GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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その4

別の世界からの来訪者と言う天空寺タケルと御成。本当は別の世界の俺も一緒だったんだけど、用があるからと言って1人でどこかに行ってしまった

 

「さっきは本当すいませんでした」

 

向かい合って座ると深々と頭を下げるタケルに俺は手を振りながら

 

「良いって、誰だって勘違いはあるから。それとあんまり謝ると後ろの怖いロリおかんが「……誰がロリおかんかっ!」ホワタぁ!?」よ、横島さん!?横島殿!?」

 

シズクの投げた氷柱が頭に刺さる、タケルと御成の絶叫を聞きながら、今日のシズクは普段に増して不機嫌だなと思いながら

 

「だ、大丈夫ですか!?きゅ、救急車!?」

 

「そ、そうでござるな!早く電話を!」

 

慌てふためいている御成とタケルに苦笑しながら氷柱を引き抜き

 

「大丈夫大丈夫。見た目が派手なだけだから」

 

引き抜くと既に傷は治っている。あれはシズクなりのスキンシップだから問題ない、最近ちょっとバイオレンスになってきているけど、基本的には優しいし、最悪の事態にならなければシズクが治してくれるし特に問題はないんだけど

 

「あわわわ……」

 

でもこの光景に慣れてない子もいるから少し考えて欲しかったな。ルージ君なんか涙目で震えているぞ

 

「「もう治っている!?」」

 

タケルと御成は俺の額を見て声を揃えて絶叫する。うん。なんかこの反応も久しぶりだなと苦笑していると

 

【横島さーん。今日の夕ご飯どうします?すき焼きの予定でしたけど……】

 

「確実に材料足りないわね」

 

キッチンから顔を出すおキヌちゃんと蛍の言葉にうーんっと悩む。今日は給料日なので皆で何か美味しい物を食べようという話になり、寿司かすき焼きと言う話になって話し合いですき焼きになった。一応人数分用意してあったけど、人数が増えたからなあ

 

「あー俺達別に外で食べてきても「アホ」あいだ!?」

 

外で食べてくるというタケルの頭にチョップを叩き込む、大体食事って言うのは大勢で食べるから楽しいんであって誰かを追い出しては何の意味もない

 

「買い物行って来るわー。チビとかの散歩も中途半端だし」

 

がばっと顔を上げるチビとモグラちゃん。さっきは眼魔とか言うのが来て散歩中断になったからなあ、こうして伏せているのを見ていたら不満が合ったのが丸判りだ。尻尾を振っているチビとモグラちゃん、タマモは私は別にと言わんばかりの態度だが、7本の尻尾のうち、一番大きな尻尾が揺れているので期待しているのが良く判る

 

「……じゃあ、これお金。無駄遣いするな」

 

「りょーかい。じゃあ行って来る」

 

シズクから財布を受け取り、俺はチビとモグラちゃんとタマモを連れて、すき焼きの材料の買い足しとチビ達の散歩を兼ねて夕焼けの道を歩き出したのだった……

 

 

 

散歩と買い物に行ってしまった横島さんを見ながら、俺と御成は並んでリビングに座っているんだけど

 

(た、タケル殿。居心地が悪いです)

 

御成。それは俺も思っているから態々言わなくて良いよ。なんせこの家はかなり大きいし、女性ばかりだ。居心地の悪さを感じても仕方ないと思う

 

「こ、この家広いですね」

 

リビングで服を畳んでいた蛍さん、なんと言うかそうあるのが当然みたいで同棲しているのかな?と思いながらにそう尋ねると

 

「そうね。横島のお母さんが色々と考えてくれたみたいよ?態々1回帰って来て、別の家を借りるんじゃなくて買ってくれたし」

 

ど、どうしよう……か、会話が続かない……と言うか家を買うって……もしかして横島さんの家はお金持ちなのだろうか?GS美神は見ていたけど、昔だから正直うろ覚えだ。この人も見たような気がするんだけど、何処で見たかが判らない……もし帰れたら押入れに入っているはずだから探してみても良いかもしれない

 

「おキヌ殿は幽霊なのですよね?」

 

【そうですよ?見れば判るじゃ無いですか?】

 

御成は幽霊って事でおキヌさんと話をしている。自分の知っている幽霊とは違うなあとでも思っているのだろうか?

 

「TV見ても良いですか?シズクさん」

 

「……構わない。だがお菓子を食べながら見るのは机の上だ」

 

ルージ君は子供らしいと言うか、なんと言うか自由だ。もしかして俺だけ浮いている?俺はどうすれば良いんだろうか?と悩んでいると

 

「ただいまーで良いのかな?」

 

別の世界の横島さん……えーと門矢さんが家の中に入ってくる

 

「まぁ一応おかえりなさい?用事は終わったの?」

 

洗濯物をたたみ終わった蛍さんがそう尋ねると、門矢さんは手を合わせて

 

「……ああ。いきなり勝っ手なことしてすまん」

 

「まぁ別に良いけどね。とりあえず奥の部屋を使って良いから、右側がタケルと御成さんね?左側は門矢とルージ君。一応

掃除はしてあるけど、自分達でも少し掃除してね?夕食の前には声をかけるから」

 

その言葉にこれ幸いと俺は門矢さんと一緒に宛がわれた部屋に向かうことにした。どうもここは居心地が悪くて

 

「こ、こうでございましょうか!?」

 

【もうちょっと、こうですよ?】

 

「かあああああッ!!!」

 

【あ、浮きましたよ!御成さん!】

 

「やったああ!」

 

部屋の隅でボールを浮かしているおキヌさんと自分もとなにかの訓練をしている御成は気にしないことにした。と言うかボールを浮かせて居るように見えたのは気のせいだと思う事にしたのだった……とは言え、結局門矢さんと一緒でも何を話せば良いのか判らず、俺は自分と御成に宛がわれた部屋の掃除をする事にしたのだった……

 

 

 

「ちっ……どうした物か……」

 

私は椅子に腰掛けこれからどうするかを考えていた。昨日私の使うゲートと良く似た何かが現れたと思った瞬間。それに吸い込まれ、気がつけば訳の判らない世界だ。しかも

 

(サンゾウ眼魂もグリム眼魂も無い)

 

私の所有していた眼魂も無い……先ほど何故かこの世界にいた眼魔から情報を得ようとしたが、意思疎通も出来ず。何故か天空寺タケルも居る……それに何よりも今大きな問題は

 

「何故身体に戻っている……」

 

眼魔世界の人間は皆眼魂だ。それなのに今私は身体を得ている……これは1日歩き回った所で理解した。そしてその事により、私はかなりの窮地に追い込まれていた。それは……

 

ぐうう……

 

「これが空腹か……久しく忘れていた」

 

空腹で歩く気力もないのでこうしてベンチに腰掛けどうするか考えていると、目の前に何かの気配を感じて顔を上げると

 

「うきゅ♪」

 

「みむぅ♪」

 

「ぬう!?」

 

空飛ぶ毛玉とその毛玉が抱えている毛玉。なんだこれは……!?

 

「こらー!勝手に行くなあ!」

 

慌てて誰かが走ってきて毛玉を抱き抱え、困惑している私を見て

 

「いやあ!すんません!チビとモグラちゃんが迷惑とかかけてないですか?」

 

手を合わせ頭を下げる人間。なんとも騒がしい奴だ……ベンチから立ち上がろうとした瞬間

 

ぐうう……

 

再び私の腹が音を立てる。それを聞いて苦笑している人間……く、屈辱だ。こんなところを人間に見られるなんて……

 

「腹が減っているなら迷惑をかけたお詫びに俺の家で飯食わないか?」

 

「そんな必要は「ぐうう……」……「な?飯食いに来いよ」

 

く、屈辱だ……どうしてこの私が人間に情けを……そのまま背を向けて離れようとするが

 

「ほら、来いって!」

 

「コン!」

 

頭の上の狐と一緒に私の腕を掴む人間。しかもかなり力が強い、いや、私が弱っているのか?なんにせよ振りほどこうとするのだが、全く引き離せない

 

「は、放せ!」

 

空腹のせいかこの人間を振りほどくことも出来ず、私は無理やり引きずられるように歩き出すのだった……

 

「俺は横島な?頭の上はタマモでチビとモグラちゃん。お前は?」

 

「うきゅ」

 

「みーむ」

 

「コン」

 

小動物と一緒に尋ねてくる横島。特に毛玉は私の顔の目の前を飛んで、その円らな眼でじっと私を見つめて来る

 

「……アランだ」

 

ずっと話しかけているので良い加減に苛々して来て名前を名乗る。横島はふーん、外人さんかと呟いて

 

「観光に来たのか?それにしても日本語上手いなあ?」

 

「……観光ではない、探し物をしているのだ」

 

どうもこの人間と居ると調子が狂う……なんなんだこいつは……私が眉を顰めていると

 

「横島?こんな所で何をしているのですか?」

 

「おおう!神宮寺さんじゃないですか!神宮寺さんこそ何をしているんですか?」

 

長い銀髪の女に声を掛けられて顔を崩しながらその女に近づいていく横島。今のうちに離れるべきか……ゆっくりと背を向けようとするが

 

「こっちはなんか探し物をしているらしい外人さんのアランっす」

 

何故私に話を振る!逃げるわけにも行かず、振り返ると銀髪の女は私を見て

 

「また随分と珍しい物を連れてますわね?」

 

「そうっすか?なんか腹減ってるみたいだから連れて来たっすよ。そうだ!神宮寺さんも家に来ません?今日すき焼きするっすよ?」

 

「それでその安い木っ端肉ですか……良いでしょう。私が本物の牛肉と言うものを用意して差し上げますわ。感謝しなさい」

 

胸を張りながら言う銀髪の女、その仕草を見るだけでわかる。この女は相当にプライドが高いのだと……

 

「いやー!マジ助かります!それじゃあ待ってますねー」

 

普通なら若干の嫌悪感を抱いてもおかしくないのだが、なんと横島は能天気に笑いがら銀髪の女に感謝の言葉を言っていた。豪胆と言うのか、なにも考えてないと言うのか……少なくとも私の世界にはいない人間だな……私は横島の事を分析しながら、横島に連れられて、横島の家に来たのだが……

 

「……遅かった……お前何を連れて来た?」

 

顔色の悪い女に出迎えられぎょっとした、なんだあれは……生きているのか……それに人間の気配とはまるで違う……こいつは何者なんだ……?

 

「……なんでもかんでも拾ってくるな」

 

私を犬か何かと言わんばかりのその会話を聞いて、若干眉を顰めながら

 

「誰も連れて来て欲しい等と言っていない」

 

この能天気な男に無理やり連れて来られたのだと言うと、横島は笑いながら

 

「いいから!良いから!ほら来いよ」

 

無理やり私を家の中に引きずり込む横島。そのまま部屋の中に入ると

 

「アラン!?」

 

黒い鍋の前に腰掛けていた天空寺タケル。眼魂を取り出す天空寺タケル……罠か!くっ私としたことが

 

「天空寺タケル!?貴様ぁッ!」

 

横島にそう怒鳴りながら咄嗟にネクロム眼魂に手を伸ばすが、それよりも早く

 

「このドアホがッ!」

 

「へごお!?」

 

天空寺タケルが思いっきり殴られた。何?罠ではないのか……

 

「オウこら。今から飯やって言うのにお前は何をするつもりや?ええ?」

 

「いや、そのですね!?アランはその危険で「危険もくそも無いわ。お前だけ正座しとくか?シズク、氷付けの準備は?」

「出来てる」すいません!許してください!」

 

どうやら横島と言うのは敵ではないようだな……ネクロム眼魂を懐に戻していると

 

「なんの騒ぎだ?」

 

家の奥からもう1人横島が出てきた。全く同じ顔をしている

 

「横島?」

 

思わずそう呟くともう1人の横島は苦笑しながら

 

「門矢だ。よろしくな、アラン」

 

差し出されていた手を見つめて居ると、壁の中から女が顔を見せる

 

「ぬお!?」

 

【あ、すいません、驚かせてしまいましたね。おキヌです】

 

な、ななな……何なんだ……この家は!?どうなっている!?

 

「おーい、アランも座れよ。ほれこっちこっち」

 

横島に呼ばれてその隣に腰掛ける。天空寺タケルの姿が見えないのでこの位置が一番ちょうど良い

 

「それじゃあすき焼きを始めるわよ。ほら、横島」

 

「おう!」

 

黒髪の女と一緒に私の目の前で料理を始める横島を見ながら、この家の事を考える。人間と幽霊や謎の生き物が一緒に暮らす……なんとも不可思議な家だ。肉の焼ける音と何かが焦げる匂いが部屋の中に響き渡る

 

「すき焼きかあ……良いタイミングで来たなあ」

 

「そうですね!門矢さん!俺お腹空きましたよ!」

 

「御成……俺が悪いのかな?」

 

「ま、間が悪かっただけですぞ!気にめさるな……」

 

なんとも騒がしい家だ。私の望む完璧な世界とは程遠い……だが不快ではないな……

 

「ほれ!出来たぞ」

 

私の目の前に肉を置く横島。私は思わず横島の顔を見て

 

「食べて良いのか?」

 

私がそう尋ねると横島は笑いながら

 

「ああ!それはアランの分だからな!全部食えよ?んじゃほれ!ルージ次お前だ」

 

「お願いします!」

 

差し出されたおわんを受け取り、その子供の分を用意する横島。私は目の前に置かれている箸に手を伸ばし肉を摘んで口にする……こうして物を食べるのは何年ぶりだ?ゆっくりと咀嚼して飲み込む

 

「美味い……」

 

久しぶりに食べた食べ物の味に思わずそう呟いた後の私の動きは早かった。目の前の肉と野菜、そしてこんもりと盛られている白米……それを無心で食べていると

 

「良い食べっぷりだな!ほら!追加だ」

 

更に私の更に肉を入れてくれる横島に思わず私は

 

「感謝する」

 

「ははは!大げさだな!ほらほら!折角のすき焼きだ!皆どんどん食えよ!」

 

自分の膝の上に擦り寄ってくる毛玉達にも食事を与えながらそう言う横島。なんと言うか面白い男だな……私は思わず笑み

を零してしまうのだった

 

「感謝しなさい、横島!私が色々と持ってきて差し上げましたわ!」

 

「おおう!神宮寺さん!待って「横島!なんであいつを呼ぶの!?」

 

黒髪の女に首を絞められている横島。な、なんだ!?何故急にこんなことになっているのだ!?

 

「いやあ?そこで会ったから誘ったんですが?「「「誘うなあ!」」」へごお!?」

 

螺旋回転しながら壁に突っ込んだ横島に思わず箸を落としてしまう。

 

「全く暴力的ですわね?あんなヒステリーじゃなくて私にしなさい?横島」

 

しゃがみ込んで優しく横島の頬を撫でながら言う銀髪の女。黒髪と小さい女と幽霊を馬鹿にするような笑みを浮かべているのだが、その顔を見て何故かイゴールを思い出させる。どうして性別も違うのに、あいつを思い出したのだろうか?

 

「「「誰がヒステリーかあ!?」」」

 

あの銀髪の女のせいで一気に騒がしくなる。それは私の求める完璧な世界とは程遠い光景だったのだが

 

(これは悪くない……)

 

よろよろと立ち上がった横島に詰め寄る女達を見て、こんな騒がしい世界も悪くないと私は思うのだった……そして

 

「横島。お代わりだ」

 

「おう、一杯食え。でも出来れば俺も物を食べる時間が欲しいな」

 

「考えておこう」

 

私の世話と足元の小動物の世話で物を食べることが出来てない横島が切なそうに呟く。私はその言葉に考えておこうと返事を返し、横島から受け取った3杯目の白米を口に運ぶのだった……

 

 

なおその光景を見ていた門矢はと言うと

 

(すき焼きかあ……俺こんなの食った記憶も、こんな家に住んだ記憶もねえぞ……)

 

自分とは余りに違う、この世界の横島の生活を目の当たりにして、目から塩水を流していたりするのだった……

 


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