リポート9 黒魔術師小笠原エミのスカウト その8
神代幽夜の遺品とも言えるGS協会の闇を纏めたレポートと神代琉璃のGS協会への復帰。これにより、今まであくどい事をして私腹を肥やしていたGS協会の上層部は全てオカルト防止法違反と横領などの罪で起訴された。何割かは逃げてしまったようだが、冥華おば様が逃がすわけがないので心配はないだろう。だから私は私で唐巣先生の教会で報酬の受け渡しがあると言う事で唐巣先生の教会で待ちながら、今回の事件の事を唐巣先生と話し合っていた
「唐巣先生。結局神代幽夜は何がしたかったんですかね?」
思わずそう呟く、本当にGS協会を正したいなら黒坂なんかと組んだりせず、唐巣先生か冥華おば様と協力すればきっともっと良い形でGS協会を正す事が出来ただろう。それに黒坂が女性を殺すこともなかったはずだ。私には神代幽夜が何をしたかったのかが判らない。唐巣先生も珍しく眉を顰めて
「私にも良く判らないよ、彼が何を見ていて、何を思っていたかなんてね」
深く溜息を吐く唐巣先生。その溜息が神代幽夜だけではなく、黒坂のせいで殺された女性達の遺族の事を思っての物だと思う。精神的に殺され、薬と呪術だけで生かされていた何十人もの若い女性。冥華おば様が式神で楽しい夢を見させて眠りにつかせた。その後は六道グループの女性職員が彼女達を外へと運びだし、身体を綺麗に清め、死に化粧を施して遺族達の元へと送り届けた……でもそれでもやはり
(何とかしたかったわね)
殺すという形でしか彼女達を救う手段がなかった。あそこまで精神と身体が壊されていると仮に冥子やおば様が精神を治療したとしても黒坂に犯された記憶がなにかの切っ掛けで戻る事もある。だからこそ冥華おば様は眠りの中で殺すという選択をとった……
「納得されては居ないんですよね?」
「納得できる訳がないよ、美神君……私は人を殺すことは認めて居はいない。オカルト特例の中で廃止するべき物だと思っている」
気持ちは判る。私は実際そのばには居なかった。冥華おば様と唐巣先生で奥へと向かい冥華おば様が処理をした。唐巣先生はきっと最後まで反対しただろうが、最終的に殺すことを選んだ……こうして今も悩んでいる唐巣先生を見ているときっとその選択をしたのは唐巣先生にとっても辛いものだったのだろう
「今……お時間よろしいですか?」
2人で事件の話をしていると教会の扉が開き、スーツ姿の神代琉璃が入ってくる
「失礼します。唐巣神父、美神さん」
椅子に腰掛けて笑う神代琉璃。良いタイミングで着てくれた、私と唐巣先生だけではいつまでも暗い考えをしていたかもしれない、私は椅子に座りなおし、紅茶のお代わりを注ぎながら
「令子で良いわよ。私も琉璃って呼ぶし」
戸籍上は22歳だが、2年間結界の中で封印されていたので同い年なので名前で呼べば良いと言うと
「そう、じゃあ改めてよろしく。令子さん」
「私もよろしく、琉璃」
互いに握手を交わした所で琉璃を見て
「忙しいんじゃないの?GS協会の再建で」
殆どの幹部は後ろめたい事をやっていた。その為に大半以上が逮捕されてしまったので、残っている人員は少ないはず……こんな所にきている余裕はない筈だけど
「叔父さんの目的が判ったんですよ。叔父さんは15歳の時に病気で死んだのですが、その当時の神代家の当主によって肉体を魂に括られた。半分くらいはゾンビに近い存在だったんです……その所為で人格とか記憶がおかしくなり始めていたそうです」
なるほど、もう人間としては死んでいたからムルムルを憑依させる事が出来たのね……あれだけの霊格を人間が降魔させる事なんてできない筈だし、黒坂も精神的に死んでいて、廃人同様で精神病院に入院している。自分が殺した女性の数々の亡霊の姿を幻覚で見ているらしい、このままだったら数日もせずに発狂するだろうが、それは冥華おば様がさせない、精神崩壊の直前に行ったら式神で正気に戻させてまた発狂直前まで放置と言うのを繰り返している。そして死なせるつもりもない様で、死なない程度に栄養を与え、傷を治療する。死にたくても死ねない事。それが黒坂に与えられた罪なのだと思う。もしかするとムルムルの与えた罰と言う可能性も考えられる。ムルムルはソロモンの魔神の中でも強力な死霊使いだ。それくらいの事はやってのけるとおもう
「それで彼がムルムルを呼び出したのではなく……」
「最初に呼び出したのは当代の当主だったみたいですね、その後に自分でも降魔させていますが、始まりはその時です」
どうして魔神を呼び出してまで幽夜を生かしたかったのかしら?
「叔父さんは神大って言う神代家の分家の生まれだったんです。その膨大な霊力が原因だったみたいで神代家に仕える存在として生かされたのですね」
こうして聞くと不憫な存在だったのかもしれないけど……それは本題じゃ無い
「それで神代幽夜が貴女を幽閉した理由は?」
「護るためだったそうです、腐りきったGS協会の上層部から、そして私がGS協会を元に戻してくれる事を信じていたみたいです」
恐らく遺書であろう封筒を大事そうに抱える琉璃。彼女にとってはやっぱり神代幽夜は良い叔父さんだったのね。とは言え私はそれを認めることは出来ないけどね
「彼のやったことは決して正しくはない、考えていたことは正しかったかもしれない。だがその過程で何人の人間が死んだとおもう?彼がやったのは故人に対して言うことではないが……悪であり。間違いだ」
手っ取り早く確実な方法と言うかもしれない、だけどそのやり方は褒められた事ではないし、正しい事ではないと私は思う。遺族の多さもあるし、GS協会が一新されたとしても暫くは琉璃が責められることになるのは仕方ないことだろう。私と唐巣先生の言いたいことは理解しているようで
「元より覚悟の上です。神代家現当主として叔父の犯した罪も、その全てを背負う覚悟が私にはあります」
強いわね……心が物凄く強い。だけどこれから琉璃の歩く道は茨の道だろう。どこかで倒れてしまわないと良いんだけど、それは私の言うことじゃ無い。琉璃が自分で乗り越えないといけない壁なのだから
「……それと今回お伺いしたのは今回の事に対するお礼と言うことで、とりあえずですが、令子さんと唐巣神父にそれぞれ800万ずつ、それと横島君と蛍さんにもそれぞれ100万ずつをお支払いします」
机の上に置かれたアタッシュケースを見ながら
「時間があるなら一緒に来ない?横島君の家に案内するわよ」
どうせなら自分で渡したほうが良いだろうと思って尋ねると琉璃は首を振って
「この後冥華さんと話し合いがあるので失礼します。後日時間を見てお伺いします」
そう笑って出て行く琉璃を見送りながら、自分の分のアタッシュケースを見て
(暫くはこれで時給を払えば良いわね)
うんうん、これで少し経済的になったと思いながら、唐巣先生に
「生活費これで大丈夫そうですね」
「ほ、本当だよ。これで暫くは安心だ」
涙を拭っている唐巣先生。そんなに貧窮しているなら少しは除霊費を貰えば良いのに
「それじゃあ先生失礼します」
とりあえず話したいことは終わったし、ギャラも貰ったし、もうここにいる理由もない
「ああ、またいつでも来たまえ。横島君の修行の方針に悩んだときとかにね」
そう笑う唐巣先生にありがとうございますと返事を返し、教会の横手に停めてあったコブラに乗り込み事務所へと向かうのだった……
ぷくーっと頬を膨らませている蛍。珍しく不機嫌だね
「どうしたんだい蛍?横島君の所に行かないのかね?」
横島君はあの不安定な霊力の篭手の使用の反動のせいか、軽い手足の麻痺と左目の視力の低下で学校をいま休んでいる。会いに行かないのかな?と尋ねると
「おキヌさんに論破された……」
体育座りでしくしく泣いている蛍。おキヌ君かあ……彼女は穏やかな雰囲気をしているけど、もの凄く強かな面もあるからなあ……
「危険だからって留守番をさせられたから、暫くは私が横島の家にいるって……美神さんもそれが良いって言うし……」
まぁ蛍自身も弱っているからその判断は正しいとは思うんだけど……
「まぁ仕方ないじゃ無いか、今後の横島君の訓練の方向性でも考えたらどうだい?」
「ううう。ヨコシマア……」
駄目だこりゃ……一緒にいるのが当たり前になっているから離れると情緒不安定になっている
「後で横島君に届けてほしいものがあるんだけど良いかな?」
目を輝かせる蛍。用事があれば横島君の所に行けるからね、私は机の引き出しから薬の瓶を取り出して
「霊力を整える薬だ。横島君に届けてやってくれ」
「うん!判ったわ!!!」
大事な宝物を持つかのように瓶を抱えて走っていく蛍。あまりに微笑ましくて笑ってしまうが、軽く咳払いしてから
「すまないね。待たせてしまったかな?」
「いえ、大丈夫です。アシュ様」
浮き出るように姿を見せるメドーサ。恐らく横島君の話に出てきた、紫色の髪の美人とはメドーサの事だ。どうして魔装術のさわり程度とは言え、横島君にそんな危険なものを教えた理由を尋ねるために呼んだのだ
「それでどうして横島君にあんな危険なものを?」
「……判りません。ただ教えたいと思っただけです。独断行動をしてすいません」
そう頭を下げるメドーサ。彼女にも逆行の記憶の一部があるのかもしれない、横島君の霊能力の代表とも言える「サイキックソーサー」と「栄光の手」はどちらかと言うと、魔装術に近いと私は解釈している
「ただ見せただけであそこまでするとは」
見せただけ!?それだけで……私は顎の下に手を置いて
(信じられん。やはり横島君は天才なのかもしれん)
自分ではそんな事はないと思っているようだが、彼は間違いなく天才と呼ばれる人種だろう。それなのになんであんなに自信がないのかは本当に不思議な所だ。
「そうか、私の勘違いのようだね。戻ってくれて構わないよ」
見せただけと聞いたら、メドーサに失態はない。横島君の天性の霊力が問題だったわけだ……
「失礼します」
頭を下げて出て行くメドーサを見送っていると電話が音を立てる。はて?
「もしもし?」
『おおう。芦か?ワシじゃ、カオスじゃ』
電話で楽しそうに笑うドクターカオス。同じく学者肌の私と彼はとても気が合う。だが……なにか嫌な予感がする
『のう?芦や?ワシの娘のマリアなのじゃが、今のままだと明らかに不利でのう……そこでじゃ、今のボデイを有機ボディに換装してやろうとおもうのじゃが……どうじゃ?』
じ、実に興味深い。だがそんな事をすれば蛍の敵が増える事に……だが、あの完璧なアンドロイドをより人間に近づけることが出来る……
「直ぐお伺いします」
『おう、待っておるぞ』
すまない蛍。父さんは科学をより進化させる事が出来るかもしれないこの機会を逃す事が出来ないんだ。トトカルチョのマリアの倍率が変動中になっているのは見ない振りをしてビルを後にしたのだった……
「ほほほ、成功じゃわい」
「ドクター・カオス?悪い・顔をしていますが・どうかしたのですか?」
にやりと笑うカオスにマリアが湯飲みを手に尋ねる。カオスはにこやかに笑いながら
「もっと人間に近づきたくはないか?小僧と仲良くするために?」
「横島さんと・仲良く」
僅かに顔色を紅くするマリアを見て満足げに笑いながらカオスは
「その反応見れば充分じゃ、楽しみにしておれ」
「イエス・ドクターカオス」
無表情なのに嬉しそうと言うマリアを見ながらカオスは手元の本を開き
「今度はお前もわしの娘じゃからな」
マリアの設計図を見て小さく微笑む。きっとその時カオスの脳裏にはテレサの姿が浮かんでいたのだろう……カオスの顔は僅かな後悔の色を浮かべていたのだから……
旧GS本部地下で使った霊力の篭手?はかなりの反動があったらしく、1日経っても視力は回復しない、右手の握力は殆どない
(まだまだって事かあ……)
優太郎さんと蛍の話では霊力を必要以上に使いすぎた後遺症らしい、俺もやっとまともな霊能力を使える様になったと思ったのに
「み!」
俺の足の上に乗って短い手を振っているチビの頭を撫でていると
【横島さーん。ご飯出来ましたよー】
おキヌちゃんが土鍋を手にリビングに来る。俺は平気だと言ったんだけど、美神さんも動きにくいはずだからおキヌちゃんに面倒を見てもらいなさいというので俺の家に居て貰っているのだが
(本当に良い娘やなあ……掃除洗濯に加えて料理までしてくれる。これで幽霊じゃなかったら最高なのに……いやおキヌちゃんのように可愛くて家庭的な幽霊なら結婚しても幸せだろうに」
【も、もう!横島さんったら!何言ってるんですか!】
頬を紅く染めているおキヌちゃん。まさか声に出てた……あああ、恥ずかしい!!
【はい、横島さんどうぞ。あーん】
俺の口元にオジヤを差し出してくるおキヌちゃん。これはまさか伝説のアーン……
「あ、あー……!?」
口を開こうとした瞬間。強烈な寒気を感じて窓のほうを見ると
「…………」
蛍が何の光も宿していない目で俺を見ていた。恐ろしい、恐ろしくて身体が震える
「いや、おキヌちゃん悪いから。自分で食べるよ」
左手は動くし……と言うがおキヌちゃんはにっこりと笑ったまま、俺にレンゲを向けながら
【はい、あーん】
にやりと笑うのを見て気付いた、おキヌちゃんは蛍の存在に気付いている!?そしてその上でこうしている
(な、なんて恐ろしい子!?)
近づいてくるオジヤ。窓の外にいる蛍、昨日以上の危機的状況に俺が冷や汗を流していると
「いい加減にしなさい!除霊するわよ!」
我慢の限界が来たのか、窓を開けてそう怒鳴り込む蛍。レンゲを置いて
【不法侵入ですよ!】
「うっさい!黙りなさい!」
蛍が乱入したことでおキヌちゃんは口論モードになる。動く左手でレンゲを取ろうとすると
「みっみー!!」
チビが両手でレンゲを掲げるように持っていた……しかもレンゲにはしっかりオジヤが乗せられている
「サンキュ、チビ」
「みーん!」
頑張ってくれているチビを見て、俺は姿勢を低くしてチビの掲げているレンゲを口に運ぶのだった……
「それで何をしに来たんだ?蛍」
疲れたのかぐったりしているチビを撫でながら尋ねる。蛍は手にした瓶を机の上に置いて
「お父さんから霊力を整える薬。これで少しは楽になると思うわよ」
「わざわざありがとな。さっそく貰うわ」
瓶を開けて錠剤を2つ取り出して口に含む、どうぞとおキヌちゃんに差し出されたグラスの水で飲み込む
「早く調子が整うと良いなあ」
「そうね。だけどまぁ焦っても仕方ないわよ?」
【そうですよ!それに横島さんが動けないほうが、色々と役得ですし……】
普段はお淑やかで可愛いのに時折黒いことを言うおキヌちゃん。油断しているとぱっくりいかれそうと思うのは気のせいだろうか?
ピンポーン
「お客さんみたいね、私が出てくるわ」
おキヌちゃんでは幽霊だから驚かせてしまう。蛍が素早く立ち上がって玄関に向かっていく
「はーい、元気してる?」
褐色の肌をした美しいお姉様「小笠原さん」が何かを持ってリビングに入ってきた。お客さんなので姿勢を正して、昼寝をしているタマモを膝の上に乗せて真向かいに座る小笠原さんを見るのだった……
令子に場所を聞いて横島の家に来たんだけど
(普通にいるワケ)
タマモにチビに蛍におキヌ。令子の所の事務員が殆ど全部揃っていた。来る途中で買ったジュースとアイスを机の上において
「一応お見舞いなワケ、後で食べて」
【ありがとうございます、これ冷蔵庫に入れておきますね】
おキヌがその袋を持ってキッチンへ飛んでいく、物体に触れる高レベルの幽霊。欲しい人材よね……
「それで小笠原さん?「エミで良いワケ」エミさんは何の御用で?」
バンダナで左目を隠している横島と怪訝そうな顔をしている蛍に
「単刀直入に言うワケ、令子の事務所から移籍して欲しいワケ「「お断りします」」
声を揃えて言う横島と蛍。うんうん、判っていた事だけど悔しいワケ
「あはは!ありがと、これで良いわ。うん、今は諦めるワケ。だけど気が向いたら来るワケ。小笠原エミ除霊事務所の扉はいつでも開けておくワケ」
本当に惜しい、令子がこの2人を雇う前に如何して会えなかったのかと思う。GSと言う商売は人の縁を重視するときもある、きっとあたしとこの2人には縁が無かったのだろう
「そうそう、これプレゼントなワケ」
懐から出した和綴じの本を二冊横島の前に置く。蛍がそれを見て
「妖怪全書と陰陽術の……これって!?」
GS見習いとしては破格の知識を持つ蛍はこの文献の価値を正しく理解してくれたようだ
「来てもらうつもりだったから呪術師仲間から買った本だけど、来てくれないなら持ってても仕方ないから上げるワケ。んでたまにはあたしの仕事を手伝ってくれるとありがたいわ。じゃ、あたしは依頼があるから帰るワケ、横島は無理しないでゆっくり学びなさい」
焦っても仕方のないことだ、霊能力と言うのは魂の霊格が深く影響している。膨大な霊力を持つ横島の霊能力が覚醒するのはもっと先のことだろう
「うっす、頑張ります。それと資料どうもありがとうございます」
頭を下げる横島に気にしなくて良いワケと返事を返し、外に停めてある愛車のビモータYB-4に跨りヘルメットを被りながら
(あたしも弟子を探してみようかな)
ヘンリー・ジョー・ボビーの部下はいるけど、弟子はいない。なんか今の満ち足りた令子を見ると弟子を取るのも良いかもしれない……あたしはそんな事を考えながら依頼者と待ち合わせた場所に向かうのだった……
暗い山の中を走る小柄な少女の姿。シズクだ……彼女は焦った様子で山を駆け下りながら
「……力が回復したと思ったらこれはない」
私はそう呟くと同時に地面を蹴って前回り気味に転がる、それと同時に
「キュー!!!」
地面から飛び出して鋭い爪を振るって来る土竜の爪を転がって回避し
「……行け!」
手をふるって水の刃を飛ばすが、当たるよりも早く土の中に潜っていく
(このままだと不味い)
目覚めたばかりだから霊力も竜気も回復していない、それに水も足りない
「仕方ない!」
予定と大分変わってしまうが仕方ない、土竜の攻撃を交わしながら林を抜ける。見えるのは滝と川……いまの状態で恐らく水の中に戻れば最も動きやすいであろう……
(……多分、1回蛇に戻ってしまうけど仕方ない)
高島の転生者に会うつもりだったのに……こんな事ならもっと力を残しておけばよかったと後悔しながら私は水の中へ飛びこんだのだった……それと同時に人間の姿から蛇へと変わっていくのを見て、やっぱりと深く溜息を吐いた……
「キュ?キュウキュ?」
地面から顔を出した猪ほどの大きさの土竜はシズクがいないことに気付き、辺りを見回す。だがその姿がないことに気付き
「ミューミュー」
悲しそうに鳴きながら地面の中へ潜って行った。土竜が見つめていたのは東京の方角……再び騒動が起きようとしていた
リポート10 無垢なる土竜 その1へ続く
次回もまたオリジナル編です。そして怒れる水神ミズチで登場したシズクがレギュラーになる予定の話でもあります。あと土竜が胴動くのかも楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします