GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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その12

ノーフェイスと名乗った眼魔の襲撃を退けた後。俺達は弱っている沖田総司を1度家に連れて帰り休ませることにした。

 

こっちの世界の美神さん達はノーフェイスと名乗った眼魔についての話し合いをする為に、1度この世界のGS協会の会長だと言う神代琉璃と言う人を迎えに行っている。

 

戻ってくるまで暇つぶしにはなるだろうと思い、手を伸ばした。

 

こっちの世界の映画の新撰組のパンフレットを見ながら部屋の隅に視線を向ける

 

「げほっ!ごほっ!うー……」

 

布団に横たわり激しき咳き込んで呻いている少女の姿をした沖田総司を見て

 

(この世界でもあの映画の監督頭おかしいんだな)

 

自分の世界の人斬りに飢えた沖田もおかしいけど、女の子にするって言う発想は正直どうなんだろうか?

 

「大丈夫か?沖田ちゃん?」

 

「あー横島君。ええ、全然大丈夫……がふっ!?」

 

「「「全然大丈夫じゃないだろ!?」」」

 

最後まで言いきることなく吐血する沖田に思わず俺達の突っ込みの声が重なるのだった

 

「だーかーらー無理したら駄目だっていつも言ってるだろ?」

 

横島が濡れタオルを絞りながら沖田に説教している。俺はその姿を見て

 

(一瞬お袋が見えた……)

 

俺がこの世の中で一番怖いと思う実母の姿が見えた。

 

これはもしかするとチビとかタマモとかと暮らしているのがきっかけでお袋の力にも目覚めているということなのだろうか?

 

「うーすいません横島君」

 

怒られた沖田もしょんぼりしている、おかしいな、見た目的には沖田の方が年上に見えるんだけど

 

「あれなんか凄いな。蛍」

 

「横島強くなってるわよ、いろんな意味で」

 

その一言にどれだけの苦労が込められているのか理解してしまった俺が反応に困っていると御成が

 

「沖田殿は血を吐いておられましたし、病院に連れて行くほうが良いのでは?」

 

これは幽霊とかの知識がないから強く言えないが、幽霊は病院では見て貰えないのだと説明しようとすると蛍が

 

「あーこれ病気とかじゃないのよ。強いて言うと設定かしら?」

 

設定?どういうことだ?と俺達が顔を見合わせていると

 

「えーとですね、簡単に言うと沖田総司って言われるとどんなイメージがありますか?」

 

布団で寝転んだまま尋ねてくる沖田。沖田総司って言えば剣術の天才で、新撰組の一番隊隊長……あ

 

「「「病弱!」」」

 

俺と御成とタケルの声が重なる。

 

沖田総司と言えば病弱と言うイメージがある

 

「そう、それなんですよ。皆さんのイメージが私の病弱って言うのを形作ってまして、ある意味私の象徴になっているんでこれは治らないんですよ。映霊ってのは辛いですね」

 

あははと苦笑する沖田から聞きなれない言葉が聞こえた。アランもそう思ったのか

 

「英霊とは?」

 

その問いかけに沖田ではなく、横島が答える

 

「映画の幽霊で英霊って美神さんが命名した。普通の幽霊とは違うけど、霊体だしんで……えーとなんだっけ?」

 

肝心な所を忘れてしまったようで蛍のほうを向く横島。

 

蛍は仕方ないわねと苦笑する。

 

これはある意味俺が失ってしまった理想の世界、だからこそなんとかしてこの事件を解決して、この世界の俺と蛍に幸せになってほしいと思う

 

(あーでもなぁ)

 

俺の時には居なかったタマモとかシズクとかの事を考えると、人外に好かれるのが異様にパワーアップしてる。

 

なんかまだ騒動がありそうだなあと思わず苦笑してしまう

 

「映画って言うのは想いが篭りやすいのよ、それに元になった人が居たりするとその魂と思いが結合して作られた幽霊になるの、それが映霊って物らしいわ」

 

んー俺の世界にはそういう幽霊は居ないけど……もしかするとこの世界特有の者なのかもしれない

 

【みなさーん、とりあえず軽く昼食にしましょうか?】

 

「……それなりの物だけどな」

 

キッチンからおキヌちゃんとシズクが山盛りのおにぎりの乗った皿と味噌汁の入った鍋を持って来る。

 

またすぐに出かける必要があるのでこんなものだろうな、俺は机の上に置かれたおにぎりに手を伸ばすのだった……

 

 

 

「そうですか、ノーフェイスが……お疲れ様でした」

 

私を訪ねてきてくれた美神さん達にそう声を掛ける。

 

私が奪われた眼魂のせいで状況が悪くなってしまったのだから、これは私の責任だろう

 

「まぁ過ぎたことを言っても仕方ないわ。残っている眼魂は1つ。サンゾウ眼魂。これだけはなんとしても確保しておきたいのよ」

 

サンゾウ……西遊記の三蔵法師だろう。

 

恐らくとしてだが、その能力は幽霊に対して強い力を持っているだろう

 

「天空寺タケルが不利になるのは確実ですし、横島やアラン達もきっと不利になると思いますわ」

 

神宮寺の言葉に頷く、横島君が変身するウィスプと言うのは調べた結果、一時的に幽霊と同じ存在になる為霊力を用いて戦うのだが、その反面浄化の霊力に弱いという欠点がある

 

「ヒミコ眼魂を使用したノーフェイスの攻撃で、横島達がかなり大ダメージを受けていたのを考えると、サンゾウをノーフェイスに渡す訳にはいかないのですが……」

 

神宮寺がレポート用紙を見ながら、溜息を吐く。私のところを訪ねてきた理由は大体予測がつく

 

「サンゾウ眼魂があるかもしれない場所ですか……残念だけど私には心当たりはないですよ?」

 

私は確かに巫女だけど、神代家の方からそういった物を見つけたという報告は受けてないし……唐巣神父からも聞いてないですよ?と返事を返す。

 

そもそも唐巣神父は今は日本には居ないので見つけている可能性はかなり低いはずだ

 

「神代家でも情報は何も無いのですか?」

 

「全然全く、私が奪われたヒミコくらいよ」

 

奪われたヒミコ眼魂が落ちていたと聞いて出張して回収しに行ったのだから、もう見つけたと言う情報は私に元には入ってきていない

 

「GS協会から柩に協力要請を出して貰えるだけでいいのよ?」

 

私としても柩に協力して貰えるのが一番だと思うのだけど……

 

「今連絡つかないんですよ、柩」

 

電話しても電話は繋がらないし、出かけて行っても屋敷にも居ないし……

 

「それは神宮寺の方が知っているんじゃないの?友達でしょ?」

 

私よりも神宮寺の方が柩に詳しいでしょ?と尋ねると神宮寺は渋い顔をして

 

「琉璃の依頼を受けていると聞きましたが?」

 

「私依頼なんか出してないわよ?どうせめんどくさいからとか言ってふらついているんじゃない?」

 

柩のことだ、今回の事も自身の能力で察知して見物する為にあっちこちであるいているんだと思う

 

「そっか……ありがと、それと悪霊とかの情報があったら連絡して」

 

「すいません、あんまり力に慣れなくて」

 

尋ねて来てもらって申し訳ないが私に協力できることではない、美神さんもそれが判ったのか蛍ちゃんと神宮寺を連れて私の部屋を出て行き

 

「くひ!やー疲れた疲れた」

 

突然聞こえてきた声にぎょっとして振り返ると柩が結界札を破きながら笑っていた

 

「いつからいたの?」

 

全然気がつかなかった、もしかして私が帰ってくる前にこの部屋に隠れてた?

 

「くひひ♪1週間くらい前からだね。ここはいいねー?お風呂も布団もあるし、キッチンもある」

 

上機嫌で笑う柩。絶対未来視の能力を使って見回りとかが来る時間を見て逃げてたわねと思いながら

 

「どうして美神さん達に協力しないの?」

 

私がそう尋ねると柩はソファーの上に座りながら

 

「いやぁ?ボクの体力で妙神山に連れて行かれたら死んでしまうよ」

 

妙神山?まぁ確かにあそこにいくには柩の体力では無理があると思う

 

「そこに三蔵法師が居るの?」

 

「法師って言うかあれは……」

 

そこで言葉を切った柩は何かを考える素振りを見せ

 

「切れている時の唐巣神父に人の話を聞かない横島がプラスされたような……破壊者?」

 

「それ何かの間違いじゃないかしら?」

 

おかしいな?私の思っている三蔵法師のイメージと違いすぎる、でもぶるぶると震えている柩を見ていると嘘じゃないと判る。

 

(横島君達大丈夫かしら?)

 

きっとこれから妙神山に行く事になるであろう横島君達のことを心配しながら

 

「何か飲む?」

 

「甘めの温いココア」

 

とりあえず今私に出来ることして、青い顔をしている柩にココアを入れてあげることにするのだった……完全な不法侵入なんだけど、柩は舞と同じ歳だからかなあ、なんか反応が甘くなっちゃうのよね

 

(元気にしているかしら)

 

近いうちに東京に来るとは言っていたけど……もう何年も会ってない妹の舞の事を思わず考えてしまうのだった……

 

 

 

琉璃が横島達の心配をしている頃。横島達はと言うと

 

「みむむみーむみみみー♪」

 

ぽーん

ぽーん

 

机の上で毛糸で作られたボールを器用にヘディングしながら歌っているチビを見てほんわかしていた……

 

「みーむみみむむいうみー」

 

ぽーん

ぽーん

 

ボールを見ることなく歌いながらボールをヘディングし続けるチビ。実に器用なグレムリンである

 

「みみーむみうー♪」

 

大きくボールを跳ね飛ばして、くるっと回転して尻尾を振り

 

「みーむむうーみーみみー♪」

 

ぽーん

 

「「おお!?」」

 

後ろを向いたまま尻尾でボールを高く打ち上げて

 

「みーむむっ♪」

 

ボールが机の上で跳ねると同時にジャンプしてその上に乗ってポーズ

 

「「「おおーっ!!!」」」

 

思わず拍手が飛び出る。いつの間にこんなことが出来るようになったのだろうか?

 

「シズク殿。チビ殿は悪魔なのでござろう?あれではただのぺっ「みーむー!」ふぉおおお!?」

 

ペットと言われかけたチビが電撃で御成を威嚇する。チビは使い魔なので断じてペットではない、そこは重要だ。どれだけ愛嬌を振りまいていても使い魔は使い魔。ちっちゃくても強いのだ

 

「みむう♪」

 

どうだった?どうだった?と尋ねてくるチビの頭を撫でながら

 

「凄かったぞ~」

 

いつの間にかこんなに凄い曲芸を覚えていたチビを褒める。するとチビは

 

「みむう♪」

 

嬉しそうに鳴いてくるくる回っているチビ。大変愛らしい素振りに思わず笑みが零れてしまう

 

「う、うきゅ?」

 

モグラちゃんはチビの真似をしようとしているのかボールを頭の上でヘディングしようとするが、明後日の方向に飛んでいってしまいしきりに首を傾げている

 

「ほら」

 

毛糸のボールを摘んでモグラちゃんの前に置くと

 

「うーきゅー」

 

前足でボールをはじいて頭の上に持っていくが

 

「うきゅ!?」

 

ぽこっと言う乾いた音を立ててころころと転がっていくボール。

 

うーむ、チビは簡単そうにしていたが、これは実はとんでもなく難しいんじゃ?

 

「みむーみみーう」

 

「う?きゅー」

 

チビがモグラちゃんに何か話しかけて2人で机の上を降りていく、もしかして2人で練習でもするのだろうか?

 

「うむ、横島。チビとモグラちゃんは可愛いな、見ていて和む。グンダリとは大違いだ」

 

おにぎりを頬張りながらアランがそう呟く、1人で俺達の倍は食っている……その底なしの食欲に若干の恐怖を感じながら

 

「グンダリってなんだ?」

 

聞き覚えのない生物の名前が気になり尋ねるとタケルが

 

「んー馬鹿でかい空飛ぶ芋虫?」

 

「何それ怖い」

 

え?空飛ぶしでかいの?俺が驚いているとアランが腕組しながら

 

「電撃と火炎放射なども出来るぞ!」

 

……そんな危険生物がアラン達と一緒に来なくてよかった。俺は心底安堵するのだった……

 

「そろそろ美神さん達が戻る頃だな」

 

時計を見ながら門矢がそう呟く、琉璃さんの所に行っているだけだから確かにそろそろ戻ってくる時間だろう。出迎えの準備をしたほうがいいかな?と思っていると

 

コンコン

 

窓ガラスが叩かれる音が響く、誰だろうか?と皆で振り返ると

 

「お、お前は!?八兵衛!?」

 

「うお!?でかい怪物!?」

 

「なんだこの珍妙な生き物は!?」

 

門矢とアラン達がそう叫ぶ、その気持ちは確かに分かる。八兵衛はぱっと見どう見ても神様には見えないからな

 

「横島君。久しぶりだな、元気そうで何より」

 

縁側に座り込んでそう笑う八兵衛。

 

神様が一体何をしに来たのだろうか?あと出来れば

 

「悪い、今病人が居るから家の中で話しをしてくれるか?」

 

リビングでうーんうーんっと唸っている沖田ちゃんが居るので家の中に入ってくれと言うと

 

「む?それは失礼した」

 

そのまま家の中に入って来ようとする八兵衛だが……

 

「……足を拭け、部屋が汚れる」

 

嫌そうな顔をして雑巾を投げるシズク。

 

毎日綺麗にしているからそのまま土足ではいられるのは嫌だっただろうなあと思いながら

 

「悪いけど足綺麗に拭いてくれな?シズクを怒らせると怖いんだ」

 

「うむ、某もシズク殿を敵に回す勇気はない」

 

縁側に再度座り込んで足袋を綺麗に拭いている八兵衛を見ながら、俺もそんな勇気はないよと返事を返すのだった……

 

 

なんか凄いのが来たな……縁側で足袋を拭いている何かを見ながら俺はそう思うのだった。

 

ムキムキだし、頭なんか巻いているし、上半身裸に見える。

 

夜道で出会ったら絶叫するレベルだと思う。

 

しかしなんと訪ねれば良いのだろうか?横島さんの知り合いみたいだな。

 

なんて訪ねればいいのだろうか?

 

「横島殿?この方は?」

 

俺がどうやって尋ねようか?と悩んでいると御成が横島さんにそう尋ねる。

 

「ああ、こちら韋駄天の八兵衛、神様です」

 

「よろしくな!別の世界の住人よ!」

 

サムズアップする神様。

 

え?これ神様なの?俺と御成は一応寺の人間だからそういうのは信じているほうだけど、これはかなり予想外すぎる

 

「よろしく、私はアランだ」

 

「うむ。よろしく」

 

物怖じしないアランが八兵衛と握手している。

 

敵としての面しか知らなかったけど、アランってかなり天然なんだよなあ

 

(マコト兄ちゃんも苦労しただろうな)

 

眼魔の世界でマコト兄ちゃんとアランは親友だったらしいから、きっと苦労してたんだろうなあと思わずしみじみ思ってしまうのだった

 

「……何故タケル達が別の世界人間だと知っている?」

 

あ、そういえばそうだ。なんで俺達が別の世界の人間だと知っているんだ?シズクさんが言うまで全然疑問に思わなかったけど、確かにおかしい

 

「ふむ。某は韋駄天ゆえに情報には詳しい、そして某がここに来たのは……」

 

八兵衛さんは懐から手紙を机の上に置き

 

「妙神山に横島君が持つ眼魂と同じ物が落ちてきた。それについての話し合いをしたいので早急に妙神山に来て欲しいとの事だ」

 

眼魂で残っているのはサンゾウ眼魂だけ……神社とかに関係するところに現れていると思っていたけど、妙神山ってなんなんだろうか?

 

「それは横島達だけか?俺達も含まれているのか?」

 

門矢さんがそう尋ねると八兵衛さんはうむっと頷き

 

「ヒャクメが君達については調べている。全員で妙神山に来て欲しいとの事だ。美神殿達は九兵衛が伝えに言った、もう時期出発する事になるだろう」

 

ヒャクメ?また知らない名前が出てきたけど、話を聞く限りでは情報収集とかに特化した神様なのかな?

 

「それと増えてしまった九尾の狐についても話があるそうだ」

 

「ワフ?」

 

急に自分に話しかけられた事に驚いているキャット

 

「え?やっぱ増えたの不味い?」

 

横島さんがキャットとタマモを抱っこしながら不安そうに尋ねる

 

「某も詳しく聞いているわけではないが、何かあるそうだ。大事に思っているのならちゃんと話を聞くべきだと思うぞ」

 

格好はおかしいけど神様なんだなあ……凄く真面目な人のようだ。

 

後ろでぼそぼそなんか呟いている門矢さんはあんまり気にしないことにしよう。何か怖いから

 

「……しかしどうやって妙神山に向かう?どれだけ急いでも2~3日は掛かるぞ」

 

「え?」

 

2~3日掛かるってどんな遠いところにあるんだ。

 

それにそれだけ時間が掛かっていてはノーフェイスに襲撃されるほうが早いかもしれない

 

「それについては特別に天界の乗り物を使用する。さ、速く準備するんだ」

 

天界の乗り物かぁ……どんなものなんだろうか?思わず期待してしまう

 

「八兵衛!こっちは着いたぞ!お前も急げ!」

 

家の外から大きな声が聞こえてくる、あれがきっと美神さん達を呼びに行っていたもう1人の韋駄天様なのだろう

 

「横島君急ぎなさいー!」

 

外から俺達を呼ぶ美神さんの声。俺は自分の眼魂を着物の中にしまい、外に向かうのだった……

 

なお天界の乗り物はなんと言えばいいのか判らない、独創的な形をした長細い何かだった。

 

美神さん達もなんともいえない表情をしている中、アランはマイペースな感じでその乗り物を見て

 

「グンダリにそっくりだ」

 

アランのその一言で俺にはその乗り物がグンダリにしか見えなくなってしまうのだった……


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