横島ですが、最終的にはYOKOSIMAになるのでこれはその第一歩と思ってください。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
リポート9 黒魔術師小笠原エミのスカウト その6
美しいお姉様を犯そうとしていた変態からお姉様を救出して逃げたのは良いけど、蛍達と合流できない……どこを走ってきたのか判らないのだ
(くそっどうする!?)
破魔札と殆ど使えない陰陽術……せめてタマモが居れば攻撃できるのだが、本能に従ってきてしまった為。休んでいたタマモを頭の上に乗せるのを忘れていた
「ん?なんっすか?」
俺の肩を叩くお姉様の指先を見ると扉が見える。なるほどあそこに隠れろと
「了解っす!」
返事を返してその部屋に飛び込む。書庫なのか大量の本が見える、椅子もあるので丁度いい
「降ろしますよ」
ゆっくりと椅子の上に座らせる。女性にしては背格好が良いので、俺のGジャンでも破かれた服を完全に隠すことが出来ず白い肌が見えている
(あかんあかん!!俺もあいつと一緒になってまう)
女性の嫌がることはしてはならない、女性は泣かしてはいけない。これがお袋の教えだ
「助けてくれてありがとう。君は?」
弱々しい声だがそう尋ねて来る。その目は強い意志の光を宿していて綺麗と言うよりかかっこいいと思える
「あ、はい。GS見習いの横島忠夫です」
その凛々しい顔に少しだけ胸が高鳴るのを感じながら名乗ると
「そう……もう1度言うわ。助けてくれてありがとう。私は琉璃、神代琉璃よ」
琉璃……やっぱりこの人が美神さんたちが探していた本当のGS協会長。若いのに凄い人なんだなあと感心する
「神代さんっすね!俺の事は横島で良いです」
とりあえず自己紹介。こんな綺麗姉ちゃんと知り合いになれるとはなんとついているのだろうか?
「横島君ね。よろしく、それよりも早く唐巣神父と合流しましょう。私は霊力使えないし、君もでしょ?」
「うっす。見習いだから破魔札しか使えないっす」
神代さんは顎の下に手を置いて何かを考える素振りを見せたが
「無理ね。逃げましょう。また背負ってくれる?」
「もちろん!」
こんな綺麗な姉ちゃんを背負うなら何時間だって逃げてられる。じゃあよろしくと言う神代さんを背中に背負った所で
「見つけたぞガキィ!「死ねや!この変態ヤロウが!!」ほわああ!?」
書庫の本を投げると重力で失速し、変態の股間を貫いた。股間を押さえて蹲る男の横を通り過ぎ
「美神さーん!蛍ー!唐巣神父ー!!六道さーん!小笠原さーん!チビ!タマモ!俺はここだあああああ!!!」
声のあらん限りの叫び声を上げて再び走り出した。背中の柔らかい感触があれば俺はどこまでだって走っていける!!
「ふふ、ちゃんと2人とも助かったらデートしてあげようか?」
猫のような笑みを浮かべる神代さん。どうもこれが素のようだが……で、デート
「よろしくお願いしまーす!!!!」
俺はそう叫び更に走る速度を上げるのだった……一瞬蛍の顔が脳裏に浮かんで罪悪感を感じたが、これだけの美人のお姉様とのデート
(すまん蛍ゥ!)
俺は心の中で蛍に謝るのだった。これ1回だけ、1回だけなら蛍も許してくれる。そんな淡い期待を抱きながら暗い通路を全力で駆け抜けたのだった……
今物凄く嫌な予感がした。横島に関する何かだ……絶対なにか色気に迷いかけているに違いない……
「唐巣神父。神代琉璃さんってどんな人なんですか?」
名前だけでは判らない。唐巣神父にどんな人か?と尋ねると
「えーとそうだね。猫みたいに自由気ままで……美神君に少し似てるかな?」
それは性格とかではなく外見がと言うことだろう。つまりあの嫌な予感は横島が神代琉璃との間で何かあったということで
「早く合流しましょう!」
フラグはぶち折る為にある。横島は私の物なのだから私以外のフラグなんて全部消し飛んでしまえばいい……
「なんか蛍がどす黒い瘴気を出してるけどどうしたワケ?」
「ほっておいて良いわよ。横島君に手を出す奴をつぶすとか考えているだけだから」
美神さんと小笠原さんの話を聞きながら暗い通路を歩く
「コン」
「み!」
チビとタマモが横島の匂いを追いかけて移動しているからそのうち合流できると思うんだけど、時折風に乗って聞こえてくる横島の悲鳴が気になって気になって仕方ない
「大丈夫だよ。蛍。横島君には精霊石を3個持たせてる、そうそう最悪の事態にはならないよ」
私を励ましてくれるお父さんだけど、正直不安だ。今まで除霊現場はずっと一緒だったし、2人で行動するのが当たり前だった。だけど自分の隣に横島が居ないだけで
(こんなに不安になってしまうのね)
いつも一緒に居る存在がいない。それだけでこんなにも弱気になってしまうとは……と苦笑していると
「胸糞が悪いね。美神君達は見ないほうが良い」
先を調べに行っていた唐巣神父と冥華さんが戻ってきてそう告げる、一体何があったのか?と思うほどの険しい顔をしている
「行方不明~になってた~女性がたくさんいたわ~呪術的な処理で心を砕かれて~完全な生きた人形として~多分黒坂の性奴隷って所かしら~」
間延びした口調だがその声には凄まじい怒りが込められているのが判った。唐巣神父は眼鏡を外してポケットにしまい、ぐっぐっとストレッチをしてから握り拳を作り
「あの外道を叩き潰す!」
「私も行くぞぉッ!!!」
雰囲気を一転させ、荒々しい霊力を纏って走っていく唐巣神父とお父さん。美神さんはそれを見て
「唐巣先生って眼鏡でON/OFFするのよ、眼鏡を外すとあの時の怖い先生に戻るのよ」
お母さんには聞いたことのない話だから、多分この世界特有の事なのね……
「ちなみにその女性達は……」
小笠原さんが尋ねると冥華さんは目を伏せて
「式神の夢の中で終わらせてあげたわ。優しい夢の中で……」
そう、有事の際のオカルト犯罪の特例1が適応する状況だったわけね。私は目を閉じて大きく深呼吸をして
「女性を女性と扱わない外道を叩き潰しに行きましょう!美神さん」
「言われなくても!徹底的に潰してやるわ!」
「あたしもやるワケ。もう男として完全に抹殺してやるワケ!」
横島の匂いを探して歩いていたチビとタマモを抱き上げて
「「「どっち!?」」」
「み、みーん」
「こ、こーん」
怯えた様子で顔を向けるチビとタマモの指差すほうに向かって私達は走り出したのだった……だが忘れてはいけない、動物には生存本能がある。極限まで死を感じたチビとタマモは本来指差す方向を間違えて指差してしまっていたのだ……
横島君に背負われて逃げ回っていたんだけど、呪術師としては3流以下でも降魔術で魔力をブーストさせている黒坂の呪術は強力で広場に追い詰められていた
「ちくしょう。しくった」
「そう言わないで、思ったより入り組んでいたからね」
2人で考えて逃げたが、やはり中を把握している黒坂の方が1枚上手だった
「ひゃひゃひゃ!!!中々に楽しかったぜ、ガキ……」
下卑た笑い声とにやりと笑い私を見る黒坂。そのせいでさっき犯されかけたことを思い出して身体が震える
「神代さん。これ」
横島君が私の手に握らせたのは拳大の大きな精霊石と4000万と書かれた破魔札
「横島君!?」
確かにこれを使えば身を守ることが出来るだろう。呪術師にとって高純度の精霊石は天敵。身を守る事だって出来るだろう
「大丈夫っす!ほら」
もう1つ精霊石を見せる横島君。その手には破魔札が見える……だけどそれは安い程度の低い破魔札だ
「ひゃひゃひゃ!!そんなので俺に勝てると思ってるのかぁ?それよりも捕まえてこっちに連れて来いよ。お前も男だろう?」
ひゃひゃひゃっと狂ったように笑う黒坂の背後には生気のない顔をした女性のゾンビが姿を見せていた。その顔には嘆きと悲しみだけが見える
「その後ろの人たちは?」
抑揚のない声で尋ねる横島君。その肩は怒りのせいなのか激しく震えている
「ひゃは!!!攫ってきて飽きるまで犯してゾンビにしたのさあ?悪いかあ?」
なんて外道……どうしてこんなのがGSなんかをやってるんだろうか?
「それでどうだあ?お前にも「絶対にノゥッ!!!」
黒坂の言葉を遮った横島君は黒坂を指差して
「てめえ見たいなド外道はこのGS見習い横島忠夫がぶちのめしてやる!!!」
「はっ!やってみなあ!出来るもんならなぁ!!!行けゾンビども!!!」
黒坂は素早く後ずさり破魔札を構え、ゾンビを横島君に向かわせる
「こなくそっ!!」
上下左右から振り下ろされる刃を回避し黒坂に向かっていこうとするが
「ひゃはあ!!その程度で!」
黒坂の投げつけた破魔札が炸裂し、横島君を吹き飛ばす
「横島君!?」
霊的防御力がない横島君に今の一撃は……血の気が引いたのを感じたが次の瞬間
「急急如律令ッ!火精招来ッ!!!」
放たれた破魔札から炎が溢れ出し、ゾンビを一体焼き尽くす。解放された魂が天に昇るのが見える
「てめえ陰陽師か!?」
「急急如律令!雷精招来ッ!!!」
黒坂の言葉に返事を返す事無く札を投げつける横島君。その顔にはとんでもない疲労の色が見える……もしかして
(コントロールできてない!?)
霊力をコントロールできていないから必要以上に霊力を使っているのでは!?見習いのGSには良くあることだ
(私が霊力を使えたら)
そしたら少しでも手伝えるのに……握り拳を作ろうとして拳を握る事も出来ず、立ち上がることも出来ない自分が情けなくて涙が出るのだった……
くそったれ……俺は心の中でそう舌打ちした。ドクターカオスが翻訳してくれたと美神さんから受け取った陰陽術の本。それでも特別な字で描かれているらしく美神さんには読めなかった。だけどそれは何故か俺には読めた、だが理解が出来なかった。僅かに覚えることが出来たのは基本の基本
火精招来
雷精招来
の2つだけ。他にも水精招来などもあったが、覚える事が出来たのはこれだけだ。
(くそ、霊力が無くなる)
ほんの僅かしない自分の霊力を遠慮無しに吸い上げていく破魔札。まだ細かいコントロールが出来ないから使うのは止めておきなさいと言われていたが。そんな事を言っている場合ではなかった
(あの外道をぶちのめす!)
それだけが俺の頭を占めていた。女性を女性として扱わず、あまつさえその死体を道具として扱うあの男を許すことが出来なかった。3体のゾンビを倒して、黒坂にほんの僅かのダメージを与えるだけで霊力が無くなり掛けていた
(くそっ!どうすれば良いんだよ!)
あのゾンビは出来れば攻撃したくない、あの人たちも被害者なのだ。出来ることならあの外道だけを叩き潰す……
(!そうだ)
喫茶店であったあの綺麗なお姉様が見せてくれた霊力の篭手。あれならば……だがそんな事が俺に出来るのか?その不安を感じるが、今俺の頭を埋め尽くしていたのは
「とっとと死ねよ。ああ、やっぱり無しだ。てめえの目の前で神代琉璃を犯してやるよ!ひゃはははははははは!!!」
あのド外道を心底憎む!そしてあの人達を憐れむ!
危機的な状況。そして怒りと憐憫と相反する2つの感情……それは横島の中にある膨大な霊力のほんの一部を解放する鍵となった
「精霊石よ!我を護りたまえ!!!」
何度も見た美神さんがやっていた精霊石を結界にする術。その結界に妨害され進む事の出来ないゾンビとなってしまった女性達
(すんません。俺には貴女達を浄霊することが出来ません)
この土壇場で霊力に覚醒した横島の目には見えていた。ゾンビとなってしまった身体の上で鎖で縛られている魂を……ただこれは一時的なもので後に見えなくなるだろう。霊力の本流は横島の体を暴れ回り、その激痛で横島の意識は今にも飛んでしまいそうだったからだ
「う、うおおおおおおおおッ!!!!」
思い出せ。俺は見たはずだ、あの霊力の篭手を……
右手に集まってきた霊力の塊……眩いまでに輝く翡翠色の輝き……そして今俺が欲しいのは
(あの外道を叩き潰す拳!)
人差し指から握りこみ霊力を握り潰す。右手を基本に霊力が集まっていくのを感じる。それと背中に何かの感触
「て、てめええええ!?なんだその馬鹿げた霊力はあああああ!?」
今俺の腕を覆っているのは不安定な霊力の塊。あの人のものとは全然違うが……これで充分!!!
「す、凄い……これだけの霊力をその歳で引き出せるなんて」
ド外道と神代さんの言葉がどこか遠くに聞こえる。今俺に見えているのはド外道の姿とそれを叩き潰す事だけ
乾いた音を立てて砕け散る精霊石の結界。それと同時に背中の何かが爆発する……
「オオオオオッ!!!」
全ての景色が一瞬で飛んでいく感覚。地面を削りながら一気に外道の前まで移動して
「死にやがれ!このド外道があああああッ!!!!」
その加速を全て破壊力に変換させた全力の拳を外道の胴に突き立てた
「げぼお!?」
無様な呻き声を上げて吹っ飛ぶ外道。だが俺の右腕は何の感触もない
(うあ……)
一気に遠ざかっていく景色。俺が最後に見たのは心配そうな顔で駆け寄ってくる蛍の姿だった……
あれは栄光の手じゃ無い……もっと別の何か。私は倒れている横島に駆け寄りながらさっきの光景を思い出していた。翡翠色に輝く不安定な形状をした篭手と信じられない加速。一瞬栄光の手かと思ったけど違う……多分メドーサの見せた魔装術を真似して作り出したのだろう。横島の霊能力は「収束・圧縮」だ。栄光の手と似た理論の魔装術を真似するのはありえない話ではない
「美神君。君はとんでもない子を弟子にしたみたいだね」
眼鏡をかけなおした唐巣神父の言葉も無理はない。広場の床に残る破壊の後……それは横島が移動した時に出来た傷跡だ……周囲のゾンビは動く事無くその場に止まっている。あの外道が意識を失っているからだろう
「信じられないですけどね」
美神さんも驚いている、さっきの霊力の篭手と霊力を使った高速移動。今までの横島には無かった事だ……勿論私も知りえない、横島の新しい戦い方だ
「大丈夫~琉璃ちゃん~」
冥華さんが横島のGジャンを着ている女性に声をかけている。青みが掛かったショートへヤと紅い目をしている女性……多分あれが神代琉璃さんなのだろう
「は、はい大丈夫です。横島君のおかげで助かりました」
なんか……イラッとする。そう新しい敵が増えたような……
「ごばあ」
お父さんが噴出すのが見える。手元を見ると「神代瑠璃 7.7倍」の文字。ああ、なるほど
(あれは敵なのね!?)
敵と認識した、だからあの人に優しくする必要はない、それに横島は渡さない。だから本当はしたいけど女の敵の処分は
「美神さん、小笠原さんよろしくお願いします」
横島の拳で悶絶している女の敵を指差す。美神さんと小笠原さんは笑顔で握り拳を作り
「覚悟は良い?男として生まれた事を後悔させて上げるわ」
「死んでも魂を括って何度でも引き戻して殺してあげるわけ。喜びなさい」
子供が見たら大泣きするような笑顔で悶絶している外道の襟首を掴んで立たせ
~自主規制~
見せられないよ!
「や、やめえええええ!死ぬ!げぼお!?ごぼおお!!!」
「「オラオラオラオラッ!!!!」」
外道の絶え間ない悲鳴と吐血する音。それでもなお殴る蹴るの暴行を止めない2人、だが世の中には良い言葉がある「悪人に人権なし」どっちにせよ死刑が確定するだけの罪を犯しているのだから問題ないだろう
「とりあえず、まだ先があるんだ。ここで少し休もう」
ゾンビを全て浄霊したところでそう笑う唐巣神父。神代さんは冥華さんの治療を受けているし
「うう……」
「はいはい。大丈夫よ横島」
霊力の消耗で呻いている横島。流石に今は動ける状態ではない、夜になってしまうがそれもしかたないだろう
「コン」
「みー」
もぞもぞと私の横を通って、横島のおなかの上で丸くなるタマモとチビに苦笑しながら
(良く頑張ったわね。横島)
霊力の覚醒に成功した横島の頭を優しく撫でるのだった……
「もう。ゆるひてええええ」
「「無駄無駄無駄無駄ッ!!!!」」
とりあえず美神さん達が落ち着くまでは休憩する事にするのだった……1人だけ離れているお父さんは険しい顔をしている
(なにかあったのかしら?)
私達では感じ取る事の出来ない何かを感じているのかもしれない……
(ムルムル……聞こえるかね?私だ)
(アスタロト?久しいな。ここに来たと言うことは私を助けに来てくれたのか?)
(成り行き上な。但し助けるのも条件がある)
(魔神同士とは言え等価交換は当たり前だ。後に聞こう、早く解放してくれ。ここは好かん)
優太郎ことアシュタロスは魔神同士の精神感応を使ってムルムルの場所を調べているのだった……
リポート9 黒魔術師小笠原エミのスカウト その7へ続く
自慢の拳。スクライドネタですね。栄光の手とシェルブリットって凄く似ているとおもうのです、栄光の手の進化版として今後出して行くつもりなので楽しみにしていてください。次回で戦闘は終わりの予定です、原作のイベントを全然できてないですが、それはスルーしていただけると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします