GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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今回で信長の劇場版の話は終了となります。この後はのんびりと第二部に向けての日常形の話を書いていこうと思っています。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



その10

 

外伝リポート 外史からの来訪者 その10

 

それは唐突に訪れた、美神君達が先行して行き私達も合流する為に都庁から城に向かっていたのだが、思った以上にゾンビの数が多く完全に足止めされていたのだが

 

【あ、ああああ……】

 

突如目の前のゾンビ達が砂となって崩れ落ち次々と消えていったのだ。それに上の階から感じていた膨大なプレッシャーもいつの間にか消えている

 

「先生!これは!?美神さん達がノスフェラトウを倒したと言うことでしょうか?」

 

聖句でゾンビを浄化していたピート君がそう叫ぶ。私はその問いかけに頷き、開いていた聖書を閉じて

 

「お疲れ様。小笠原君、ピート君」

 

応援として呼ばれたのに何もしていないが……美神君達が戻ってくる場所を死守出来たと考えるべきか……

 

(少しばかり本気で鍛えなおさないと駄目だな)

 

ガープの出現により悪霊などの強さが上がっているのは判っていた。それでも今までは十分対応できていたのだが、今回の件でそれが甘い考えだったと痛快した。霊力は衰えが出てくる時期なのは判っているが、体力が圧倒的に不足しているのだ……それに伴い腕力や脚力もガタ落ちだ……これでは近い内に足手まといになってしまう……これから戦いが激しくなってくるのだから鍛えなおさないと……美神君の師として弟子の足を引っ張るような真似はしたくない

 

「ふー疲れたワケ……ピート、悪いけど水とか用意してくれる?ここら辺の浄化もしないといけないワケ、それに戻ってくる美神達の治療の準備もしたいから」

 

「判りました。直ぐ戻ります」

 

そう言って階段を下りていくピート君を見ていると小笠原君が手を向けて

 

「ほら、さっさと傷を見せるワケ」

 

気付いていたのか……先ほどゾンビが自分の腕をちぎって投げつけてくるという予想外の攻撃に対応出来ず、脇を掠めたのだが……後でこっそり治療しようと思っていたんだけど……ここは小笠原君に甘えよう

 

「全く、唐巣神父ともあろうものがずいぶんと情けないワケ」

 

「耳が痛いよ」

 

国内では最高クラスのGSと呼ばれているのだが、今回は殆ど役立たずで終わってしまった。

 

「はい、終わりなワケ……一応ちゃんとした霊能の診療科で診察を受けることをお勧めするワケ」

 

小笠原君の言葉に判っているよと返事を返し、美神君が置いて行った鞄から浄化用の霊具と治療用の霊具を取り出しながら

 

「結局の所……心も身体の鈍り切っていたんだ」

 

魔神が人間界に訪れるなんて予想もしない事件だ。精々Bランク程度の悪霊や悪魔を除霊する日々に慣れきってしまっていたのが、今回私が足手纏いになった理由だと思っている

 

「判っているなら1度しっかりと錆落しをするワケ」

 

小笠原君の言葉にありがとうと返事を返し、私は戻ってくる美神君達の治療の為の準備を始めるのだった……

 

 

 

【オヤスミー】

 

聞きなれたベルトからの声が聞こえたと思った瞬間。ふらりと視界が傾く……何度も変身は体験したが、やはり襲ってくるとてつもない疲労感と脱力感にはなれない……このまま倒れるのかと思っていると

 

「横島!」

 

横から蛍の声が聞こえたと思ったら、目の前に迫っていた床が離れていく。どうも蛍が抱き止めてくれたようだ

 

「ありがと……」

 

口を開くのも辛いがお礼を言っていると、蛍はそんなの良いから!と俺の耳元で怒鳴り

 

「あんまり無理しないで……確かにそれは横島の力だけど、そう簡単に使っていい物じゃないでしょ?」

 

このベルトの力はカオスのじーさんと優太郎さんが分析してくれた。俺の中に眠っている霊力を無理やり引き出すため後遺症が酷いと、最悪霊力を失う可能性もあると

 

「ごめん……」

 

蛍を心配させてしまったことを謝る。蛍は本当に心配させないでと言う……ノスフェラトウを倒すことは出来たが、蛍をこんなに心配させてしまっては何の意味も無いな……俺は薄れ行く意識の中そんな事を考えていたのだった……

 

「……う……あ?」

 

どれくらい意識を失っていたのだろうか?酷い頭痛を感じ頭を振りながら身体を起こすと

 

【おうコラ、ミッチー。なに人様の身体を使って特攻なんて真似をしておるんじゃ?】

 

【お、おうひわきゃあひゃません】

 

……土下座している光秀の頭を踏みつけているノッブちゃんの姿があった……余りに衝撃的な光景に絶句してしまった

 

「あ。横島君起きた?……体調治ったら説教ね」

 

美神さんの笑っているけど目が全く笑っていない笑顔に背筋が凍る物を感じていると

 

「……今回は私からもするからな」

 

おう……基本的には俺の味方のシズクまでも……俺大丈夫かな……シズクの説教ってめちゃ怖いんだよなあ……氷の刃とかを突きつけてくるから……

 

【まぁ……忠義は認めるがな、判ったらさっさと成仏せい、ワシも直ぐ行く】

 

【ふはあ……横島殿、美神殿……此度は本当に感謝しております。お約束通り私の槍をお譲りします……本当にありがとうございました】

 

深く頭を下げて消えて行く光秀を見送っていると、ノッブちゃんが槍を掴んで俺達の方に来て

 

【横島。ありがとう……お前のおかげでほんの少しはワシの悪行も訂正されるじゃろう】

 

ほれっと差し出された槍を受け取るが、ノッブちゃんの感謝の言葉に気恥ずかしいものを感じていると

 

「ノッブ……いえ、織田信長。ノスフェラトウの事を公表して、貴女の戦歴に傷が入ると思うけど……貴女の汚名は少しは晴らしておくわ」

 

【是非もなし……感謝するぞ、ま、あんまり悪行があっても困るしな!】

 

そう笑うノッブちゃんの身体が金色の粒子となっていく……これはキャットのときと同じ……

 

【出来ればもう少し現世を楽しみたかったんじゃがな……まぁ仕方ないか……おう!横島!これからも励めよ!お前は猿に似ておる!きっと大きく出世するぞ!】

 

猿?……それってまさか豊臣秀吉の事か?俺そんなんじゃないけどなあ……

 

「……当たり前だ、横島は才気に満ちている」

 

……いやあ?シズクさん、俺そんなに褒められるような人間じゃないんだけど……今だってまともに立っている事が出来なくて蛍に支えられているような状況なんだし……

 

【今はまだまだ、焦るなよ。お前はきっと大きく育つ……しっかりと下地を作ることじゃ!ではな!】

 

俺の顔を見て励ますように言ったノッブちゃんは、かかっと上機嫌にそう笑って弾ける様に消えた……まだ残っている金色の粒子を見ていると

 

「あ、あれ……」

 

頭痛が更に強くなり、目の前が揺らぐ……やば……これ本当にやばい奴だ

 

【横島さん!大丈夫ですか?】

 

おキヌちゃんが抱きとめてくれたおかげで倒れることは無かったが、返事をする気力も体力も無くて小さく頷くと

 

【不味いな、やはり横島の中の霊力のバランスがおかしい。早急に休ませよう】

 

「……水が残っていれば治療できたんだがな……やはり水を運搬する手段をなんとかしないと……」

 

心眼とシズクの言葉を聞きながら、俺の意識は再び闇の中へと沈んでいくのだった……

 

 

 

ゾンビの大群が消えてから8時間後、濃い疲労の色を顔に残したまま、レポートを手にGS協会に訪れた美神さんに

 

「大丈夫ですか?もう少し後からでも良かったんですよ?」

 

唐巣神父からの報告ではゾンビが消滅したのが6時間前、美神さん達が唐巣神父と合流して都庁を後にしたのが4時間前……顔色を見る限りでは恐らく一睡もしていないだろう

 

「やることを終わらせないとゆっくり眠れないからね、レポートの受理よろしく」

 

かなりの厚さのあるレポートを受け取り、受理の判子を押す。これで正式にノスフェラトウの事件は解決となった

 

「まだ事後処理もあるので、今は軽く目を通すだけになりますけど……良いですか?」

 

出来ることならちゃんと目を通しておきたいが、いかんせんやることが多すぎる。一睡もせずに届けてくれた美神さんに申し訳ないと思いながら言うと

 

「ふわあ……構わないわよ別に……どうせ暫くばたばたするのは判ってるし、重要な所は付箋を貼ってあるから、そのページだけ見て」

 

ゾンビに噛まれた人間の病院の手はずに、崩壊した都庁の修繕……それにゾンビの攻撃で崩壊した家屋の保険……本当やることが多すぎて目が回りそうだ。とは言え、それがGS協会の会長と言う地位に就く私の職務なのだから泣き言は言ってられない

 

「…………」

 

美神さんにレポートに目を通している内に、美神さんが一睡もしないでレポートを届けに来てくれた理由が判った

 

「……単刀直入に言うわ、出来る?出来ない?どっち?」

 

回りくどい事は嫌いだと美神さんの目が語っている……私としては美神さんの要望を叶えてあげたいと思うが……

 

「……申し訳ありませんが、私の一存だけでは返答することは出来ません」

 

妖怪使い・陰陽師に加えて横島君に発現した異能……恐らく、いや絶対にだがその霊能に関して言えば神代家がどのGSよりも特化しているだろう

 

「確証は無いけど、私はこう推測しているわ。横島君は極めて優秀なシャーマンとしての適正がある、それこそ神代の時代に近いわ」

 

それは私も同じだった。牛若丸に韋駄天と言った英霊や神霊を人間の身体に憑依させたらどうなるか?そんな者は考えるまでも無い、破裂するのだ。人間の器に英霊や神霊を入れることは出来ない。多分美神さんは横島君のその才能を伸ばす為に神代家の術を知りたいのだろう……

 

「あのベルトの力と考えても横島君は異常と言えるでしょうね」

 

神代家が目指し続けた到達点。それに手を掛けているのが、霊能に目覚めたばかりの高校生と言うのは余りに皮肉だろう……何代も何代も続けて研究し、そしてようやく神との交信が可能になり、そして限定的に神卸の儀式を行いその神霊の力の一部を借りる。それが今の神代家の限界だ……横島君は私達の1歩どころか100歩以上先に居る

 

「どうしても駄目?憑依に対する防御だけでもなんとか……?」

 

……憑依に対する防御……?そう言われてリポートの付箋部を見直すと、早急な問題として横島君の霊に対する防御についてと書いてあった

 

(あ、私の勘違いだ……)

 

そ、そりゃそうよね、幾らなんでも秘儀を教えろなんて言わないわよね……ちょっと所か大分早とちりしてしまった事に気付く、霊の憑依に対する防衛術。それは神代家の基礎の中の基礎だ

 

「……まぁ憑依に対する防御くらいなら……なんとか」

 

神代家の降霊術の基礎中の基礎だ。だがこれが元にして様々な降霊術が生まれて行ったのだから基礎と言って疎かにすることは出来ない

 

「本当?」

 

「ええ、でも口で伝えれるほど簡単な事じゃないですし……私が直接指導するしか……うーん」

 

予定帳を確認するが、ノスフェラトウの事件の影響で空いていた日も仕事が大分入ってしまうだろうからなあ……

 

「今の所はちょっと時間をください、スケジュール調整してみますので」

 

ごめんねと手を合わせる美神さんに仕方ないですよと返事を返す、仮に横島君が悪霊に取り憑かれて、持っている霊能全てを使って攻撃してきたら取り押さえるなんて言っている余裕は無い。射殺でもなんでもして殺すしかないのだから、そのことに対する防御を何とかしたいと思うのは当然の事なのだから

 

「とりあえず美神さんも休んでください。日程が確認できましたらFAXするので」

 

お願いねと返事をしてふらふらと会長室を出て行くの美神さんを見送っていると

 

『会長。オカルトGメンの方が訪れています』

 

はぁ……早速来たわね。本当最近こんなのばかりと小さく溜息を吐き、会長室に通してと受付に頼み、引き出しから胃薬の錠剤を取り出して数錠飲み込む

 

(ああ、胃が痛くなるなあ)

 

これからまたぐちぐちねちねちと文句を言われるのだと思うと、凄まじく気が重くなるのだった……

 

 

 

 

美神さんの事務所で数時間仮眠を取ってからシズクと一緒に家に帰ったんだが

 

「なにこれ……」

 

【凄まじいな、家に残したのは正解だったかも知れんぞ?】

 

心眼の言葉にそうだなと小さく返事を返す、家の周りにクレーターとか岩の槍が出現している。若干の血の跡が残っているのを見る限り、どうもこっちのほうにもゾンビの襲撃があったようだが、ゾンビの被害より、チビとモグラちゃんの被害のほうが大きいような気がするんだが……奇跡的に家が無事なのには心の底から安堵したが……

 

「……チビとモグラがなんとかしたんだろう」

 

何とかしたのは判るよ?家は無傷だけどさ?……家の周りとんでもねえよ……絶対自転車とか自動車とか走れないぞ……明日の朝の通勤時間とか大丈夫かな?と思いながら目の前の惨状をどうするか考えていると

 

【横島。考えるのは後だ、今は身体を休めることを考えろ】

 

確かに俺もシズクも本調子ではないので早くやすまないといけない

 

「……心眼の言うとおりだな、横島。早く休むとしよう」

 

シズクと心眼の言葉に頷き、比較的無事な場所を選んで歩く、しかしこうしてみると地震でもあったのか?と思うくらいアスファルトが捲れている所もあるので道路工事をしている所に電話しないとなーと思いながら家の鍵を開ける。するとリビングのほうからTVの音が聞こえてくる

 

「チビとかがTVでも見てるのかな?」

 

一晩留守番させたのは初めてなので寂しがってないかなっと思いながら、リビングを開けると

 

【むう?急に暴れだしてどうしたんじゃ?】

 

「みーむうう!みみーむー!」

 

「うきゃー!うきゅううー!」

 

「なんでいんの?」

 

綺麗な感じで成仏したはずのノッブちゃんがチビとモグラちゃんを抱え、胡坐をかいてTVを見ていたのだ

 

【ん?おお、暴れているのはお前が帰ったからか!ほれいけ】

 

ノッブちゃんがチビとモグラちゃんを放すと、凄まじい勢いで突進してくるチビとモグラちゃんが肩の上に乗って、みむうー!やうきゅーっと鳴いているが、当然何を言っているのか判らない

 

「コーン」

 

少し遅れて擦り寄ってきたタマモを抱き抱えていると

 

「……お前なんで現世に残ってるんだ?」

 

シズクが眉を顰めながら尋ねると、ノッブちゃんはメロンパンをもしゃもしゃと齧りながら

 

【だって折角の現世じゃぞ?何もしないで帰るなんて嫌じゃ】

 

……俺の中の織田信長のイメージがどんどん崩壊していく……武将って言うよりか、ただの女の子なんじゃ?と思っているとノッブちゃんはのほほんと笑いながら

 

【ただ現世に残るのに裏技を使ったんでの!霊力とかすっからかんじゃ!「……偉そうに言うな、この役立たずが」のっぶう!?】

 

シズクの指から放たれた水鉄砲でひっくり返ったノッブちゃんだが直ぐに起き上がり

 

【お主も居候じゃろうが!決定権は家主にある!】

 

「……横島。出て行けと言え、役立たずはいらん」

 

いや、決定権は俺にあるって言われても困るんだが、それとシズクの黒すぎるコメントになんと言えば良いのか判らない

 

【お主に追い出されたらワシには行く所が無い。折角の現世を謳歌したいんじゃ】

 

子供の姿をしているが、ノッブちゃんはかなりの美少女なので上目遣いで見られるとかなり気恥ずかしい……それに助けられたのも事実なので追い出すのも気が引ける……だが普通にもりもり食べるノッブちゃんの事を考えると食費が厳しい

 

【頼む!横島!お前に追い出されたらマジでワシには行く所が無い!!少し、少しだけ現世を楽しみたいだけなんじゃ!是非も無いよね!?】

 

俺が悩んでいるのを見て慌てて詰め寄りながら言うノッブちゃん……なんか力抜けたなあ……

 

「良いよ、でも霊力回復したらなんか手伝ってくれよ?」

 

【うむ!それは任されよ!この第六天魔王織田信長にな!】

 

自信満々に言うノッブちゃんに仕方ないなあと思いながら、蛍や美神さんになんて説明しよう?と頭を悩ませながら俺は眠る為に自室へと引き上げるのだった……

 

 

 

 




別件リポート 横島君の日常へ続く

ノッブこと織田信長が居候として横島の家に住み着きました、ロリ枠追加のお知らせですね!次回は横島が普段どんな日常を過ごしているのかと言うのを書いてから、ノッブを絡めた話を書いていこうと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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