GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は蘭丸かノスフェラトウ戦開始までは進めて行きたいと思っています、蘭丸はかなりあっさり風味で終わるかもしれないですけどね、それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その6

 

外伝リポート 外史からの来訪者 その6

 

いつの間にか銃を持ち出していなくなっていたノッブと散歩してきますと言って会長室を出て行った横島君が一緒に戻ってきて

 

「なんかノッブちゃんが一緒に巡回に来いって言ってるんすけど?俺どうすれば良いですかね?」

 

1度確認に戻ってきてくれた事に安堵する。ゾンビは今まで蛍ちゃんや横島君が戦った悪霊などとはまるで違う。腐ってこそいるが生身の肉体を持ち、血を撒き散らす……それは経験のないGSが戦えばトラウマになる可能性のある相手だ

 

(でもそんな事も言ってられないのよね)

 

この業界にいればゾンビと戦うことはそう珍しい事じゃない。しかしゾンビと戦ったことで死んだ末を見てしまったり、鮮血恐怖症になって引退するGSも決して少なくは無い……

 

(どうしましょうか……)

 

基本的にはバリケードの近くに陣取って様子見。状況次第ではゾンビと戦う事になる……それでトラウマを持ってしまうことを考えると即座にGOサインは出せない

 

「ゾンビと戦うって事は目の前で腕が千切れ飛んだり、血を撒き散らすのを見ることになると思うけど大丈夫?」

 

横島君は青い顔をしてるし、返事を返した物の蛍ちゃんも反応はあんまりよろしくない……

 

【しかし美神。お前の意見も判るが、いずれ乗り越えねばならぬ問題だ】

 

心眼の言うことも判る……だが私的には銃を使わせるのも早いし、ゾンビと戦うのも早いと思う。

 

【なーに、大体はワシが何とかする。作戦が決まるまでに少しはそういうのを見ておいた方が気持ち的に楽じゃろ?】

 

いきなり四肢が吹っ飛んだりするのを見るよりも確かに気が楽になるだろうが、それ以前にそれを見るだけでGSとして活動できなくなる可能性を考えるとハイリスク・ローリターンだ……

 

「美神さん。正面のバリケードのほうにエミさんと冥子さんが待機してますよ」

 

エミと冥子かぁ……エミはゾンビは問題なく処理できるけど、冥子はゾンビと戦ってトラウマを抱える事にはなった物のなんとか復帰したっけ……

 

【心配ありませんとも!なんせこの私がついてますから】

 

横島君のポケットから牛若丸眼魂が顔を出して言うが、具現化も出来ないのに頼りになんて思える筈も無い

 

「シズク……行ける?」

 

さっきからずっと水を補充することを繰り返していたシズクに行けるか?と尋ねて見る。17本目のペットボトルを空にしたシズクは身体の動きを確認するように、屈伸をしたり腕を伸ばしたり入念にストレッチを繰り返してから

 

「……本調子とは言わんが……ゾンビ程度なら問題ない」

 

シズクが付いて行ってくれるなら巡回に出しても良いと判断し、琉璃からエミと冥子が2人で巡回しているエリアの地図を受け取り

 

「こっちのほうにエミと冥子が居るから2人と合流して、2人から指示を聞いて行動しなさい。独断専行は絶対にしない事。良いわね?……それとゾンビと戦うのは本当に精神的にきついから気分が悪くなったら直ぐ戻りなさい」

 

横島君と蛍ちゃんにそう指示を出し見送りながら椅子に腰掛け深く溜息を吐く。シズクが居るし、実力は未知数だけど恐らく英霊のノッブもいるから大丈夫だとは思うんだけど……肉体的に守れても精神的にはどうなのだろうか?という不安はあるが、いずれはゾンビなどの生身を持つ相手と戦う事もあるので経験を積ませておくのもいいかもしれない……確かにゾンビとかと戦って潰れるGSは多いが、蛍ちゃんも横島君もそんな事で潰れないと信じているから

 

「じゃ、琉璃。突入経路とかの話し合いを再開しましょうか」

 

微笑ましい物を見ているような表情を浮かべている琉璃にそう声を掛け、新宿都庁とその上に現れた異形の城をどうやって攻略するのか?私と琉璃はお互いに意見を出し合い、今の状況を打開する手段を話し合うのだった……

 

 

 

冥子と共にバリケードの巡回をしていると、案の定あちこちからカリカリと引っかく音が聞こえてくる。恐らくバリケードを破ろうとしているゾンビが引っかいている音だろう

 

「ひう!?」

 

びくんっと身を竦める冥子にお願いだから、ぷっつんしないでよ?と祈らずには居られない。もし冥子がぷっつんしてしまえばバリケードは崩壊しゾンビが雪崩れ込んでくるのだから……

 

「エミさん、こっちの巡回は終わりました、これからどうするんジャー?」

 

ライフル銃を肩に担いで地図を片手に尋ねて来るタイガー。巡回ルートの見回りは終わって、民間人が残っていないのを確認しているからそろそろ引き返そうか?と考えていると

 

「あ、エミさーん」

 

背後から聞こえてきた声に振り返ると案の定。横島と蛍、それと……

 

(なんなのあれ!?)

 

外見こそ中学生位の少女の幽霊だが、その身体に渦巻いている霊力の量と質を考えると義経に匹敵している。それすなわちあの幽霊も英霊クラスの霊格をもった存在と言うことで……

 

(なんか面倒ごとになってきたような気がするワケ)

 

ゾンビとノスフェラトウだけでも十分厄介なのに……更なる面倒事の予感にあたしは思わず溜息を吐くのだった……

 

「あら~横島君~♪久しぶりねー」

 

にこにこと笑う冥子とお久しぶりです、冥子ちゃんと和やかに挨拶を交わしている横島に状況判ってるワケ?と思わずには居られないのだった……

 

【ふむ、そこじゃな】

 

片手でライフルを構えゾンビの足を的確に打ち抜いているノッブと名乗った少女の幽霊、その技量は半端ではなく、2発の銃弾を時間差で撃ち、お互いに兆弾させてゾンビ4体を一撃で歩行不能にするなどと神懸り的な射撃の腕を披露していた

 

「すごいけんのー……ワッシはそこまでは出来んノー」

 

その銃の腕に感心しながらタイガーも引き金を引き、ゾンビの足を打ち抜いている。元々海外のジャングルで暮らしていたタイガーだ。自衛の為の射撃は生活の中に組み込まれていたのか、正直あたしよりも銃の腕は上なので警察から借りたライフルを持たせたけど正解だったかもしれない

 

「うわ……気持ちわる……」

 

【だが今はこうして見学できる余裕がある、恐ろしくてもちゃんと見ておけ、後々役立つぞ】

 

横島は顔を青くさせて引き攣った顔をしており、バンダナの心眼が横島にそうアドバイスしている。ゾンビと戦うのは若手GSとしたら最も厳しい物だろう、人の姿をしていて、仮に倒したとしても遺体が残り、鮮血が舞う。正直トラウマとなってしまう者が多い除霊対象だ

 

「おたくは平気なワケ?蛍」

 

あたし的には蛍のほうが精神的にダメージが大きいと思っていたんだけど、けろりとした顔をしている事に驚きながら尋ねて見ると

 

「あんまり気にならないですね……ゾンビはゾンビ。もう人じゃないですから」

 

人だったら気分も悪くなると思いますけどと言う蛍。それはゾンビに限らず人型の魔獣や悪魔と戦う時の心構え、人間じゃないと思う事は確かに1つの対処法として間違いではない

 

「うええ……やべ、吐きそう……」

 

「大丈夫~?私も~ゾンビは苦手だから~出来るだけ見ないほうが良いわ~」

 

冥子が横島の背中を摩りながらそう笑いかける。基本的に子供っぽい冥子だけど、変な所で大人っぽいのよねと苦笑しながら

 

「どう?まだゾンビとか、民間人の反応はあるワケ?」

 

水で索敵をしてくれているシズクにそう尋ねて見る。本当はもう引き返す所だったのだが、蛍と横島にゾンビと戦うのを見せる為にゾンビを探して貰って移動してきた。民間人は既にGS協会に避難している筈だが、怪我などで残っている可能性を考慮して探して貰っていた

 

「……反応はもう無いな。引き返すほうが無難だろう、もうじき日が暮れる」

 

日が暮れればそれは魔の眷属の時間。ノスフェラトウが本格的に動き出す可能性が高くなる時間帯だ

 

「判ったわ、GS協会へ撤収するワケ!戻ったらゾンビの対処法をレポートにして提出するワケ!」

 

どうせなら見学だけではなく研修にした方が良い。だからGS協会に戻ってレポートを提出するようにと言うと

 

「うえ……俺殆ど見てねぇ……」

 

「ゾンビは気持ち悪いもんね~」

 

「ワフゥ!」

 

ゾンビ戦を殆ど見てなかった横島を励ましている冥子に内心溜息を吐くが、適材適所と言う言葉もある。人間誰しも向き不向きがあるのでそれほど強くは言えない

 

「タイガー。あんた今日半日ゾンビと戦ったでしょ?横島と一緒にレポートやりなさい」

 

タイガーと横島は結構仲が良いので2人でレポートを書くようにと指示を出していると。ノッブが突然銃を発射する、突然の銃声に驚いていると

 

【来たぞ。本命の連中じゃ】

 

ノッブの視線の先には鎖帷子を着込んだゾンビの一団。だがそのゾンビの動きは素早く、そして知性を持った動きをしていた……誰か指示を出している者が居る……あたしはそれを一瞬で理解し

 

「タイガー!ライフル!」

 

タイガーからライフルを受け取り、そのまま止まっていた車の窓ガラスに叩きつける

 

「早く乗るワケ!急いで戻るから」

 

そのまま運転席のカバーを外し、配線を引きずり出しそれらをつなぎ合せエンジンを掛け車に乗るように叫ぶ

 

「……エミさんすげえ……めちゃ手馴れてる」

 

「エミさんの知らない過去を知った……」

 

あたしの手際を見て絶句していたが、もう1度乗るように叫ぶと慌ててタイガー達が走ってくる

 

【ワシは上に乗る!早いのが仕掛けてきそうじゃからな!】

 

あたしの手からライフルと、タイガーが背負っていた鞄から予備の弾丸を受け取りひらりと車の上に乗るノッブ。即座に響く銃声と壊れて落ちてきた弓矢を見て

 

(弓兵まで!?これは不味いわ)

 

今までは動きの遅いゾンビだから銃で対応していたが、弓矢を集団で放ってくるとなると対応が段違いに難しくなってくる。絶え間なく響く銃声にシズクも車の上に乗りながら

 

「……急げ。気配が多くなってきてる」

 

言われるまでもないと車を発進させようとしていると今度は蛍が待ってくださいと叫ぶ

 

「まだ横島が乗ってません!」

 

あの馬鹿何やってるワケ!?運転席の窓から顔を出すと横島は熱心に拾ったであろう鞄に何かのスプレーを詰め込んでいる

 

「横島!早く乗って!急がないと不味いから!」

 

「早く乗るワケ!」

 

あたしと蛍で怒鳴ると横島は鞄の蓋を閉じて車に乗り込んでくる。それを確認すると同時にアクセルを踏み込み一気に最大まで加速する

 

「横島!オタクね!状況理解してるワケ!?」

 

明らかに知性のあるゾンビの集団が攻め込んできている。その事を瑠璃に伝えないといけないって言う今の状況を理解しているのか?と怒鳴ると横島はすいませんと謝りながら、でもこれが多分役立つと思うんですと反論する

 

【うーむ……私としては効果のほどはどうかと思うぞ?】

 

「いやいや絶対役立つってこれ」

 

何のスプレーを回収したのか?と気になったのか蛍が鞄からそのスプレーを取り出して

 

「……蜘蛛の巣駆除スプレー?」

 

蜘蛛の巣駆除スプレー?……それがなんの役に立つと言うのか?そんな物を拾う為に時間をロスしたのか?と思うと頭痛がしたが横島は笑いながら

 

「ピートが言ってたぜ。ノスフェラトウの部下に蜘蛛の悪魔が居るって、そんなら蜘蛛の巣を張って空中を走ったりするだろ?これで溶かしてやれば効果抜群だろ!」

 

「凄いわ~横島君。ナイスアイデアよ~」

 

のほほんと笑う冥子と自信満々で笑う横島に酷い頭痛を覚えながら、あたしはGS協会へ向けてハンドルを切ったのだった……なおこの時の蜘蛛の巣駆除スプレーが後々危機的状況を打破する事になる事を誰も知らないのだった……

 

 

 

琉璃とノスフェラトウへの対策を話し合っていると勢い良く会長室の扉が開き、エミが顔色を変えて飛び込んできた。エミはそのまま私と琉璃の前に来て

 

「明らかに知性のあるゾンビが大量に出現したワケ。少なくとも50、多くて200……しかも弓矢を使えるだけの知性も確認しているワケ」

 

その報告に私も琉璃も不味い事になったと理解した。ゾンビが脅威ではないのは知性が無いからであり、もし仮に知性を持ち武器を扱えるとなるとその不死性と合わせれば相当厄介な相手になる

 

「それでエミさん。そのゾンビは鎧か何かを着ていましたか?」

 

「遠目だったけど……織田信長の家紋入りの旗を背負った鎧武者だったワケ。流石に馬のゾンビは居なかったけど、100

キロで飛ばした車目掛けて矢を放ち続けてきたワケ」

 

……それやばすぎるでしょ、甲冑で防御力、100キロで走る車を弓矢で狙撃……近接にしろ遠距離にしろ攻略する手段が見えない……琉璃も同じ考えなのか非常に険しい顔をしている

 

「すまない、悪い情報だ」

 

唐巣先生が会長室に慌てて駆け込んでくる。明らかに強力なゾンビの上にまだ悪い情報があるの!?

 

「ノスフェラトウが陣取っている都庁を中心にして、12箇所に高密度の魔力結晶が配置されている。ノスフェラトウの奴……魔界の門を開くつもりだ」

 

魔界の門ですって!?それが開かれたら、人間界とは比べられないほど強力な悪霊や魔獣が出現する事になる

 

「唐巣神父……その魔界の門が開くまでの時間は?」

 

「恐らく……丑三つ時になる午前2時頃だと思う。ピート君を監視に残してきてから何かあれば直ぐに戻ってきてくれる筈だが……」

 

監視に残すのは間違いではないが、戦力が減ってしまう。シルフィーちゃんはどうしたのか?と唐巣先生に尋ねると

 

「吸血鬼の力が強いシルフィー君はノスフェラトウに操られる可能性が高いから……精霊石と破魔札の結界で封印してきた」

 

……ま、まぁいつも横島君を襲っていることを考えると、凶暴化されて横島君が襲われても困る。だからその対応は間違いじゃないと思うけど……

 

(戦力も時間も圧倒的に足りてないわね……)

 

今の時間は午後17時……時間的な猶予は9時間……その9時間の間に迫ってきている強力なゾンビとノスフェラトウの撃破……それは9時間でどうこう出来る問題ではない……どうする?どうやってこの状況を切り抜ける?それを必死に考えるが何もいいアイデアは浮かんでこない。そもそも魔界の門を開こうとしているなんて考えても無かったので、篭城作戦を取ったがそれが裏目に……

 

【ええい!落ち着かんか!】

 

突然響いた少女の怒声……この声はノッブ?私達が振り返るとノッブは肩にライフルを背負ったまま

 

【前提から間違っておるわ!強力なゾンビ?はっ!そんなもの存在せんわ!】

 

存在しないと言い切ったノッブはこれだけ霊能者が揃っているのに気付かないとは情けないと前置きしてから

 

【ノスフェラトウの周辺の蜘蛛の巣。それを作り出している悪魔がゾンビに糸を繋ぎ操作しているんじゃ、戦とはハッタリじゃ!数体のゾンビに糸を繋ぎ操作することで動いている一団全てを強力な物だと勘違いさせておるんじゃ】

 

その言葉にハッとなる。確かにその可能性は極めて高いと言えるが、それが真実だと確証を得ることは出来ない。仮にそれを信じて迎え撃って強力なゾンビが居た場合全員が危険に晒されるのだから

 

「どうしてそこまで断言できるんだい?」

 

唐巣先生も同じ意見なのかノッブに尋ねる。するとノッブはふんっと腕を組みながら

 

【現にこの目で見て居るわ!かつてノスフェラトウが織田軍を制圧しようとした時にな!】

 

ノッブの言葉に目を見開く。着物を着ていて、古い言葉を使う……かなり古い英霊だと思っていたけど……まさか織田信長が生きていた時代の英霊とは想像もしてなかった。しかしその情報で更にノッブの正体がなんなのか判らなくなった。織田信長が生存していた時代で軍略に長けた少女なんて居なかったし、牛若丸や義経と同じく性別を偽っていたとしたと考えてもやはり特定なんて出来るわけもない

 

「オタク、本当の名前を教えてくれない?」

 

エミがそう切り出した瞬間。私達はその場で膝を着いた……ノッブが放った殺気と霊力に飲み込まれて

 

【図に乗るな。ワシはノスフェラトウに因縁があるからこうして現界した、お前達に名を名乗る理由は無い】

 

圧倒的なまでの威厳を伴った声で不機嫌にそう告げたノッブは背を向けて

 

【ま、横島が面白い上に借りもある。協力はするが対等ではない。その事を努々忘れるなよ】

 

長い黒髪を翻し去っていくノッブ。それから暫くして身体の自由が戻った所で再び、迫ってくるゾンビとノスフェラトウ対策を話し合いを再開するのだった……

 

 

 

GS協会の方に向かって歩く鎧武者ゾンビの一団の後ろを宙に浮かびながら、着いて来ている白い着物の青年……ノスフェラトウの側近の蘭丸はGS協会の方を見据えて首を傾げた

 

(おかしい、迎撃に出てこないのか?)

 

あえて逃がした霊能者達から情報は伝わっているはず。それなのに迎撃の気配を感じない、あのGS協会とか言う場所を放棄して逃げたと言う可能性もあるがその可能性は限りなく0に近いだろう

 

(本丸を捨ててどこへ逃げるというのだ)

 

あそここそが現在の霊能者の城なのだから、そこを捨てて逃げるという可能性は殆ど無い

 

(さてどうしたものか……)

 

私が直接霊力を注いで強化し操っている屍兵は120体の中で30……30も居れば十分すぎるが、ここまで何の妨害も無く進んで来られた事にたいして強い警戒心を抱かずには居られない

 

(ノスフェラトウ様の目的に気付いていない?)

 

魔界の門を開き、魔界に残した自らの眷属を召喚する。それがノスフェラトウ様の目的だ、その目的を悟られないように屍兵を定期的に送り出し目的を特定されないようにしてきた。もしそれが成功しているのならば良いが……

 

【仕方ない。行け】

 

屍兵の補充は幾らでも利くが、態々捨て駒にするのも勿体無い話だ。なんせ今使役している屍兵はかつてノスフェラトウ様が蘇った時から使役している屍兵。蓄えている魔力は現代で屍兵にした者の10倍近く……むざむざ失うのは惜しいが反応を見るためには仕方ない。120の中から10体を選び、その内の1体に霊力の糸を繋ぎ、身体を乗っ取り視点と感覚を共有する

 

(まだ反応が無い?まさか本当に放棄したのか?)

 

敷地の中に足を踏み入れているのにまだなんの反応も無い。ありえないと思っていたが、まさか本当にこの場所を放棄したのか?と思い始めた瞬間。ぞわりと背筋に冷たい汗が流れる、咄嗟に霊力の糸を切って共有を解除した瞬間。氷で出来た無数の刃が屍兵を全て両断する。危なかった、後数秒感覚を共有していたら私も致命傷を居っていた所だ

 

【誘い込まれた訳か……】

 

結界を張られ離脱出来なくされてしまった……とは言え、それは大した問題ではない、私が人間ごときに敗れる訳が無い

 

(見つけた)

 

建物の中から姿を見せた人間達の中の1人、緋色の髪をしている女がノスフェラトウ様をかつて封印した槍を手にしているのを確認する、あれを破壊するのが目的なのだから結界の中に閉じ込められたのは好都合だ。なんせ向こうも結界の外に出る事が出来ないのだから……

 

【その槍、なんとしても破壊させて貰うぞ!】

 

屍兵達も結界で分断されてしまったので、残っている数は40弱だが。向こうは5人……数においても、能力においても負けるはずが無い。私は腰の日本刀を抜き放つと同時に左手を突き出し、周囲に自身の足場となる巣を張りその上に飛び乗りながら

 

【我が主君ノスフェラトウ様の命を受け、貴様らを殺す!掛かれ!】

 

【【【ウボアアアアアッ!!!】】】

 

屍兵に指示を出すと同時に私もあの槍を破壊する為に空中を走り出すのだった……

 

 

 

 

 

なお、美神達が蘭丸達の襲撃を受けている頃。横島の家の近くにも大量のゾンビが出現していたのだが……

 

「みっむうう」

 

凄まじい勢いで放電するチビは放電を保ったまま。何らかの構えを取る、すると放電の光が全て右足に集まって行く

 

「みっむううううッ!!!」

 

とちとちっとでも言うのだろうか、勇ましさとは無縁の動きから放たれた飛び蹴りは予想に反し、ゾンビを大きく弾き飛ばし……

 

【う、うがあ!うぼああああああああ!?!?】

 

チビの蹴りが当った箇所に電気のマークが浮かび上がり、そのゾンビを起点にし、地上から上空へと逆に雷が発生しゾンビを纏めて焼き払う。チビはその光景を見て満足げに頷く、そしてその背後では

 

「うっきゅー!!」

 

ゾンビから背中を向けて走りだし、勢いをつけて地面の中に勢い良く潜っていくモグラちゃん。そして数秒後周囲に凄まじい地震と共に庭が盛り上がり岩で出来た巨大な滑り台が姿を見せる

 

「うーきゅ」

 

そしてその頂上から可愛らしい鳴き声とちょんっと言う感じでモグラちゃんが滑り台の天辺から岩を押すとそれは凄まじい勢いで滑り台を転がって行きゾンビを纏めて押し潰していく。その威力に満足したモグラちゃんも滑り台の上から転がってきて、下で待っていたチビの方に近づいていき

 

「うっきゅー!」

 

「みーむッ!」

 

イエーっと言う感じでハイタッチを交わすチビとモグラちゃん。その仕草は可愛いのだが、先ほどから何回も放電キックや、岩で出来た滑り台から転がりながら体当たりをすると言う見た目からは想像も出来ない破壊力と殺意に満ちた攻撃でゾンビの集団を何度も何度も撃退していた。タマモはそんな2匹を見て。仕方ないといわんばかりに小さく鳴き、家の中に戻る。縁側に置かれていた雑巾で足を拭ってから部屋に入る辺りシズクの恐ろしさを良く理解していると言える

 

「みーむーみー」

 

「うっきゅ」

 

タマモから遅れること数分。チビとモグラちゃんも縁側に上り、足を雑巾で綺麗に拭き、洗面台まで飛んで行きそこで綺麗に身体を洗い、タオルで水気を取る。横島が知らないだけで、自分達で風呂に入るくらいの知恵を得ていたチビとモグラちゃんは、ゾンビの居ない家の周りに満足げに頷き、TVの前に座って遊び始める

 

【皆大人しくしていますね。良かったです】

 

横島からの罰と言う事でチビ達の様子を見に来たおキヌちゃんは普段とおりの姿を見て、大丈夫ですねと呟きGS協会へ引き返していったのだが、おキヌちゃんは知らない、その30分後に再び、チビとモグラちゃんによるゾンビの殲滅が行われていた事を、そして……

 

「みむうううう!!!」

 

「うきゅうー!!!」

 

モグラちゃんの上に乗ったチビが放電し、モグラちゃんはその放電をバリアのようにし突進し、ゾンビを弾き飛ばした後。放電したチビが飛び蹴りを叩き込むと言う合体技を開眼していることに、そして

 

「クウ……」

 

その姿を見て、タマモが疲れたように鳴き声を上げた事を……

 

横島が知らない所でパワフルに成長している、チビとモグラちゃんなのであった……

 

 

 

 

 




外伝リポート 外史からの来訪者 その7へ続く

次回の前半で蘭丸戦。後半でノスフェラトウ戦前半を書いて行こうと思っております。予定としてはその9くらいで劇場版は終了の予定です。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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