GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

164 / 205
どうも混沌の魔法使いです。今回は話はガープ対策をする美神達とガープとアシュタロス。そして横島の話にしようと思います。本格的に動き出すのが次回からになるので今回は少し内容が薄いかもしれないですが、どうか今回の更新もよろしくお願いします


その13

 

 

リポート25 GS試験本戦 ~終焉の前奏曲~その13

 

美神さんだけでは無く、小竜姫様や聖奈さんにも集まって貰った理由がある。それはとても深刻な問題だったからだ

 

「……とても言いにくいですが、試験をこれ以上続行するのは不可能となりました」

 

ガープが最後まで試験を続けろと脅してきたのは知っている、それでも試験を続行できない理由が出来てしまった

 

「その理由ってなんなの?」

 

美神さんの問いかけに私は思わずイラッとした。でも美神さんはそれを知らないから怒鳴るわけにも行かない、深呼吸を何回か繰り返してから

 

「美神さん。貴方の所の弟子が試験会場を完全に破壊してくれたからです」

 

あっと言う顔をする美神さん。修復する機材などもちゃんと準備しておいた、軽い破壊なら直ぐに修復出来るだけの準備もした。シズクが要求する山の湧き水も多少難しいがちゃんと用意した。でもまさか完全に基礎まで破壊されるととても修復なんて出来ない

 

「流石にのー。基礎まで破壊されると修理が間に合わんぞ」

 

「横島さんの力の上昇が想定の範囲を超えていましたしね」

 

ドクターカオスとマリアさんが疲れたように呟く。今まで何回も修復作業をして、こっちのスタッフと協力して陰念と横島君の試合の後の完全に破壊された試験会場も修復してくれたから、流石に疲労困憊と言う様子で呟く

 

「とりあえず、少しでも試合が出来るように修復はしますけど、間違いなく途中で中断になると思います。それだけ凄い戦いだったんですよ」

 

とてもGS試験の受験生同士の戦いとは思えないほどの霊力を測定したし、正直横島君か伊達のどちらか死んでいてもおかしくなかったので、両名とも無事で本当に良かったと思う

 

「確かにあの戦いは凄かったですからね。観客席のほうに被害は?」

 

小竜姫様の問いかけに手元にある資料に一度目を通して

 

「負傷者1名です。蛍さんの次の対戦相手の予定だった兵部幽介が伊達の投げ捨てた尻尾に絡まり、右手と左足を骨折しました」

 

間接的過ぎる負傷内容に美神さん達が思わず苦笑する。正直あれだけの霊力のぶつかり合いだから結界が壊れるかもしれないと思っていたけど、負傷者1名なら御の字だろう、流石ドクターカオスと聖奈さんのルーン魔術だ

 

「ただいまー。カオス、姉さん駄目だ。多分だけど基礎の破壊が地下まで伸びてる、もっと詳しく調査しないと確実な事は言えないけど……下手するとここら辺一帯陥没するぞ」

 

……調査をしてくれていたテレサさんの言葉を聞いて、私達の視線が美神さんに集中する

 

「わ、私は悪くないわよ!?」

 

このままだと自分の責任にされると思ったのか美神さんがそう怒鳴る。まぁ確かに今回の事は美神さんの責任には出来ない。むしろ責任を追及するなら……私の視線が小竜姫様の方に向けられる。横島君に竜気を授けた小竜姫様の責任だと思う

 

「えっと……保険程度のつもりだったんですよ?ただ横島さんの竜気へと適合率が高すぎたと言いますか……流石に私もまさかここまでとは思って無かったですし……」

 

小竜姫様がそう弁明してくる。とはいえ、今は責任を追及している場合じゃない。試験を中断せざるを得ない今の状況をどうするかだ

 

「もしガープが試験会場にいるとすると、今の試験会場の惨状を見ている可能性もあるね」

 

唐巣神父がそう呟く、確かにその可能性もある。そうなると試験終了と同時に何かを仕掛けるつもりだったのが、それを繰り上げて行動してくる可能性もある

 

「そう言えばビュレトはどうしたワケ?」

 

エミさんがそう尋ねてくる。確かに今この場に1番いないといけないのはカズマと名乗っているビュレトさんだろう。同じソロモンの魔神で1番の戦力なのだから……私が説明しようとする前に聖奈さんが口を開いた

 

「周囲の結界を一部でも解除できないかと結界の基点を探しています。一般人も多いですから、人質を減らさないと何をするか判らないとの事ですから」

 

陰念と伊達の事を見ている。もし一般人が同じような事をされたとして2人のように生き残れるか?や死傷者が出る可能性もある。周囲の結界を解除するのは最も優先しなければならないことだ

 

「ふむ、ワシも手伝えたら良かったんじゃが……」

 

「ドクターカオスはこの場にいてください、もしかすると貴方を攫う事を目的としている可能性もあるのですから」

 

結界を張ればそれを解除できる面子が動く、ドクターカオスは錬金術を極めた人。もしかするとGS試験に伊達や陰念を送り込んだのはドクターカオスを攫うためと言う可能性もある。だから自由に動き回られると危ない

 

「優秀な人材を攫う。それがガープの目的だと推測したんですか?琉璃さん?」

 

蛍ちゃんがそう尋ねてくる、柩の予知ではGS試験はおまけ程度に考えていると言っていた。つまり何か本命があると考えて、思いついたのはそれしかない。優秀な人材を攫い戦力とする、伊達と陰念のあの異常な強さを見ればそれを目的としている可能性は高いと言えるだろう

 

「無論それだけを目的としていると決め付けるのは早計だと思うが、可能性としてはそれが一番高いと思う。だがそれと同じくらい可能性のある事としてだが……力のあるGSを纏めて試験会場に集め抹殺する。それも目的としている場合もある」

 

ソロモンの魔神。人間が勝てる相手ではないということも考慮して、態々人間界に来てそんな事をする必要があるか?と言う疑問もあるが、あんまり動き回られると目障りと言うことで殺しにくる可能性もある。今は全てが可能性だが、備えることに越したことは無い

 

「……攫う……横島も攫われるかもしれないな」

 

シズクがぼそりと呟く、確かに攫われる可能性として横島君の名前は1番最初に出るだろう。小竜姫様と聖奈さんが結界を用意してくれたとは言え、シズクや美神さんも医務室から遠ざけたのは間違いだったかもしれない

 

「マリアさんとテレサさん、悪いですが横島君の護衛に医務室に向かって貰えますか?」

 

本当は唐巣神父とかが護衛してくれる方が良いと思うんだけど、戦力として数えたいので護衛には回したくない。なのでマリアさんとテレサさんに護衛に向かってもらうようにお願いすると

 

「判りました、装備を整えて直ぐに向かいます」

 

「姉さん。私精霊石で出来たシャルワールが良い、あれ使いやすいし」

 

「では私は精霊石を加工した銃弾を撃てるマグナムにしますか」

 

なんかすっごい物騒な話をしているマリアさんとテレサさんに絶句していると美神さんが

 

「マリアとテレサだけに任せるのも悪いわね、悪いけどシズクも先に戻ってくれる?ちょっとこの話し合いは途中で抜けられそうに無いわ」

 

美神さんの言葉に返事も返すことなく、その姿を水に変えて消えるシズク。よっぽど横島君が大事なのねと小さく苦笑する。しかし笑っている余裕なんて当然無いので直ぐに意識を切り替える

 

「白竜会の鎌田選手と蛍ちゃんが次の試合になるけど、試合は当然最後まで出来ないわ。会場がどこまで持つか判らないからね、一応GS協会からの発表として、試合の途中で中断して後日再試合って流れには持って行くけど、そこでなにかあるかもしれないから」

 

トランクケースを取り出して机の上に置く。急に用意したものだけど、ギリギリで間に合ってくれて良かった。タイガー君とピート君に貸し与えていた精霊石は砕けて使い物にならなかったから、厄珍に頼んで用意させた今日本にある中でもっとも純度の高い精霊石。鎌田選手も魔装術を使うことを考えたら、こう言うもので護りを固めたほうが良いと思ったのだ

 

「これを今からドクターカオスに加工して貰います。それから唐巣神父に簡易ですが聖句。エミさんに呪術的な防御を上げるペイント。出来る限りの防衛手段を蛍ちゃんに施します」

 

「え……よ、横島の時とぜんぜん違うんですけど……」

 

若干引いた表情をしている蛍ちゃん。まぁそれは言われると思っていたけど、横島君の時とは状況が違う。本当なら横島君にも同じ防御を施したい所だったけど、意識不明だったりしていたので出来なかったという面もある、それに多分だけど鎌田選手が伊達達のグループのリーダーと見て間違いないだろう。だから出来る限りの防御を施す必要がある

 

「確かにその通りね、蛍ちゃん。琉璃に言われた通りにして」

 

ええーっ!?と嘆く蛍ちゃんに我慢しなさいともう1度声を掛けてから

 

「じゃ、ドクターカオスと唐巣神父は少し外に出ていてください、時間の掛かるボデイペイントからやるので」

 

年寄りと聖職者とは言え、男は男。ドクターカオスと唐巣神父に一時的に部屋から出て貰って

 

「じゃ。エミさん。お願いします」

 

「OK、任されたワケ、じゃ、蛍服脱いで背中をこっちに向けるワケ」

 

若干渋る蛍ちゃんを美神さんが説得し、やっと服を脱いだ蛍ちゃんの背中にエミさんがボデイペイントを始めたのを確認してから椅子に腰掛け

 

「美神さん、相手がどう動いてくると思います?」

 

「並みの悪霊とかなら判るけど、流石にソロモンクラスとなると予想なんて付けようも無いわね。とりあえずさっきの話し合いの通り攫うのと、私達を全滅させるの両方で備えたほうが良いと思うわ」

 

「そうですね。ガープは魔界正規軍の追撃をことごとく退けています。対策はいくらあっても足りませんわ」

 

「それに試合会場のあちこちにいる使い魔も厄介ですね。私達の動きを監視していると見て間違いないですし……」

 

せめてどっちか1つなら対策も練りやすいんだけどねと呟く美神さんにそうですねと返事を返し、時間ギリギリまで4人で作戦会議を続けるのだった

 

「く、くすぐったいですよ!?エミさん!」

 

「我慢するワケ!ここでずれると全部台無しになるワケッ!」

 

真面目な話をしている場には相応しくない声が聞こえるけど、あんまり気にしない方向で行きましょうか?と私は思わず苦笑するのだった……

 

 

 

凄まじい破壊の後を残している試合会場を見下ろす。最後までGS試験を続けろと脅しはした物のこの有様ではGS試験を続けるのは不可能だろう

 

「アシュタロス。GS試験は続行できると思うか?」

 

一応アシュタロスにも問いかけてみる。多分私と同じ結論を出すと思うが、念の為に尋ねてみる

 

「多分まともな試合は無理だろうな。お前が脅しているから一応試合をするかもしれんが、直ぐに試合会場の不備を理由に中断するかもしれないな」

 

まぁ、そこら辺の対応が無難な所だろう……余興を見て楽しもうと思っていたのにとんだ興醒めだ……

 

「そう面白くないという顔をするな、なかなか楽しめたのではないのか?」

 

「む、それはそうだが……」

 

アシュタロスにそう窘められる。普通の人間では到底倒せる筈も無いほどに強化した陰念と伊達を倒した横島忠夫の戦いは正直面白い見世物だった。その時に使った力も含めて私の理解を超えていた

 

(特異点としての力を見るつもりだったが……ああ。途中から忘れていたな)

 

途中から純粋に試合を見る事を楽しんでいた……ああ、認めよう、これほどまでに面白い展開が続いていたからこそ、試合を行わないにしろ、中断するにしろつまらないと思ったのだと

 

「それで正直な話1つ聞きたいことがある。このまま分かれる前にな」

 

今回は協力してくれたが、やはりアシュタロスは私達とは違う方法で天界と戦うつもりか……出来ることならば共に来て欲しかった所だが、無理強いも出来んか……

 

「なんだ?何を問う?」

 

「あの鎌田とか言う男はどうするつもりなんだ?」

 

その質問に少しばかり拍子抜けした。予想では亜空間か、それとも魔人か聖遺物の事を尋ねられると思っていたのに……

 

「無論優秀な人材だ。このまま働いてくれると言うのならば、魔族へと転生させることも視野に入れている」

 

無論裏切るなら殺すがなと笑う。向こうが腹に一物抱えていることは判っている。人間の考えていることを読めなくて何が魔神だ、取り分け私は人の心理を読むことに長けている。向こうが何を考えているのかは判っているつもりだ

 

「そしてその上で泳がせるか、趣味が悪いな」

 

私の反応を見て、向こうが裏切って反抗することを判っているのにあえて自由にさせていることに気づいたアシュタロスがそう呟く

 

「ははは、人間は暇つぶしの良い道具になる。そして魔族へと転生させる場合も深い絶望や恐怖があればより強く転生する、その為に泳がしているのだよ、それで私への問いかけは終わりか?」

 

良い気分だからもう少し答えてもいいぞ?と言うとアシュタロスは小さく首を振り

 

「そこまで甘えるつもりは無いさ。お互いの目的は同じ、しかし進む道は異なる。また道が重なった時にでも聞くさ」

 

そう笑うアシュタロスにそれもそうだなと笑い返し、最後に飲もうと思っていたワインの封を切り

 

「飲もうアシュタロス。もうじき私も動かなければならない、となるともう酒を酌み交わすのは今この時しかない」

 

横島忠夫の戦力は見た。今の人間界の戦力も見た。となると私の最期の目的を後は成し遂げるだけ、それをするには絶対にビュレトが邪魔となる、そして私とアシュタロスが協力体制にあったという事をビュレトに知られる訳には行かない、このまま分かれる前に飲もうとグラスを向けるとアシュタロスはやれやれという素振りをしながらも穏やかに笑いながら

 

「やれやれ、そこまで言うなら付き合おう。酒が苦手なお前にそこまで勧められてまで断りはしないさ」

 

再び椅子に腰掛けたアシュタロスに感謝すると頭を下げ、ワイングラスを私とアシュタロスの前に置く。アシュタロスの皮肉に笑いながら

 

「私ほど酒の好きな魔神はいないと思うが?」

 

「ふ、皮肉だよ。判っているだろうに」

 

こんな冗談を交わすことが出来る仲間は私にはいない、アスモデウスは堅物だし、セーレは復活したばかりで自分があやふやだ。今私のいる陣営で本当の意味で私を理解してくれる仲間はいない、昔はビュレトが私の話を良く聞き、そして理解してくれようと努力していたが、今は袂を分かちお互いに敵対している。それは寂しくもあるが、仕方の無い事だと理解している。私のそんな感傷を感じ取ったのかアシュタロスが笑いながらグラスをこちらに向けながら

 

「さて、何に乾杯する?ガープ」

 

そうだな……何に乾杯するとするか……少し考えてから、これしかないと判断した。ちょっとした意趣返しのようなものだ

 

「いつか私達とお前の道が重なる事を願って」

 

同じ目的を掲げているのだから、今は道を違えたとしてもいつかはその道は重なるだろう。それがいつかは判らないが、いつかその道が重なると私は信じている。アシュタロスは驚いたように目を見開いてから、小さく笑い

 

「「いつか私達とお前の道が重なる事を願って……乾杯ッ!」」

 

お互いのワイングラスを軽く打ち付けあい、ワインを煽った所で館内放送が入る

 

『これよりGS試験最終戦を行います。芦蛍選手、鎌田勘九郎選手!試合会場へ!』

 

ほう、試合を強行するか……それとも試合会場で中止の発表をするか、どっちにせよ構わないか

 

(既に罠は仕掛けたからな)

 

私の本来の目的を遂行する為の仕掛けは施してある。後はそれをいいタイミングで発動するだけだ

 

「アシュタロス。火角結界の準備は終わってるな?」

 

「ああ、ほら」

 

差し出されたボタンを受け取る。これを押せば起動するというわけか……私の知っている物とは違うが、そこはアシュタロスがアレンジしているという訳か

 

「判っていると思うが起爆が失敗する可能性はあるからな?」

 

「ああ。問題ない、最悪離脱するまでの時間稼ぎになれば良い」

 

火角結界はその威力の大きさが魅力だが、その分繊細なので妨害される可能性も高い。最悪目的を遂行した上で離脱する時間稼ぎになれば良い。試合会場に入ってきた2人を見ながら、最後の余興を楽しむかと呟き再びワインをグラスに注ぐのだった……

 

 

 

俺が目を覚ますとおキヌちゃんがシズクに説教されていて、マリアとテレサが武器を構えていて、思わず何事っ!?と叫んでしまった。まぁ事情を聞いて直ぐに落ち着いたが……俺が封印したと思っていた眼魂が暴れだし、チビ達が頑張って応戦していたと……最終的に誰かに封印されたようだ。と……それって封印してくれたの神宮寺さんなんじゃ?と思ったけど、シズクは神宮寺さんを嫌っているので口にはしなかったが……やっぱり助けてくれたんだな、神宮寺さんはやっぱり良い人だ。マリアとテレサが武装しているのは俺の護衛の為らしい

 

「大丈夫です。横島さんは私とテレサが護ります」

 

「最近剣の練習してるから結構使いこなせるんだ。信用してくれて良いよ」

 

笑顔で言われてありがとうと返事を返した物のちょっと怖かった。特にテレサの三日月の形状をした剣が……

 

【ううう、あの眼魂めちゃくちゃ強かったんですよ……】

 

「……それでも逃走くらいしろ馬鹿が」

 

いや、シズクさんそれは無茶だというものだと思いますよ?おキヌちゃんは幽霊だし、眼魂がそんなに強いなんて思わないだろうし、シズクと違ってあくまで普通の幽霊なのだから出来ることと出来ないことはあると思う

 

「みーむう?みみむー?」

 

「うきゅーう?」

 

「クウーン」

 

擦り寄ってくるチビ達を抱っこしながら、護ってくれてありがとうなあと呟き、ベッドの横の机の上に畳んであった心眼を額に巻く。やっぱりバンダナが無いと落ち着かないんだよなと思っていると

 

【横島!私を畳むな!意識が途絶える!】

 

「え、あ、ごめん」

 

どうも畳んだら駄目だったようで怒鳴る心眼にごめんと謝るのだった。医務室で見た目ロリに怒られる巫女さんの幽霊とバンダナに怒られる俺、となんとも訳の判らない光景だ。思わず苦笑していると

 

【横島!聞いているのか!】

 

「聞いてる!ちゃんと聞いてるって!」

 

心眼の怒声に思わず背筋を伸ばす、声のトーンが女性だから怒られるとビクッとしてしまうなと思っていると

 

『これよりGS試験最終戦を行います。芦蛍選手、鎌田勘九郎選手!試合会場へ!』

 

最後の試合の案内放送が入る。俺はまだ怒ってる心眼にごめんと謝りながら

 

「次蛍の試合なんだろ?俺見に行きたい」

 

テレサとマリア、それにシズクの表情が渋い物になる。特にシズクの顔が苦虫を噛み潰したような顔になっている

 

「……さっきも説明したが、危険な魔族がこの試合会場にいる。お前も狙われる可能性が高いから、ここで籠城しているほうが安全なんだ。判るか?」

 

うん、それは判る、シズクやマリアやテレサが心配してくれるのも判るけど……

 

(俺ってそこまで価値無いだろ?)

 

霊力は使いこなせず暴走気味。ベルトを使えば倒れる、んで頭も悪い。正直言って俺を攫うメリットがあるようには思えない。むしろデメリットしかないんじゃないか?と思う

 

「頼むよ。蛍の応援をしたいんだ」

 

手を合わせて頭を下げると、シズクが面白く無さそうな顔をしながら少し待てと言ってマリアとテレサと何かを話し合っている。その話が終わるまでタマモを抱き抱えてもふもふしていると

 

「……判った。観客席へ向かおう」

 

これで蛍の応援が出来ると思ってベッドから立ち上がると

 

「え、えっと?テレサさん?マリアさん?」

 

すっと俺の左右に立つマリアとテレサに思わず敬語が出てしまう。なんか花みたいな匂いがして落ち着かない

 

「護衛ですから、隣に立たせて貰います」

 

ええ……俺の護衛なんて必要ないって……心配してくれるのは判るけどさ……

 

「っとと!?」

 

急に背中に重みを感じて驚きながら背中を見るとシズクがおぶさっている、ええ……これどういう状況やねん

 

「……行くぞ、横島」

 

負ぶさっている状態でそんなこと言われてもなぁ……って言うかなんでおぶさるの?と俺が首を傾げていると

 

「……早く行かないと蛍の試合を見れないぞ?」

 

う、それは困る。まぁシズクをおんぶするのはいつもの事なのでそこまで気にすること無いか……後は部屋の隅で

 

【いいなーいいなー。なんで私だけ仲間はずれなんですか……】

 

なんかいじけているおキヌちゃんを何とかするだけだ

 

「おキヌちゃんも行こうぜ、蛍を応援しよう」

 

【ぷう】

 

頬を膨らませて私怒っていますと言わんばかりの態度を取っているおキヌちゃんに苦笑しながら

 

「ほら、行こうぜ」

 

背中はシズクがおぶさっているので背中に取り憑いてとは言えないので、頭の上のチビとモグラちゃんをGジャンの胸ポケットの中に入れてから

 

「頭に憑いて良いからさ」

 

もう空いてる所と言えば頭か正面しかないので、自動的に頭の上に取り憑いて良いよと言うと

 

【ほ、本当にいいんですね!?後で駄目とか言っても離れませんからね!】

 

頭の上に取り憑いたおキヌちゃん。俺が予想外だったのは頭の上に感じる柔らかい感触で、それはやっぱりおキヌちゃんの胸が頭に当たっていると言う事で思わず鼻を押さえる。こ、これはいかん……今回だけの特別処置と言うことで今後は絶対にやらないようにしよう。背中のシズクから冷たい気配を感じるし、マリアの目線も鋭い、テレサだけは首を傾げてるだけだけど……これは非常に宜しくない状態だと思う。気を抜くと鼻血が噴出しそうだ

 

「じゃ、いこかー」

 

出来るだけ平然とするつもりだったのに、俺の口から飛び出したのは関西弁で自分が動揺しているのが判る。俺は心の中で念仏を唱えながら医務室を後にし、観客席へ向かうのだが、すれ違う人の視線が鋭かったのは確実に気のせいでは無いと思うのだった……

 

「美神さん。試合はどんな感じですか?」

 

観客席に上がってくると直ぐに美神さんを見つける事が出来た。エミさんと唐巣神父の姿も見える、やっぱり美神さん達と一緒に試合を見ようと思ってそっちに向かいそう声を掛けると

 

「横島君!?なんでここにいるの!?」

 

「いや、蛍の応援に……やっぱり不味かったですか?」

 

シズクやマリア達にも止められたけどどうしても応援したくてと言うと、唐巣神父が仲裁に入ってくれた

 

「美神君。怒るのは酷だよ。横島君の気持ちも考えてあげるといい」

 

自分の師匠に言われたのが利いたのか、溜息を吐いた美神さんは自分が首から下げていたペンダントを俺に手渡して

 

「精霊石のペンダントよ。お守りとして持ってなさい、貴方も狙われている可能性があるんだからね」

 

うーん……そう言われても実感が無いんだけどなあと思いながら渡されたペンダントを首から下げて観客席に腰掛ける

 

「せいっ!」

 

「くっ!なかなかやるわね」

 

蛍が優勢なのか、鎌田と言う男?いやオカマはどんどん追い詰められている。このまま行けば蛍の勝ちだと思う。ただ美神さんやエミさんは俺とは違う感じ方をしていたようで

 

「エミ、あれってもしかして……」

 

「令子。オタクもそう思うワケ?」

 

なんか難しい顔をして話をしている、本当なら声を出して応援したい所だけど……状況があんまりよくないように見える

 

「「……」」

 

お互いに神通棍で鍔迫り合いをしているんだが、その距離がかなり近い。多分お互いにお互いを吹き飛ばそうとしているんだけど、力が互角か、蛍が上手く力を逃がしているから完全に拮抗しているだと思う

 

「くっ!?」

 

だいぶ長いこと鍔迫り合いをしていたのだが、蛍が横に神通棍を振るうと鎌田が大きく跳んで距離を取る、片膝を突いているのと、蛍の手に破魔札があるのを見て、破魔札の一撃を食らって吹き飛んだのだと思い

 

「蛍、頑張れーッ!……あいたたた」

 

大声を出すと身体に響く、思わずいたたたと呻くとシズクが傍に来て

 

「……大人しくしてろ、馬鹿」

 

すまんと謝りながら試合会場に視線を戻す、蛍は一瞬驚いた顔をしたが、直ぐに真剣な顔をして鎌田を油断無く見つめている。だけど立ち上がる気配が無い所を見ると相当なダメージを受けているのだと思う

 

「このまま行けば、蛍の勝ちなんじゃないですか?」

 

俺が試合を見たまんまに言うとエミさんが俺を指差して

 

「おたくが戦った陰念と伊達と同じ所のGSなワケ、このまま終わると思う?」

 

あ、魔装術だっけ?そんな鎧を展開する術の事を思い出すと

 

「ここからは本気で行くわよッ!」

 

鎌田がそう叫び、その姿を変えていく。陰念や伊達とは違い、シャープな姿をしている。こんな風に言いたくは無いが、女性的なシルエットだと思う。そして手にしていた神通棍は形状を変えて巨大な大剣へと姿を変えていた

 

「魔装術は極めるとここまで美しくなるのよ、さぁ。覚悟して貰いましょうか」

 

鎌田がそう笑って剣を構えた瞬間。小竜姫様と聖奈さんが同時に試合会場に降り立ち

 

「この試合ここまで!鎌田勘九郎!大人しくして投降するのならば、痛い目を見る事はありませんよ」

 

「神界・魔界正規軍共に貴方の身の安全を保障しましょう。さ、返答はいかに?」

 

え?魔界正規軍?……聖奈さん人間じゃないの?思わず美神さんを見ると小さく頷く、まじか……全然気づかなかった……小竜姫様と聖奈さんの登場に観客席がざわめいたその瞬間キンっと言う乾いた音を立てて試験会場全体が何かに包み込まれた。そして周りの人達が力なく倒れるのが見えた……い、一体何が起きているんだ!?俺は完全に混乱していたが、美神さん達は素早く行動に出ていた

 

「やっぱり!唐巣先生!」

 

「判ってる!」

 

唐巣神父が何かの呪文を唱えると同時に俺達の周りが白い光に包まれる、これってもしかして結界って奴かな?いつも見るやつと全然違うけど、多分そうなんだよな?

 

「御機嫌よう。人間の諸君……そして小竜姫、ブリュンヒルデ」

 

突然聞こえてきた声に驚き、声の聞こえた方向を見て、更に俺は驚いた。そこには空中を歩く青年の姿があったから……

 

「う、浮いてる……」

 

空中を歩きながら片眼鏡をつけた青年がゆっくりと試合会場を見下ろし、ニヤリと冷酷そうな笑みを浮かべ、小竜姫様達に向かって巨大な光球を打ち出す、小竜姫様がそれを切り裂いた瞬間。凄まじい爆発を起こす

 

「っきゃあっ!?」

 

「くっ!?これは!?」

 

小竜姫様と聖奈さんが悲鳴を上げて試合会場の壁に叩きつけられ、崩れ落ちるのが見えた……嘘だろ!?小竜姫様が一撃で!?目の前の光景に驚いていると片眼鏡をつけた男は大げさな素振りで頭を下げ

 

「聞こえてはいないと思うが、初めまして、そしてさようなら。私はソロモン72柱序列33番ガープ……君達に死を与えに来た」

 

俺達の目の前でその青年の姿は一瞬でその姿は金色の異形と化すのだった……

 

そしてこれが後に魔神襲来と呼ばれ、天界・人間界・魔界その全てを巻き込む戦いの始まりとなるのだった……

 

 

リポート25 GS試験本戦 ~終焉の前奏曲~その14へ続く

 

 




次回は勘九郎と蛍の戦いがどうなっていたのか、それを少し書いてからガープの視点で話を書いて行こうと思っています。

後2話で第一部のメインは完結となります、後2話全力で頑張って行きます!それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。