京都で横島達が弁慶眼魂を手に入れている頃。卑弥呼眼魂を拾っていた琉璃は東京を離れ、地方の神社を回っていた
「そうですか、はい。ありがとうございました」
「いえいえ、何か異常があればご連絡いたします」
ぺこりと頭を下げる初老の神主さんに別れを告げて、手にしている手帳に×印をつける
(ここは大丈夫みたいね)
出張として私は色々な神社を回っていた。前の天竜姫が地上に訪れた時、魔族側の尖兵として利用されていた源義経の事もあるし、GS試験の時に乗り込んできた魔族のアスモデウスの事もある
(んー神社仏閣に祭られている英霊が狙われているっていうのは考えすぎだったかなぁ……)
その二件のことを考えて、もしかしたら各地のそう言った神社に何か仕掛けているのでは?と思って調査に来たんだけど今の所空振りが続いている
(横島君を警戒しているのかなあ……)
義経の魂を浄化して、牛若丸眼魂って言うのを手にしていた。横島君が妖怪とかに好かれるのは知っていたけど、タイガー君の力を借りたとは言え、高位の魔神に操られている英霊の魂を浄化し、機械の力を借りているとは言え神卸しを成功させた……
(こういうところも規格外なのよねえ……)
まさかそんなことまで出来るなんて想像もしてなかった……それは間違いなく、魔族のほうも同じだろう……
(手下を増やすつもりで英霊を操って、敵が増えたら意味が無いと思ったのかしら?)
手帳を閉じて服の中に戻して、ゆっくり石段を降りていく……
「とりあえずの所はもう良いか……」
武勲を挙げて有名な武将や、英霊としても怨霊としても有名な平将門公の所も出発の前見たけどそれらしい形跡は無かったし……1度東京に戻って将門公の所を見てGS協会に戻るとしましょう
「これも横島君に渡さないといけないしね」
出張に行く前に拾った丸い球体。眼魂と言うそれはかの有名な女王卑弥呼の魂が収められた眼魂らしいしね……懐から出した眼魂を見ながら歩いていると
「!?何者!?」
強烈な霊気を感じて、眼魂をポケットの中に戻して後ずさると
「……ソレヲモライにキタ。オトナシクワタセバ……キガイハクワエナイ」
白と赤の身体をし、両手の手の甲に鏡をつけ、顔の無い異形がこちらを見つめていた
(これを?なんで……)
霊力が効きにくい悪霊がいるという話は聞いていた。だけどそれは知性のない物だと聞いている……急に現れた片言とは言え喋る異形を見て
(あの悪霊の目的もこれ……)
横島君達が集めていると聞いていたから、間違いなく東京にも現れるはず……ここはなんとかして逃げないと……
(破魔札と精霊石位しか持って来てないのよねえ……)
精霊石を使えば逃げることは出来ると思っていたけど、効果が薄い悪霊では……どうやってこの場から逃げるか?と考えていると
「タシカニモライウケタ……サルガイイニンゲン」
そう言うと現れたときと同じように消えていく異形。貰い受けた?咄嗟にポケットの中に手を入れる、其処にあったはずの卑弥呼眼魂は無く
「やられた……」
あの異形の何らかの特殊能力で眼魂を奪われたことに気づいた私は思わず天を仰ぐのだった……
京都で弁慶眼魂を手に入れ、1日観光して帰ってきた俺達は今何をしているかと言うと
「美味いか?アラン?」
「ああ、悪くない。本で見たとおりだ」
ご満悦と言う感じでたこ焼きを頬張っているアラン。俺はたこ焼き器の前でたこ焼きを焼いていた……きっかけはと言うとアランが旅館で見つけた雑誌。そこで大阪特集をやっていて、たこ焼きに興味を持ったアラン。売っていたたこ焼きを買うと美神さんが言ったので、俺が家にたこ焼き器があると言ってしまったのがきっかけだ
「意外な特技ね。横島君、美味しいわよ?」
「どうもーまぁ、大阪で生まれた子の大半はたこ焼きを焼けるものっすよ?」
そんな風に喋りながらたこ焼きをひっくり返し続ける。
「そっちはー?」
「もうすぐ出来る」
流石別世界の俺だ。ちゃんとたこ焼きを焼く技能を持っていた門矢に一安心しながら、更にたこ焼きを乗せて
「はい。蛍、それにシズク」
座って待っていた蛍とシズクにたこ焼きの皿を渡すと
「んーいつも作る側だけど、こうして作ってもらうのも悪くないわね」
「……あつ……でも美味しい」
にこにこと笑う蛍とその隣でたこ焼きと格闘しているシズクに苦笑しながら
「と言ってもなぁ?俺が作れるの、たこ焼きとお好み焼きと蕎麦洋食と肉水くらいなもんだぞ?」
THE・大阪のソウルフード。俺が作ろうと思って作れるのはそれくらいだ
「でも美味しいわよ?ここら辺のよりよっぽど」
「……たこも大きいし、味もいい」
普段料理をしている2人に褒められるとなんか照れるなあと思っていると服を引っ張られる
「ん?」
「ぐー」
「みむー」
ぐーちゃんの頭の上にチビが座って、空いた皿を差し出している
「おかわりかー、すぐ用意するな?」
「みむう♪」
「ぐー♪」
チビには中に果物を詰めた、大阪人としてはうーん?と言う代物だが。本人が喜んでいるのでOK、ぐーちゃんには普通にたこ焼きだ
「ふーふー、はい。タマモちゃん」
「コン」
アリスちゃんはタマモとキャットにたこ焼きを冷まして、食べさせて笑顔で頭を撫でている。うんうん、頑張って焼いている意味もあるというものだ
「うふー。うふー」
「うん。モグラちゃんはもう少しゆっくり食べようか?」
うきゅ?と首を傾げるモグラちゃん。口の中がたこ焼きで一杯でまともに鳴き声を上げることが出来ないモグラちゃんに思わず苦笑しながら
「なー?おキヌちゃんもそろそろ機嫌直そうぜ?」
【むすー】
私だけ食べれないんですもん。と言ってさっきから背中に憑いているおキヌちゃんにそう言うが
【ぷい】
あーあ。完全にふてくされている……気が済むまで好きにさせてやるしかないか……
「フミ婆のたこ焼きを思い出すよ、うん、美味しい」
「そうですなータケル殿。アカリ殿達も心配しているでしょうし……早く戻れるといいのですが」
たこ焼きを食べながらそんな話をしているタケルと御成。どうもタケル達の世界にもたこ焼きを焼くのがうまい人がいるんだなあと思いながら、俺はチビ用の果物を入れたたこ焼きをひっくり返すのだった……
「横島。おかわりだ」
「少し休憩しろよ?」
さっきから1人でもりもり食っているアランに思わずそう呟く、服の色が黒なのでぐーちゃんそっくりだぞ?この食いしん坊が……俺は心の中でそう呟くのだった……
「オモチイタシマシタ」
「ご苦労。ノーフェイス、待機していろ」
「リョウカイイタシマシタ」
ノーフェイスの差し出してきた眼魂とやらを手の上に載せて観察する。別の世界ではこれがあればどんな奇跡も出来るらしいが……今こうして手にとって見てみてもそれほど大した力を持っているようには思えない
「駄目そうだな。やはり世界の違いか……」
机の上におかれている青い眼魂と手の中にピンク色の眼魂……これを利用すれば他の魔人の解放に役立つかと思ったが……それほど大した力を感じない
(ノーフェイスをコピーした眼魔とやらもあまり役立っているとは言えんしな……)
先日偶然この場所に流れ着いた眼魔と言う別の世界の悪霊。それを改造し、ノーフェイスを作ったが求めていた能力には程遠い
(だがまぁ使い捨て程度には役立つか……)
この眼魂とやらも1つや2つでは意味が無いのであって、複数集めれば私の求めている力を発揮する可能性もある
「まだ情報が足りない無いか……」
使えないと判断するにはまだ早いかもしれないな……使い魔を通して見ていたが、どうもこの眼魂とやらには人格があり、その人格の協力を得ることが出来ないから、求めている力を発揮していない可能性もある
「セーレ」
「うえー。まだ僕をこき使うの?もー疲れた」
部屋の隅で寝転んでいたセーレが身体を起こして文句を言う。ほーそういう態度を取るわけか……丁度実験したい薬品もあったから実験台になってもらうとするか、机の中からアタッシュケースに収めたガラス瓶を取り出す
「そうか、では新薬の披見体になってくれ。ソロモンを操る薬品を作ってみたんだが、まぁ分霊だ。腕がもげようが、頭が吹っ飛ぼうが……「何をしてるんだい?ガープ!どこにでも行くよ!僕はどこに行けばいいんだい!」そうか?疲れているなら「全然平気さ!」
ふん、最初から素直に私の指示に従っていれば良いものを……
「ノーフェイスを東京に連れて行ってくれ、そこに眼魂を集めている者がいる。それをノーフェイスに回収させろ」
「りょーかい、ノーフェイス、行くよー?」
「リョウカイシマシタ。セーレ様」
ノーフェイスを連れて、研究室を出て行くセーレの背中を見て
「待て、セーレ、ノーフェイス」
面白いことを思いついたので研究室を出て行こうとする2人を呼び止める。
「んー?なーに?ガープ」
欠伸をしながら言うセーレにお前じゃないと言って、机の上の2つの眼魂を掴み上げ
「ノーフェイス、これをお前に預ける。この力を使って他の眼魂を全て集めて来い」
ノーフェイスは私が改造している。何度も私の邪魔をしてくれた人間、横島の力は何度か見ている。英雄や神魔の力をその身に纏う……実に興味深い能力を持っている。無論この時間の特異点でもあることを差し引いても、十分に警戒するには十分な能力を見せている……っと話は逸れたが、ノーフェイスも似たような存在であることは判っている。その眼魂を使えるようになっているはずだ
「……リョウカイシマシタ。カナラズスベテノアイコンヲテニイレテミセマス」
「期待している、行け」
今度こそ2人を送り出し、私は眼魂ではなく、もっと大事な研究を再開することにした
「魔人開放……その為の術式は……」
香港の地に封印されている封印の要と一体化する形で封印されている魔人を開放する準備を調べ始めるのだった……
内密にと言って尋ねてきた神代琉璃の話を聞いて、私は溜息を吐きながら
「実に無様ですわね?それでGS協会会長とは悪い冗談にしか思えませんわ」
「うぐう……気にしてるのに」
机の上で突っ伏している神代琉璃。保管しておくべき物を持ち運んで奪われるという愚かとしか言いようの無いミスをしている。しかしこうして私を訪ねてきたと言う事は
「何か依頼があるのならお早めに、私も暇ではないのですよ」
じろりと睨みながら言うと琉璃は私を見て
「……横島君を自分の事務所に研修に来させるつもりでしょう」
「……卑怯とは思いませんの?」
確かに私は横島忠夫を自分の事務所に研修に来させるつもりだった。その為に破壊や暗殺から手を引いて、正規のルートでGSとして起業するのを決めたのだ
「手伝ってくれないと、研修許可出さないわよ?」
「死ね。腹黒」
まさかここまで準備して、それを妨害されてはかなわない、私は深く溜息を吐きながら死ねと言ってから
「手伝えばいいんでしょう。でも私は横島しか助けませんわ」
「それで良いわよ。やっぱり横島君が絡むと素直になってくれるから助かるわ」
くすくすと笑う神代琉璃。私はギロリと睨みながら
「さっさと帰りなさい、じゃないと本当に焼き殺しますわよ」
私が炎を作り出すとじゃあよろしくーっと言って逃げていく神代琉璃……逃げ足の速いこと……私は神代琉璃を家の中に招きいれたのは失敗だったと思いながら
(横島……どうしてもっと早く……いえ、まだ全然大丈夫ですわ)
もっと早く、そう芦蛍よりも早く出会えたらと思う。そうすれば、きっと横島は今芦蛍に向けている信頼を全て私に向けてくれただろう。そう思うと残念でならない
「仕方ありませんわ、これも依頼。仕事をしっかりこなすのもプロですからね」
貴方に会って、私は自分でも理解できない感情を持つ事になりました。でもそれは決して不快な物ではないです
「だから貴方に死なれては困ります」
この気持ちが何なのか?それを理解するまでは……貴方に死なれては困るんです。私は愛用の魔道書を脇に抱え
「それまでは私が護って差し上げますわ」
そう呟きくえすは屋敷を後にした。この時柩が側に居れば、きっとおかしそうに笑っていただろう。年相応の少女というべき柔らかい雰囲気を纏い、見た人間を魅了するような美しい笑みを浮かべていたのだから……