GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです、今回で第一部のリポートは終了となり、次回からは新しく第二部を投稿して行こうと思っています。それに伴いリポート27は第二部に向けての動きを書いて行こうと思っているので、色々な視点や場面が変わることになると思いますが、それだけ状況が動いていると言うことでご理解いただければ幸いです。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


リポート27
その1


 

リポート27 新たな幕開け その1

 

先日の除霊のレポートを纏めているとタイガーが真剣な顔をしてオフィスに入って来たので、1度作業を止めてタイガーの話を聞くことにした

 

「1度国へ帰りたい?でもあの国には……」

 

「判ってますケン、ワッシにはもう肉親を呼べる人間はおらんですのジャー、でも仮とは言えGS免許を取れたって……報告したいんジャー」

 

GS試験では敗退したが、今回は特別処置として、琉璃が認めた参加者全員に仮だがGS免許が交付される事になった。確か……タイガーとピートとあと何人かが交付される予定だったが、ソロモン72柱のガープが出てきたと言うことに恐れを為して受け取り拒否が多かったと聞いている

 

(うーん……まぁ気持ちも判るワケ)

 

私がタイガーの身元を引き受けに行った時、タイガーはジャングルで小屋を建てて1人で暮らしていた。近くに岩を削って作ったであろう墓標が3つ並んでいたのも覚えている

 

「判ったワケ……お金はこっちが用意するわ、でも2週間後には大きな除霊の仕事が入っているからそれまでに戻るワケ」

 

2週間後に遺跡から発掘された、出土品の除霊の予定が入っている。その出土品に取り憑いている幽霊と言うのがこれまた珍しく、怨念も憎悪も持っていない巫女の幽霊と来た。残念な事に言語の違いで言葉を交わすことが出来ないので。タイガーの精神感応で会話し、成仏してもらうつもりなので、それまでには戻って来るようにと念を押すと

 

「判ってます……あの国には……正直良い思い出が無いんジャー。墓参りしたら直ぐに戻りますケン」

 

そう笑ってオフィスを出て行くタイガーの背中を見ながら

 

「悪魔……ね」

 

タイガーの母国ではタイガーは悪魔と恐れられていた。それは女性恐怖症が限界を超えてセクハラをするからじゃない、タイガーが7歳の時。つまり今から10年前……タイガーの住んでいた村に巨大な虎に憑依した悪霊が現れ、その事件の折にタイガーは両親を失い、村は壊滅的な打撃を受けた……そしてその悪霊はタイガーが殴り殺した。自分の10倍は大きいその虎の牙を折り、足をへし折り、徹底的に痛めつけ除霊師が来るまでの2時間。タイガーは1人で足止めをしていたのだ

 

「それゆえに悪魔……村を追い出され、ジャングルに追放された……か」

 

確かにタイガーは村を救った英雄となるだろう、だがそれ以上に恐怖され、歩くことがやっとの祖父と共に事切れた両親を抱えてジャングルへと移り住んだと聞く。そしてその10年の間に何があったのか、女性恐怖症になり限界を超えるとセクハラをするようになった

 

「もしかするとタイガーの霊能力は別にあるのかもしれないわね」

 

精神感応だけじゃないタイガーにはもしかすると他にも何か霊能力があったのかもしれない、そうじゃなければ当時7歳の子供が凶暴な虎を殴り殺すなんて思えない。まぁ私がこれを知ったのは最近の事で、スカウトしに行った時は強力な精神感応能力者としてスカウトに行った。GS免許の交付に伴い調べたタイガーの経歴を見て、そこで初めて知ったのだ。胸糞悪いことに悪魔付きの危険人物として母国のGS支部に今もなおタイガーの記録が残っていたから知る事が出来たのだ

 

「タイガーに何か、気持ちの変化があったのかもしれないわね」

 

ジャングルの小屋で大量の動物に囲まれ暮らしていたタイガー。人間を恐れ、会話を恐れ、誰かを傷つける事を恐れたタイガーを半場無理やり日本に連れて来たのは正解だったかもしれない……

 

「本当、先にスカウトしたかったわけ」

 

きっとタイガーを変えたのは横島だろう、横島には人を変え、惹きつける力がある。令子より先に知り合ってスカウトしたかったともう1度呟き。私はリポートを纏める作業を再開するのだった……

 

 

 

明日GS試験合格後の除霊テストの予定を組んだので、横島君と蛍ちゃんを事務所に呼んだんだけど……チビとモグラちゃんにタマモにシズク、といつもの面子に加えて後1人居て、その1人に私は目を見開いた

 

【むっしゃむっしゃ】

 

メロンパンを貪っている赤い着物の少女……ノスフェラトウの時に協力し、成仏したはずの英霊……織田信長が横島君の後ろから顔を出したのだ

 

「なんで居るの?信長」

 

「いや、家に帰ったら普通に飯食ってました」

 

……ず、頭痛が……と言うか成仏したんじゃないの?と思わずには居られない

 

「横島。私聞いてないけど?昨日ランニングの時迎えに行ったじゃない」

 

そうよね、昨日蛍ちゃんは除霊に連れて行ったけど、その時に私が決めたコースを走ったという報告を聞いている

 

【私の居場所を取る幽霊!キシャー!】

 

【おおう!?なんか突っ込んできたぞ!?】

 

包丁を持ってノッブに襲い掛かっているおキヌちゃん。凄く鬼気迫る表情をしていて怖いので関わるのはよしておこう。とりあえずは大体横島君の問題なので、横島君が何とかするべきだ

 

「えっと……シズクさんが氷塊で押しつぶしてたインパクトが凄すぎて言うの忘れてた……それに姿も見てなかったし……ぶっちゃけ完全に忘れてた」

 

あははっと笑う横島君だけど、確かに氷塊のインパクトが凄すぎて伝えるのを忘れてしまったも仕方ない……のかな?

 

「シズク。ノッブなにしたのよ?」

 

シズクがそこまで怒るには何か理由がある。そう思って尋ねるとシズクは

 

「……横島よりも先に飯を食おうとし、更には弁当まで食べて寝転がり寝ようとした。ふざけているとしか思えないだろう?」

 

ぶつぶつと家の主人よりも先に飯を食おうとするとか何を考えているんだとか呟いているのを見て

 

(シズクってやっぱり古風な考え方なのね)

 

現代とは違う考え方だけど、それも個性なので口にはしない

 

【シャアアアア!】

 

【ノッブう!?】

 

ノッブの顔の横に包丁を突き立てて唸っているおキヌちゃん……本当あの子やばいわ……横島君が関わらないとめちゃくちゃ良い子なんだけど……横島君が関わるとそれだけで一瞬で危険人物になってしまう。本当幽霊で良かった……生身だったらどこで事案が発生するか判ったもんじゃないわね

 

「渋鯖人工幽霊壱号。んーなげえからいっちゃんでいっか?」

 

そして横島君は横島君で渋鯖人工幽霊壱号に何か渾名つけようとしているし……

 

【え?あ。はい、お好きなようにどうぞ?】

 

「じゃあ、今日からいっちゃんな?」

 

だからぁ……勝手に幽霊とかに名前をつけたら駄目だって何時も言ってるのに……渋鯖人工幽霊壱号の霊格が上昇したのを感じて深く溜息を吐いていると

 

「横島を助手として使って行くならこれは覚悟してくださいね?」

 

「もうとっくの昔に覚悟してるわよ……」

 

ほっておいても幽霊とか妖怪を拾ってくる横島君だ。GSとしてはとんでもないのを助手にしてしまったと後悔する所だが、それを差し引いても能力が高いのでリリースするには押しすぎる人材だ

 

【横島ぁ!ワシ!あの幽霊娘苦手じゃあぁぁ!!!】

 

号泣しながら横島君にぶつかっていくノッブが溶けるように消えて行き、そんなノッブを追いかけていた包丁を持ったおキヌちゃんは当然ながら横島君に向かっていき……

 

【あ】

 

「のおおおお!?!?」

 

音を立てて自分の顔の横に突き刺さった包丁を見て絶叫する横島君。そしてバンダナに目が浮かぶのと、チビが放電したのは全く同じタイミングで

 

【いい加減にせんかああああ!!」

 

「みむぎゃあー!!」

 

【ご、ごめんなさーいッ!!!!】

 

バンダナから打ちだされた霊波とチビの電撃の直撃を喰らい事務所の壁に叩きつけられるおキヌちゃんを見て、深く溜息を吐きながら

 

「うう……モグラちゃん、タマモ。怖かった、怖かったんだよ」

 

半泣きでモグラちゃんとタマモを抱きしめている横島君を見て、私はもう1度深く溜息を吐くのだった……

 

 

 

包丁を持って横島に突撃したおキヌさんは、シズクの作った氷の板の上に正座し、膝の上に氷塊を置かれて

 

【ゆ、幽霊なのに痛いし、冷たいですぅ】

 

幽霊なのにぃっと呻いている。多分シズクの神通力が影響しているんだろうなあと思いながら

 

「それで美神さん。明日の除霊ってなにをするんですか?」

 

脱線しまくっていたが、今日事務所に来たのはその話をする為だ。除霊の内容を尋ねると

 

「うん。明日の除霊だけど、まぁ結構簡単のね。自殺して自我崩壊している社長の幽霊の除霊」

 

まぁそれは大して珍しい除霊の内容じゃないわね。割かし結構あるタイプの除霊だが、その代わり危険性が高かったり、低かったりして簡単とは言い切れないけど

 

「それを横島君。貴方1人で除霊して貰うわ、当然チビ、モグラちゃん、シズクに眼魂も禁止。心眼は許可するけど」

 

「うええ!?」

 

横島が絶叫する。私もシズクも若干険しい表情になるのを押さえられない。美神さんが私達を見て、ちゃんと説明するからと言うので美神さんの言葉に耳を傾ける事にする

 

「これはGS協会から指定された除霊依頼よ。まぁ詳しく言うと依頼じゃないんだけど、そこら辺は説明すると長くなるから省くわ。GS試験に合格した以上ある程度能力があり、リポートも詳しく纏める力があるか?そこら辺のテストがあるのよ」

 

あー何となく判った、横島1人での除霊経験の実習って事ね。そうなると確かにシズクやチビ達は駄目ね、横島が何かする前に除霊しちゃうから

 

「いやいや!?判りますけど!言ってる事は判りますけど!!!少し急すぎませんか!?」

 

横島が美神さんに詰め寄りながら言うと美神さんは険しい顔をして

 

「GS試験にガープが出たでしょ?残った魔力の残滓を悪霊などが吸収すると異常にパワーアップするわ。そうなる前に、まだ影響が強く出ていない内にやっておくべきだわ」

 

もし試験除霊の最中にそんな悪霊が来たら殺されてしまう。今ならまだ安全だからと言う美神さん……確かに今後どんな影響が出るか判らないのなら、安全が確保出来ている内に済ませてしまった方が良いだろう

 

「そうね、その方が安全ですよね。美神さん、私のほうは?」

 

「そっちも準備してるわ。横島君と同じで明日に予定を取ってあるわ」

 

流石美神さんね、こういう時の準備にぬかりはないわね。大丈夫かなあっと不安そうに呟いている横島に

 

「大丈夫よ。今まで色々やってきたでしょ?それに心眼は連れて行って良いって言ってくれてるんだからそこまで不安に思うことは無いわ」

 

【うむ。心配することは無い、私がお前のフォローをする】

 

私の言葉に合わせて言う心眼。横島は深い溜息を吐きながらも、さっきまでと違い気合の入った表情を浮かべ

 

「判りました、やってみます」

 

「それなら明日の午前9時。このビルに向かって除霊をして来てね。地図はこれ、あと下見は当然ながら禁止。ビルに入る前にこれを半分に折れば、自動的に鳥の使い魔になって横島君の除霊の手際とかを見てくれるから、絶対忘れないように」

 

地図や除霊前に渡される資料の入った鞄を受け取った横島。やっぱり不安そうな顔をしているので何か助言を……って思ったんだけど

 

「じゃあ、横島君は今日はもう帰って休みなさい。遅刻厳禁、それと駄目そうなら撤退。一応他にも除霊テストの候補はあるから失敗しても次がある。だから意固地にならず、無理だと思ったら逃げなさい」

 

美神さんが横島に帰るように言ってしまって、何もアドバイスをすることが出来なかった。まぁ後で家に行けば良いかと思っていると

 

「はい、こっちが蛍ちゃんの分。時間は11時から、場所は少し遠いから迷子にならないように気をつけなさい。それと今日は蛍ちゃんも自分の事だけに集中しなさい、横島君が心配なのは判るけど、今日の所は横島君の所に行くの禁止」

 

美神さんに横島の家に行くのを禁止され、私は溜息を吐きながら、事務所の隅を見ると

 

【うううう……冷たいです】

 

シズクが帰ってもなお、おキヌさんの膝の上の氷塊が溶けることは無く、いつになったら溶けるのか?あの様子なら横島の家にも行けないだろうし、多分この様子じゃ今日一晩経っても溶けないと思って

 

「今日どこかで外食した方がいいかもしれないですね?」

 

「……そうね。一応さっきどかそうと思ったけど、痺れたから自然に解けるの待つしかなそうだしね」

 

美神さん助けてくださいよーと叫ぶおキヌさんに自業自得よと声を掛ける美神さんを見ながら、私は事務所を後にするのだった……

 

 

 

横島と蛍が除霊テストを控えた夜。日本から遠く離れたブラドー島ではやっと身体を起こせるほどに回復したブラドーが唐巣神父の手紙に目を通していた

 

「ふむ……そうか……GSが何たるかは我は知らぬが、良く頑張ったようだな」

 

ピエトロがGS試験とやら補欠枠ではあるがに合格したと聞かされても、我にはよく判らぬが……ピエトロが努力したと言うのなら父としてそれは褒めてやらねばならぬな。そんな事を考えながら手紙を読み進めていると

 

「……くっくっ……ああ。そうか、そう言うことだったのか……漸く長年の疑問が氷解したぞ……」

 

我が妻の父は1度は我と妻の婚姻を祝福し、我に領地を与え。ヴァンパイヤと人間が手を取り合って暮らせる世界に共感した。だがピエトロとシルフェニアが生まれてから数年後。急に我達を害悪とし処刑しようとし、流行病で死んだ我が妻の遺体さえも奪い去った……裏切られた、その時は深い絶望ゆえにそう思った、だが……数年間とは言え親子として過ごした時間が嘘だとは思いたくなかった。我の理想に共感してくれた時のあの笑顔が嘘だとは思いたくなかった

 

「ソロモン72柱ガープ……よくもやってくれたな……」

 

我だけではなく、我が養父まで狂わせたと……その手紙には記されていた……ならば報復せねばならまい。我が理想を笑い、我が養父を狂わせた罪を償わせければならない。ほかの誰でもない、この我の手によって為さねばならない。それが貴族として、始祖の吸血鬼として、そして父として為さねばならぬ事なのだ

 

「ブラドー様!?どちらへ」

 

王座を出ると血相を変えて駆け寄ってきた執事を手で制し

 

「案ずる事はない。日本とか言う国に居るピエトロを労いに行くだけだ、丁度良い、帽子とマントを持って来い。早急に発つ」

 

は、か、畏まりましたと返事を返し、駆けて行く執事の背中を見つめながら拳を作る。手が震えて思うように拳を作る事が出来ない……まだチューブラーベルとやらを強制除霊された痛みはまだ我を襲っている。それに戦闘経験や魔術の扱いも全盛期と比べるまでもなく錆付いているだろう

 

「まずは錆落しだな……ああ、それに我を助けてくれた青年にも褒賞を与えなければ……」

 

なんだかんだでやることがたくさんあることに気付き、今すぐ出発できないなと気付いた我に準備できましたと戻って来た執事に

 

「すまない、やる事を思い出した。出発は未定とする」

 

きょとんとした顔になった執事だが、了承しました。ではいつでも出立出来るを致しますと言って階段を下りていく。良い執事だ、我が眠っている間。ピエトロとシルフェニアの教育係と執事の任を完璧に成し遂げてくれたと聞いている

 

「日本に行ったら名前をピエトロに聞いておくか」

 

そう言えば、あの執事の名前を知らないなと苦笑しながら、我を助けてくれた青年への報酬を見定めるために我は宝物庫へと足を向けたのだった……

 

リポート27 新たな幕開け その2

 

 




と言う訳で第二部ではブラドーが登場します。レギュラーとまでは行きませんが、準くらいには昇格するかもしれませんね。次回はくえすや柩と言った視点で進めて行こうと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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