GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

203 / 205
どうも混沌の魔法使いです。今回は主にくえすや柩と言ったGS原作に出ていないキャラをメインに書いて行こうと思っています。内容的にはあんまり濃い内容ではないですが、そのキャラの方向性を決める感じの話にしようと思っています。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



その2

リポート27 新たな幕開け その2

 

魔界での保護生活を終え、一応報告の為にGS協会に来たんだけど……

 

「うう……はい。承認……ああ……もういや……もう3日も寝てない」

 

ボクのリポートに目を通すことなく、承認の判子を押した会長殿の顔には濃い疲労の色が浮かんでいる。更には3日も寝ていないという言葉を聞いて

 

「過労死するよ?会長殿」

 

一応ここまで通されたんだけど、机の上でぐったりして動く気配の無い会長殿。目に光が無くて死にそうな表情をしている

 

「GS試験にノスフェラトウの復活とか……なんでこんなに重なるのよ。まだGS試験のも終わってないのに……」

 

なんとまぁ不運が重なっているね、笑いたい所だけど、ここまで弱っているのを見ると笑う訳には行かないと思ったので我慢していると

 

「くひ!?ああ。安心するといいよ、会長殿」

 

何がぁ?と死んだ目でボクを見つめる会長殿。今急に見えた未来だけど

 

「六道が救援に……「冥華様よりお手伝いするように言われてまいりました。私達はどうすれば?」……あ、ああああ……ありがとう!冥華さーん!」

 

仕事の手伝いに来てくれた5人の六道家の家紋入りのスーツ姿の女性が会長室に来たと同時に会長殿は号泣しながら、感謝の言葉を叫ぶ。

 

その様相によっぽどギリギリだったねと苦笑しながらソファーに腰掛けるのだった……

 

「ああ。やっと帰れる……自分のベッドで眠れる」

 

業務の引継ぎを終えた会長殿に家に帰ったらこれでも飲みたまえよと言いながらガラスの瓶を差し出す

 

「なにこれ?見た事無いんだけど?」

 

ラベルも何も無い黒い瓶を摘みあげて怪訝そうな顔をしている会長殿に、その瓶の中の薬品の説明をする

 

「ボクを魔界で保護してくれていたゴモリーがくれたのさ、霊力とかを回復させるのに良いってね!くひひ!」

 

ゴモリーの名前のごふっと咳き込む会長。GS試験では同じソロモンのガープが襲撃してきたのだから、同じソロモンのゴモリーの名前を聞けば、この反応は当然だけど乙女がしていい物じゃないと思うけどねぇと苦笑しながら

 

「それを飲むと1日起きない変わりに体力とか霊力も完全に回復する霊薬らしいんだよ。ボクも魔界に行った時はお世話になったんだ」

 

と言うかこれがないと死んでたかもしれないねーと笑いながら言うと、笑い事じゃないわよと疲れた表情で溜息を吐いた会長殿は

 

「ありがと、これ貰っておくわ」

 

「くひ、ああ。それが良い、強制的に寝ないと回復する物もしないからね」

 

責任感の強い会長殿だ。何かトラブルがあれば、自分の休日さえも返上して行動してしまう、だからこそ薬にでも頼って1日誰にも起されること無く眠る必要があると思う

 

「あ、そうそう柩。貴女の事だからもう知っていると思うから、言う必要も無いと思うけど」

 

帰り支度をしながら話しかけてくる会長殿。まぁボクは未来視があるから大概の事は知っている、態々伝えるまでも無いけどと前置きしてから

 

「くえすが事務所を開設するわ「くひ!?くえすが!?」……その反応を見ると知らなかったみたいね。住所いる?」

 

会長殿の言葉に頷きながら、ボクは思わず笑みを零した。そもそもボクの未来視では、くえすが魔族となりガープと共に日本を去ったと言う未来しか見えてなかった。だからくえすが事務所を開設するなんて知る由も無い、確かに一瞬未来が変わるかもしれないという可能性は見たが、それはかなり低い確率の未来でくえすが魔族と化すのは決まっていた。それを覆したのは言うまでも無く横島しか居ない

 

(ああ。君は本当に面白い……)

 

決まっていた未来を変えた。そんな事はありえないのに、それを成し遂げた横島。ああ、本当に面白い男だ……こんなにもボクが興味を持つ男が居るなんて……

 

(横島に会ってから世界が面白く見えてきた)

 

今まで未来視の結末が変わった事なんて無かった。所が横島はそれを簡単に変えてしまう、灰色だった世界に急に色がついたような感覚だ

 

「はい、これ住所。ここからは割りと遠いからタクシーを使うと良いわよ」

 

「くひ!感謝するよ会長殿」

 

会長殿から差し出されたくえすの事務所の住所がメモされた紙をポケットにしまう。事務所なんていらないと言っていたくえすが事務所を持つ、その理由は間違いなく若手GSの育成制度を利用する為だろう

 

(くひひ!面白くなってきた)

 

今日はこのまま帰って寝るつもりだったけど、くえすをからかいに行くのも面白そうだ。ボクはそう思って早足でGS協会を後にし、出るなり見つけたタクシーを呼び止めくえすの事務所へと向かうのだった……

 

 

 

「ふう……やっと手続きも終わりましたわ」

 

机の上の書類の束を見つめて深く溜息を吐く。まさか海外に魔術書を探しに行っている間にノスフェラトウなんていう大物が日本で復活していたなんて……

 

「魔術の実験台を逃しましたわ」

 

見つけたは良いが、丁度良い敵がいなかったので使うことが出来なかった呪文が山ほどある。ノスフェラトウなら良い実験台になったと思うと残念で仕方ないですわね……それが若干の後悔となっていますが、私の事務所を開設する準備が出来たのでこれでいつでも横島を研修に引っ張る事が出来るのでそれで良しとしましょう

 

「本当に運が良かったですわ」

 

神宮寺の屋敷からは遠いが、その変わり横島の学校と家の間に幽霊屋敷として放置されていた物件があったので、そこを安く買い叩いて自分で除霊し事務所兼別邸とすることにしたのですが、暮らしてみると意外なほどの優良物件だった。まず竜脈の上に建っている。次に風水の観点から見てもかなりの吉の方角になるように部屋が用意されており、更には地下室もあり魔法の実験をするには良い条件ばかり揃っている

 

「全く無知な男に感謝ですわね」

 

この物件の前のオーナーは霊感も霊的な知識も無いのに、曰く付きの骨董品ばかりを集めていた。それが竜脈の霊力を吸収し、呪いの品としての力を高め、周囲の雑霊や悪霊を呼び集め、オーナーを呪い殺した。ま、今ではその呪いの品も除念を終えてただの霊具となっていますけどね

 

(優良な霊地にこれでもかと言うほどの上質な霊具……それが2千万で手に入るとはついていますわね)

 

並のGSでは除霊出来ないほどに悪霊が集まっていた。美神や唐巣神父レベルで無ければ手を出す事が出来ない物件であり、除霊依頼も出ていなかった幸運に思わず感謝していると

 

「やぁやぁ!くえす、良い事務所じゃないか」

 

「柩?不法侵入ですわよ」

 

オフィスにする予定だった書斎に我が物顔で入って来た柩にそう告げると

 

「いや?大分チャイムも押したんだけど反応ないし、鍵も掛かってないから悪いとは思ったけど失礼させて貰ったんだよ」

 

……そう言えば、まだ建物自身の設備は終わって無かったですわね……これは私の落ち度でしたね

 

「所で柩。貴女今まで何をしていたんですの?」

 

一応客人なので紅茶のカップを差し出しながら尋ねると、柩はくひひっと笑いながら

 

「ソロモン72柱のゴモリーの宮殿に匿われていたよ」

 

「それはまた……とんでもないのに匿われていましたわね」

 

GS試験の襲撃者であるガープと同じく72柱に数えられる魔神だ。どうやって匿って貰えるように交渉したのでしょう?

 

「向こうが勝手に気に入って、半分拉致されたよ。毎日毎日可愛い可愛いって頭を撫でられるのはそこそこ辛かったよ」

 

「ご愁傷様ですこと」

 

上位の神魔は独特な感性を持っている。柩がその感性に嵌ったから匿ってくれてくれたのだから、それくらいは必要経費として我慢するべきだ

 

「それで?何をしに来たのです?世間話を……「くひひっ!横島忠夫。彼はどうだい?禁忌の魔女様の未来を変えた凡夫を君はどう見る?」

 

柩の口から出た言葉に、今まで腑に落ちなかった何かがすとんっと嵌った気がした。きっと柩が見た未来では私は……きっと……

 

「……悪くない、悪くない男ですわ。ええ、この神宮寺くえすが欲しいと思ったのはあの男がきっと最初で最後でしょう」

 

あの馬鹿は私を救うために命を賭けた。だからこそ私は惹かれたのだ……打算も合ったかもしれない。だが、ただ私を救う為だけに命を賭け……そして私を救い上げたのだ。私をずっと呑みこんでいた闇から……救い出してくれたのだ

 

「ただ惜しむらくは、あの男の1番は私ではないということですわね」

 

私の1番は横島しかいないだろう、だが横島の1番は私ではないのだ。それが無性に腹ただしく、そしてなんとしてもその座を奪いたいと言う気持ちが胸の中に沸くのを抑える事が出来ない

 

「くひひ!いい返事を聞かせてくれてありがとう。友人として祝福するよ……さてじゃあボクはそろそろ帰るよ」

 

そう笑った柩から視線を逸らし、海外で買い付けた魔術書を開こうとすると柩がそうだと思い出したように呟き

 

「横島は君みたいな容姿の女性を好むんだ。チャンスはゼロじゃないよ、ああ、断言しよう。適切な行動を取ることが出来れば君にだって勝利者になる可能性はあるよ」

 

ぼっと顔が紅くなる。未来視が出来る柩が言うのだから、その可能性は少なくとも存在しているのだろう。自身の心音がうるさいくらいに響く……その心音を止めるのに相当苦労し、柩の姿が見えなくなるまで私は胸に手を当て続けていた

 

「ふっふふふふ……そうですか、そうですか……」

 

私に勝ちの目は無いと思っていたので、一時的にでも横島を自分の側に置く事を考えていたが……私と横島が結ばれる可能性があるのならば、止まる必要なんてない。そもそも愛してしまった以上、止まるつもりなんて微塵も無く、なんとしても芦蛍から横島を奪うことだけを考えていたのだから……

 

「良い助言感謝しますわ……」

 

しかし適切な行動と言うのに対して何一つ助言が無かった。私は少し冷めてしまった紅茶を飲みながら

 

「普通ってなんですの?」

 

魔女として生きてきたので普通が判らない、そして適切な行動と言うのも、私のように魔道に関する生き方をしていると、どうしても自分本位の考え方をしてしまうわけで……

 

「どうすれば良いんですの?」

 

1番肝心な所に関するヒントが無く、どうすればいいのか判らない……

 

「と、とりあえず……えっと……どうしましょう」

 

当面は横島を自分の事務所に研修に来させることだけを考えていたのですが、それが適切なタイミングなのか?と思うと不安ばかりが胸を過ぎる。ああ……これはもしかするとあんまり頼りたくないけど、柩のそのタイミングを聞く必要があるのかもしれない……

 

「急に前途多難ですわ」

 

今まで自分の思うままになんでもやって来た。だが、それでは上手く行かない物に初めてぶち当たった私は深く溜息を吐くことしか出来ないのだった……

 

 

 

東京から遠く離れた山中。横島とおキヌが初めて出会った人骨温泉ホテルの近くの山道を駆ける少女の姿があった。薄い水色の髪に赤い瞳と神秘的な容姿をした少女だ。もしここに神代琉璃の存在を知る人間が居れば、彼女との血縁関係者であるというのは一目で判っただろう。彼女の名は氷室舞。旧姓神代舞。神代家の権力騒動に巻き込まれる前に遠縁の氷室家に養子に出された琉璃の血を分けた妹だった

 

「舞!あまりはしゃぐな!危ないぞ!」

 

お姉ちゃんからやっと手紙の返事が来て、嬉しくてシズに会いに行こうとしていると肩に重みを感じたと思ったら、少し遅れて怒ったような声が聞こえてくる

 

「あ。ご、ごめん……ナナシ」

 

大分慣れてきたとは言え私はあんまり運動神経が良くない。ふと振り返ると、いつもはおっかなびっくり降りてくる坂道を既に通り過ぎて

 

いた事に気付いて、よく転ばなかったなあと感心しながら肩の上の妖精に謝る。種族も名前も無い妖精のナナシ、本人曰く既存の妖精とは全く異なる存在らしい、名前は無いと言うのでナナシと私は呼んでいる。背中に木の葉で作った盾を背負い。腰には枝を削った剣を挿している。こんな玩具みたいな武器を使っているが、この妖精はめちゃくちゃ強い。しかもこの剣を使わなくても、短い手足だけでも十分すぎるほどに強い。具体的に言うと、悪霊10体を1人で倒せるほどの力を有している

 

(ぬいぐるみ見たいなんだけどね……)

 

アニメとか漫画に出てきそうな人型で、人間とは全く違う姿をしているし、見た目よりも声がかなり渋いのが若干気になるところだ

 

「姉から手紙が来て嬉しいのは判るが、危険な真似はするな。シズ様にお前を守るように命を受けているワシの立場も考えてくれ」

 

ナナシにごめんともう1度謝り、山の中を進む。氷室家に引き取られてからは神代の家……いや、お姉ちゃんが恋しくて、私がお姉ちゃんになってあげると早苗お姉ちゃんが言ってくれたけど、それでも私はどうしても馴染む事が出来なかった。そして山の中でリスなどと遊んでいるうちに見つけたのだ。小さな小さな、打ち捨てられた社とそんな社に住む……

 

『おお?舞か、よく来たな』

 

かつては山に祭られた神だと言うシズに出会ったのだ。シズは私を見つけると穏やかに笑い、指を鳴らすと葉っぱが巨大化して椅子になる

 

『今の時期は少しばかり木の実なども少ない、我慢せよ』

 

「わ、私そこまで食いしん坊じゃないよ!?」

 

判っておるわとくっくっと笑うシズにお姉ちゃんから手紙が来た事、そして近い内に1度東京へ向かうことを話すと

 

『そうかえ……東京とか言う地の事はワシは知らぬが。ふむ……そうじゃな』

 

シズは何かを考え込む素振りを見せると、地面に手を置く。すると見たことの無い植物が生えて来て、木の実をつける。そしてその木の実はブレスレットのような形に変化する

 

『持ってゆけ、ワシの守りじゃ』

 

「ありがとう!シズ!」

 

シズがくれたブレスレットを両手で握り、暗くなる前に帰るねと声を掛けて私はシズの社を後にするのだった

 

 

 

『それで?お前はいつまでワシを監視するつもりかえ?』

 

舞を見送っていたシズが前を向いたまま声を掛けると、黒い導師服に身を包んだ男の幽霊が姿を見せる

 

【本当に山の神だったのだな】

 

『なんども説明したのに信じておらんかったかえ?』

 

舞にシズと呼ばれていた神はかつて死津喪比女と呼ばれ、この地を滅ぼそうとした悪鬼だった。だがその正体は長い飢饉、闘争による死者の念や憎悪に狂わされ属性が反転してしまった中国の名も無き神霊だった

 

【重ね重ね申し訳ない】

 

『気にしてはおらんよ、アレはワシにも非があった』

 

なんの因果か中国から日本へと渡り、そして偶然見つけた極上の霊地を見つけ。押さえ込んでいた憎悪を押さえきれず暴走し死津喪比女と言う荒神に成り果てたワシが悪い

 

【して真名は思い出されましたかな?】

 

『いいや?まったくこれぽっちも思い出せん』

 

そもそも過去の記憶が無い。大陸から渡ってきた事、長い飢饉の苦しみと戦争の悲しみは覚えているがそれ以上は何も覚えていない……

 

【そうですか、では失礼をワシにもやるべき事があるので】

 

そう言って消えていく導師を見つめながら、拳を作る。だが全くと言って力が入らない、ただここに存在しているだけで、霊脈から霊力を吸収しているわけでもない、だからワシはこのまま蓄えてきた霊力を長い年数をかけて減らして行き消滅するだけじゃろう

 

『消える前にやらねばならぬ事はあるがな』

 

視線の先には封印された洞窟が見える。今思えば、あの娘が居たからワシはこうして正気を取り戻すことが出来たんじゃろうな……ワシは

 

そんなことを考えながら沈んでいく太陽を見つめ続けるのだった……

 

 

 

リポート27 新たな幕開け その3へ続く

 

 




死津喪比女も半分オリジナルキャラへとなってもらいました。メガテンと言えば地霊はそう言うので狂って暴走しやすい立ち居地なので、メガテンの要素を加えて元神霊と言う経歴にしてみました、それと舞さんが連れている妖精はドラクエのコロシリーズみたいな姿をしていると思ってください、声はダンデイボイスですけどね。次回は神界と魔界そしてアスモデウス陣営の話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。