アシュ様は久しぶりに少しシリアスかな?蛍視点は交渉をメインにしていこうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
GSのアルバイトを始めよう! その4
廃ビルの監視を終えて帰ってきたメドーサに目の前の椅子に座るように促してから報告を聞く
「廃ビルのレギオンですが、かなりの再生能力に加え。火炎・幻術・結界の3種類の能力を持っていました」
うん。それは知ってる、私が力を与えたからね。今思えばやりすぎた気がしなくも無い
「黒髪の少女と亜麻色の髪の女。それと……バンダナを巻いた少年と妖狐についてですが」
「ああ。黒髪の少女のほうはいいよ。彼女の名前は芦。芦蛍。ここまで言えば判るだろう?」
人間界では私は芦優太郎。ここまで言えば聡いメドーサなら判るはず
「アシュ様の眷属でしたか?その割には魔力が……」
「眷属と言うか娘だね。愛しい娘」
「はい?」
間の抜けた声を出すメドーサ。私の中では凛とした女性と言うイメージがあったが、こんな顔もするんだなあと思いながら
「私の目的のためにね。バンダナの少年。横島君を鍛えてもらってるんだよ。それまでは基本的には人間側で行動してもらうつもりでね」
まぁ最終的には私が人間側になるんだけどねえと思いながら言うと。メドーサは若干目に喜びの色を浮かべて
「ではあの横島はこちらの陣営に?」
私の城で寝ている間に逆行してきたメドーサの精神と融合したのか、横島君への好意が若干あるようだね
「それも考えて行動しているんだ。無論私の最終目的のためでも在る」
ちなみにその最終目的は横島君と蛍の結婚なのだが、メドーサは私の表向きの理由。最高指導者の抹殺だと思ったのか
「判りました。アシュ様の目的が適う様に協力します。それではまた指示があれば連絡を、それまで私は天龍童子をどうするのか考えますので」
あーそういえばそんな話もあったなあ、別に天龍童子をどうこうしようと言う気はないんだけどなあ。メドーサが私の部屋を出てからオッズ表を見ると
メドーサ 1.7倍→2.6倍
倍率が戻っていた。もしかすると蛍と横島君の事を考えたのかもしれないね。とは言え魔族だから一夫多妻とかにも抵抗が無い。倍率が元に戻ったからと言って楽観視は出来ない
(小竜姫と会われると何か変わりそうだしね)
未来の意志と現代魂の結びつきは個人差がある。蛍は特例で記憶を持っているが、知らない記憶も多い。小竜姫のように明確な意識を持って現代の自分を取り込もうとしているのはかなり珍しい
(メドーサも出来たらこちらがわに引き込みたいんだけど、今のままだと難しいね)
現代のメドーサがはいそうですかといって、従ってくれるとは思えない。彼女はプライドも高いしね
(少しは未来の記憶が戻ってくれると良いんだけどね)
そうすれば本格的に動くことの出来ない私と違って、顔の広いメドーサは過激派を探すのに役に立ってくれるだろう。だがその場合メドーサは蛍の敵になるということで
「ままならないねえ……」
私としては味方にしたいけど、味方にしてしまうと蛍の敵が増える。なんともままならないものだねと思いながら背もたれに背中を預けて
「……とりあえず敵が増えてないってことで蛍の怒りが収まってくれると良いなあ」
蛍は恐らくあの廃ビルに居たメドーサのことを気付いていただろう。これでオッズが下がっていたら更に怒りを買っていただろうなあと思いながら。土偶羅魔具羅が集めてくれている過激派の行動だと思われる事件についての資料に目を通すのだった……
アシュ様のビルを後にして、人界のアジトにしているホテルに戻り
「はーなんか疲れたねえ」
精神的肉体的の疲労はそこまでではないんだけど、妙な疲労感を感じる。ベッドに横になり目を閉じる
(アシュ様の手がかかってる人間がGSの組織に居るのかい……となると私はどうするかねえ)
天龍童子の襲撃の後に何処かのGSの養成施設に潜り込んで、見込みのある人間に魔装術を教える予定だったが、アシュ様が動いているのなら実行するかどうかも判断に悩む
(うーん。だけどアシュ様には一応聞いてる訳だし……多分あの蛍って言うのは横島をこっちに引き込むための人員なんだろうね)
あの廃ビルで見た陰陽術。あれは下手をすれば私でも大ダメージを受けかけないほどの術だった。どうも本能的に使ったらしいが、その威力は充分すぎる。警戒するのも納得の人間だ
(……まずは人界にいる龍族を焚きつけて……足がつかないように……)
ベッドで横になっているうちに眠くなり、私はそのまま眠ってしまうのだった……しかし眠りに落ちたはずのメドーサはすぐに身体を起こし
「……変な感じだね。まぁいいか」
さっきまでのメドーサの口調よりも少し柔らかい口調で話すメドーサ。目の光も随分とやさしいものになっている
「だけど手足の感覚は鈍いね。魂の差異か?」
判ると思うが今話しているのは逆行してきたメドーサだ。今のメドーサの属性は魔族・悪なのだが、未来のメドーサは魔族・中立であり。その差が手足の感覚の鈍さや、穴抜けの記憶のせいになっている。魂は同一でも根本的な属性が違う、小竜姫は同じ存在で属性も同じだから驚くほどに同化が早かったのだが、メドーサはそうは行かなかったようだ
「リンクも無いしね。こりゃ私が表に出るのは相当難しそうだ」
魂同士の繋がりを感じない。現代のメドーサの属性が変わるまでの自分が表に出るのも、同化もするのも難しいねと呟き。ベッドの縁に座り足を組みながら鏡を見て
「……私ってこんな顔をしてたんだね」
少しショックを受けながら呟く。あの時代ではもっと肌に張りもあったし、目付きも柔らかいものだった……
「うーん。これじゃあ横島が怖がるかもしれないねえ……」
こうして表に出れたのなら少しは横島に会って見たい気もするが、暫くの間人界での行動は私がメインになるはず。下手に動くわけにも行かないしねえ……
(月って何時だったかな……)
まずは若返らないと蛍と勝負にならない。美女・美少女ならOKと言う横島だが、少々歳をとりすぎているような気もするし……
「ふっふっふ……あの時は諦めたけど、今度は諦めないよ」
私も蛍。いやルシオラは横島の霊気の引き継いでいるから、姉妹と言えなくも無い。別に私も一緒に居ても良いと言うのなら蛍のために協力しても良いと思うし
(まぁその為にはまずは蛍との接触する必要もあるし、それも中々難しいような気もするしね……)
多分こうして表に出ている時間はかなり短い筈。接触するのも難しい……だけど蛍と接触しないと不味い……
「あ……」
今思い出した。ぺスバとおキヌと話している時に来た小竜姫。なんか色々と焚きつけてしまって振り切った表情をしていたっけ……
そして更に思い出すのは恐怖の記憶。私とべスパが目を逸らした瞬間に聞こえた「ガパアッ!モグシャアッ!!!」「きゃあ!?」「くすくす笑ってごーごー……ふふふふふふふふ」
おキヌが真っ黒いオーラを纏い。小竜姫を飲み込み、自身と同じく真っ黒にしていた。そして私とぺスパは悟ったのだ。この世には触れてはいけない存在が居ると、それが間違いなく。おキヌだ……
「あーあー……刺し殺したいなあ」
とかをエガオで言っていたあの顔は魔族である私でさえも恐ろしかった。そしてそのおキヌに飲み込まれていた小竜姫も同じようになっていた。それを思い出した私は
「私殺されないよな……」
龍としての凶暴性を表に出すようになってしまっていた小竜姫の事を思い出し、GS試験の時と原始風水盤の時殺されかねない事を思い出た。無論小竜姫だけではなく、おキヌの存在もかなり危険だ
「届け、届け、届けッ!!」
ベッドに座り腕を組んで繰り返し呟く。現代の私は白龍会に手を出すのを止めようとしていた、それは不味い。少しは干渉できるかもしれないので必死に祈る。小竜姫には気をつけろ、計画通りに動けっと必死で念を送る。冗談じゃなく命が危ないからだ……だんだん薄れていく意識の中も必死に祈り続けるのだった……
「ん?……寝てたのか?私らしくないねえ」
苦笑しながら身体を起こしたメドーサは頭を振りながら身体を起こして
「とりあえず白龍会に顔を出して、人界の龍族に声をかけて……防具を新調して……意外なほどにやることは多いねえ……」
今のメドーサは気付くことはなかったが、やろうと思っていたことがかなり増えている。未来のメドーサの想いはしっかりと現代のメドーサに届いているのだった……
美神さんの事務所のソファーで一晩を過ごした俺は凄まじい威圧感を感じながら
「なータマモー。俺家に帰りたいなー」
「クーン……」
膝の上でお腹を見せているタマモのお腹を撫でながら呟く。タマモもぷるぷると震えていることを考えると怖いんだろうなあ……
「時給450円?労働基準法って知ってます?」
「霊力も使えないんだし、荷物持ちと囮位しか使えないんだから。450円でも高いわよ!」
蛍と美神さんの怒鳴りあいが恐ろしい。もしタマモが膝の上に居なければ俺は逃げ出していたかもしれない
「最低賃金は護ってください!」
「蛍さんには3000円出すって言ってるんだからそれでいいでしょ!?」
「冗談じゃないです!横島だって危ないんですよ!?せめて2000!」
「高いわよ!」
アルバイトとして雇ってくれるのだが、俺の時給についての口論をしている。
「クウ」
ガジガジと甘かみしてくるタマモ。前足でじゃれついてくるタマモが可愛くて仕方ない。タマモのおかげで怖くない……
(うーありがとなータマモ)
心の中でタマモに感謝する。朝起こしてくれるタマモにこうして甘えてきてくれる、もうタマモがいない生活は考えられないかもしれない。あ、勿論蛍もだけど
「判ったわ!ここでアルバイトはしない!横島!別の事務所に面接に行くわよ!」
「え?」
怒った様子で言う蛍。俺としてはこんな美人のお姉様と一緒に働けるのは最高だと思ってたのに
「早くする!小笠原除霊事務所に「1500円!横島君が霊力を使えるようになればその都度査定する!」
美神さんが焦ったように叫ぶ。この時俺は見逃す事はなかったが、蛍がにやりと悪い顔で笑ったのをしっかりと見た
「OK。それで行きましょう。それと横島は学生だからある程度はそこの所は考慮してね?」
「うう……判ってるわよ」
しぶしぶと言う感じで契約書を書き直している美神さん。俺は勝ち誇った笑みを浮かべている蛍の背中に
(お、お袋。蛍に何をしたんや)
あの背中はどう見てもお袋と同じ背中。一体日本に居る間にお袋は蛍に何を教えたのか?俺はそれが激しく気になったが、知ってはいけないことだと判断して詳しく聞くことは無かった
「それじゃあ、とりあえず昨日の除霊の費用を少し頂戴?10万でいいから」
「まぁ確かに私1人じゃだめだったから……」
ものすごーく嫌そうな顔をして蛍に金を手渡す美神さん。事務所の中の威圧感がなくなったので、定位置の頭の上にタマモが上ってきたところで
「それじゃあ!横島!タマモ!何か美味しい物でも食べに行きましょう。何が食べたい?」
笑顔で尋ねてくる蛍。美味しい物……そう言われて頭の中に浮かんだのは
「寿司は?回ってる奴で良いで?」
最近食べてない寿司の事を思い出して言うと、蛍はくすりと笑い
「回ってない寿司で大丈夫よ!行きましょう!」
「まじか!?」
回ってない寿司屋なんて言った事が無い。もしかすると大トロとかも食べれるかもしれないと思い立ち上がる
「クウ?」
「タマモには美味い稲荷寿司だよなー?判ってる」
「コーン♪」
タマモも頑張ってくれたんだからのけ者なんてことはありえない。俺は頭の上のタマモにそう声をかけ
「それじゃあ美神さん!今度からよろしくお願いします!」
俺はそう頭を下げ、既に事務所を後にした蛍の後を追いかけて事務所を後にしたのだった……
楽しそうにビルから出て行く芦さん達を見て私は深く溜息を吐いた
(やられた……芦さんが時給3000円で横島君が1500円。一律危険手当が5000円)
かなりの大損で、損して得取れとは言うが、損せず得取れと現世利益最優先の私にとっては手痛い出費だ。だけどあの2人がエミの所に行くのを防げたのだから仕方ないと割り切るしかない
「エミの所にあの2人が行くことになったら大損よ」
そう思えば、ここであの2人にそれなりの時給を出すことを約束しても何の問題もない。優秀な従業員1人と、そうなるかもしれない従業員が1人。充分元は取れるはずだ……
「さーて、それじゃあ最初はどんな依頼を受けましょうか」
まずはあの2人に実戦の経験をつませないといけない……あー横島君の訓練もあるか
「ま、それは大丈夫でしょう。芦さんがいるし」
芦さんはかなりGSについて勉強してきているので、このままGS試験に出せるレベルだ。それに見た感じだけど、芦さんは横島君を随分と気にかけているみたいだし、態々私が稽古をつける必要もない
(そう言うところでは本当に良い子よね)
まぁ交渉のレベルの高さには正直驚いた。ある程度基礎を教えれば私の代わりに依頼を取れるレベルだと感心しながら、依頼の書類に目を通していく
博物館の除霊 400万 没 安すぎる。霊具のコストも馬鹿にならないし駄目
祟り塚の鎮魂 1200万 没 これも安すぎる。祟り塚の除霊を1000万で出来るわけが無い。
廃神社の除霊 4000万 没 レート的にはまあまあだけど、祭ってる神によっては死に兼ねない。これも当然駄目
霊的不良物件 1億円 ただし午前中のみ、早急に除霊求む
「不良物件の除霊にしておきますか。条件も楽そうだし」
それに情報に詳しく目を通すと、自殺した元工場の経営者が起こしている事件らしいし、これくらいなら本当は2000万が相場だけど、流石大企業。太っ腹だわ……この依頼で決まり。
「美神令子除霊事務所です。依頼の件でお電話しました……はい……はい。では明日の明朝にお伺いします」
早く除霊してくれと詳しく話も聞かず。私に依頼してきた、これならもう少しお金を取れそうね
「芦さんと横島君もやっぱり連れて行こうかしら」
前のレギオンなんて滅多にでる者じゃないし、今度はちゃんとした除霊現場に連れて行かないとね。私はそんな事を考えながら、明日の除霊に必要な道具の準備を始めるのだった……
GSのアルバイトを始めよう! その5へ続く
メドーサがメインでしたね。メドーサはかなり好きなキャラなので優遇して行きたいと思います。あと先に言っておきますがおきぬちゃんは魔王で黒おキヌをメインにしたいと思っていますので、先にご了承ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします