どうも混沌の魔法使いです。今回もノスフェラトウ戦を書いて行こうと思います、後はもう判っていると思いますが新しい眼魂を出すつもりなので、当然仮面ライダーも出ます。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
外伝リポート 外史からの来訪者 その9
親方様の気配を感じたワシは考えるよりも早く横島殿の身体に憑依してここまで駆けてきたが……目の前で高笑いしているノスフェラトウを見て驚愕した
(馬鹿な!?あの時よりも遥かに強くなっている!?)
本能寺で戦ったあの時よりも遥かに存在感と魔力が増しているのだ。手にしている我が愛槍ならば切り札に成りえる……そう思っていたのだが我が槍を持ってしても決定力に欠ける。目の前で荒い呼吸を整えている親方様を守る為に槍の切っ先を向けはしたが、かつてあれほど頼りになった槍が棒切れのように思えてくる
【くっくっく……どうした?顔色が悪いぞ?】
挑発するように言うノスフェラトウは更に魔力を開放し、凄まじいプレッシャーを放っている
(このままでは飲み込まれる!)
奴の魔力と威圧感に飲み込まれて、何も出来ないうちに殺される。それを理解したワシは震えている足に活を入れ、心の中で横島殿に謝罪する。恐らく向こうはワシを狙ってくる、仮に憑依を解除したとしてもそれは変わらないだろう。ならば彼を守る為には守りに回るのではなく、攻め込むしかない。そしてその中で活路を見出すしかないのだ
【ぬかせ!今度こそ貴様を討ち取ってくれる!】
自らを鼓舞するためにそう叫び、真っ先にノスフェラトウへと切り込んでいくのだった……
目の前に居るノスフェラトウの威圧感と圧倒的な魔力に一瞬我を失ってしまった。お父さんほどではないが、人間が勝てる相手ではないと言うのを本能的に悟ってしまった。美神さんも同じようで手から零れ落ちた神通棍がからりと音を立てると同時に
【ぬかせ!今度こそ貴様を討ち取ってくれる!】
横島の身体に憑依している明智光秀がそう叫びノスフェラトウに切り込んでいくのを見て
「馬鹿!横島の身体なのよ!?」
私がそう叫ぶが光秀は止まる事無くノスフェラトウに斬りかかるが……
【ハハハハッ!無駄だッ!!】
ノスフェラトウが全身から放っている魔力に押し返されて弾き飛ばされてくる。良し!今の内に横島を保護するためにあの馬鹿を縛り上げよう。私がそう判断して動き出す前に……
【ぬう!まだ……【このうつけものがぁッ!】
ノッブの飛び膝蹴りが横島の頭を打ち抜く、しかし不思議なことに横島自身は意識を失っている物の無事で光秀だけが横島の身体から弾き飛ばされ滑っていく、私は即座に横島に駆け寄りながらシズクの名を叫ぶ
「シズク!」
「……判っている」
あの男は危険すぎる、このままだと横島が危ないのでシズクに頼んで光秀を氷の中へと幽閉するのだった……
【クハハハ……良い見世物だ。それで次は何を見せてくれるのだ?】
私達のやり取りを見ていたノスフェラトウが手を叩きながら笑う。それは自分が負ける訳が無いという絶対の自信から出る余裕だろう。しかもそれは過信でも慢心でもなく純然たる事実。仮にこの場に小竜姫が居たとしても互角と言うレベルだろう
「それでノッブ……いえ、信長。何か対処法はあるの?」
光秀の叫んだ親方様という言葉に、今の鎧姿を見ればノッブの真名が織田信長であると言うことは一目で判る。しかし、信長でノッブと言う偽名はストレートだからこそ判らなかったと思う
【……正面からのぶつかりでは勝つことは不可能じゃな】
ワシと戦ったときのあやつなら勝ち目もあったんじゃがなと呟くノッブ。ノスフェラトウが笑いながら放つ魔力弾を飛びのいて交わす。気絶している横島を背負っている分どうしても私の反応が遅れてしまうが、今の所直撃はしていない……それは私の実力と言う訳ではなく……
【えーいッ!!】
おキヌさんがポルターガイストであちこちの家具や装飾品を浮かべて、それを盾としてくれているからだ。シズクの氷ならもっと防御力も高いだろうけど……もしシズクが防御に回ってしまうと今度は攻撃する手段がなくなってしまうので多少厳しくても自力で避ける必要があるのだ。ある程度距離を取ることが出来たので、今の内にと美神さんと一緒に結界を作りその中に横島を横にする。これで両手が使えるようになったのである程度は自分でノスフェラトウの攻撃に反応できる
「……行けッ!」
【いつの時代も厄介な者だ。竜神と言うのは……】
美神さんの破魔札や、霊体ボウガンは意に介さずという感じで腕組しているだけなんだけど、シズクの氷や水に対しては手やマントを使い防いでいる。唯一有効打を与える事が出来ているのがシズクなのだ
【じゃが、それもいつまでも続かんじゃろう……水はどこまで持つ】
シズクは大分水を蓄えたと言っていたが、これだけの勢いで水を使っていればそう遠くないうちに水は底をつくだろう。普段水を運んでいるペットボトルも今回ばかりは持って来ていないし……
「横島君が起きれば何とかなるかもしれないけど、そこまでシズクが持つかどうか……唐巣先生とエミも多分こっちにこれないだろうし……」
横島が陰陽術で水を出すことが出来ればシズクの水不足は解決するだろうけど、そうなると今度は回復やくになった横島が狙われるようになるだろう。光秀が突撃してしまったので応援として来てもらった唐巣神父とエミさんは多分回復したゾンビに阻まれてここに来ることは難しいだろう……
(あれ?これ詰んでない?)
大分考えてみたが、この状況を打破することが出来るとは思えないのだ。後数時間で魔界の門が開く、その前にノスフェラトウを倒さないといけないのだが向こうが常時展開している魔力壁をこっちの攻撃では突破できず、向こうの攻撃は直撃でもしようものなら身体はもちろん魂まで消し飛びかねない
「……撤退も出来ない、倒す事も出来ない……全部計算外だったわ」
光秀の槍が当れば倒す事が出来る。それがこの突入作戦の全てだったが、本来の持ち主である光秀が振るってもノスフェラトウの障壁を貫けなかったのだから槍の素人である私や美神さんが使ったとしても障壁を突破できるとは思えない
【ふええええ!!美神さーん!?蛍ちゃーん!?もう盾にする物がありませんよぉ!】
更には今まで防ぐのに使っていた床や壁、更には壺などの品も全て使い切ったおキヌさんが半泣きで叫んでいる
「……ちっ……鬱陶しいやつめ」
【ふっふふ。なんとでも言え、お前の水が尽きればそこまでよ。あいつらを殺すのは時間の問題、ゆっくり腰を据えさせて貰うだけだ】
脅威はシズクだけなのでノスフェラトウは椅子に座り込み、魔力を弾幕として飛ばしている。壁が無くなったのでシズクが私達を守るのに水を使う。見る見る間に水の勢いが弱くなって行く……そして遂には完全に水が止まった
「……ちい……水切れだ……こんなことなら竜気を少しでも小竜姫から借りておけば良かった」
舌打ちしながら最後の抵抗で作り出した氷の刃を構えるシズク。だが小柄なシズクでは大柄なノスフェラトウの間合いに入ることは不可能だろう
(何か無いか……何か!?)
この状況を打破する何かが無いかと必死に考えているとノッブが駆け出す
【これはワシの因縁、関係の無いお前達をこれ以上巻き込むわけには!】
【ははは!!無駄だぁッ!!】
ノスフェラトウの放った魔力弾がノッブを貫くがそれでもノッブは駆け続け
【くたばれえッ!】
火縄銃をノスフェラトウの口に向けて引き金を引いた……だが弾き飛ばされたのはノスフェラトウではなく、ノッブのほうで
【無駄だと言ったはずだ。英霊であれ、人間であれ……今の我を倒せるものなどこの地上には存在せぬわ!!】
ノスフェラトウの一喝で魔力が再び放出され、城の壁を粉砕する。私と美神さんは神通棍を床に突き立てる事で防いだが、零距離のカウンターで意識を失ったノッブはその勢いに弾き飛ばされノッブがそこから落ちていく瞬間
「ノッブちゃん!?」
「横島ッ!?」
気絶していたはずの横島がノッブを追いかけて、その穴から外へ飛び出していくのを見て、思わず私は横島の名を叫ぶのだった……
ここまでか……落ちていく中ワシが考えていたのはそれだけだった。名を奪われ、部下を奪われ、やってもない悪行(比叡山は焼き討ちしたが……)の咎まで負わされ……だが殺されるまでの武勲で英霊へと昇華されたが、信長の名を奪ったノスフェラトウが存在する限りワシは不完全な英霊であり、やつを倒したその時に正式に英霊へと昇華される。だがワシでは奴には勝てぬ……至近距離の魔力の放出で霊核に皹が入ってしまった。もう数刻もせぬうちに消滅するじゃろう
(無念じゃな……)
ワシを殺したときの奴ならば今のワシでも十分倒せるはずだった、だが奴はあの時よりも遥かに強くなっていた。ここまでつれて来た横島や美神までは奴に殺されると思うと胸が痛かった。最初から奴がアレほどまでに強くなっていると知っていれば1人で来たんじゃがな……とは言え、それも何もかも今ではもう手遅れ……ワシのせいで死んでしまう横島達に心の中で謝罪していると
「ノッブちゃんッ!!!!!」
横島のワシを呼ぶ声が聞こえて、まさかと思いながら声のほうに視線を向けると横島が城の屋根を走ってこっちに来ていた
【馬鹿者!なにをしておるか!?】
「心眼!頼むぜぇッ!!!」
【よこ……ええい!フォローしてやる!お前はお前の好きにやれ!!】
屋根から飛ぶ横島だが手が届く訳も無い。だが横島の目に諦めの色は無く
「頼むぜ……いっけええ!!!」
突き出した両手から翡翠色の光が放たれ片方がワシを掴み、もう片方が屋根を掴んだ
「うぐおう!?やべええ!?衝撃半端ねぇ!?」
【大人しくしていろ!左腕の霊力を私がコントロールする!ゆっくりだが回収する!】
額当ての言葉と同時にゆっくりだがワシと横島の身体が引き上げられて行き、屋根の上に戻る
「ぜはーぜはー!!死ぬかと思った」
肩で息をしている横島に詰め寄り、その服を掴んで無理やり起き上がらせ
【このうつけものがぁ!何をしておるか!!!】
生者が死者を救おうとするなど愚かとしか言いようが無い、何故そんな事をしたのかと怒鳴ると
「だって……見捨てられるわけ無いじゃんか……見ちまったから……ノッブちゃんの記憶」
横島から告げられた言葉に一瞬頭が真っ白になり、掴み上げていた横島を放してしまう
【横島は感受性が凄まじく強い、なんらかのきっかけでお前と霊波の波長が同調したんだろう】
額当ての目がそう告げる中。身体の中でビシリっと言う音がしてその場に崩れ落ちる
【限界か……】
指先から金色の粒子となって消えていく己の身体を見て舌打ちする。ワシがここまで連れてきたのに、1人だけ先に消滅する、残した横島達は間違いなく死ぬだろう。なんと無責任なと舌打ちをしていると
「多分何とかなるかもしれない……」
そう呟いた横島の手には何かが握られており、腰には奇妙な物が巻かれていた
【そうだな、可能性はそれしかないな】
勝手に自分達で納得されても困るんじゃが……しかも多分なんて付いていれば、信じられるわけがない……だがその言葉には強い核心が込められていて……ワシに信じたいと思わせてくれた
「俺の身体を貸すからさ、ノッブちゃん……いや、信長……ノスフェラトウを倒そうぜ」
幽霊に身体を貸す。それがどれだけ危険なことは知らない訳がない、だがそれを言い出したという事はワシを信用していると言う事か……お人よしが過ぎる男じゃが……ああ、こんな馬鹿は嫌いじゃないな。ワシは横島の提案に頷き、落ちてきた道を引き返し始めるのだった……霊核の皹は深刻だが……ここまで言わせたのだから最後まで持たせて見せるかの……しかしまぁ……顔は全く似ておらんが猿に似ているなあ……横島は……懐かしい物を感じざずにはいられないのだった……
横島君がノッブを追いかけて飛び出して行ってから蛍ちゃんの動きが鈍い、気持ち的には判る。想いを寄せている相手が幽霊とは言え女の子を追いかけて外へ行けば面白くないのは当然だろう。でも今はそんな事をしている場合ではないので
「蛍ちゃん!集中!次ぎ来るわよ!」
危惧していたゾンビの襲撃はないが、ノスフェラトウの雨のような弾幕は今も続いている。シズクの水も、おキヌちゃんのポルターガイストバリアもないのだから、目の前の攻撃に集中してもらわないと蛍ちゃんが死んでしまう
【くははは!無意味だ!全て何もかもな!】
ノスフェラトウが高笑いしながら叫ぶ、正直避けるだけで手一杯で反撃しても効果がない。残っている望みの綱は唐巣先生とエミが合流してくれることだけどそれも厳しいだろう
「っつ!判ってます!」
私の一喝に判っていると返事を返す蛍ちゃんだけど、やっぱり横島君が心配なのか動きが鈍い……ここはシズクに様子を見て貰ってきた方がいいかしら……でも人数が減ると1人に向けられる攻撃が激しくなるから、追い詰められるかもしれない……そんな事を考えていると背後から魔力が近づいてくるのを感じて、振り返ると同時に神通棍を振るう
「っとと!?あーっ!もう!鬱陶しいわね!」
避けたと思ったら、そこから鋭角に曲がってきた魔力弾を打ち落としながらそう叫ぶ。さっきから明らかに倒す目的ではなく、嬲るような攻撃が混じって来ている事が腹ただしい……
(それでも当れば致命傷ってのが厄介ね)
かなりの高密度の魔力を圧縮しているのは判っている。だから掠っただけでも致命傷であり、当ればそれで終わりだ。だから大きく動いて避けるか、何とかして打ち落としている。そしてそんな私達を見てノスフェラトウは笑いながら
【良いのか?そんなに悠長に事を構えていて?そらもう時間はないぞ?】
ノスフェラトウが挑発するように言う、確かにもう時間的な余裕はない。だが倒す手段は無い……焦りばかりが頭を埋め尽くしていくもっと慎重に動くべきだったのは無いか?時間的な余裕が無いのは判っていたが、もう少し準備を整えるべきだったのではないか?と後悔ばかりが頭を過ぎる
「……ちいっ!水が足りないッ!?」
徐々にシズクが追い詰められている……普通の相手なら水が無くても問題ないが、ノスフェラトウクラスになると流石に水が足りなくなってくると攻撃も防御も間に合わなくなってくるのか言動に余裕が無い。無論余裕が無い理由はそれだけではないだろう、横島君の姿が見えない事で更に集中が乱れているのが見ているだけでも判る。ここは危険だけどおキヌちゃんに横島君の様子を見てきて貰おうか?と考えていると、私が指示を出す前に様子を見に行っていたおキヌちゃんが姿を見せて
【横島さんが来ます!】
その報告に安堵の溜息を吐く、良かったとりあえずは無事なのね……その言葉にやっと蛍ちゃんとシズクの表情が柔らかくなる。おキヌちゃんの報告から数秒後横島君とノッブが姿を見せる。しかし横島君の腰に巻かれているベルトを見て
「馬鹿!それは止めなさいって!言ってるでしょうが!?」
無理やり霊力を引き出すベルトは使ってはいけないと何度も言っているのにまた使おうとしている横島君にそう怒鳴る
「本当そのうち大変なことになるから止めて!」
蛍ちゃんもそう叫ぶが横島君は私と蛍ちゃんの言葉を無視して
「しゃ!行くぜ、ノッブちゃん」
【うむ、説明を聞いただけでは判らんが……任せる!】
横島君が手にしているブランク眼魂にノッブが吸い込まれて行き、白色だった眼魂が赤と黒に染まる。横島君はそれをベルトに押し込む、すると最近良く聞く奇妙な歌がベルトから流れ出し、黒と赤のパーカーゴーストが横島君の周りを踊り始める
【アーイッ!シッカリミナー!シッカリミナー!】
「行くぜ!ノッブちゃん!」
【カイガン!信長!過激な刺激、乱れ撃ち!】
顔には火縄銃で×を描いたマークが浮かび、腰からは剣、そして背中にも2本の銃をマウントし、背中からは紅いマントがある。今までの姿を比べるとかなり異質な姿をしているのが妙に目に付いた
【すまぬな、横島。身体……確かに借り受けた】
発せられた声が横島君ではなく、ノッブの声で……それは横島君が完全にノッブに身体を貸していることの証明であり
「あの馬鹿!幽霊に身体を貸すなって何度言えば判るのよ!?」
1つの肉体に2つの魂。それは生きている人間が持つ霊的な防御を極端に下げ、なおかつ幽霊に憑依されやすい身体になってしまうから止めろと何度も言っていると言うのに……
【それは私が何とかする!今はこれしか手段が無い!】
心眼がそう叫ぶのが聞こえるが、仮に心眼が守ったとしても横島君の幽霊の干渉に対する防御は削られていくだろう……
(本当にどうにかしてあのベルトを取り上げたいわ)
芦さんの話では横島君の魂の中に眠っているので取り上げることが出来ない、それを知ってもなお取り上げてしまいたいと私は思わずにはいられないのだった……
(人間と融合した?……面妖な)
目の前に居る赤と黒を基調にした奇妙な鎧に身を包んでいる小僧を観察する。見たことの無い力だが……所詮は人間……脅威に感じる必要も、警戒する必要もありはしない
【そのような玩具で我を……【せぇいっ!!】ぬっ……ぐう!?】
我の言葉を遮るようにして切り込んできた小僧。その刀の軌道にあわせて腕を振り上げ弾き飛ばすつもりだったのだが、刀は深く我の腕にめり込んでいる
(姿形だけではないのか!?)
霊力をさほど感じないので我に攻撃が当る訳が無いと思っていたのだが、結果は直撃……どうも何か奇妙な力が働いているようだ
【はっは!良いぞ!少しは面白く……【楽しませるつもりも!楽しむつもりも無いッ!!!】
我の言葉を遮り振るわれる剣を飛びのいて交わす。ほんの少し掠めただけだが、焼けるような痛みが走る
(これは……我の霊核に!?)
肉体のダメージを与えるのではなく、魂にダメージを与える打撃……これは不味い……なんでか知らないが、魔力障壁も効果を発揮していない……更には力まで抜けていくような……
【ワシこそが第六天魔王織田信長じゃあ!ワシの名を騙る紛い物よ!早々に消えよッ!!!】
まさか……世界があちらを真の織田信長と認めたのか!?我が行った悪行それが織田信長の悪行となり、そしてその悪行を恐れる人間の負の感情。それが信長たる我に与えられていたのだが……その力が弱くなっている……いや、向こうに向けられているのか!?
【ふ、ふははははっは!そうか!そうだと言うのならばこの姿はいらぬ!!】
織田信長としての力を失っているのならば、その姿にこだわる理由は無い!着ていた外套を脱ぎ捨て本来の姿に戻る。
【見せてやろう!我の真の力を!!!】
魔力で剣を作り出し、力任せに振り下ろす
【ぬっぐう!?】
両手で我の剣を受け止めた小僧が苦しげに呻く。このまま一気に押しつぶしてくれる!
【うっ!?えええい!鬱陶しい奴らめ!】
顔で爆発した札……さっきまで適当に苦しめていた人間の攻撃だ……ダメージはないが、鬱陶しい上に目障りだ。一瞬そちらに視線を向けた瞬間。力ががくんっと抜ける
(なんだ!?なにが起きた!?)
押しつぶそうとしていたはずの小僧の姿が消えている。馬鹿な何が起こっていると言うのだ!?理解できない現象に一瞬思考が停止する
【喰らえぃッ!!!!】
【が、がああ!?】
背中に何十発も銃弾を喰らい、そこからまた魂が焼かれたような痛みが走る。咄嗟に振り返ると背後に小僧が立っていた
【……凄まじい力よ……お前にも負担をかけるじゃろう……じゃが安心せい!時間はかけぬッ!!】
身を低くして突っ込んでくる小僧がそう叫ぶ。時間はかけないだと!?
【このノスフェラトウを舐めるなあぁッ!!!】
両手に剣を作り出して振るう。人間ごときが我に手傷を負わせるなどありえてはならない!我は不死の吸血鬼ノスフェラトウ!人間になど敗れはしないッ!!
【はっ!】
【があっ!?己おのれおのれおのれおのれぇッ!!!】
絶え間ない痛みが全身に走る、取るに取らない相手だった筈なのに……我の攻撃は全く当らない。魔力を放っても、使い魔からの援護の魔力波も当らない
【喰らえ!!!】
我の身体を蹴って跳躍した小僧の身体が目の前に浮かぶ、そしてそこから放たれる雨のような凄まじい弾幕……頭を守る為に突き出した左腕に無数の穴が開き、だらりと垂れる……拳を構えようとするが、我の意に反してぴくりとも動かない……いや、腕だけじゃない、足も動きが鈍い……馬鹿な!我が敗れると言うのか!たかが人間に!?
【ありえぬ……こんなことはありえぬ!人間1人にいいいいい!!!】
奇妙な鎧を纏っていたとしても相手は人間1人……この我が負ける訳がないのだ……
【ワシが1人だと思っているのか?……愚かなのは貴様だ!ならば見るが良い!我が宝具をッ!】
【ダイカイガン!信長ッ!オメガシューティングッ!!】
【三千世界に屍を晒すが良い。天魔轟臨! これが魔王(三千世界(さんだんうち)じゃーっ!!】
小僧の後ろに浮かび上がった無数の銃……その後ろに我は確かに見た、銃を構える無数の武者達の姿を……我が殺した織田信長を慕っていた武将の数々が……一斉に叩き込まれた霊力の弾丸に翼も牙も角も砕かれ、更には右目も潰されたが、まだ我は生きていた……生きているのならば……まだ逆転の目はある……
【まだ……むわだだああああ!?】
人間界では魔力が少ない、ならば失敗する可能性はあるが魔界の門を開けば良い……呪文を唱えて魔界の門を開こうとした瞬間……凄まじい激痛が胸に走る……
【うぐああ!?】
視線をしたに向けると翡翠色に輝く切っ先を持つ槍が胸に突き刺さっていた……こ、これはぁ……!?あの時のぉ……
【貴様に次などない!この場で消えうせろ!ノスフェラトウッ!!!】
槍を投げつけた体制で叫ぶ小僧の姿……さっきの弾幕は槍を取りに行く姿を見せぬため……1度完全に防いだからその存在を警戒するのを忘れていた……それが我の敗因か……
【ぐぼああ……】
霊核を完全に砕かれ、存在する事が出来ない……ゆっくりと消滅しながら倒れる我が見たのは……小僧と小娘の周りに立ち主の汚名をそそぐ戦いに参加出来たことに対する喜びか、我を倒した事に対する喜びなのか?それともその両方か……小僧と小娘の周りで嬉しそうに笑う数多の武将たちの姿だった……
外伝リポート 外史からの来訪者 その10へ続く
次回で外史からの来訪者は終了となります、多分これが今まで書いた話の中で一番の難産でしたね……何回DVDをまき戻した事か……アニメの小説を書くのは厳しいというのを実感しました。次回はノッブとの別れを書いていこうと思います
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします