GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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その16

謎の金色の仮面ライダーが助けてくれた事でノーフェイスの危機は去り、投げ渡された眼魂を手の上に乗せて観察していると

 

「みーむうー!」

 

「うきゅー!」

 

「クオーン!」

 

危険だという事で妙神山に隠れているように言っていたチビ達が元気良く鳴いて向かってくる。その後ろから歩いて来ている美神さん達を見ていると

 

「うむ……無茶をしたか……」

 

キャットのそんな声が聞こえて、振り返るとキャットの姿が金色の粒子となって足から消え始めていた

 

「きゃ、キャット!?お、お前どうしたんだ!?」

 

痛む身体に眉を顰めながら消えようとしているキャットに駆け寄るとキャットは困ったように笑いながら

 

「うむ、すまないなご主人。キャットはまだ完全に霊基が安定してなかったのだ、だから消えてしまうのは当然の事」

 

霊基?……俺には何の事か判らない。でも消えてしまうと言われて、はいそうですかと納得出来るわけが無い。キャットの手を取ろうとするがその手を掴む事が出来ない

 

「すまないご主人。キャットが無茶をしたせいでご主人を泣かせてしまったな、だがキャットは後悔していないぞ!ご主人を護れたのだ、キャットはそれだけで無理をして現界した価値があった」

 

にこりと笑うキャットを見つめていると美神さん達が消えかけているキャットを見て

 

「そう……そう言う事だったのね。貴方も英霊だったのね?」

 

牛若丸と同じ……?美神さんの言葉を聞いたキャットはチッチと指を振りながら

 

「少し違うな、キャットは英霊と昇華した玉藻の前から切り離された心の欠片。力を持つタマモに引かれ不安定な形で現界した。英霊とは異なる物だ」

 

淡々と騙るキャットだが、ついには腰元まで消えているキャットを見て、涙が溢れる……少しの間だが、家族として暮らした。これからもっと楽しく暮らして生きたいと思っていたのに

 

「悲しむなご主人。此度の出会いは仮初の物……本来はありえぬ夢のような物……だが縁は結ばれた。もしも……もしもご主人が……聖杯を巡る戦いに巻き込まれたのならば、このキャット……真っ先に駆けつけるワン!だからきっとまた会える」

 

聖杯……?なんだそれは……だがまた会えると言うのならば……

 

「判った……またな」

 

さよならは言わない、いつになるか判らないが……会えると言うのならば……言うべき言葉はさよならじゃなくて……またなしかないと思ったのだ

 

「みーむう」

 

「うきゅー」

 

 

「クウ」

 

俺の言葉に続いて、チビ達も小さく手を振り鳴く。もう胸元まできえているキャットは俺達を見て満足げに笑い

 

「ではな……また会おう!ご主人!リボンは……返す!また会えた時にまた結んでくれッ!」

 

そう言うとキャットの姿は弾ける様に消え、残ったのは俺が買ってやったリボン……ゆっくりと落ちてくるリボンを掴んで

 

「ありがとう……」

 

助けてくれてありがとう、そして何も出来なくてごめん……また会えるのなら……その時は……少しは強い俺になってるか

ら……タマモキャットのリボンを左腕に結び、少しぼやけた視線に気付き慌てて腕で擦る

 

【キャットは死んだわけじゃない、あるべき所に帰っただけだ。だから泣くなよ、横島】

 

心眼の言葉にわかっていると返事を返し、俺は放れた所で見ている美神さん達の元へ戻るのだった……

 

 

 

ここで少し時間は巻き戻る。妙神山の近くで戦っているのに小竜姫や老師が応援に来なかった事にはある理由があった

 

「必要な戦いと言う事か」

 

「そうなのねー……だから申し訳ないけど邪魔はしないで欲しいのねー」

 

真っ先に応援に向かおうとした小竜姫だが、突如現れたヒャクメと柩によって止められていたのだ

 

「逆行なんですか?」

 

「くひ!それは違うね、小竜姫。これは逆行じゃない、歴史によって決められた必要な出来事さ。くひひ!だからこれは逆行じゃない、逆説的になるが……この戦いがなければ未来は途絶えるのさ」

 

ここに居るヒャクメと柩は今の時代からすれば未来の存在だろう。ゆえに本来ならば過去に介入する事は逆行となり、歴史改変とつながるが、今回だけはそうではない。この2人が知りえる未来でもやはり同じく、未来のヒャクメと柩……そして

 

「たはー……つ、疲れたあー……」

 

横島忠夫が介入し、ノーフェイスを倒す事になるのだ。これは歴史の中で決められた逆行であり、歴史改変ではあるが、歴史改変ではないのだ

 

「ほう?ずいぶんと己を磨いたのだな」

 

老師が現れた未来の横島を見てそう呟く、今の横島よりもはるかに感じる霊力が高い事を老師は一目で見抜いたのだ

 

「横島さんも~色々ありましたから。まぁ……そう込み入った話もあると思いますが……あんまり居ると本当に歴史改変になるので失礼するのね~」

 

横島が戻ってきたタイミングで3人の後ろに時間の歪が現れる。それは奇しくも今の横島達が報告に戻って来たタイミングだった

 

「先に戻ってるよ、くひ!君はまだ話すことがあるのだからね」

 

「出来るだけ早く戻ってくるのねー」

 

先に時空の歪に飛び込んだヒャクメと柩を見送った横島は老師の後ろに座っている三蔵を見て

 

「不躾ですがお願いがあります、玄奘三蔵さん」

 

急に声を掛けられた三蔵は驚いた表情をしたが、直ぐに横島の方を見て

 

「何かしら?」

 

「はい、貴女でなければ出来ないんです。どうか白竜寺をお願いします、暫く現世にいるのでしょう」

 

横島にそう言われた三蔵はま、そのつもりだし考えておくわと返事を返した。横島はありがとうございますと返事を返し

 

「では小竜姫様、老師。失礼します、もう会うこともないですが……また俺をよろしくお願いします」

 

ぺこりと頭を下げて歪に飛び込み消えて行った横島を小竜姫達は無言で見送るのだった……

 

 

 

消えて行った未来の横島を見送ってからワシは先ほどの横島の言葉の意味を考えていた

 

(お師匠様にしか出来ないこと……か)

 

玄奘三蔵老師にしか出来ないこと……それは何だろうか?確かにお師匠様は徳の高い僧だが……それ以上におっちょこちょいでトラブルメイカーと言う面も強い、そんなお師匠様しか出来ない事は何なのだろうか?と考えていると

 

「悟空……白竜寺って言うのは?」

 

お師匠様の問いかけに簡単に説明をする。ガープにより霊脈が乱れた元は人間界にしては上等な霊地に作られた修行場で、現在は寺として再建されている段階だと……

 

「判ったわ!未来の横島君はその寺の住職になってくれって事を頼んでいたのね!」

 

はい?……ワシと小竜姫の目が点になる。お師匠様の考えている事が判ったことなど数回しかないが、それでもその考えはおかしい

 

「どうせ天界から何人か聖人を下界に下ろして、ソロモン対策するんでしょ?じゃあ!まずは私が行くわ!じゃ!行ってくるわ!」

 

いやいや!!確かにその話はあったが、それはもう人選が決まっている。勝手に向かっていい物ではありませんっと叫ぶが、ワシの言葉は聞こえている筈なのに……天界の最高指導者であるきーやんの指示は殆どと言って聞いてくれないお師匠様

 

(仏教なので仏陀様の話しか聞いてくれない)は砂煙を上げながら走って行く。何度か見たその姿に呆れ果てて一瞬反応が遅れてしまった……

 

「待って!待ってください!三蔵様-ッ!」

 

しゅたっと手を上げて走っていくお師匠様を見て小竜姫が叫ぶが、あっという間に姿が見えなくなる。……妙に活動力のあるところが完全に裏目に……っと言うかこんな事をしている場合ではない!

 

「ええい!小竜姫!留守番をしておれ!お師匠様を迎えに行って来る!」

 

あの人を自由にするのは余りに危険すぎる。ワシと猪 八戒に沙悟浄がどれだけ振り回されたか!慌てて追いかけて行こうとすると

 

「羯諦(ぎゃてぇ)……ごくう~白竜寺ってどこ?」

 

勢いで走って行ったが、場所を知らないことを思い出して引き返してきたお師匠様に安堵の溜息を吐き

 

「まずは下界に降りる前に今の下界の常識を覚えてもらいましょうか。それに服装も」

 

「?お釈迦様から貰ったありがたい物よ?」

 

それは知っている、知っているが……露出が多い上に現代で着ていればコスプレにしか思われないだろう

 

「小竜姫。お師匠様を頼む……ワシは最高指導者の元へ向かう」

 

言い出したら聞かない性格だ、どれだけ頼んでも下界の白竜寺へ向かうだろう。ならそれ相応の準備をしなければならない、服に始まり東京の地理に現在の常識など覚えて貰うことは山ほどある

 

(うらむぞ……横島)

 

未来で何を見たかは知らないが、お師匠様に下界に来てくれと頼んだ横島に恨み言を呟きながら、ワシは妙神山を後にしたのだった……

 

「うーやっぱこれ胸苦しいわね。小竜姫ちゃん?もう少しサイズ大きいの無い?」

 

「……さ、探して見ます」

 

胸が小さい事を気にしている小竜姫にとって三蔵の言葉は非常に傷つく物で、本当なら怒鳴りたい所なのだが老師の師匠と言うこともあり、なおかつ自分にとっては大上司と言うこともあり、小竜姫は引き攣った顔をしながら更にサイズの大きい修行着を探しに向かうのだった……

 

 

「あ、おっかえり~」

 

屋敷に入るとゲンちゃんさんが走って来る。その後ろから何やら疲れた顔をした小竜姫様が付いて来る。

 

「ちょっと小竜姫、なんで来なかったのよ。こっちは色々と危機一髪だったのよ!」

 

「あー、その、色々と事情がありまして…」

 

「まあまあ美神さん、相手が最上級悪魔とか神じゃないんですし、介入したくても判断が付かんかったんでしょう」

 

ぷりぷり怒る美神さんを門矢が宥めているのを見ていたらふと、懐から平成ライダー眼魂を取り出すと平成ライダー眼魂は光った後に消えた……ってええ!?

 

「消えたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「あー、どうやら1発限りのだったみたいね」

 

マジかよー!と俺が嘆いてると、カオスのジーさんが作ってくれた動物型のサポートアイテムも火花を散らして爆発する

 

「これも壊れたああ!?」

 

急ごしらえと聞いていたけど、このタイミングで壊れるか普通!?ショックな事が重なりすぎだろう!?っと言うか他のライダー眼魂は!と慌てて取り出したけど海東から新たに出されたバース、ビースト、マッハ、チェイサーのは残っていた。良かったー…まだ使ってないのに消えていたら貰った意味ねえだったからマジで助かった……と思っていたら

 

「ふぎゃあっ!!」

 

頭の上に何かが落ちてきて思わずそう叫ぶ。頭を両手で押さえてしゃがみ込む……す、すげえ痛かった……何が落ちてきたんだ?と顔を上げると

 

「ルービックキューブの眼魂?」

 

6面のカラフルな模様を持ったかなり大きい眼魂だった。平成ライダーがこれになったの?と思わず首を傾げる

 

「ルービックキューブ見たいね。横島君、色揃えてみる?」

 

美神さんに差し出されたそれを動かそうとするが

 

「ふぐぎいいいい!なんじゃあこりゃあ!うごかねぇ!」

 

カチカチでとてもじゃないが、絵柄を揃えるなんて無理そうだ。軽く振ってみるとからからと何かが転がる音がする

 

「中に眼魂が入ってるのかな?」

 

「かもしれないですね」

 

からからと音がするからもしかすると絵柄が揃うと眼魂がでて来るのかもしれない。今は使えないけどいずれ使えるかもしれないなと思い。バース、ビースト、マッハ、チェイサーの眼魂と一緒に鞄に入れようとしているとゲンちゃんさんがバース、ビースト、チェイサーの眼魂、そして巨大なルービックキューブの眼魂をいきなり取る。

 

「え、あ!?」

 

「おー何時の間に新しいの手に入れてたの…丁度良いからこの4つは私に貸してくれない?」

 

お願い!と手を合わせて俺にそう言うゲンちゃんさん。今回は事態が事態だったのと門矢がいたから負担を気にしないで結構使っていたけどあんまり使うなと言われてるから使用する機会が何時来るか分からないし……

 

「分かりました。けど大事に扱ってくださいね」

 

「分かってるわよ。この彼らもまた一英雄ですもの」

 

貸す事にして了承したのを後に何かを門矢に渡していたタケルが来る。

 

「そう言えば横島さん。ムサシさんがあのライダーから渡された眼魂について注意しておきたいとの事があるそうです」

 

「この眼魂か?」

 

言われて漆黒の球体に縁取りが金の眼魂を取り出す。

 

「その眼魂は俺が変身したグレイトフルの劣化した奴で負担は少なく、ムサシさん達15人の英雄の力を上乗せする事が出来るそうですがその場合の負担は横島さんが使う眼魂を超えるのと危険性が極めて高く、暴走する危険性を秘めてるそうですから力の上乗せの使用は最後の手段として極力使わない様にとの事です」

 

「成程ね…横島君、それの使用は絶対にしてはダメよ」

 

「ええ!?」

 

タケルが説明した後の美神さんの使用禁止令に俺は思わず声を上げちゃったが蛍達からも同じ感じで見られてるので使えないのにトホホとなる。そりゃあ痛い思いをするのは嫌だけど使ってやらないとなんか寂しい思いをさせる感じになる気がするんだよな…

 

「それで、これで我々の英雄の眼魂は取り戻したんだ。元の世界に戻るぞ」

 

「そう言えばタケルさん達はどう戻れば良いんですか?」

 

そう言えば…とアランの後のルージのに俺達はあっと声を漏らすと…

 

「ああ、それは大丈夫だ」

 

聞き覚えのある声に振り返るとそこにいたのは…

 

「翔太郎さん!」

 

「よう。迎えに来たぜ3人とも」

 

あの時見た穴の前に翔太郎さんがおり、その隣に美神さんの様に美人な女性がいた。

 

【えっと、誰でしょうか?】

 

「初めまして、私は八雲紫、彼の知り合いよ。今回は彼にお願いされて迎えに来た訳」

 

はぁ~そうなのか~と思っていると美神さん達は何やら八雲さんを警戒してた…なんで?

 

「…横島、そいつは妖怪だ…しかも強い存在だ」

 

ええ!?この人そんなに凄いのか!?なんか普通に見えるけど敵意がないからだろうか?そんな俺に八雲さんはふふっと笑った後に穴へと入る。

 

「ほら、早くしてよね。私はこれでも忙しいんだから」

 

「忙しいって訳ねえだろ。まぁ、とにかく早く来な、タケルだったか?レディが心配してたぜ」

 

「アカリが…そうか…」

 

「アカリ殿…拙僧の心配はないんですか」

 

促されながらタケル達は俺達へと体を向ける。

 

「色々とありがとうございました!」

 

「本当に助かりました」

 

「……礼を言うぞ」

 

「良いって!それに楽しかったからな!」

 

そう言ってからタケルや御成さんと握手をしてからアランともする。んでタケルは門矢にまた何かを返しながらそれじゃあ…と俺達に頭を下げながら穴に入る。

 

「さよなら!」

 

「ここでの事!忘れませんぞ!」

 

「さらばだ横島」

 

その言葉の後に翔太郎さんも穴に入ると穴は閉じた。

 

「んじゃあ俺達も帰るか」

 

「はい!」

 

タケル達を見送ると門矢とルージがそう会話したと思ったら2人の前に前に京都に向かう時に海東が使っていた壁が現れ、2人はそれに近づいた後にルージは頭を下げる。

 

「色々とありがとうございました!俺、会えてよかったです!」

 

「貴重な体験させて貰ったぜ…あ、そうそう、あの黄金のライダー…もしかしたらまた会えると思うぞ」

 

「え?どう言う事?」

 

門矢から出て来た言葉に俺達は驚く中でGSの勘だって門矢は笑ってから同じ様に驚いていたルージの背を押して壁を通る。

 

『俺が思うに、未来で何時か会えると思うぞ。案外、変身してる奴は意外な奴だったりするかもしれないかもな!』

 

『さようなら皆さん!もし縁があれば!!』

 

そう言い残して2人は元の世界に帰って行った。

 

「なんと言うか…思わせぶりな事を言って帰って行きましたわね」

 

【どういう意味なんでしょうね?】

 

「ホントにね」

 

くえすさんやおキヌちゃんに蛍のを聞きながら俺は門矢…いや別の世界の俺の言葉に確信出来ると思った。

 

これもGSの勘ってなんだろうなと思いながら眼魂を改めて握る。

 

 

こうして、短くも長い奇妙な出会いと別れを体験した横島達。

 

そんな横島達はそんな出会いから間もなくしてまた大きい異変に巻き込まれる事を知るのは…しばらく先である。

 

ー是非もなし!ー


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