GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はタイトルの「幽霊少女と蛍と狐」の狐がメインになります。いいまでは「幽霊少女」の「おキヌちゃん」がメインでしたからね。この次は蛍と来て、その次は3人と言う感じで進めて行こうと思います。


その4

 

 

レポート4 幽霊少女と蛍と狐 その4

 

山歩きとホモ騒ぎで疲れ果て、普段より大分早い時間に眠りに落ちたせいか中途半端な時間に目を覚ます。ちらりと時計を見ると

午前零時を少し過ぎた所だ。寒い寒いと思いながら一緒に寝たタマモをカイロ代わりに抱き抱えようとして

 

「んお?タマモー?」

 

いるはずのタマモの姿がない。眠いのを我慢して目を開けるが近くにタマモの姿はない

 

「どこに行ったんだ」

 

いつも一緒なので姿が見えないと不安になり。眠い上に寒いが布団から抜け出し、タマモの姿を探す

 

「部屋の中にはいないな。となると外か?」

 

窓の外を見る。ちらちらと降る雪と闇の中。金色の光が走っていくのが見える

 

「タマモ……か?」

 

タマモの毛は金色に近い。あれは多分タマモのはずだ……浴衣を脱いでいつものジーパンとジージャン。それと防寒用のジャケットを羽織りバンダナを頭に巻いて

 

「ったく1人で出歩くなって言ったのに」

 

俺にとっては可愛い子狐だが、タマモは九尾の狐と言う強力な妖怪らしく、名を上げたいGSや下っ端神族とかに狙われる可能性が高いと美神さんと蛍に言われていた。だから迎えに行こうと思い部屋の外に出ると

 

「ぬお!?」

 

おキヌちゃんがふよふよと浮きながら俺の部屋の前にいた。腕を枕代わりにして目を閉じているのを見て

 

「幽霊って寝るんだな」

 

幽霊でも眠るという新事実に少し驚きながら、襖を閉めて。蛍から貰った札を張り俺はホテルの外へ向かったのだった

 

「タマモータマモーどこだー!」

 

タマモの名前を呼びながら山の中を進む。少しだけだが雪が降っているので視界が悪い

 

「コーン」

 

「タマモ!?」

 

聞こえてきた狐の鳴声に振り返ると金色の光を帯びたタマモが俺を見つめている

 

「良かった。探した……って待て!タマモ!本当にどうしたんだ!?」

 

俺を見るなり再び山の中へ走っていくタマモ。普段はこんな事をしないのに本当にどうしたんだ!?タマモの放つ金色の光を頼りに山の奥のほうへ進んでいく、かなりのスピードで走っているのに何故か1回も木の枝や茂みに飛び込むこともない

 

(なんか変な感じだ)

 

なにが変と言うことは出来ないのだが、何かが変だという気がする。そんな事を考えながら山の中を走っていると急に開けた場所に出る。その中央ではタマモが座って俺を見ている

 

「遊んで欲しかったのか?」

 

今日はなんだかんだでタマモに構ってやれる時間が短かった。だからこんな事をしたのかもしれないと思いタマモに尋ねるが、タマモは空を見上げていて返事を返す素振りがない

 

「雲?」

 

さっきまで満月が出ていたのに、いつの間にか雲で隠れている。山の天気は変わりやすいって言うからそんなところか?と思いながら

 

「ほら。ホテルに帰るぞ」

 

「フーッ!!!」

 

タマモに手を伸ばすと尻尾を立てて威嚇する。ん?あれ?良く見るとタマモの尻尾の数が増えているような気がして数える。

 

「7本目?」

 

ホテルに来る前は6本だった尾が今は7本になっている。その事に若干驚き立ち止まった瞬間。風が吹いて月にかかっていた雲が飛ばされる。そしてそれと同時にタマモの光が強くなり、そのあまりの眩しさに目を閉じる。そして光が弱まったのを感じてから目を開くとそこには

 

「タマモ……なのか?」

 

美しい光沢を持つ金色の髪をナインテールとでも言うのだろうか?特徴的な髪型に結び、短めのスカートに白いシャツとセーター姿。そして引き込まれるような真紅の瞳をした少女はにこりと微笑み

 

「そうよ、横島。やっと話が出来るわね♪」

 

タマモは俺に手を伸ばしながらそう笑いながら指を鳴らす。すると雪が椅子へと作り代わり

 

「座って話をしましょう?横島」

 

あまりに嬉しそうに笑うその顔に思わず赤面しながら

 

「あ、ああ」

 

そう返事を返し、タマモの隣に腰掛けるのだった……

 

 

 

やっとこうして話が出来る。その事を考えると笑みばかりが浮かぶ。横島が隣に座って私を見て

 

「タマモなんだよな?」

 

確認と言う感じで尋ねて来る横島。私は自分の髪を指差して

 

「ほら、これが証拠」

 

私の指の先には横島が買ってくれたリボンが結ばれている。それを見た横島は

 

「た、確かにそれはタマモに買ってやったリボン……じゃあやっぱりタマモなのか?」

 

「そうだって言ってるでしょ?」

 

横島は私をじっと見つめて……ぼそりと

 

「だけど玉藻前は黒髪……「私と玉藻前は違うの!」ぬお!す、すまん」

 

玉藻前と私は確かに同一人物だけど、私と玉藻前は違う。横島に玉藻前と言われるのは嫌で思わず大声を出してしまう

 

「悪かった、タマモはタマモだよな。ごめんな」

 

謝りながら私の髪を撫でる横島。私は腕を組んでそっぽを向いて

 

「ふんだ!」

 

別に怒っているわけじゃないけど、怒った振りをすると横島は目に見えてうろたえる。その仕草に思わず噴出すと

 

「振りか!?」

 

「そうよ、別に怒ってるわけじゃないもの」

 

こうして横島と話せる時間は短い。だからそんな事で時間を潰したくはない

 

「今日は満月でしょ?だから月が出ている間だけ霊力が上がってるから人に変身出来るの。隠れたらまた狐に戻るわ」

 

完全に人化が出来るようになるのは速くて8本目の尾が戻ったときだろう。それまでは狐の姿のままだと思う

 

「そうか。だけど何でこんな場所で話をするんや?ホテルで良いやろ?」

 

「判ってないわね。2人でゆっくり話をしたかったからに決まってるでしょ」

 

横島の頬に手を伸ばす。横島は少しびっくりした様子だが、私の好きにさせてくれている。耳を澄ますと

 

「タマモは狐。タマモは狐……だけど可愛い。あと2~3年すれば……ああ、違う。違う。タマモは可愛い家族で……」

 

ぶつぶつと繰り返している横島。うーん狐として一緒に過ごしすぎたわね、まぁ完全に人化出来るようになれば後はなんとでもなるか……

 

(だって私は九尾の狐なんだから)

 

狙った獲物は逃がさない。確かに今の横島は弱いし、お金もない。だけど優しいし、私のために鬼に立ち向かってくれた事もある。

庇護者を求める本能のある私が、初めて好意で選んだのだ。しかも私の加護まで与えた、だから横島は誰がなんと言おうと私の物なのだ

 

(出遅れてるけどまだ巻き返せるんだから!)

 

蛍やおキヌには負けない、だけど今日この場所に横島を連れてきたのは別の理由がある。雪で作った椅子から立ち上がり横島の前に立つ

 

「タマモ?」

 

不思議そうに私を見る横島。私は少しだけ怖いという気持ちを感じながら

 

「私はドンドン力をこれから取り戻していくわ」

 

7本目の尾のおかげで周囲の霊力や妖力を取り込む力が増した。これまで以上に力が回復していくスピードは上がるし、それに伴って神通力や幻術と言う能力も取り戻していくだろう

 

「かつて神族や魔族に追われる理由となった力もきっと全部取り戻す」

 

今はまだ使えて狐火くらいだけど、後に現実となる幻術や強力な精神操作も身につけるだろう

 

「もしかするとまた追われるかもしれない」

 

神族や魔族だけではなく、人間に……もっと言えば美神や蛍にだって追われる可能性はある。九尾の狐と言うだけで、私の意志なんか関係なく敵と判断されるかもしれない

 

「それでも横島は私の……「ばーか。何言ってるんだ」

 

横島は私の手を握って自分のほうに抱き寄せて

 

「タマモはタマモ。それで良いだろ?」

 

「だけど人間はううん。神族も魔族もそれじゃあ納得しないかもよ?」

 

「そんな頭でっかちは俺が説教してやるよ」

 

「横島に説教される神様か、なんか地に落ちた感じね」

 

横島が説教している場面なんて思い浮かばずそう言うと、酷いなと苦笑しながら横島は私の頭に手を伸ばして

 

「だからタマモはここにいて良いんだ。タマモはタマモ。俺の家族。それでいいだろう?」

 

その言葉を聞いて顔を隠す、多分自分でもみっともないとおもうくらいにへらとした顔をしているとおもうから

 

「私妖怪だよ?」

 

多分横島がなんと返事を返すかなんてわかっている。

 

「だから?妖怪だろうと、悪霊だろうが、それこそ神様や悪魔でも美女・美少女は俺のモンじゃ!」

 

横島らしい言葉に笑みを零しながら、横島の服を掴んで

 

「じゃあ私の手を放さないでね?約束だよ」

 

「おう。約束する」

 

にかっと笑う横島。残念だけどもう月が隠れてしまう……人化の力を維持できず狐の姿に戻りながら、横島を見て

 

【横島。大好き】

 

声にならない声でそう告げる。当然横島はなんて言われたか判らず

 

「おやすみ。タマモ」

 

そう笑って私の頭を撫でる。私はその手の感触と暖かさに笑みを零しゆっくりと目を閉じたのだった……私の想いを告げるのは完全に人の姿を維持できるようになってから……それまでは

 

(可愛い狐のタマモでいるわね)

 

馴れ親しんだ狐の姿に戻り。横島の腕の中で丸くなり私は眠りに落ちるのだった……

 

 

 

 

横島を起こしに行くと部屋の前では

 

【横島さーん。あけてくださいよ~お話しましょう】

 

おキヌさんがかりかりと襖を引っかいているのが見える。何時記憶を取り戻したのかは判らないが、結構前に記憶を取り戻したのだろう。性格がかなりやばい方向になっているのを見てそれを確信する

 

「おキヌさん?邪魔ですよ」

 

若干警戒しながら言うとおキヌさんは振り返る。だがその目は予想に反して私の知るおキヌさんと一緒で澄んだ目をしていて

 

【おはようございます。蛍ちゃん、良い天気ですね】

 

にっこりと笑うおキヌさん。その姿に昨日の悪霊じみた面影はないが……

 

(油断は禁物ね)

 

いつどのタイミングで黒化するか判らないので警戒していると

 

「あれ?おキヌちゃんに蛍?俺の部屋の前で何してるんだ?」

 

横島がタマモを抱えて歩いてくる。その姿はいつものジーパン・ジージャン姿だ

 

「おはよう【おはようございます!横島さん!】

 

私の言葉を遮って横島に朝の挨拶をするおキヌさんに若干のイラつきを覚えるが、それを押さえて

 

「おはよう横島。どこに行ってたの?【ふぎゃっ!?】

 

おキヌさんの巫女服の裾を掴んで地面に叩きつけ、ついでに背中を踏みつけながら尋ねる

 

「お、おう……タマモと散歩にな」

 

「コン♪」

 

横島の腕の中で嬉しそうに鳴くタマモを見ると、7本目の尻尾が生えてゆらゆらと揺れていた。

 

「良い天気だからね。私も後で一緒に散歩しても良い?」

 

「おう♪朝ご飯食べてからな!」

 

そう笑う横島は服を着替えるからと部屋に入っていく。ふと足元を見るとおキヌさんがいない、まさか

 

「きゃーっ!?おキヌちゃん!でてって!俺着替えてるから!」

 

【横島さん】

 

「なにしてるかーッ!!!」

 

私は目を閉じたままおキヌさんの首を掴んで部屋の外へと引きずり出したのだった

 

「なにしてるの!?」

 

【別にただ横島さんのお着替えを手伝おうかと】

 

若干頬を紅くしているおキヌさん。私の知ってるおキヌさんはこんな事をする人じゃなかったけど、違う。いまのこの人は欲望に忠実すぎる

 

(私が横島を護らないと)

 

私は横島の部屋の前で腕を組んで、両手にお札を持って

 

「これ以上近づいたら除霊する」

 

【くっ!卑劣な!】

 

幽霊と言うアドバンテージを使いこなそうとしているおキヌさん、このままほっておけば横島の日常生活に平穏はないと判断した私は家に戻り次第

 

(横島の家の霊的防御を上げないと)

 

幸いにも今の横島の家の場所をおキヌさんは知らない。場所がばれる前にしっかりと防御を固めようと誓うのだった

 

「なにしてるの?蛍ちゃん?おキヌちゃん?」

 

朝風呂に行っていたのかぬれた髪を拭いながら歩いてきた美神。その目は丸くなっているが無理もない、横島の部屋の前で腕組し両手に破魔札を手にしている蛍とその前で悔しそうに、しかし隙を窺っているおキヌを見れば動揺するのも無理はない

 

(多分ついてくるわよね。また個性的な面子が増えるわねえ)

 

美神はおキヌがついてくる可能性も考慮し、そして頭の中で素早く利益と損じる損失を計算した……そしてでた結論は

 

(儲かる!)

 

その目が一瞬$のマークになる。幽霊なので人権費も安く済むなど色々な要素がある。それに横島君と一緒ならご機嫌だから、もしかしたら給料を支払う必要もないとどんどんプラス要素が思いついた美神は笑顔で、おキヌを東京に連れて帰るのを決め

 

「ほらーもうすぐ朝ご飯の時間だから早く来なさいよー」

 

一応子の中の面子では一番年上と言うこともあり、蛍達にそう声をかけたのだった……

 

 

 

朝食を終えて横島さん達とピクニックに来たのですが

 

「コーン♪」

 

嬉しそうに鳴いて横島さんと追いかけっこをしているタマモちゃんは物凄く可愛いんだけど、横島さんが私を見てくれないことに若干苛立ちを覚える。だが横島さんがタマモちゃんを可愛がっている為、攻撃も出来ず離れたところで見ることにした

 

「コーン!」

 

「うおお!?」

 

急に飛び掛ってきたタマモちゃんに驚いて引っくり返る横島さんとそれを見て

 

「運動神経悪いわね。もっとしっかりしなさい」

 

美神さんがくすくすと笑っている。私の記憶ではこんな時間はなかったはずだけど、タマモちゃんと蛍ちゃんの影響なのかもしれないと思っていると

 

「隣座るわよ」

 

蛍ちゃんが私の隣に座る。一瞬身構えたが、蛍ちゃんはタマモちゃんと戯れている横島さんを見ながら

 

「何時記憶を取り戻したの?」

 

【150年位前ですかね?ふっと思い出しました】

 

2人がいない内に逆行について話そうとしているのだとわかり。素直に答える

 

「辛かった?」

 

【死んでるけど死にたいほど辛かったですよ】

 

会いたいとおもう人に会えない。心が引き裂かれるを感じて何度も涙した

 

【だから私は我慢するのをやめました。私は私のやりたいようにやります】

 

これは変わらない決意。誰にも負けないし、引くつもりはない。逆行前は引いたことで全てを失ってしまったのだから

 

【アシュタロスはどうなったんですか?】

 

私も質問する。あの時間ではアシュタロスが全ての悲劇の引き金になっている。だから今がどうなのか?と尋ねると

 

「ただのお父さんかな?うん、馬鹿やるけど大丈夫。敵じゃないわ」

 

微妙に引き攣った顔をしているのでこれは詳しく聞いてはいけないのだと判断し、質問を変える

 

【じゃあ部下のメドーサさん達は?これからどうなるんですか?】

 

天龍童子の暗殺未遂にGS試験での暗躍。彼女達が起こした事件の事を思い返しながら尋ねると

 

「とりあえず失敗するように動いて、過激派神族と魔族をおびき出すわ。それが終われば……」

 

蛍ちゃんは私を見る。言いたいことは判っている。全てが決まるのは全てが終わった後。だがそれまで横島さんを取り合いをしないと言うことではない。今も互いに互いの隙を窺っているのが判る

 

「出し抜きもするし、罠にもかける。OK?」

 

【OKです。私もしますから】

 

自分の目的のためには手段を選んでいる余裕なんてない。恋は戦争なのだから、蹴り落とし、罠に嵌め、策謀を張り巡らす。それが勝利するためのたった一つのさえた選択だ

 

「おーい!蛍もおキヌちゃんも遊ぼうぜ~!」

 

「コーン!」

 

原っぱのほうから私と蛍ちゃんを呼ぶ横島さんの声がする、その手にはボールが見える

 

「今行くわよ。横島」

 

【今行きますね!横島さん】

 

蛍ちゃんと同時に立ち上がり、お互いに足を伸ばして転ばせようとして、2人ともこれを回避する

 

「【ふふふふふふふ】」

 

いきなりとはやってくれますね。だけどこれくらいじゃなければ面白くないです。これからドンドン増えていく恋敵の存在を考えればこの程度で目くじらを立てていては恋の成就なんて程遠い。互いに笑い合いながら横島さんのほうへと歩き出したのだった。

なお顔は笑っているが目が笑ってないので、横島と美神。そしてタマモが少しだけびびったのは言うまでもないことだろう……少し黒いオーラが蛍とおキヌから漏れていたのも原因の1つだと思われる……

 

 

レポート4 幽霊少女と蛍と狐 その5へ続く

 

 




次回は蛍の視点で進めて行きます。レポートの話は少し飛ばして、蛍視点での除霊レポートと言う感じになると思いますが、よろしくお願いします。普通に書いてもいいのですが、それだと話数ばかりかさんでしまうのでこういう形になります。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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