最後の最後の方でエミを出して行こうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
その1
リポート9 黒魔術師小笠原エミのスカウト その1
チビの朝の散歩の前に電話がなり、誰だろうか?と思いながら電話を取ると相手はお袋だった
「うん。うん……そうなんや、楽しそうで何よりやな」
ナルニアでそれなりに楽しく暮らしているというお袋。あの2人ならどこでも暮らせると思っていたけど、かなり早く適応できたみたいだ
『それで?蛍ちゃんには迷惑はかけてない?』
「かけてないで~蛍に迷惑なんかかけれんわ」
料理をしてくれるし、掃除もしてくれる。GSの勉強に学校の勉強まで見てくれる蛍に迷惑なんかかけれない。
『それなら良いけど……GSの勉強の方はどうなの?』
うっ……お袋の言葉に少し呻く。ミズチと戦ったときに使えた陰陽術はもう使えないし、まだ霊力を上手く収束も出来ない。今出来る事と言えば破魔札とかの札を使うくらいだ
「今は蛍と一緒に美神さんって言うGSの所で勉強してる。なんとかお札は使えるようになったかなぁ?」
『少しは進歩があるみたいだね。まぁあんまり蛍ちゃんに迷惑をかけるんじゃないよ』
繰り返し迷惑をかけるんじゃないよと言うお袋に判っていると返事を返していると
「みーみーみー」
チビが早く散歩に行こうよと言いたげに俺の肩の上で鳴く。かれこれ20分は電話しているから我慢できなくなったのだろう
『忠夫?今の奇妙な鳴声は何?』
あー確かに奇妙な鳴声だよな。なれると可愛いけど
「妖怪の赤ちゃん。なんか懐いて付いて来たから美神さんに許可を貰って育ててる」
「みみーん!」
短い手を振り鳴くチビ。朝から元気一杯である、この姿を見せてあげたいとおもう。本当に可愛いから
『ふーん……まぁいいけど……危なくないの?』
まぁ妖怪と聞けば普通は危険と考えるのが普通だけど、チビは普通のグレムリンと違ってかなり大人しいし、頭も良い。駄目な事は駄目と言えば1回で覚えてくれる。下手な犬よりもはるかに賢い
「危なくない、危なくない。お袋も見たらきっと可愛いというと思うで」
ちょっと大きめのハムスターと言う感じだが。つぶらな瞳と羽。更に短い手足が愛敬たっぷりだ
【横島さーん?そろそろ散歩に行かないと学校に間に合いませんよ~】
そろそろ電話を切ろうと思ったところでおキヌちゃんがそう声をかけてくる。そして電話越しにとんでもない威圧感を感じる
『……忠夫?今の声はなんや?女の子みたいやったけど?』
怖ええ!!とんでもなく怖ええ!!!
「え、えーと。おキヌちゃんって言う幽霊の子で……なんかたまーに家に来る」
正直に言うとお袋はドスの聞いた声で
『代わりなさい。今すぐに』
「は、はひ!!おキヌちゃーん!お袋が電話代わってって!んじゃあ俺は散歩に行くから!行くぞチビ!」
「みーん!」
俺にはとてもではないがこの雰囲気に耐えることが出来ず、チビのリードを握り逃げるように家を後にしたのだった……
横島さんのお母さんからの電話……これは予想よりも大分早いですね。横島さんから渡された電話を手に大きく深呼吸をしてから
【どうも、幽霊のおキヌです。今電話を代わりました】
ここが多分私にとって一番最初の勝負。百合子さんとの会話が今後の私に大きく関係しているはずだから
『幽霊……本当に?』
疑うような言葉。まぁ普通の幽霊は物とかには触れないだろうし、一般人に声をかけるのも難しいから
【はい。300年ほど前の幽霊です。ちょっと難しいかもしれませんが、そっちに人魂を送ってみましょうか?】
私自身が行くのは難しいが、人魂くらいなら電話線を通して送れるかもしれない
『そ、そう?じゃあお願いし……ッきゃあ!?』
【すいません。早すぎました?】
思ったとおり人魂を送れたようだけど、電話越しに悲鳴が聞こえてくる。少し早かったかもしれない
『し、信じるわ。おキヌさんが幽霊って』
【ありがとうございます】
そのまま暫く百合子さんと話を続ける。横島さんは鬼と言っていたが、優しいし、面倒見も良い。ただ少しばかり厳しいだけだ。
その事を私は知っている……
『迷惑をかけているみたいだねえ。ごめんね?』
私が横島さんの服の洗濯とか料理をしていると知ってそう謝ってくる百合子さん
【いえいえ私が好きでやっていることなので】
横島さんが好きで諦め切れなくて、幽霊に戻ると知っても逆行してきたのだ。それくらいはどうって事はない
『もしかして蛍さんに聞いたんだけど貴女も前世でうちの忠夫と知り合いだったの?』
前世?どういう説明をしたか知らないけど、逆行前を前世とするなら関係があっただろう
【はい。私は横島さんの事をとても良く知っています。女好きだけど、優しくて義理人情に厚い人だって】
横島さんはきっと女好きを公言してなければきっととてもモテるだろうと私は思っている。顔はそこそこ整っていると言えるし、優しいし……1度掴んだ手は絶対に放さないし……
『そうなの……少し話をしただけだと貴女はとても良い子みたいね。幽霊にしておくのが惜しいわ』
大分先になるが私は生き返ることが出来る。だけどそれは今は誰にも言えない、言えるとしたら逆行の記憶を持つ人だけだ……今の百合子さんには言えない
【そう言ってもらえると嬉しいです】
少なくとも好意的に思って貰えているようだし、ファーストコンタクトは悪くないかもしれない。電話越しだけど
『もう少し色々話をしたいけど仕事の時間だから失礼するわ。じゃあね』
そう言って電話を切ろうとする百合子さん。だけどこれだけは言っておかないと
【私は横島さんが大好きです。今回は絶対に何があっても諦めません、百合子さんが何と言おうと、私は今回は自分の想いを遂げますので】
捲くし立てるように言う。前は諦めてしまった、そして嫌だったけど祝福してしまった……だけど今回は違う。絶対に諦めないと言う意思をこめて呟く。聞こえたかどうかは判らない、ツーツーっと言う音がするから聞こえてないのかもしれないけど、自分の誓いを再確認できたのでよしとしよう
「わあああ!遅刻!遅刻してまううう!!!」
散歩から帰ってきて慌てて着替えるために自分の部屋に駆け込む横島さん。時間を見ると確かに遅刻ギリギリの時間だ、ご飯を食べている時間がないだろうからおにぎりを素早く作ってラップで包む。玄関の鞄に横島さんのお弁当を入れていると
「じゃあ行ってくる!!!」
靴を履いて鞄を抱えて出て行こうとする横島さん。いつものバンダナはポケットに入れてあるらしく、巻いてないのが何か新鮮だった
【これおにぎり途中で食べてください】
「サンキュー!じゃあ行ってくる」
今度こそ家を出て行った横島さん。さてと今度はチビちゃんの……あ、あれ?
【チ、チビちゃん!?どこですか!?】
玄関に放置されたリードと首輪。しかしチビちゃんの姿はないまさか……
【学校?】
もしかして鞄に潜り込んで一緒に学校に行った?まさか……そんな。そこまではしないだろう……
「みー♪」
「のわあああああ!?」
おキヌが冷や汗をかいている頃。鞄から元気良く飛び出したチビに絶叫している横島だった……
GS協会の頭の固い役人と話し疲れた私はそのまま先生の教会に来ていた。手にしている書類には極めて信憑性が低いという文字が踊っている
「……そうかい。GS協会の上役はそんなに腐っているのかい」
珍しく怖い顔をしている唐巣先生。私が提出したミズチのレポートは信憑性がないと言うことで不受理。最初の話していた報酬の2億も分割支払い。しかも信用しないと言っておいて見鬼くんの情報記録を寄越せと言うのでコピーを渡してきた。勿論要所要所はカットしてある、行く前にカオスに陰陽術の本を見せて記録を編集してもらったのは正解だったようだ……
「最悪私が死んでも良いって思ってたんじゃないですかね」
GS協会にしてみればフリーの私は目の上のたんこぶ。しかも最近は良心的と言われ、それなりに評価も上がってきている。それを邪魔に思ったのかもしれない
「その可能性はあるね。やれやれ……先代の総会長がいれば」
溜息を吐く唐巣先生……前のGS協会の長は六道でも優秀と言われた式神使いだった、今は六道とも何の関係もなく霊能もない一般人が仕切っている。協会の長もその親戚がGS協会の長を務めていると聞く、そのせいで霊能のある普通のGSは動きにくい状況にある。私も唐巣先生も……例外ではない
「私の方から六道の家に連絡しておくよ。この件については気になる事もあるしね」
「それはミズチのことですか?それもGS協会?」
私も裏のネットワークで聞いている噂がある。今前協会の長の娘「神代琉璃」はなくなった父の跡を継ぎGS協会の長になると発表していた。式神使いとはしては平凡より少し上だったらしいが、高い霊力と柔軟な発想で22と歳若いが、冥華おば様に指名された人物だ。それもあって有能な霊能力者だと聞いていた。だけど今は霊能力のレの字もない一般人がGS協会の長となっている。その理由は神代琉璃の病気による代理らしいが……2年間何の反応もないのは気になる
「……長期療養と聞いているが、かれこれ2年。これは流石に怪しいと言わざるを得ない」
「確かに、しかも見舞いも全て断っている。これは何かありますね」
前々から怪しいと思っていたが、今回ので確信した。私がGS協会に行くと同時に目を見開いていた上役連中……私は死ぬと判っている場所に送り出されたのだと……
「私と六道家が動く、美神君は目立たず普段通りの仕事を「お断りします。この美神令子……馬鹿にされたまま引き下がれません」
利用し、なおかつ殺そうとしていたと知ってはいそうですかと引き下がれるわけがない。
「……言い出したら聞かないか。判った2人で動こう。まずは六道の屋敷に行こう。冥華さんが調べてないわけがないからね」
確かにあの笑顔の裏で何を考えているのか判らない冥華おば様ならもう調べているかもしれない。1度聞きに行ってみよう、2人で教会を出ようとして
「そういえば唐巣先生。横島君と蛍ちゃんのプロフィール見ました?」
GS協会に行ったついでに横島君と蛍ちゃんの見習い登録の書類を更新しに行ったんだけど、閲覧記録があったので尋ねてみると
「いや?私はここ数年GS協会には顔を出していないが?」
唐巣先生じゃない……都内で見習いのプロフィールを見れるフリーのGS……その数はかなり限られる。冥子はまず違うし……
「まさかエミの奴!すいません!ちょっと急用を思い出したんで!!!」
唐巣先生に謝り。私は乗って来たコブラに乗り込んで横島君の高校に向かった。私の予想が当たっていたら、横島君と蛍ちゃんを引き抜くつもりだ、間違いない
「そうはさせないわよ」
私はハンドルを握り締め、アクセル全開で走り出したのだった……
横島が帰ってくる時間だから門の近くで待っていると案の定大きな欠伸をしながら、横島が顔を見せるのだが
「みー」
頭の上にチビが乗っている。家で見ないと思ったら横島についてきてたのね
「おかえ……「コーン」えっ?」
私の鞄から飛び出して横島の足元に駆け寄るタマモ。全然気がつかなかった、尾が8本になったことでかなり力を取り戻していたようだ。私にも判らない幻術とは……同じ幻術使いとして驚く
「おータマモに蛍。迎えに来てくれたんか?ありがとな」
タマモを抱き上げながら笑う横島。一瞬タマモの勝ち誇った笑みを見ていらっとするが今はまだ狐。そこまで目くじらを立てるものではないと自分に言い聞かせる。
「ええ、いい天気だし散歩しながら帰りましょう?」
今日はおキヌさんが料理を作る番なのでゆっくりできる。無論邪魔もないはずなので心休まる時間を過ごせるはずだ
「みみー」
近くの公園で元気に飛び回っているチビとその後を追いかけているタマモ。チビはまだまだ子供なので何をしでかすか判らないので監視をしてくれているのだろう。横島と並んでその光景を見ていると平和だなあと思う
「みーん!」
「ココーン!!!!」
ジャングルジムのボルトに手を伸ばし解体しようとするチビを引き離すタマモ。基本的に悪戯はしないんだけど偶にこういうことをしてくるから困る
「あちゃー、もっと言い聞かせんとなぁ」
頬をかく横島。基本的にチビは横島の言う事しか聞かないから、躾をしている横島がまいったと言うのは当然だろう。
(あー良い気分)
太陽の光も暖かいし、近くに感じる横島の気配もとても心地よい。このまま眠ってしまいたくなる、うとうとしていると
「随分探したワケ。おたくらが横島忠夫と芦蛍で良いワケ?」
突然聞こえた声とかなりの霊力に驚きながら目を開く、褐色の女性が私と横島を見ていた、私は彼女を見て思わず
「小笠原エミ……」
私は知っている黒魔術に長けたGSとして、そして美神さんのライバルのような関係として
「あたしを知ってるワケ?令子にでも聞いたワケ?まぁそこはどうでも良いか」
小笠原さんは私と横島を見てふふっと笑いながら
「あたしはおたくらが欲しいワケ?令子の事務所をやめてこっちに移籍しない?」
笑顔だけど邪悪な光をその目に宿し、私と横島を見てそう言い切ったのだった……
「み?」
「コン?」
間延びしたチビとタマモの声がむなしく公園に響くのだった……そして横島はぷるぷると震えていた
それは横島がエミへと飛び掛る5秒前の出来事だった
リポート9 黒魔術師小笠原エミのスカウト その2へ続く
エミさんが登場しました。本来は横島が引き抜かれるイベントですが、それは無しにしてGS協会の闇の話を書いていこうと思います。その間にエミさんのスカウトがある予定です、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします