?くひひ……楽しみだよ」

 

頭を押さえて楽しそうに笑いながら柩は横島の後を追ってゆっくりと歩き出したのだった……それは散歩していると言えるスピードで、とてもではないが追いつけるとは思えないが

 

「くひひ……ボクには見えてるよ」

 

横島がどういう風に動くのかは判っている。だからこそゆっくりと歩いていくのだった……どこに行けば、良いのか判っているのだから焦る必要などないのだから……

 

 

リポート10 無垢なる土竜 その3へ続く

 

 




次回は若干の戦闘回になるかもしれないです。ただ終わりはほのぼのとした感じにしたいですね、そしてシズク登場です
おまもりひまりのキャラですが、私は個人的に好きなのと、火属性のタマモと相反する属性をと言う事で参戦させて見ました
どういう風に活躍していくのか楽しみにしていてください、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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