GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は横島や蛍の出番は少なめですね。彼達の周囲の人間の行動を書いていこうと思います
それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その3

リポート2 ナインテール・フォックス その3

 

「ふむ……イレギュラーと言うのは結構近くに転がっている物だね」

 

蛍から聞いた九尾の狐の転生体と落ちぶれた神族の事。これは確かに予想外の出来事と言えるだろう

 

(逆行者の記憶と言うのはやはりエネルギーが強いのだろうか?)

 

本来目覚める時間よりも早いと言うのは、充分なエネルギーを得る事が出来ただろう。それにオッズ表に

 

タマモ 5.7倍の文字が躍っている。急に数値が上がったのはまだ人間の姿に変化できないだろうからだろう。これでもし人化出るようになればもっと数値が減るかもしれないね

 

(まぁまずは神族の事だね。この周囲にいる神族はっと……)

 

天界から追放され、しかも魔界に落ちることもなかった神族となればそれなりに情報は手に入る。一通り調べて

 

「この2人だね。間違いない」

 

妙神山と天界へ続く馬車の世話役をしていた2人の鬼族。程度が低く名前も蛮と勇と繋げて蛮勇と呼べる、程度の低い鬼だが、これで活躍して名前と天界に戻る事を考えているのだろう

 

(馬鹿だねえ……天界も魔界も九尾の狐を危険視していたのは何千年の前の話だと言うのに)

 

九尾の狐はあの当時には危険視されていたが、今の時代では安倍晴明が自分の名前を売るために時の帝を懸命に治療していた、玉藻前を追放したと言う説もある。人間界はどうかは判らないが、天界と魔界は既に九尾の狐にかけていた賞金を取り下げているのだ。それ所か保護しようとしている流れもあるというのに……

 

(誰かにそそのかされたか?それとも過激派の動きがあったのか……どっちにせよ警戒が必要だね)

 

デミアンとベルゼブブは好きにさせているし、メドーサはまだ寝てる。今私の手元で自由に動けるのは土偶羅魔具羅くらいなものだから、表立っては動けない。こうして情報収集をして天界にリークするくらいだ

 

(最高指導者も何か言ってくれれば良いものを)

 

そうすれば表立って行動できるのだが、今はまだそんなことを出来ない状況と言うのは先日の手紙で理解している。まぁ内容が

 

【逆行者の魂の管理でパンクしそうで無理なので、暫くは1人で頑張ってください きーやん】

 

【この賭けに参加したいって神様仰山おって部下に話をしてる時間は無いわ。悪いけど気張ったって さっちゃん】

 

あの2人を殺してやろうと思ったのは言うまでも無い。とは言え神格で劣っているのでどう足掻いても勝てないのだが……

 

「それとなくヒャクメにリークしておくとするかね」

 

人間界にいるこの2人の鬼は天界追放の前に、龍神の酒と小判を大量に盗んで行った事で天界から指名手配にかけられている。無論下っ端程度にそこまで重要視してないが、他に何かの神具を盗み出している可能性もあるので充分に役に立つだろう。そう考え鬼に対する書類を作っていると

 

「お父さん」

 

「どうしたんだい?蛍」

 

部屋の中に入ってきた蛍は黒い笑顔を浮かべる。一応魔神である私でさえぞくりとする恐ろしい笑みだ

 

「タマモの変化を永久に禁止する封印具とか作れない?」

 

確かにそうすればタマモ君が自分のライバルにならないと思ったのだろう。私も蛍の幸せを祈っているからそれは非常に効果的な案だと思うのだけど

 

「いや、それは無理かな?ほら、ルール見てくれないか?」

 

オッズ表の所に現れている巨大な紅い文字そこには

 

【参加者への妨害行動を禁止する。もしそれをした場合、横島忠夫との縁を切る ※参加者同士の妨害も度が過ぎた場合警告あり】

 

それがあるから私もあんまり妨害できないんだよねと言うと蛍は

 

「うぐぐ、なんてことを」

 

物凄く悔しそうな顔をして握り拳を作っていた。今ならもしかするとダイヤモンドも破壊できると言わんばかりの気迫だ

 

「と、言うわけだからそこの所は諦めてほしい。それとそれとなく天界にあの鬼達の事は伝えておくが、横島君とタマモ君に危機が迫るのは避けることが出来ないだろう。今の時点で横島君はどうなんだい?」

 

そう尋ねると蛍は凄く渋い顔をしながら溜息を吐いて

 

「簡単に開けるはずのチャクラもうんともすんとも言わない……霊力の封印が硬すぎるの」

 

潜在霊力はかなり高いはずなんだけど……それが使えない。可能性としては

 

「今代の英雄としての器だからかもしれないね」

 

もしも私が本来計画していた通りに動いていたのなら、横島君が私を倒すことになる。しかし私の目的は変わってしまったので横島君の霊能力に枷が掛かったのか?それとも最初から一定の年齢になるまで霊能力が使えないのか?

 

「それはとても不味いね……どうしたものか……」

 

「うん。私が傍にいれば良いんだけど……」

 

蛍が傍にいれば下級の鬼くらいなら難なく倒せるだろうが、横島君と霊力を使えないタマモ君では勝てる要素が無い

 

「ヒャクメを上手く利用するしかないね」

 

「……駄女神だから不安」

 

うん、それは判らなくも無い、ヒャクメは元は妖怪でかつての功績で神族に迎えられたという経歴を持つ。悪い神ではないが、その好奇心旺盛な性格に加え、相手の心の中を見ることの出来る心眼のせいで色々と引け目のある神族からは嫌われている女神だ。まぁドジな所もあるのでうだつの上がらない神でもあるが、情報収集能力だけは相当高いから心配だろう

 

「あとは蛍がそれとなく護身用の護符でも持たせてあげれば良い。なんなら私が作ろうか?」

 

私がそう尋ねると蛍は首を振り

 

「横島を護るのは私。これだけは誰にも譲れないから」

 

そう笑って出て行く蛍。私はその小さな背中を見ながら肩を竦めながら

 

「さてと作業を再開するかな」

 

ヒャクメの興味を引くような文を作り上げ、私は追跡されないように細心の注意を払い。3つの経路を経由してヒャクメの元に完成した文を送った。それは経路を経由するごとに文字化けするだろうが、それが却ってヒャクメの興味を引くはずだから

 

「さてと、お前達。横島君を頼むよ」

 

「「「キキ」」」

 

私の手の上から飛び立つ3匹の使い魔を見送り、私はイスの背もたれに深く背中を預け目を閉じた。さすがに少しばかり疲れた、少しの間だけ眠ろうと想い。目を閉じたのだった……

 

 

 

「ん?これはなんなのね?」

 

天界でトランク型のPCを操作していた女性の眉がピクリと動く。民族衣装に目玉を模したアクセサリーを身につけたその女性の名は「ヒャクメ」。全てを見通す心眼を持つ女神であり、情報収集と分析に長けた神なのだが

 

「こ、これは面白そうなのね!!」

 

その好奇心旺盛な性格に心眼と言う能力のせいで、興味を持てば人の心の中でさえ無断で覗き込んでしまう。能力は高いが嫌われ者でもあった。そんなヒャクメが目を輝かせたのは人界から送られてきたある文書

 

【■■にて転生したと思われる■■■■が目覚めた。無垢なるそれは東京の地で■■■■と言う人間に拾われて■らしている。かつての■の記■は無いのか、その人間に■いて暮■■ている。だがかつて天界から■■された■と■の鬼が自分達の■■のために、■■の狐とそれを■■している人間に■■を■えようとしている。■■に対策求む】

 

所々文字化けしたその文章をみて私は目を輝かせた。■■の狐。これはもうどう考えても

 

「九尾の狐なのねー」

 

膨大な霊力の反応があったけど、すぐにその反応が消えたから誤認識と思ったけど、この文章で確信した。九尾の狐は無事に転生を果たして今は人間と共にいると

 

「そうと判れば早速探すのね!」

 

九尾の狐は妖怪の中でも最も神に近い妖怪。かつてある人間のくだらぬ野心のせいで死んでしまった不遇な妖怪。それが九尾の狐……つい700年ほど前に冤罪と判明し、保護対象の妖怪になっている妖怪だ

 

「えーとここはんーと……たぶん。蛮と勇なのね、あの手癖が悪い馬鹿妖怪兄弟」

 

かつては妙神山と天界の馬車番をしていた鬼族だが、あろうことか龍神王の酒を盗み、更に幾つかの神具を奪った事で指名手配になっている鬼だ

 

「どうせ九尾の狐を倒すために~とか大義名分を掲げるつもりなのね~」

 

今更そんなことをしても天界になんて戻れないのに馬鹿なのね。しかし問題は別にある

 

「九尾の狐と一緒にいる人間なのね」

 

蛮と勇は一応神族扱いの鬼だが、元は人食い鬼。その人間が危ない、ただでさえ今デタントに向けて動いているのにそんなことをされては元も子もない。それに……

 

「あの気難しい九尾の狐が一緒にいるってことは相当魂の綺麗な人間に違いないのね」

 

九尾の狐は妖力も高いうえに神格を持つことも出来る妖怪だが、その本質は庇護者。護られることを望む妖怪だ、そんな存在が人間の傍にいるのは権力者か、居心地が良いからとしか思えない。そして可能性としては後者の確率が高いのだ

 

「んーとんーとどこにいるなのねー」

 

九尾の狐の妖力と透き通った人間の魂を探す。今の時代には九尾の狐が心を許す人間なんてそうはいないからすぐに見つけることが出来た……

 

【よーしよしよし】

 

【クウ♪】

 

胡坐をかいて座る少年の膝の上でブラシで毛を梳いて貰ってご機嫌そうな狐。その尾は2本……九尾の狐の力も感じるから間違いなく、この狐が九尾の狐の転生体だろう

 

【リボン買ってきたけど結んでやろうか?こっちの首輪が良いか?】

 

【クウ】

 

少年の手のリボンに頭を摺り寄せる子狐。その顔はとても穏やかで警戒心なんて丸で見えない

 

(ああ、なんか羨ましいのね……)

 

妖怪から神になった私に友達と呼べるのは小竜姫だけ、良いも悪いも真っ直ぐな彼女だけだ。そしてあの少年はあの狐が妖怪だと知っていてもなおああして笑いかけている。それがとても尊い物見えて、思わず羨ましいと思ってしまった。

 

「っといけないなのね、とりあえず見つけたから小竜姫に頼んでおくのね」

 

少し調べたのだが、蛮と勇が盗んだのは小竜姫の死んだ父君の刀と龍神王の扇。小竜姫は蛮と勇を探していたが、妙神山の管理人と言う立場上表立って動けなかったが、こうして動き出したと言う証拠があれば、小竜姫は妙神山の最高責任者である老師に頼んで人界に下りるだろう。それであの少年と九尾の狐の転生体の安全は保障されるはずだ。そう判断して一応私の上司扱いになっている神に妙神山に下りる許可を貰いに行きながら

 

(あの子綺麗な目をしてたのねー)

 

いまどき珍しい綺麗な目と魂をしていた。少しだけ記憶を覗いたが、女好きでスケベらしいがあの年齢はそんな物だろう。無理やりやナンパも失敗すると知っててする辺り変わった面白い少年だ

 

(私の事はなんて思うのかな?)

 

心の中を読んでしまう神。普通ならいやがられるけど、あの少年はどうだろう?九尾の狐のように私に手を伸ばしてくれるのだろうか? 

 

【あの人はとってもお人好しだから、絶対手を伸ばしてくれるなのねー】

 

「今の声はなんなのね!?」

 

突然聞こえた自分じゃないけど自分の声に驚き振り返るけど姿は見えない。疲れているのかな?と首を傾げながら私は早足で歩き出しながら

 

(そういえば小竜姫もこんな事を言ってた気がするのね?)

 

夢で見る自分じゃない自分の記憶。そして自分の声、もしかして私も小竜姫と同じ?小竜姫にノイローゼとかストレスじゃないのね?と言っておきながら?

 

「ゆ、有給を使って身体を休めるのね!それが良いのね!!」

 

私は自分に言い聞かせるようにそう呟き、さっさと書類を書いて有給を手に妙神山に向かったのだった

 

【ふふふふ、やっとなのね~ここからは私のターンなのね~】

 

「頭の中で声がするなのねー!!!」

 

半泣きで走るヒャクメはその間延びした喋り方と違い、結構追い詰められていたのかもしれない。そしてそれは

 

「NO-ッ!!!増えてる!また増えてるううう!!!」

 

いきなり紅い文字で「ヒャクメ 3.5倍」とオッズ表に浮かんだのを見てアシュタロスは、頭を抱えてそう絶叫したのだった……

 

 

 

 

「へへ、これでやっと天界に戻れるぜ。兄貴」

 

「だな。長かったぜえ?1700年」

 

くっくっくと喉を鳴らしながら歩く、体の大きい2人組み。兄貴と呼ばれている所を見ると兄弟なのかもしれない。

 

「上等な酒につまみ。早く九尾の狐を殺して妙神山に連れて行かないとな」

 

「ああ。そうだな」

 

くっくっくと下卑た笑い声を上げる蛮と勇の二鬼の兄弟。かつての自分達の罪など九尾の狐の首でなんとでもなると思い込んでいるその2匹の鬼は闇に紛れてゆっくりと歩き出す、2人合わせて蛮勇だがその実2匹とも頭は非常に切れてるほうだ。だからこそ上級神族と魔族でさえ切る事が出来る龍牙刀と、結界を作り出す扇を奪い逃走したのだ。それは逃げたのではなく、指名手配の魔族を倒すためだったと言い張るために、そして2人はとても慎重な性格をしていた

 

「兄貴。九尾の狐の力が増す満月の夜は駄目だ。下手をすると完全覚醒されちまう」

 

「判ってる。仕掛けるのは新月の夜だ」

 

新月の夜。妖怪の力が一番低くなる一晩。その一晩に全てを終わらせると呟く蛮

 

「あと2日かあ、長いなあ」

 

にやりと笑いながら言う勇。その顔はそんな事など思ってないと言うのが判るほどに楽しそうだ

 

「何言ってやがる。1700年と比べれば一瞬だ」

 

ちがいねえと再び笑い合う蛮と勇の視線の先には浮浪者が集まっている公園が見える

 

「前祝いに食っちまうか?」

 

「いいねえ、食っちまおうぜ」

 

2人は本性である鬼の姿に戻り、浮浪者達へ襲い掛かったのだった。1度は神族にまでなった鬼だが、1700年と言う月日の中で神気は全て抜け落ち、本来の邪悪な姿に戻っている蛮と勇が再び神族に戻ることはありえない、だが既に狂いきっている2人にはそれが判らない。そんなことを理解する知性は当に消失してしまっているからだ、今蛮と勇に残っているのはかつての地位へ戻る事とそしてそこに戻るための手段だけである……そして新月の夜は刻一刻と迫っているのだった……

 

 

リポート2 ナインテール・フォックス その4へ続く

 

 




今回は少し短めでしたね。次回からはシリアスで行こうと思っているんですが、ここまでかいて思うんだ。横島のキャラが違うのでは?と言う不安が……横島は横島らしくとい言うのはとても難しいのだと改めて実感いたしました。でも書いてるのは楽しいので頑張りますけどね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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