GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回でナインテール・フォックスは終わりの予定です。今回は黒龍姫を出してみようと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



その6

リポート2 ナインテール・フォックス その6

 

結界の中の外れの中で荒い呼吸を整える蛮勇の鬼兄弟。蹲りぜーぜーと荒い呼吸を整えながら

 

「はぁ!はぁ!あ、兄貴……危なかったな」

 

「ああ……新月でもあんなに強いとは、思っても見なかった」

 

新月の夜ならば九尾の狐を倒す事が出来ると思っていた蛮勇の鬼兄弟だが、暴走したタマモの狐火で焼かれ、その爪で引き裂かれ重傷を負いはしたが何とか生き延び、そして近くに隠れていたのだ

 

「まぁこれで九尾の狐を殺せるぜ。それにあの餓鬼……中々上質な魂を持ってやがる。今のうちに殺しちまおう」

 

蛮勇の鬼兄弟の視線の先には意識を失っているが、タマモを抱きしめている横島とそんな横島の頭を撫でている蛍の姿。今なら殺せると確信しにやにやと邪悪な笑みを浮かべる蛮勇の鬼兄弟。だが彼らは気付いていなかった、彼らの後ろに佇む女性の姿に……女性はその目に何の光も宿さず、腰の鞘から両刃の剣を抜き放ち無造作に振るった

 

「なあ兄……貴?」

 

勇がその目を丸くする。何故なら蛮の首は切り落とされ、その身体はゆっくりと地面に倒れていたからだ

 

「て、てめえは!?なんでお前が「黙りなさい」げぼ……」

 

その女性は非常に整った顔をしていたが、その冷酷な光を宿している瞳のせいで、残酷な審判者のように見えた。彼女は手にしていた剣を無造作に突き出し勇の心臓を貫き一太刀で絶命させた。

 

「横島さんを殺そうとするとは万死に当たる罪ですよ。この小竜姫が許しません」

 

小竜姫と名乗りはしたが、その目と纏う気配は妙神山の小竜姫とは思えないほどに重く、暗い気配を放っていた。魔族と言っても通用するだろう

 

「それでいつまで見ているつもりですか?アシュタロスさん?」

 

振り返りながら言う小竜姫、その視線の先には黒いスーツを纏った男性。芦優太郎……いやアシュタロスは

 

「今の自分を乗っ取るほどに君の力は強いのかね?」

 

魔神たるアシュタロスの目には見えていた。目の前の小竜姫の中に2つの魂が存在している事に……

 

「力じゃなくて想いがですけどね。ごゆっくり話でもしますか?」

 

にこりと笑う小竜姫にアシュタロスは少し考える素振りを見せてから

 

「それならば私の家へ来るかね?蛍は横島君を家まで連れて行くそうだしね」

 

その言葉に一瞬眉を顰めた小竜姫だが、仕方ないと判断したのか蛮勇の奪って行った竜牙刀と扇を拾い上げ

 

「行きましょう。今はまだ時間制限があるので、時間が惜しいですので」

 

そう笑う小竜姫を見たアシュタロスは内心で深く溜息を吐いた。魔神である自分よりも禍々しい雰囲気をしている小竜姫をどう扱えばいいのか?迷っているのは言うまでも無いことだろう……

 

 

 

アシュタロスに案内されて来たビルは何重にも結界が張ってあって、ヒャクメでも覗く事の出来ない一種の聖域になっていた。魔神なので聖域と言うのもおかしな物だが、間違いなくここは聖域だ

 

「紅茶ですか?日本茶は無いのですか?」

 

「私の好みじゃないのでね。そこは我慢してくれたまえ」

 

そう言うことなら仕方ない。差し出された紅茶を啜りながら

 

「それで今の君は蛍がいた時間軸の小竜姫で良いのかね?」

 

私を観察しながら尋ねてくるアシュタロス。私はカップをを机の上に戻し

 

「そうですよ、最高指導者が今何をしようとしているのかも、魔神大戦の結末も知ってますよ」

 

最終的には美神さんの裏技勝ちで、非常に腹立たしい上に何もかもぶち壊してやりたいと思っているというと

 

「君さ?もう堕天してない?その気配はもう魔族で充分通るよ?」

 

呆れたという顔をして尋ねてくるアシュタロス。自分でもそんな気はしているが、龍神と言うのは情が深く、一途で盲信的な一面もある。多分それが大きく前に出ているだけだ

 

「私はずっと神族です、もし堕ちていると言うのならそれは横島さんへの愛に他ならないでしょう」

 

物凄く会いに行きたいけれど、今の私に横島さんの面識が無いので会いに行っても、自分が表に出れないので今は我慢するしかない

 

「今表に出れているのは横島君を殺そうとしたあの馬鹿鬼兄弟のせいかな?」

 

「ええ。あの瞬間今の私も殺意を覚えてたので何とか無理やりに」

 

殺意が共鳴したので私が前に出てこれた。出来るのならば殺意ではなく愛や好意での変化の方が好ましいのだが……

 

「君が知っているということはハヌマンは?」

 

老師の事ですね。老師もまた逆行してきてちゃっかりトトカルチョに参加している。何故か弟子である私ではなくおキヌさんと蛍さんに賭けている事は詳しくお聞きしたい所ですけどね

 

「勿論。全てを知った上でどうやって神族と魔族の過激派をおびき出すかを考えていますよ」

 

過激派を燻りださない事には私も思う様に動けないし、それにある程度歴史に沿って動かないといけないので、妙神山に横島さんが会いに来てくれるまでの1年ちょっともどかしい気持ちでいないといけないのは落ち込みますけどね。いやむしろ出し抜かれる事が怖い。ルシオラ……いや蛍さんがどんな手を使ってくるのか判らないからだ

 

「まぁそれは私にはどうもしようも無いので諦めてくれ」

 

「それは私も判っているので大丈夫です。老師にここに来れる様に場所を教えておきます、ではまたいずれ」

 

本当はもう少し話しておきたい事がありますが、この時間の私が目覚めそうなのでその前に妙神山に戻るとしましょう。私はボロボロの竜牙刀を持って妙神山に転移しながら

 

(少しだけど表に出てこれた)

 

殺意という引き金だったが、私は表にでてこれた。それは少しずつだが、今の私に干渉できるほどに力が強まっていると言うことだ。いや、正しくは……

 

(融合し始めている……)

 

現代の私と未来の私が混ざって1つになりつつある。神族・魔族は魂だけの存在、時間軸こそ違えど同じ私こうなるのは必然だったのかもしれない。恐らく私が消えて、現代の私に統一されるだろう。だけどこの想いだけは消えないはず……

 

(今度はもう絶対に諦めませんからね)

 

あんな痛くて悲しい思いは2度としたくない。今度はもう絶対に諦めないと心に誓い、私の意識はゆっくりと魂の奥底に沈み。代わりに現代の私が目を覚ますのだった……

 

残されたアシュタロスは眉を顰めて非常に難しい顔をして

 

「これは蛍にとっては不利かもしれないねえ」

 

同じ想いを持って逆行してきた未来の小竜姫。その想いの重さは言うまでもなく蛍と同じだろう

 

「はぁーとりあえず、美神令子の実績を上げる事を考えるか」

 

今の美神令子は少しだけ知名度が低い、蛮と勇の鬼兄弟は神族・魔族からすればたいした事のない小物だが、人間にすれば充分に脅威だ。これを倒したのを美神令子にすればGS業界での地位はある程度約束される。そうすればいずれあの事務所でアルバイトをする、蛍と横島君に少しは好条件をつけてくれるかもしれないと淡い期待を持ちながら公園に美神令子が足を踏み入れるのを確認してから、広域幻術で美神令子を幻術の世界に引き込んだのだった……そしてアシュタロスの思惑通り。美神令子は鬼を滅した若手GSとしての箔をつけてより一層GSを盛り上げる立役者となるのだった……

 

 

 

 

あの鬼兄弟を退けた次の日。いつものように横島とGSの訓練をしていたんだけど

 

「……横島何かした?」

 

目の前の光景を見て若干思考停止してからそう尋ねる。今の横島は霊力も何もない筈だからこんな事になるわけが無いのに……

 

「……ちゃうねん」

 

ぎぎぎっと油の切れたブリキの玩具のように振り替える横島。その視線の先には中ほどから真っ二つになった大木の姿。普段の練習用の的で例え霊力が使えたとしても5円の破魔札でどうこう出来る様な木ではないはずなのに……

 

「コンッ!」

 

横島の頭の上で誇らしげに鳴いているタマモ。そういえばさっき横島が破魔札を投げた時……一瞬だけで霊力が上がったような……

 

「横島今度はこれ、1円の破魔札を投げてみてくれないかしら?」

 

練習用の1円の護符を投げるように言う。さっきは一瞬しか見てなかったから良く判らなかったけど、今度は最初からちゃんと見ていようと思う

 

「大丈夫なんか?さっき見たいのは嫌やで?」

 

びくびくしながら横島がホルダーから1円の破魔札を取り出して

 

「行けッ!」

 

指の間に挟んで腕と手首のスナップで投擲する。その一瞬だけ霊力が発現し的の木にぶつかると同時に炸裂し、その大木をへこまさせる。当然ながら1円の破魔札の威力ではない

 

(軽く見積もっても2000から8000代後半の威力ね)

 

あの一瞬で破魔札の中の霊力を刺激して必要以上に込められた破魔札が一種の爆弾のようになっている。理論的にはサイキックソーサーと同じだが、それよりも霊力の消耗が少ないという利点はあるが、消耗品の破魔札を使うのが少し痛いわね

 

「わ、わい!パワーアップしとる!」

 

身体を震わせて喜んでいる横島。今日は珍しくやる気だったのは昨日の鬼兄弟の襲撃で何も出来なかったからで、少しは変わるかな?と思っていたけど、これは予想以上のパワーアップだ

 

(これで1万とかの破魔札を使ったらどうなるのかしら?)

 

少なくとも桁が1つ上の威力になるわけでとても経済的なはずだ。まぁ使いところが難しくなりそうだけどね

 

「コン!コン!」

 

「ん?もしかしてお前のおかげか?タマモ」

 

「コーンッ!!!」

 

正解と良いたげに元気良く鳴くタマモ。先日までは尾が2本だったが、今は1本になっている。霊力と妖力を使い切ったのでさらに霊格が下がっているのだ。今ではただの狐にしか思えない、タマモが何かした?と言って思い浮かぶのは昨日の玉藻前がしたこと

 

「横島。ちょっとこっち来て」

 

若干その事でいらついた事を思い出したけど、その事で横島を怒るような器量の狭い女じゃないから、きっと私は笑顔のはずだ

 

「ひいッ!?」

 

なんか横島が引き攣った悲鳴を上げてるけど気にしない、おどおどと近づいてきた横島の目を覗き込む

 

「な、なんや?目が怖いで」

 

横島の身体の中の霊力のラインを探す。強固な弁で開くことの無い霊力の通路を探していると、横島がおどおどと尋ねてくる。霊視はあんまり得意じゃないから怖い顔をしてるかもしれないけど、そこは我慢して欲しい

 

「ちょっと静かにして」

 

集中して横島を霊視する。私の予想が正しければ……

 

「あーなるほどね。とんでもない加護を授けたわけね?」

 

横島の頭の上のタマモを見て呟く。タマモは当然と言いたげの顔をしている

 

「えーとタマモがわいになんかしたんか?」

 

どういうことかわからないと言う顔をして尋ねてくる横島。もし世のGSが知れば羨ましいと妬むほどの加護が今の横島には憑いている

 

「したわね。しかもとんでもない加護を残してるわ」

 

玉藻前がしたのは本来は自身の眷属を作る術。だけど横島は人間で玉藻前の眷族たる資格を持つ狐や狼ではない。眷属として霊格を上げる術はそのまま横島自身の霊格を上げたわけだ、だけど横島の霊力は膨大だ、その鍵を開けるのは玉藻前でも不可能だったらしく、一時的に霊力の弁をあけるのが手一杯だったようだ

 

「まぁ九尾の狐の加護って感じね。多分今の横島なら火は全然効かないじゃない?」

 

九尾の狐といえば幻術と火炎を得意とする妖怪。その妖怪の加護なのだから間違いなく、幻術系と火炎系の霊力や妖力はその効力を薄めるだろう

 

(これなら美神さんも人並みの給料を出してくれるかも)

 

破魔札の強化に幻術と火炎の耐性。これなら250円なんてありえない時給は無いはずよね。うんうん、小竜姫や私じゃなくてタマモの加護って言うのが気に食わないけど、これは仕方ないので割り切ろう

 

「た、タマモ……蛍が怖い顔をしてるで?お前わいになにしたんや?」

 

「キューン……」

 

視界の隅では横島とタマモがビクビクしているけど、気にしない。今はそんなことを考えている場合じゃない

 

(訓練はもうここじゃ駄目ね、別の場所を考えないと)

 

横島には破魔札のことをもっと詳しく教えないといけないし、いつまでもこの公園だと狭すぎるわ。どこかの山をお父さんに買い取ってもらってそこを訓練所にしましょう

 

「それよりも、横島♪凄いわ!この調子なら予定よりも早くGSになれるかもしれないわ♪!今日はもう訓練を止めて遊びにいきましょう。それがいいわ!」

 

「え?え?急にどうした……待ってえ!首掴んで走らんといてえ!怖い!転ぶ!転んでまうからぁ!」

 

「グルルルルッ!!!」

 

横島の慌てた声も威嚇しているタマモの声を無視して、私は周囲の結界を解除しながら街へと走り出したのだった……

 

 

横島ステータス更新 

 

九尾の狐の加護

 

傾国傾城の大妖怪九尾の狐の「タマモ」と「玉藻前」の加護。横島の潜在霊力の1部を解放している、九尾の狐の加護なので幻術と火炎に若干の耐性を与える。

 

リポート2.5 動き始める物語へ続く

 

 




今回は状況整理みたいな感じになりましたね。次回は少し時間を飛ばしてグレートマザー達がナルニアに行く時間まで飛ばそうと思います。いちおう情けない横島を目指しますが、若干の強化の要素を組み込むので時折、こういう感じでステータスを更新して行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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