GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回も雪之丞と横島戦を書いて行こうと思います。でもシリアスじゃなくてギャグ系で書いてみたいと思います。ガープの洗脳を解除されて素に戻った雪之丞と横島ですからね、面白おかしい感じで真面目な戦闘も書いてみたいと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その11

 

 

リポート25 GS試験本戦 ~終焉の前奏曲~その11

 

火角結界の設置を終えてガープが待っている結界の中に戻ると

 

「……」

 

「どうした?」

 

馬鹿みたいに大口を開けて、モノクルも外れて足元に転がっているガープを見て、どうしたんだ?と尋ねるとガープは返事を返さず試合会場を指差す。一体なんだって言うんだ?蛍とかに見つからないように隠密で行動していたから横島君と伊達君の試合がどうなったか見てないんだけどなあ……よっぽど衝撃的なことでもあったのか?と思いながら試合会場を見ると

 

「母母母母母母母母母(ははははははは)ッ!!!行くぞッ!!!横島ぁッ!!!」

 

なんかかなりハイになっている伊達君が高笑いしていた。はははって笑ってるみたいだけど母と叫んでいるようにも聞こえる

 

「また魔族化しかけたんだ、良い戦力になると思っていたら……急にこんなことに……何故か私の洗脳も解除されているし……しかも小竜姫達の動きを封じていた蝙蝠も霊力の放出で消え去ってしまった」

 

信じられないと呟いているガープ。それはそうだよなあ……自分の洗脳が解除されたと言うのはガープにしては相当なショックだろう……でも私からすればガープが手にするはずの戦力が少なくなった事でかなり安心しているというところもあるんだけどね……しかし横島君の潜在霊力のおかげでガープの蝙蝠が消えたのは良かった。これで皆動きやすくなるだろうからね

 

「まぁそう言う事もあるさ、戦力になりそうなら後でまた洗脳でも何でもすれば良い。今はこの試合を見ようじゃないか」

 

いつの間にか横島君も霊力の篭手を装備しているし、さっきまでのつまらない試合と言う状況にはならないと思う

 

「それもそうだな。私の洗脳を解除したのがあの男の実力なのか、横島の特異点としての力なのか……それを見極めるのも悪くは無いか……イレギュラーはあるものなのだからな」

 

横島君に興味を持たせるのは正直危険だと思うが、このままもうどうでも良いと判断され使い魔を起爆されても困る。やれやれ損な役回りをしてるなあと苦笑しながら私は試合会場に視線を向けるのだった……

 

 

 

ビュレト様とガープの使い魔の処理をしていたのですが、焼け石に水と言う結論になり。これ以上魔力と体力を消耗するわけには行かないと1度休憩する事にし、試合を見ようと階段を上がってきた私が見たのは予想外の光景だった

 

「なろっ!!これでも喰らえッ!!」

 

「おっ!面白い攻撃だなッ!!母母母ッ!!どんどん来いやぁッ!!!」

 

ガープに洗脳されていた筈の伊達雪之丞の目に光が戻り、楽しそうに笑いながら横島と試合をしていたのだが、その横島の戦い方が異常だった

 

(あれは魔装術……いえ、違う……あれは……一体)

 

横島の右手から肩までを覆っている霊力の篭手。ぱっと見た時は魔装術と思ったが、魔装術ではない……あれは純粋に霊力を固形化して武器兼防具として使っているとでも言うのでしょうか

 

「はは、面白いな。あいつ本当に!どうやったらあんな動きが出来るんだ」

 

背中から霊力を放出して滑る様に移動している。私達から見ればスピードはそんなにあるわけではないですが、人間同士と考えるとあの機動力は中々に厄介でしょう

 

「必殺思いつきッ!サイキックチャクラムッ!!!」

 

篭手から霊力の糸で繋がれた8角形の板が飛び出す、それは試合会場の床を切り裂きながら伊達に迫る

 

「おおおっ!?っこの野郎ッ!危ねえ攻撃してくれるじゃっ!?」

 

避けた伊達の背後から糸に引かれて戻ってきた霊力の板が迫る。咄嗟に伊達がしゃがんでそれを回避し

 

「うおおおっ!!あぶねーっ!?!?」

 

横島も試合会場に寝転がりその板を回避する。コントロールが途切れたのか結界に突き刺さり爆発する

 

「……思いつきでやるもんじゃねえな。危なすぎる」

 

「おいてめぇ、俺を殺す気か!?」

 

アレは確実に人間に命中していたら切り裂いた上で爆発し、確実に殺すだけの破壊力を秘めていただろう

 

「いや、思いつきでやったから適当だった。悪い、あんなに破壊力があるとは……」

 

「ちっ、仕方ねえな。必殺技ってのはトライ&エラーだからな」

 

……これ試合って言っていい物なのでしょうか?どっちかと言うと訓練しているように見えなくも無いのですが……

 

「だがまぁ、別にいいだろう」

 

「っぎゃーっ!!てめえ卑怯だぞ!?」

 

寝転がって自分の攻撃を回避した、それ自体はいいのですが、立ち上がるのに時間が掛かったのかその間に間合いを詰められた横島がそう叫ぶ

 

「かっかっか!本当あいつを見ていると飽きないな」

 

見ていると面白いと思うが、明らかに距離を詰められて横島の方が不利だと……

 

「ああん?お前、本気でそれを言ってるのか?」

 

ビュレト様が呆れたといわんばかりの態度で尋ねてくる。前の試合でも見ましたが、伊達は近接戦闘が得意だと見ました。横島は爆発力こそある物の、そんなに近接戦闘が得意だとは思えないと呟くと

 

「考えが甘いな。あいつ横島の策に完全に引っかかってるぞ」

 

えっ!?と尋ね返すとビュレト様はいいか?と前置きしてから

 

「まずあの霊力に流れに乗って移動する。あれは確かに面白いアイデアだし、機動力もそこそこあるだろうよ。でもな?あいつ足めちゃくちゃ早いんだぞ?わざわざ霊力を無駄にする移動するか?」

 

そ、そう言われれば……確かに、スピードがそこまであるわけではないのに、霊力をずっと消耗し続ける移動はどう考えても、霊力の無駄遣いだ

 

「俺やお前が見ていない間にあいつ多分足を負傷してるな、足をくじいたか、骨折したか……まぁどっちにしろ思うように移動できないんだろうよ。だから霊力を無駄に消耗するとわかっていても霊力を使う移動し、距離を取れば危険だと思わせる攻撃をした。その結果が……あれだ」

 

倒れないように肩幅に足を開いて立ち。真っ向から向かってくる伊達を迎え撃つ格好を取っている横島を見たビュレト様は笑いながら

 

「味方にすると頼もしいが、敵に回すと1番厄介なタイプだよ。あいつは」

 

お互いの拳がぶつかった凄まじい衝撃音の中。心底楽しそうにそう笑うのだった……

 

 

 

雪之丞と横島の戦いを見てあたしは安堵の溜息を吐いていた。心配事だったことが1つ消えた……これで残っている問題は1つになったのだから、安堵の溜息だって吐きたくもなるという物だ

 

(やっぱり横島には何かあるのかもしれないわね)

 

ガープが特異点と呼び、調べろとあたしに指示を出していた。その特異点が何かと言う話は聞いたが、正直眉唾物だと思っていたが陰念を元に戻し、雪之丞の洗脳を解除した事を考えると何か特別な力があるように思える

 

「掛かったな!マヌケがぁッ!!!」

 

横島の背中の2枚目の翼が砕けると同時に、背中から凄まじい霊力が噴出し、横島がその場で回転を始める。雪之丞は間合いに飛び込もうとしていたのでもう避けるとか出来るタイミングではないと悟ったのか

 

「このままぶち抜いてやらぁッ!!」

 

霊力を拳に集中し横島へと突進する。まぁ防御も無理、避けるのも無理となったら攻撃力で押し通すしかない、だから雪之丞の判断は間違っていなかった……予想外だったのは、横島の攻撃方法のほうだった……

 

(なにあれ!?)

 

霊力の勢いを生かして回転するのは判る。だがその回転が強くなるにつれて、緑色だった霊力の色が紅く染まって行く……そしてそれだけならただの脅しと言えたのだが、回転が強まるに連れて霊力が炎へと変換されていた

 

「燃えろぉッ!!!」

 

霊力を炎へと変換し、その爆発的な回転を伴って放たれたアッパーが雪之丞に向かって繰り出される

 

「くそっ!」

 

雪之丞がそう叫んだのが聞こえた。飛んで火に入る夏の虫じゃないけれど、もう避ける事も防御も出来ない、そして恐らく破壊力も横島の方が上。完全に誘い込まれた雪之丞はそのまま横島に突っ込むことしか出来ず

 

「がっはあああッ!?!?」

 

天井にまで届かんばかりの炎の柱に呑まれながら殴り飛ばされ、結界に背中からぶつかって崩れ落ちる姿を見て、あたしは雪之丞が死んだのではないか?と不安を抱かずにはいられないのだった……

 

 

 

「あちちちちッ!!!んじゃこりゃああ!?」

 

篭手の手の甲の辺りから吹き出ている炎を慌てて手を振って消火する。良く見ると手の甲で光っていた3つの光の内2つが消えてるな……背中の翼も消えてるし、手の甲の光と背中の翼には何かの関係性があるのかもしれない……だが今はそれ所ではない。熱い、めちゃくちゃ熱い!!そして痛い!その熱さを伴う痛みに咄嗟に右手を何度も振るう

 

【落ち着け!横島!!!敵がいるのだぞ!警戒を怠るなッ!】

 

心眼の怒声にも似た警告にハッとなり構えを取り直す……伊達を見てみるが動く気配は無い

 

(なぁ?あれもう動けないんじゃないのか?)

 

魔装術だっけ?それを身に纏っているからどれくらいダメージが通っているのか判らないが、魔装術が煤けている様に見えるし、完全に動く気配が無い。今の一撃で完全にKOしたんじゃないか?と思う。

 

(どうなってるんだよ。これ……)

 

最初に使ったときもそうだったし、使うたびに成長?と言うか変化しているこの篭手。ついには炎まで噴出した……これ本当にどうなっているんだ?ぱっと見ただけでは霊能力を使っているようにも見えないし……これ本当になんなんだろうか?

 

【馬鹿者!目を逸らすなッ!!!】

 

「う、うおおおおおおおおッ!!!」

 

心眼の怒声と伊達の声が重なる。慌てて前を見るがもう遅かった。目の前に迫る堅く握り締められた拳……俺に出来ることと言えば歯を食いしばることしか出来なくて

 

「がっはあッ!?」

 

顎目掛けてアッパーを叩き込まれ、その衝撃と威力で伊達に大きく殴り飛ばされる

 

【意識を失うな!横島!しっかりと意識を保てッ!!】

 

「横島ッ!!」

 

心眼の声と蛍の声が重なって聞こえる。その声のおかげか意識を失う事は無く、殴り飛ばされた衝撃でリングアウトしかけていたのを右拳を試合会場の床に叩きつけることでリングアウトを回避する。や、やべえ……目の前がチカチカする……それにサイキックソーサーを踏んで跳ぶと言う荒業のせいで痛めた右足がずきずきと痛む。これは駄目だな、もう走ったりするのは出来そうもない……でも何とか立つことは出来そうだ。俺の意識がはっきりしているのか確認に来た審判を左手で押しのけて痛む右足に顔を歪めながらも立ち上がる

 

「はぁ……はぁ……まだ倒れないか、お前も相当タフだな。ええ?横島ッ!!」

 

お前もなと言いたかったが、アッパーのせいで口の中が切れているのか喋りにくかったので、拳を向けることでまだ戦えるぞと言う意思表示をする、だが正直言ってかなり足に来ているし、ダメージも大きい、それに……

 

【あまり右拳は使うな、消耗している霊力を更に消耗することになるぞ】

 

この右拳の破壊力は流石だが、その分霊力の消耗が激しいのか、どんどん身体が重くなって行っているような気がする。ようやく落ち着いてきたので

 

「お前だって相当タフじゃねえか、いい加減倒れたらどうだ?」

 

魔装術は完全に溶解しているのか胴着が見えているし、口調ほど余裕という感じではない伊達にそう言うと、伊達は冗談じゃねえと言って

 

「お前は強い……ああ、俺が求めていた好敵手そのものだ」

 

いや、そんなものに認定されても困るんだが……俺としては美人の嫁さんを貰って平穏無事に暮らしたいだけなのだから

 

「それにこんなに楽しい勝負は初めてだ!!身体が重い、目の前が歪む!それなのにもっと戦いたいッ!!!絶対に負けないと言う闘志が湧いてくるッ!!」

 

……こ、こいつ危ないやつなんじゃないのか……若干ドン引きしかけるが、負けたくないと言うところだけは俺も同じ意見だ。絶対に負けたくないと俺も思っている

 

「さぁ行くぜッ!!続きをしようぜ横島ぁッ!!!」

 

霊波砲ではなく拳を構えて突進してくる伊達。俺が足を引きずっているのは見ていただろうに、遠距離ではなく俺の攻撃も届く範囲に突っ込んで来たのは本当に対等な立場で勝敗を付けたいのだと思った

 

「しゃあッ!来いッ!」

 

ならこっちも正面からぶつかるしかないッ!そんなの俺のキャラらしくないけど……真っ向から戦って勝ちたいという気持ちもある。俺は右拳を握り締め、一歩大きく前に踏み出した……

 

 

 

試合会場のほぼ中心で横島と伊達が殴り合っている。それはGSを決めるGS試験の戦いとは思えないほどに血なまぐさく、泥臭い物だった……それこそGS試験ではなく、ボクシングの試合とでも言うべき激しい肉弾戦を繰り返していた

 

「おおおらああッ!!!」

 

「がっ!?おおおおおッ!!!」

 

「ぐふっ!まだまだぁッ!!!」

 

殴られたら殴り返す、それを永遠と繰り返している。足幅を肩幅にしているのは意地でも倒れないように1番踏ん張りが効く立ち方だからだろう

 

「2人ともとんでもなく我慢強いな」

 

唐巣神父が感心したように呟く、かれこれ10分近く殴り合っているのにまだ2人とも霊力がそこを尽かないのか、それとも意地で霊力を維持しているのか判らないが物理を無効化する結界の中で殴り合いを続けることが出来るという事はまだ霊力を使っているという証明でもある

 

【うう……見てられないです】

 

おキヌさんが顔を隠しながらそう呟く、最初こそ横島を応援していたが、顔から鼻血や、切れたのか血を流しながらも殴り合いを続けて姿は痛々しく見える

 

「ここまで来るともうお互いに完全に意地ですね。気力が先に尽きたほうの負けですね」

 

小竜姫様がそう解説してくれるけど、私の見た所では先に気力が尽きると言う事は無さそうだ。相当なダメージと疲労が重なっているはずなのに、まだ横島も伊達も目の光が弱まっていない。絶対にお前を倒す、絶対にお前より先に倒れないといわんばかりだ

 

「「がっ!?」」

 

お互いに拳を繰り出すタイミングが同じだったのか、2人ともその場でよろめき倒れかけるが、2人ともはじかれたように身体を起し

 

「「まだまだぁッ!!!」」

 

再び同じタイミングで拳を繰り出す、横島の拳が伊達の右頬にめり込み、伊達の拳が横島の左頬にめり込み2人の顔が弾かれたように後ろにねじれる。その余りの勢いに私も思わず目を逸らしてしまった

 

「ぜー……ぜーッ!!てめえ……いい加減に倒れたらどうだ?」

 

「はっ……それはこっちの台詞だッ!!」

 

相当ダメージが積み重なっているだろうにまだ横島も伊達も倒れる気配がまるで無い

 

「……もう体力も霊力も限界を通り越しているだろうに……ここまで来たんだ。負けるな、横島」

 

「みーむー!!みみむーッ!!!」

 

「うきゅー!!うきゅうきゅーッ!!」

 

「ココーン!コーンッ!!!」

 

シズクやタマモ達の応援が聞こえているのかは判らないが、ふらついた足でまた前に出る

 

「とんでもないわね……お互いにお互いを高めてるとでも言うのかしら……試合前の横島君じゃここまで出来なかったでしょうに……」

 

美神さんが感心したように呟く。確かに試合開始前の横島ではここまでやる事は出来なかっただろう、美神さんの言うとおり戦いの中でお互いにお互いを高めているのかもしれない……伊達の言っていた通り横島と伊達は好敵手同士なのかもしれない……でも私からすれば勝って欲しいとも思っているが、もう倒れて欲しいとも思っている

 

『凄まじい乱打戦です!GS試験と言うよりかはボクシングの試合とでも言うべき、火の出るような乱打戦!!見てください、武闘派のGS達のこの盛り上がりようッ!!既に格闘技か何かの試合を見ているかのような熱気ですッ!!』

 

ドンドンっと足踏みをしている筋肉質なGS達から目を逸らしていたのに、今の解説者の声でそっちの方を思わず見てしまった。見るだけで暑苦しい……GSなのになんであんなに筋肉をつけているのだろうか……

 

『余り盛り上げるのも問題じゃ、この熱気のせいで倒れるに倒れることが出来ない。こういう雰囲気は良くないぞ、凄まじいダメージを受けているのに我慢し続けるのは良くないぞ、それこそ脳か何かに悪影響を与えかねない』

 

私の不安を全て解説してくれたドクターカオス。お互いに全力で振り切っているので、脳か何かに影響が出ないか?それが心配になってしまう、それこそGSなのに、パンチドランカーとかになっても困る。だから負けたくないって言う意地をはる横島の気持ちも判る。でも……お願いだから無理をしないで倒れて欲しい、ここまで頑張ったのだから……もう倒れても良い……これ以上無理をして何か後遺症が残るような怪我をしないで欲しい

 

「「うおおおおおッ!!!」」

 

思わず目を閉じたくなるような凄まじい打撃音が響き渡る。今度のダメージが意地や我慢できる物ではなかったのか弾かれたようにお互いに弾き飛ばされる。お互いによろめきながらもまだ倒れることは無く、お互いに傷だらけの顔の中まだ瞳に強い光を宿した横島と伊達は体力と霊力の限界を感じたのか、お互いに最後の攻撃を繰り出そうとしていた

 

「はーっ……はーっ……こいつで決めて……やるッ!!」

 

横島が霊力の篭手を装着した右手を突き出すと手の甲から赤・黄色・水色の光が放たれ、背中の翼が砕け散る。まるで工事現場にいるかのような轟音が響き突き出した右手に凄まじいまでの霊力が収束していく……あまりに収束されすぎて横島の周りに目で確認できるほどの霊力が見える……それはとても横島だけの霊力とは思えないほどの強大な霊力だった……

 

「は……すげえな……おいっ……っても悪いな。横島、俺にはそんな切り札も無くてよ」

 

伊達はそう言うと右手以外の魔装術を解除し、右手首を左手で掴み、好戦的な笑みを浮かべながら

 

「俺の全霊力をこの一撃に込めるだけだっ!!!」

 

伊達の方にも凄まじい霊力が収束していく……見ている全員が理解した。次の激突がこの長い試合を決める一撃になると……さっきまでの異常な盛り上がりを見せていた試験会場も水を打ったかのように静まり返り……横島と伊達が霊力を収束する音だけが試合会場に響き渡るのだった……

 

 

 

横島が突き出した右手に凄まじい霊力が集まっていくのを見て、今のボロボロの魔装術では耐えることが出来ないと判断して右手だけ残して魔装術を消した。そのおかげか右手だけに霊力を集中させることが出来た

 

(ははは……楽しいぜ。横島ぁッ!!!)

 

喋る体力も温存したい、意地でここまで立って居るが既に体力も霊力もとっくの昔に底を尽いていた……それなのに魔装術を維持できていたのは偏に俺の意地だと思う……それか何かの間違いで俺と契約している魔族……つまりはメドーサだが、それが力を貸していてくれたのかもしれない。だがこれ以上魔装術を展開しているのも限界なら拳だけ残して後は捨てた方がいい……周りの声も聞こえない。目の前にいる横島だけしか見えない……これが極限の集中ってやつか?と思いながら右拳にひたすら霊力を溜め込む……永遠とも思える数秒の時間……

 

(楽しかったぜ……横島)

 

戦うことは大好きだ。その中でもこんなに楽しいと思った戦いは今まで無かったかもしれない、でも楽しい時間というのはいつまでも続くものじゃない。終わりが来るものだ。そしてその終わりを俺の勝利で終わらせる、無論横島もそう思っているのか、強い光を宿した目で俺を睨み付けている。その気迫に押し返されないように俺も睨み返していると

 

カツン……

 

俺と横島の霊力のぶつかり合いで天井にガタが来たのか、天井の一部が崩れてちょうど俺と横島の前に落ちる。それは奇しくも俺と横島の霊力が最大になった瞬間と同じで……

 

「横島ぁぁあああああっ!!!」

 

「伊達ぇぇえええええっ!!!!」

 

お互いの名を叫びながら走り出し、俺と横島の拳がぶつかり、収束していた霊力同士の衝突により凄まじい閃光が試合会場を埋め尽くすのだった……

 

 

リポート25 GS試験本戦 ~終焉の前奏曲~その12へ続く

 

 




次回で雪之丞と横島の戦いの決着を書いて、ラストの話に向けて書いていこうと思います。当初の予定通り、150話で第一部完結となりそうです、それでは第一部完結まで後少し、最後までどうかお付き合いください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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