戦闘メインになると思います。ただ横島は戦力的に未知数なのでメインは蛍と優太郎ですね。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
リポート9 黒魔術師小笠原エミのスカウト その5
既に廃墟になっている旧GS協会本部の前で守衛にカードを渡される。金属製のカードで恐らく、この先のゲートの解放に使われるものなのだろう
「探索時間は2時間までだ。それ以上を過ぎたら、こちらからは一切の身の安全は保障しない。素早く目的地に向かいそこに保管されている書類を回収してくるように」
その言葉に頷き開かれたゲートから廃墟の中に入る。ちらりと後ろを確認し、飛び出せるように準備している唐巣神父に目配せしてゆっくりと廃墟の中に足を踏み入れる
「さてと準備を始めようか」
廃墟の中に入り、監視カメラがない場所を選び。鞄から除霊具を取り出していると
「優太郎さんはスパイですか?」
呆れたような横島君の背負っている鞄からはタマモとチビが顔を出している、索敵に特化しているタマモとチビは念のための備えだ。攻撃力のあるタマモは顔を出してそのまま横島君の頭の上へ移動するが、チビは鞄から出てくる気配がない。周囲の気配で怯えているのだろう……
「スパイか。それもいいねえ」
本当は魔神だけどねと心の中で付け加え、守衛に渡された役に立たない札と除霊具を破壊する。
「あの守衛もグルみたいね。すっかすかだわ」
渡された除霊具は外見だけでスカスカだ。間違いなくあの守衛もグルだろう、使えると思っていた道具が実践で使えない。その混乱で一気に全滅と言うのはありえない話ではない。恐らくこのパターンで何十人も死んでいるのだろう。そしてまた依頼を下げて時機を見て依頼を出す。中々考えられている
「横島君にはお札を色々持って来た。全部持って行ってくれ。あとおまもりに精霊石を」
精霊石は身につけているだけでもある程度の効果はある。横島君を護ってくれるはずだ……本当は霊力を込めて爆弾や結界として使うのがベストなんだけど……横島君の霊力の幅を考えると身につけるのが一番だろう
「蛍はどうする?」
蛍はサイキックソーサーと霊力パンチがある、後は何を使う?と尋ねると
「霊体ボウガンと神通棍がいい」
蛍にボウガンと神通棍を渡し、自分もボウガンと破魔札を装備して
「横島君。蛍、警戒しながらついてきてくれ、とりあえず最初は目的地の地下3階を目指す」
予定では途中で合流してくれるはず。それまではまずは依頼を遂行する事を考える
「了解っす。足手纏いにならないように頑張ります」
「大丈夫よ。横島なら」
「ココーン」
「ミミー!」
蛍達に励まされ「うん、俺頑張る」と呟いている横島君を見ながら、簡単な霊視を行う
(2階までは大丈夫。問題は3階からか)
2階までは只の廃墟だが、3階からは瘴気を感じる。若干の霊気を感じるから悪霊程度はいるが、まぁ大丈夫だろう
「さあ。行こう私が先頭に立とう」
霊力魔力を封印していても魔神の私だ。この程度の悪霊なら近づいてきただけで向こうが消滅するはずだ……渡されていた地図を見ながら地下へ進む階段を探しながら歩き出したのだった……
横島君達が廃墟に入ってから20分後。私達は素早く守衛室に近寄り中を窺う
「楽な仕事だよなー。人間送り込んでそれで終わりだぜ?」
「そーそー黒坂さんが要らなくなった女もくれるしなー。これで給料も貰えるって最高だよなー」
下衆な話をしている守衛2人。やはりこの周辺は神代幽夜の部下か……
(美神君と小笠原君と冥華さんはここで待機。逃げてきたらお願いします)
頷く美神君達を見ながら守衛室の扉を蹴り空けて
「GS唐巣和宏だ!大人しくしろ!」
青い顔をして逃げようとする守衛2人の腹に拳と膝蹴りを叩き込んで意識を刈り取ると
「流石唐巣先生。昔の喧嘩の腕は健在ですね」
笑いながら手を叩く美神君。私はずれた眼鏡を直しながら
「茶化さないでくれたまえ。あれは黒歴史なんだ」
破門されていた時のことを言う美神君に眉を顰め、気絶した守衛室を調べる
「ちょっと急いでね~横島君達が3階に向かっているみたい、ちょっと瘴気が出てるから危険よお~」
冥華さんの言葉に焦りながら守衛室を調べる。どこかに鍵があるはずなんだが……
「あ、あった!唐巣神父見つけたワケ!」
呪印が刻まれた鍵を掲げる小笠原君。良かった、これで追いつける。結界を解除して旧本部に入る
「唐巣先生。変な空気ですね」
「そうね~これは結構不味いかも~」
私もそれを感じている、空気が淀んで瘴気になっている。下手をすると限定的な魔界にもなりかねない、これは一刻も早く合流しないと
【【【アアアア……】】】
【【【ウボアアアア……】】】
うめき声を上げながら次々姿を見せる人魂型の悪霊。この瘴気に引かれてきたのだろう
「美神君!ここは私が引き受けた!小笠原君は冥華さんを頼む!」
どうもこの調子で沸いてこられると挟み撃ちになる。幸いこのタイプの悪霊は私の得意分野だ、適材適所と言うところだ
「判りました!無理だと思ったら逃げてくださいよ!」
「そう言うワケ!行きますよ」
「唐巣君~気をつけてね~」
地下の階段の方に走っていく美神君達を見ながら周囲の悪霊を見つめる。私の霊視には見えている
(不憫な……)
ここにいる悪霊はここの調査に来たGSの成れの果て。死んだあと瘴気のせいで悪霊とし化してしまった者達
《草よ木よ花よ虫よ……我が友たる精霊達よ》
せめて私が癒そう。破門されたとは言えこの身は神父。助けを求める者を見捨てることなど出来はしない
《邪を砕く力を分け与えまえ!汝らの呪われた魂に救いあれッ!!!アーメンッ!!!!》
私の両手から飛び出した破魔の光が悪霊達を浄化させ、昇天させていく……だがこれで終わりではない
「今日の私はこの程度では終わらない。さぁどんどん来たまえ、天の国へ導こう」
次々姿を見せる大量の悪霊。彼らもまた犠牲者……彼らを救うのが私の宿命なのだから、懐から聖書を取り出し
《草よ木よ花よ虫よ……我が友たる精霊達よ》
聖書で破魔の力を強化させながら再び聖句を口にするのだった……
優太郎さんの後ろをついて階段を駆け下りて来た。今の階層は地下4階の狭い通路が続くフロアだ
「ひいいっ!!まだ来てるううう!!!」
【【【アアアアッ!!!】】】
追いかけてきているゾンビを見て絶叫する。タマモとチビを抱き抱えて少しスピードが落ちているとはいえ、全力疾走しているのに全然引き離せない、ゾンビ早い!?もっと遅いイメージだったけどかなり早いようだ
「もう少しだ!頑張れ横島君!」
「は、はひいいい!!!」
スプリンター?と尋ねたくなる綺麗なフォームで走りながら叫ぶ優太郎さんに頷く、3階からゾンビに追われているが狭い道と言うことで禄に反撃できず、走り回っているのだ。
「グルルル」
腕の中で唸るタマモ、確かにタマモの狐火なら攻撃も出来るかもしれないが
「止めさせて。ここで使ったら大変な事になる」
埃や紙が散乱しているこの部屋で火を使えば火事になる。後から追いかけてくる美神さん達も危険なので
「もうちょい我慢や!今は逃げるで!」
「クウ……」
俺のために頑張ろうとしてくれているのは判るのだが、場所が不味い
「光が見えた!行くぞ!」
更に走る速度を上げて暗い通路を抜けるとそこは、廃墟の中とは思えない新品のコンクリートつくりのフロアだった
「ビンゴッ!!横島君は下がりなさい!蛍!」
「了解お父さん!」
素早く反転した優太郎さんと蛍が並んでボウガンと拳を構える
「す、素手で戦う気っすか!?」
軽く素振りをしている優太郎さんに叫ぶと振り返り、ニッと白い歯を見せて
「見ていたまえ!!ドラドラドラドラッ!!!!!」
両手に霊力の光を宿してゾンビを滅多打ちにする優太郎さん
「うえ?」
美神さんとも蛍とも全く違う除霊方法だ……しかし強い。ドンドン浄化されていくゾンビの大群
「ドラァッ!!!」
【うぼおおお】
胴体を貫かれ消滅していくゾンビ。そして振り返りニヒルな笑みで
「私もやるものだろう?」
ドヤアっと自慢げな顔をする優太郎さんの背後からゾンビが手を伸ばすが
「お父さん!」
「ホワタァ!?」
いきなりボウガンの矢が頬を掠めたことで絶叫する優太郎さん。だけど俺も絶叫するとおもう
「おお。油断大敵だな!気合を入れよう。無駄無駄無駄ッ!!!!」
どこの吸血鬼だ!?と叫びたくなるような気合を入れたラッシュでゾンビを蹴散らしていく優太郎さん
「良し!タマモ。ゴーッ!」
これだけ広ければタマモの狐火も問題なく使える。タマモもそれが判っているのか、気合の入った様子で
「コーン」
俺の腕の中から飛び出して尻尾を立てるタマモ。俺も懐から破魔札を取り出して
【うぼおお!】
コンクリートをぶち抜いて姿を見せるゾンビ目掛けて破魔札を投げる。カッと爆発してそれが優太郎さんを巻き込んで
【ギギャアア!!】
「ぐああああ!!!」
コンクリートの部屋にゾンビの断末魔と優太郎さんの絶叫が重なって
「どないしよ」
ピクピク痙攣している優太郎さんを見てそう呟く。今の爆発とタマモの狐火のおかげでゾンビが出てくる事は無くなったが……痙攣している優太郎さんをどうしようと動揺していると
「仕方ないわ。こういうこともあるわ」
ぽんっと俺の肩を叩く蛍と足元にじゃれ付いてくるタマモを見ていると
「横島君!蛍ちゃん!大丈夫……何があったの……」
「本当に何があったワケ?」
「あら~横島君~もうちょっと霊力の調整を覚えないと駄目よ~」
式神で見ていたであろう冥華さんの言葉に返事を返し、痙攣している優太郎さんの手当てをする為に蛍から救急セットを取り出すのだった……
横島君達に追いついたのは良いけど、痙攣し意識のない芦優太郎と申し訳なさそうにしている横島君。炸裂したと思われる破魔札を見て。恐らく破魔札の威力が上がりすぎたのだと推測する
(良い経験になったのかもしれないわね)
ある程度の戦闘経験を積む事が出来たのは大きい。だけどここからは
「お疲れ様。ここからは私達が先導するわ。少し身体を休めて」
霊力は魂の力だが、肉体的な疲労にも影響している。そろそろ休ませて上げるべきだろう。無論私達も同じだけど……
「待たせたね。中々手間取っててね」
唐巣先生が追いついてくる。ちょっと疲れているような気配もあるけど、まだまだ元気そうだ
「ふ~式神を偵察に出すわ~少し休みましょう」
座り込むと同時に札を投げて式神を飛ばす、冥華おば様。ここまで走り続きだったのと、霊力の消耗もあるので少し座り休む事にする
「つまりだね。霊力と言うのは魂の力なのだよ?怒りとかの感情も大きく影響する」
「はぁ……なるほど」
芦優太郎が横島君に霊力についての説明をしているのを見ていると、エミがイラついた様子で足踏みしながら
「だけどそんなに休んでいる時間もないワケ。神代琉璃が危ない」
その名前に横島君がさっきまでの申し訳なさそうな雰囲気はどこに行ったのか?と尋ねたくなるような期待に満ちた顔で
「お嬢様のようなお名前!エミさんその方は「はいはい。静かにしてようね」ドンタコスッ!?」
奇声を上げて倒れる横島君。振りぬいた姿勢の蛍ちゃんの拳が恐ろしい
「それはあれかい?巫女としての役目は終わったと?」
回復してきた芦優太郎が尋ねる。中々詳しいわね……まぁあれだけの情報網を持っているなら納得だけど……
「そう言うわけ。今日の夕方に封印が解除されれば彼女は巫女としての力を奪われる。だから急がないと」
黒坂信二はかなりの女好きで知られている。その呪術を使い女性を強姦した罪で警察にも追われている。となると神代琉璃の身が危ない
「出来れば~早く助けてあげたいの~彼女の才能が消えるのは惜しいわぁ~」
巫女である以上純潔でなければ能力を遣うことが出来ない、ここからは時間のロスが痛い。だが……
「ここからが問題なのよ」
ここから先は神代幽夜が作った施設。普通に進めるとは思えない、罠も悪霊もゾンビいるだろう
(時間はないけどここは慎重に進まないと)
罠に掛かったりすれば時間をロスする。ここは少し時間を消費してもいいから、体力とかの回復を優先……
「!!」
突然横島君が起き上がり、きょときょと辺りを見回す。それを見たチビが
「みう?」
どうかしたの?と言いたげに首を傾げていると横島君は
「すんません!先行きます!誰かが呼んでる!!!!」
そう叫ぶとチビを蛍ちゃんに投げて走り出す。ちょっと!?何を考えてるのよ!!!
「止まりなさい!横島君!」
「横島待ちなさい!」
私と蛍ちゃんが叫ぶが、横島君の姿はあっと言う間に見えなくなる。こんなときに単独行動って何を考えてるのよ!
「いや、美神君……もしかすると横島君の霊能力が研ぎ澄まされているのかもしれない」
危機的状況による霊能力の覚醒。それはないわけじゃない……それに前のミズチの事を考えてもその可能性は極めて高い
「話している時間があるなら追いましょう!横島が危ない!」
蛍ちゃんの言っていることは正しい。横島君が使えるのは破魔札と不安定な陰陽術。神代幽夜でも黒坂信二に会っても危ない
「みー!」
「こーん」
鳴いて走っていくタマモとその上を凄まじい勢いで飛んでいくチビ。そして2匹を追いかけていく蛍ちゃん。私達も少しの休息を済ませ、冥華おば様の式神と蛍ちゃんの姿を追って走り出したのだった……
身体を動かす事が出来ないのに意識がハッキリしている。そんな状態で何年過ごしたか判らない……だけど突如
「うっ……」
私を押さえ込んでいた水晶が砕けその場に倒れこむ。2年の間に筋肉が鈍っているのか動く事も身体を動かす事もできない
「けひゃひゃひゃ!!!よー神代琉璃ィ?お前はもう要らないんだとさ!」
耳障りな声が聞こえる。だけど視界はぼんやりして声の主を見つけることが出来ない、だけどこの声には聞き覚えがあった
(黒坂信二)
私に何かをして意識を奪った張本人。怒りを感じるだけどそれよりも感じるのは生理的な嫌悪感
「けひゃひゃ!だから俺様の女にしてやるよぉ?けひゃひゃひゃ!!!」
狂ったように笑いながら私の服に手を伸ばす黒坂。逃げようにも身体は動かない
(嫌だ!嫌だ嫌だ!!!)
こんな下卑た男に素肌を見せるのは嫌だ、それ所かこのままでは犯されては神代の巫女としての力を失う。動かない身体で逃げようとするが
「ひい!?」
背後から手を伸ばされ胸を触られて、言いようの無い嫌悪感と恐怖で上ずった悲鳴が零れる
「ひゃひゃ!!歳の割には良い身体をしてるなーけひゃひゃ!!!さーてじゃあそろそろ脱ぎ脱ぎしましょうねー」
私の服に手を伸ばす黒坂。それと同時に強い力で服を引っ張られ破かれる。露になった素肌と、更に楽しそうに笑う黒坂……恐怖のあまり目を閉じて少しでも抵抗と動かない体を動かそうとした瞬間
「何やっとるんじゃアア!この性犯罪者がああッ!!!!」
「ぐげえ!?」
バーンと開かれた扉から勢い良く膝蹴りを放ちながら飛んできた、紅いバンダナにGジャン姿の青年は私を見ると
「ぶぼお!?なんて刺激的なお姿を……ええい!これ!これ着てください!!」
鼻血を出す。それはまぁ無理もない、今は服の前面を破かれて下着が露出してしまっているから、だけど青年は自分が着ていたジャケットを脱いで私の肩から着させて素早くボタンを締めて
「すんません!失礼します!」
私にそう声をかけてから私をおんぶした青年は
「捕まってて下さい!唐巣神父とか美神さんと合流します!」
(助けに来てくれたんだ)
唐巣神父は良く知っている。あの人には色々なことを教わったから、ただ美神と言う名前に聞き覚えがない、もしかするとこの青年のGSの師匠なのかもしれない。
「ああ!蛍-!タマモー!俺はここだー!!!早く合流してくれええ!!!」
そう叫んで走り出す。背後からはおぞましい霊力と不快感を感じさせる黒坂の声が響いてくる
「待ちやがれこのクソガキ!そいつは俺のもんだ!返しやがれエエエ」
何を勝手な事を言っていると心の中で叫ぶ。残念な事に今は叫ぶ事は出来はしないが……
「くそったれ!怖い!くそ怖ええ!だけど女を見捨てるなんて出来るかああ!!!!」
涙を流し、鼻水を垂れ流しても私をしっかりを背負い走っていく青年
(面白い奴……)
あまり男性は得意ではないが、この青年はなんと言うか面白い……私は小さく笑い、辛うじて感覚の戻ってきた腕でしっかりと捕まりなおすと
「こ、この柔らかさわああ!!!行ける!俺はいけるぞオオオオオ!!!!」
そう叫んで加速する青年。助平だけど嫌悪感はあんまり感じない。なんと言うか面白いと言うのが私の感想だった、それに優しいというのも判る。これが私「神代琉璃」と「横島忠夫」の初めての出会いだった……
リポート9 黒魔術師小笠原エミのスカウト その5へ続く
はい。今回はここまでです。アシュ様がラッシュをしているのはスルーしてくださいね。私の好みなだけですので、最後の登場した「神代琉璃」の容姿はISの「楯無会長」をイメージしてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします