GSのアルバイトを始めよう! その5
蛍と一緒に来た寿司屋は蛍の言うとおり回らない寿司屋で……ビルが立ち並ぶ見るだけでもわかる高級店と言う感じの店だった
(どないしょ。俺場違いやん!)
ここは自分の来るべきよう名店ではないような気がして汗がだらだらと流れるのが判る。俺なんかは回転寿司なんかで充分だというのに……蛍に案内された店を前に俺は冷や汗が流れるを感じた。タマモもお気に入りの頭の上から、俺の服の中に潜り込んでいる
「こんにちわ」
「いらっしゃいませ」
蛍が慣れた感じで着物を着ている女性に話しかける。蛍は芦グループって言う大企業の娘らしいのでこういう雰囲気に慣れているのかもしれない
「今日は彼氏さんと?」
着物の女性が俺を見てそんな事を蛍に尋ねる。俺が口を開くよりも早く蛍が穏やかに微笑みながら
「そんな所です。いつもの所でお願いします」
蛍と着物の女性に案内されて店の奥に通される。プライベートルームって感じでますます落ち着かない
「ほ、蛍は良くこんな店にくるんか?」
俺がそう尋ねると蛍は大丈夫よと小さく笑って、真向かいではなく俺の隣に座る。蛍の甘い匂いがしてますます落ち着かない
「お父さんと良く来るのよ。でもいつかは横島と一緒に来たいと思ってたわ」
普段ならタマモが唸るのでこんな雰囲気にはならないが、タマモが全然動かないのでこの甘い空気に完全に呑まれてしまった
「あ……あう……」
こんな経験がなくて赤面して俯くと蛍はますます楽しそうに笑って
「美神さんがお金をくれたし、好きなの頼んでもいいわよ?」
値段が書いてない寿司なんて何を頼めばわからないのでとりあえず
「稲荷寿司と卵」
値段の書いてない寿司なんて怖くて注文できない。一番安いと思われる卵とタマモのお稲荷を注文すると
「もうッ!そんなにビクビクしなくていいのに……すいません。横島に板長のお勧め3人前。私は1人前でそれと稲荷寿司をお願いします」
蛍が勝手に注文してしまう。着物の女性が出て行ったのを確認してから、タマモが服の中から這い出し。俺の膝の上で丸くなる
「た、たかいんちゃうか?」
お勧めには大間のマグロとかウニやホタテと名前が踊っていた。どう考えても高いとわかるネタだ
「大丈夫大丈夫♪昨日はあんなに大変だったんだから、美味しい物食べてゆっくりしましょう?」
蛍がそう笑ってくれるがそんな気分ではない、俺は膝の上のタマモを撫でながら
(早く来ないかなー)
とりあえず食事でもすれば、この感じにも慣れるだろうと思い早く料理が来てくれるのを祈るのだった……
お父さんと良く来る寿司屋に横島を連れてきたんだけど……
おどおど……
きょろきょろ……
そわそわ……
落ち着きが無い様で目が物凄く泳いでいる。これは可愛い横島だ、私の心の中の横島フォルダにしっかり保存しておこう
「お待たせいたしました」
仲居さんが寿司の皿を運んできてくれる。この店はこうやってゆっくり食べれるからいいわね……
「それじゃあ頂きます」
仲居さんが部屋を出て行ったのを確認してから。手を合わせて寿司に手を伸ばす……横島も若干おどおどしながら寿司に手を伸ばし
「う、美味いわア……これが大トロって奴なんやなぁ……」
心底美味しいという感じで嬉しそうに笑う横島。その顔を見るだけでここに連れてきて良かったと思うのだった
「タマモも美味いか?」
狐は雑食なので横島は自分の分の大トロなども分け与えている。タマモは嬉しそうに尻尾を振りながら
「コン♪」
稲荷寿司を食べてご満悦と言う感じのタマモ。あ……尻尾が6本になった。そんなに美味しかったのかしら?それとも横島の霊力が上がって自分の霊格も上がったのかしら?まぁなんにせよ……
(あと3本で完全体ね。どれくらい時間が掛かるのかしら?)
タマモが人化を使えるようになるまでにもう少し横島の懐に入りたい。横島が人外に好かれるのは個性だし、懐に入れた存在にはとても甘い。それで行くとタマモが最大の敵になるのは言うまでも無い
(時間はまだありそうだけど油断は出来そうに無いわね)
あの廃ビルのレギオンの時に使った陰陽術。お父さんとしての横島はそんな物を使うことは出来なかった、可能性としては逆行時に何かの要素が加わってしまったのかもしれない
(だけどまぁ。基本的には馬鹿でスケベな横島だから良いか)
かっこいい横島やスケベじゃない横島は横島ではないので、ここはまぁ良いかと判断する。失ってしまった霊力を回復させるために食事を進める。話はその後でもいいしね
「さてと横島。初めての除霊はどうだった?」
一通り食事を終えたところでそう尋ねる。私は1人前だったけど、横島3人前。私の方が早く食べ終わると思ったのだけど、実際には食べ終わったのはほぼ同時。女性と男性の違いだろうか?いやそれだけじゃなくて多分、横島自身がかなり霊力を消耗した事も原因なのかもしれない
(あの陰陽術。中位の悪魔なら一撃で消滅させるわね)
見た感じ、破壊されたまたは効果を使用した破魔札と自身の持つ破魔札の霊力を共鳴させて出力を跳ね上げた破邪の術。悪魔や魔族に効果的なのは言うまでも無い。横島は最後のマグロを頬張ってから
「よー判らん。なんも覚えてないし……蛍と美神さんがわいが倒したって言うてくれたけどな」
頭をかきながら呟くように言う横島。やっぱりあの時は意識を失っていたのね……多分そうだと思っていたけどその通りだったわけだ……
「わい……GSになれるんかなあ?不安や……」
いけない、まだこの時期の横島は霊力に目覚めていない。不安になるのは当然だが、このまま自信を失われても困る。横島は元々自分に対する評価がかなり低いので自信を無くされてGSを止めるといわれたら困る
(どうしよう……予定と大分狂ってるわ)
私の予定ではあの廃ビルの除霊のときに横島に破魔札を使わせて、ある程度自信を持たせる予定だったのに、お父さんのせいでご破算になっている。どこか近くの自殺現場にも連れて行って除霊の経験をさせようか……
「わい……大丈夫かな?なぁタマモ」
「クウ?」
タマモを抱き上げてそんな事を呟いている横島。不味いわね……かなり意気消沈しているわ……私は立ち上がって横島の前に座って
「大丈夫よ。初めての除霊だったんだからあんな物よ、次があるわ」
その手を握り、横島の目を見て呟く。最初から出来る人間なんていない、だから自信を失う事なんて無い。ここから頑張っていけばいいのだから
「コン」
タマモも横島を励ますように鳴く。横島は私とタマモを見て
「そっか……最初から何でも出来るわけや無いもんな!次頑張るわ。痛いのも怖いのも嫌やけどな!」
そう笑う横島にその息よと励ます。横島は最初は未熟だけど、大丈夫。横島はこれからもっと強くなるのだから
「横島が強くなるまでは私が護るわ。だから一緒に頑張りましょう」
横島の頬に手を添えて私の方を向かせてから額に軽く口づけをする。額にキスは祝福・友情。きっと横島はこのキスの意味を知らないだろう。頬を赤くする横島を見て自分も頬が赤くなるのを感じながら立ち上がり
「今日はそろそろ帰りましょう。昨日の除霊で疲れたしね」
美神さんの事務所のソファーで眠ったけど、正直疲れはあんまり取れていない。やはりベッドで寝ないと駄目だ
「そやな……ふあ……満腹になったら眠くなってきたわ」
そう笑う横島に苦笑しながら仲居さんに料金を支払い(横島には見せなかったが3万を越えていた)
「じゃあね横島。また明日」
「ん。また明日」
横島の家の前で別れた私はさっきまで浮かべたいた笑みを消しながらビルの中に入り。そのまま最上階に向かう
「や、やあ……蛍。お帰り」
引き攣った顔で窓を開けて外に逃げようとしているお父さんに
「ただいま。お父さん少し話があるんだけどいいかな?」
拳を握りしめるついでに手首のブレスレットも外して魔力を解放し、更に霊力も込める
「い、嫌……今は少し忙しいかな?」
逃げるというのは無駄なことだからもう諦めてほしい。と言うか今はまだ神魔に追われているのだから、逃げる場所なんて無いに等しいのだから無駄な抵抗はしないでほしい。時間の無駄だから
「大丈夫。すぐに済むから」
お父さんのせいで横島が死に掛けた。これはもう断じて許すことなど出来はしない……ゆっくりとお父さんに近づき、その肩を掴んで
「余計な事するなーッ!!!」
あのレギオンを作り出したのはどう考えてもお父さんだ。下手をすれば私達も死んでいた。その事に対する怒りと霊力と魔力を拳に込めて
「げぶろぶ!?」
全力のアッパーをお父さんの顎に叩き込んだ。ビルの天上の完全に突き刺さっているお父さんに
「今度余計な事をしたら許さないからね」
聞こえているか怪しいが、私はそう声を掛けてから自分の部屋に戻るのだった。その途中で
「アシュ様ーッ!!!!!!」
たまにしか見ない土偶の嘆きの声を聞いたが、私は対してそれを気にも留めず歩き続けるのだった……
蛍と分かれて家に帰ってきた俺はそのまま風呂お湯を張りながら、自分が入浴する前に
「はいはい、大人しくしてる」
じたばたと暴れているタマモの胴体を掴んで逃亡を阻止しつつ、タマモ専用風呂(大きめの桶)にお湯を入れて
「ほれ」
ぬるい目のお湯をかけているのだが、タマモは嫌そうに鳴きながら
「コーン!!コーンッ!!!!」
尻尾を振りばたばたと暴れているタマモも押さえ込んで手にシャンプーをつけて
「汚れてるんだから大人しくしてろ!蛍が怒るから」
俺は別に構わないのだが、部屋を汚すと蛍が怒るので暴れるタマモを押さえつけてわしゃわしゃと無理やり泡を立てる
「グルルルルル!!」
俺を睨んで唸るタマモ。普段は大人しくて可愛いらしい狐なのに、風呂の時だけはどうしても駄々をこねるなと思いながら
「唸っても怖くないで、大人しくしい!」
唸っているタマモにそう怒鳴り、タマモを洗い終え。用意してあったドライヤーでタマモの毛を乾かしながら梳いてやると
もふ……
「くう……」
毛がもこもこと膨れ上がっているタマモをベットにしている篭の中に寝かせてやると
「クー」
不機嫌そうに俺を睨みながらも、眠いのか丁寧にならしてから伏せるタマモに苦笑しながら、俺も風呂にはいることにしたのだった
「はーさっぱりした」
満腹なのと風呂でさっぱりした事で強烈な眠気を感じながら、布団に潜り込む。自分でも驚くほど早く眠りに落ちた。それだけ疲れていたのかもしれない……
「ぺしぺしぺし」
「んああ!?」
額に連続した衝撃を感じて目を覚ますとタマモが前足で俺の額を必死に叩いていた
「まだ。眠いって……「ぺしぺしぺし」ん?なんや?」
タマモがあんまりに必死に額を叩くので身体を起こす、時計を見ると17時30分。4時間ほど寝ていたことになる……すこしぼーとしていたのだが、俺の耳にけたたましくなる電話の呼び鈴の音が飛び込んでくる
ジリリリ!!
ジリリリ!!!
「電話?おお!やべえ!?」
もしかしたらお袋か親父かもしれん!慌てて飛び起きて
「サンキュー!タマモ!」
「コン♪」
タマモに礼を言って電話を取る。蛍がたまに来て掃除してくれているのですんなり電話を取ることが出来た。本当蛍には感謝だな
「もしもし横島です」
【あ、横島君?美神よ。もしかして寝てた?そうだったらごめんね】
「いや、全然大丈夫っすよ?なんのようですか?」
電話の相手は美神さんだった。いきなりなんの様だろうか?と考えていると美神さんは
【明日早速仕事だから、朝8時に事務所に来てね?学校のほうにも連絡して公休にさせてもらいなさい】
「うっす……」
【じゃあ伝えたからね?今度のは前のビルみたいにレギオンなんて化け物はいないから安心しなさい】
そう言って電話を切る美神さん。俺は受話器を元の位置に戻して寝室に戻る
「クウ?」
首を傾げながら俺を見ているタマモを抱き上げ。そのクリクリした目を見ながら
「明日除霊だって、今度は大丈夫かな?」
前みたいな事にならないだろうか?と呟くとタマモは頭を摺り寄せて俺の目を見つめてくる
「うん……大丈夫、頑張ってみるよ」
一見すると狐に話しかけている頭の痛い人間だが。別に構わない、タマモは妖狐だ。ちゃんと俺の言おうとしている事は理解してくれている
「コン♪」
頑張れと言いたげに鳴くタマモを抱えたまま布団にもぐりこむ。タマモはもぞもぞと俺の腕の中を動いて、丁度良い位置を見つけたのかそこで動かなくなる。俺は再び大きく欠伸をしてから目を閉じた。除霊は不安だが、蛍と美神さんがいるのだから大丈夫だろう。今度は少しは活躍できるように頑張ろうと思いながら俺は再び眠りに落ちるのだった……
(もっとがんばらないとな)
折角GSの所であるバイトをしているんだ。今までの独学と蛍の訓練だけじゃなくて、少しは目に見える成果が出せるようになりたいと思うのだった……
GSのアルバイトを始めよう! その6へ続く
次回は除霊の話になります。これからGS美神の雰囲気をもっと出せていけると思います。横島の魔改造は段階的に進めて行こうと思います。だけど基本的には原作の馬鹿でスケベな横島のままにしたいので、俺最強!見たいな感じにはならないと思います
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします