GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はちょっとした状況整理とワンダーホーゲルの話に入っていこうと思います
まぁ蛍とおキヌの衝突は当然ながらありますがね。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その2

 

レポート4 幽霊少女と蛍と狐 その2

 

ホテルのロビーで喧嘩していた幽霊の少女と蛍ちゃんを見て、咄嗟に屑精霊石を投げて昏倒させた後(投げた後に物凄く後悔した、

 

破片とは言え数百万)咄嗟に投げてしまった自分の愚かさに後悔しながら、ロビーの隅でタマモを抱えて震えている横島君に

 

「その幽霊の子……どうしたの?」

 

見た感じ取り憑かれているという感じはしない。それに見習いとは言え僅かに霊力はある。そう簡単に取り憑くことはできない筈だ

 

「えーとタマモを探してたら、なんか俺に会いたかったとか、ずっと待ってたとか言ってて」

 

横島君に会いたかった?それに待っていた?それは随分とおかしな話ね、見た感じこの少女の幽体は相当安定している

 

(5年や10年所じゃない、これは100年とかそう言うレベルよ)

 

何百年も同じ場所に存在していたので幽体が相当安定している。このレベルなら物とか人にも触れるはずだ……しかしそれにしても珍しいケースだ。色んな気配が集まる山の中で100年以上存在していたというのに悪霊となっていない。これは随分と珍しい……

 

(もしかして人身御供とか?)

 

もしかしたらかつてこの御呂地岳で何かの霊事件があって、その生贄にされた少女と言う可能性もある。だから霊体が安定しているのかもしれない、とは言え全ては推測になるから今話すことじゃないわね

 

「横島君、部屋を取っているからそこで依頼者の話を聞いて夕食にしましょう。蛍ちゃんとその子を運んできてくれる?」

 

蛍ちゃんの話を聞けば横島君はスケベだが、無理強いはしないと聞いている。だからそう頼むと

 

「よいしょ。部屋はどこっすか?」

 

宝物を運ぶかのように丁寧に蛍ちゃんと幽霊の少女を抱き上げる横島君。蛍ちゃんの言っていた事は本当だった見たいね

 

「こっちよ」

 

ホテルのほうも幽霊を除霊してもらえないと営業に支障が出るとのことで、このホテルで一番良い部屋を用意してくれている。もしかしたら横島君が背負っている幽霊の少女が出る幽霊と言う可能性もあるので1度依頼者に話を聞いてみよう

 

「オーナーさん。ホテルに出る幽霊って言うのはこの子ですか?」

 

椅子に幽霊の少女を座らせて尋ねる。蛍ちゃんは奥の部屋で横島君が布団を引いて寝かしている。本当なら彼女も寝かせるのが一番なのだが、一応念の為にオーナーさんに会わせて、この幽霊の少女なのか?と尋ねる必要があった。オーナーさんは意識のない少女を見て首を振りながら

 

「うんや。こんなめんこいお化けなら却って客寄せになるで、うちに出るのはむさくるしい男のお化けですわ」

 

この子のじゃないのか……まぁ私も違うって思ってたしね。

 

「そうですか。その幽霊が出る時間帯は?」

 

「あと1~2時間って所ですわ。丁度入浴時の時間帯ですわ」

 

となると大分時間があるわね。それまでぽつーんと露天風呂で待っているのもおかしな話なので

 

「夕食をお願いできますか?」

 

まずは腹ごしらえよね。久しぶりの山歩きでお腹空いてるし♪私はそう笑いながらオーナーさんに夕食を頼むのだった

 

 

 

目の前の机には並べられたのは高級和牛を使ったしゃぶしゃぶに新鮮な魚の刺身に、山の幸の山菜の天ぷらの数々。普段食べる事のできない高級な食材の数々に目を輝かせたのは最初のほうだけ。今はだらだらと汗を流しながら

 

「ほら。横島この魚の刺身美味しいわよ?はい、あーん」

 

【こっちのお肉の方が美味しいですよ?横島さん?】

 

両サイドから差し出される魚と肉……そしてこっちですよね?と目で威圧してくる蛍とおキヌちゃん。

 

「大変そうねー♪」

 

美神さんは俺のこの状況を見て苦笑しながら、刺身を頬張っている。タマモはタマモで怖いのかそうそうに逃亡し、美神さんの隣で刺身と肉を生のまま食べている

 

「はい、横島口を開けて?」

 

【こっちですよ~横島さん】

 

顔は笑っているのに目が笑っていない蛍とおキヌちゃん。

 

(わ、ワイが何をしたっていうんやーッ!!!!)

 

俺は心の中でそう叫び、差し出された刺身から口に入れたのだが、隣で明らかに不機嫌そうな顔をするおキヌちゃんに肝を冷やした。美味しいはずの食事を機械的に済ませた俺は

 

(殆ど味がわからへんかった……)

 

強烈なプレッシャーを前に味を感じるような度胸は俺にはなく、殆ど味を感じる事がなかったことに心の中で泣くのだった……そして出来れば明日は自分でゆっくりと食べたいと思うのだった……

 

「さてと腹ごしらえも終わった所で早速除霊の仕事に入るけど……貴女は?成仏したいの?」

 

美神さんがおキヌちゃんにそう尋ねる。すると

 

【ぷいっ】

 

そっぽを向いて空気に溶けるように消えていってしまった。

 

「え?成仏した?」

 

姿も気配も感じる事のできないおキヌちゃんの姿にそう呟くと、美神さんが首を傾げながら

 

「違うわ。この場所から遠ざかっただけよ、成仏はしてないわね。でもおかしいわね?私何かした?」

 

俺の見ている限りではおキヌちゃんには優しく接していたと思うんだけど、なんであんなに嫌そうな顔をしたんだろう?俺と美神さんが首を傾げていると

 

「まぁおキヌさんのことは後でいいじゃないですか。まずは依頼を優先しましょう?」

 

蛍の言葉にそれもそうかと頷く美神さんは。鞄から数枚の破魔札と吸引符。それと

 

「なんすっかそれ?」

 

玩具のような何かを取り出す美神さん。神主をデフォルメしたような人形がふらふらと揺れている

 

「これは見鬼君って言って幽霊とか悪霊の気配を探す道具なのよ。こういう山とか海だと沢山幽霊の気配がするからね、こういう道具も必要なのよ」

 

そう笑う美神さんはその見鬼君を抱えて歩いていく、俺と蛍もその後をついて露天風呂に向かう

 

「だけどあんなのあるんなら何で前の除霊のときに使わなかったんだ?」

 

かなり前だが悪霊がどこにいるか判らず、相当苦戦したのを思い出し隣の蛍にそう尋ねると

 

「中々難しいのよ。見鬼君の索敵範囲って結構広いから、街中で使うのは難しいのよ」

 

そうなのか……まぁ蛍と美神さんが持ち出さないってことはこういう状況じゃないと使えない道具ってことなんだな。と思いながら露天風呂に向かうと

 

「うーん。見た所霊の気配はないわね……それに見鬼君もこのざまだしね」

 

こっちこっちこっちと言いながらグルグル回転している。探している状況なのだが、反応が特定できないらしい

 

「ここに地縛されている幽霊じゃないみたいね……」

 

ぶつぶつ呟きながら歩き回っている美神さん。確か目撃情報によれば、女性が風呂に入ってる状況じゃない駄目らしいので

 

「……も、もしかして女性がふ、風呂に入ってないと駄目なのでは?」

 

俺がぼそりと呟くと美神さんは見鬼君を抱えたまま

 

「そうね。じゃあ早速入るとしましょうか」

 

露天風呂のほうに美神さんが歩き出す、

 

「さ、さすがはプロ必要なら途惑わない……「横島ぁッ!!!」ふぎゃあ!?」

 

蛍の拳が俺の頬を打ち抜くしかもそれだけではなく

 

「この!横島の馬鹿!すけべ!」

 

「ふ、ふぐああ!?す、すんません!つ、つい出来心で!!!」

 

怒り心頭と言う感じで俺の頬を連続ではたく蛍。だが俺の視線は美神さんが脱ぐかもしれないと思い、そっちに視線が集中してしまうしかしピコピコ!見つけた!みつけたあ!!と見鬼君が叫ぶ音が聞こえる。その声に俺と蛍が振り返るとそこには、髭面の男がいた

 

「き、貴様アア!なんであと5分!いや3分待てなかった!!!もう少しで!はっ!?」

 

「横島?もう少しで何?」

 

鬼の形相をしている蛍と俺を睨んでいる美神さんに俺は顔を青褪めさせ

 

「少し話をしよう?ね?横島?」

 

「え、いや、待って!いやああああああああッ!!!!」

 

笑っているのに目が笑っていない蛍の容赦ない連続攻撃に俺は意識を吹き飛ばされるのだった……

 

 

 

「ちょ、ちょっと蛍ちゃん?その程度にしておかないと」

 

美神さんに声を掛けられ我に帰る。足元を見ると

 

「すんません!すんません」

 

ボコボコの上に鼻血を出している横島と手についている血痕……

 

「ご、ごめん!横島!!」

 

いけないついカッとなってやりすぎた。これもあれもおキヌさんの挑発のせいで気が立っていたからだわ。しゃがみ込んで横島にごめんねと繰り返し謝っている私の後ろでは

 

めんねと繰り返し謝っている私の後ろでは

 

【じ。自分は明痔大学のワンダーホーゲル部であります!さ、寒いのであります!助けてほしいのであります!!】

 

髭面の男が美神さんに助けて欲しいと頼んでいる。どうもあの幽霊が今回の除霊対象らしい

 

「大丈夫や。ちょっと痛かったけどな」

 

そう笑って立ち上がる横島。まさか自分でもここまでやるなんて……これじゃあとても美神さんの事を怒れないわねと反省していると

 

「遭難したの?」

 

美神さんがワンダーホーゲルから話を聞いている。地縛霊だが、知性があるので話を聞いてから除霊でも充分間に合うと判断したのだろう

 

【そうであります。雪山で仲間とはぐれ、雪崩に飲み込まれて埋もれて死んだであります。お願いですから助けてください】

 

「じゃあ死体を見つけて供養すれば成仏するのね?」

 

海難事故者や遭難者の幽霊が望むのは死体を見つけてくれることか、事故現場での供養だ。この幽霊も同じようで

 

【はい!そのつもりであります】

 

びっと敬礼しそうな勢いのワンダーホーゲルと既に回復している横島を見ている美神さん

 

「だ、駄目ですよ!横島雪山に送り出すなんて反対ですからね!」

 

横島を抱き抱えて首を振る。今この人の考えている事は間違いなく、横島に遺体探しをさせるつもりだと思い。駄目だと叫ぶ

 

「でも私と蛍ちゃんの体力じゃ無理だわ。横島君じゃないと」

 

そんな事を言ったって季節の変わり目。しかも春間近の雪山になんて横島を行かせることは出来ない。それに

 

(おキヌさんもいるのに!)

 

私のいるときならいいが横島を1人きりするのは不安だ。色々と感情が振り切っているおキヌさんも危険だし

 

「いや、流石に俺も雪山は少し」

 

引き攣った顔をして居る横島。いくら横島でも危険すぎる、しかもこれから日が落ちるから余計に危険だ

 

【お願いっすよ~見捨てないでください!!】

 

「だああ!纏わり憑くな!うっとうしい!」

 

横島に擦り寄っていくワンダーホーゲル。なんとなく腹が立ったのでその頬に霊力ビンタを数発叩き込んでおく

 

【ふがああ!?】

 

痛いと悶絶しているワンダーホーゲルを見ながら美神さんが

 

「行ってくれたら背中くらい流してあげるんだけどねー。蛍ちゃんが」

 

「私!?」

 

まさかの私を指名する美神さん。これはさすがに予想外だ

 

「よし、行くぞワンダーホーゲル!」

 

【ありがとうございます!】

 

「正気なの!?横島!?」

 

さっきまでごねていたのはどこへやら良い笑顔をしてワンダーホーゲルを伴って露天風呂を出て行く横島。私は思わずその場に蹲り

 

「スケベなのは知ってたけど……自分の命は大事にしてよ……」

 

もしそこを考え直してくれるなら背中を流す所か、一緒にお風呂に入ってもあげていいから……

 

 

 

蛍が戻ったら背中を流してくれるというので夜の雪山に出発したのだが

 

「あ、あかん、これは死ぬ」

 

凄まじい吹雪に手足の感覚がなくなってきた。ワンダーホーゲルは幽霊だから元気だけど、このままじゃ本当に凍死する

 

(欲望に任せたのは失敗だったか!?)

 

このままだと凍死する……逃れられようもない死の気配を感じながら、前を歩いているワンダーホーゲルに

 

「まだ先なのか?」

 

【あと2時間くらいっす!】

 

元気良く言うワンダーホーゲルに俺は

 

「ふざけるな!あと2時間!?その前に俺が死んでまうわ!それにこの天気で遺体なんて探せるかあ!!!」

 

不味いこのままだと俺まで死んでしまうぞ……俺が死の不安を感じそう叫ぶ。もしかしてこの野郎、俺も殺すつもりでここまで案内したんじゃないだろうな?

 

【この程度の吹雪なら、ビバークすれば大丈夫っすよ!今準備するっすから!】

 

俺の背負っているリュックから何かを取り出すワンダーホーゲル。段々勢いを増していく吹雪を見て

 

「いかん……本当に死ぬ……」

 

霊力を完全覚醒する前に死ぬのか?せっかく蛍とも仲良く慣れてきたと思っているのに……段々強くなってくる死の気配に俺は心底恐怖するのだった……横島が死の恐怖を感じている頃、人骨ホテルでは

 

「横島……」

 

案の定吹雪になった雪山を見つめて無事を祈る蛍。いくら横島がタフでも死んでしまうかもしれない

 

「コン!」

 

蛍の足元でタマモが力強くなく、それを見た蛍は

 

「行ってくれるの?」

 

「ココーン!!」

 

タマモは九尾の狐。山はホームグランドと言える。蛍はそれに気づき

 

「お願い。横島を探し出して」

 

「コーン!」

 

気合を入れて鳴いて雪山に駆け出していくタマモ。それを見送った蛍は再び雪山を見つめながら

 

「横島」

 

横島の無事を祈るのだった。なお美神はまさか吹雪になるなんて思っておらず、冷や汗を流しながら

 

「特別報奨だしてあげないと……と言うか。横島君が死んだら不味いわね……」

 

自分のGSとしての活動が危険になっていることに気付き、青い顔をして横島が戻るのを祈っているのだった……

 

「さ、寒い……くらい……死ぬ」

 

テントの中で毛布をまきつけて暖を取るのだが、全然暖かくなってこない。このままだと本当に不味い

 

【どうぞ。横島さん、コーヒー入れたっす】

 

ワンダーホーゲルからコーヒーを受け取り、それをちびちびと啜っていると

 

【横島さん。俺凄く嬉しいっす】

 

「何がだよ」

 

今まさに遭難して死にかけているのと言うのに。なぜ嬉しいなんて言葉が出てくるんだ?いやこいつはもう死んでるから関係ないのか?

 

【死んだ後もこうして男同士で夜の山を味わえるなんて、最高っす】

 

嬉々としたその表情、いかん……こいつまさか

 

(ホ、ホモか!?)

 

このままでは行かん。死の恐怖もあるが、ホモと一緒にこんな閉鎖空間なんて耐えられん。もしかするとこいつが探してもらえないのもその性癖のせいで嫌われていたからじゃ……

 

【ご、誤解せんでください!俺が言ってるのは男同士の友情とか連携とかの話で……】

 

このとき強烈な吹雪の音と砕ける何かの音がした。そして次の瞬間

 

【横島さん。寒くないっすか!?】

 

「ひ、ひいいいいいいッ!!!!」

 

襲われる!本能的にそれを察した俺はテントの中から飛び出し、雪山を走り出すのだった。背後から聞こえてくる

 

【横島さんどこへ!?男同士暖めあって、友情と青春と人生を!】

 

「やかましい!冗談じゃないわあああああ!!!」

 

俺を呼び止めようとするワンダーホーゲルの声にそう怒鳴り返し、俺は雪山を疾走するのだった……

 

 

 

レポート4 幽霊少女と蛍と狐 その3へ続く

 

 




このノリがずっと書きたかった。これこそGS美神って感じですよね。色々と再構成しつつ、原作の雰囲気を残して以降と思います。このレポート4「幽霊少女と蛍と狐」のラストもどうなるのか楽しみにしていてください、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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