GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

156 / 205
どうも混沌の魔法使いです。今回はライダーと怪人【?】との戦いになります。新しいゴーストチェンジも出して行こうと思っています。前回のあとがきで書いた次回予告みたいな奴ですね。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その5

 

リポート25 GS試験本戦 ~終焉の前奏曲~その5

 

陰念の姿が鎧の異形に包まれたと思った瞬間。俺は黒い炎の中に呑み込まれていた……避けるとか、護るとか考えている暇もない本当に一瞬の出来事だった……

 

「くっぐう……これは……ちょっと……不味いか……」

 

実際にはちょっと所かかなりの大ピンチだ。これだけの炎だと俺の陰陽術で消火出来るとは思えないし、かといって強行突破できるほど薄い炎の壁ではない。訂正しよう、これは絶体絶命の大ピンチと言える

 

【な、何故!?平気なんだ!?普通なら死んでいるぞ!?】

 

心眼の驚いている声に平気じゃねえと返事を返そうとしたが止めた。口を開いた瞬間炎の熱で喉が焼かれたように痛んだから……実際行き成り死ぬという事態は回避できたが状況はとてつもなく不味いと言わざるをえない。試合の前に係員に貰った精霊石とプロテクターはもうその機能を失いかけている。俺がそれなのに耐えることができている理由……それは1つしかない

 

(タマモとシズクか……)

 

俺に実感は無いが、シズクの言葉を信じるなら俺にはタマモとシズクの加護がある。タマモは九尾の狐であり炎の扱いに長け、更にシズクは水神で竜神言うまでもなく炎に強い。そんな2人の加護があるから耐えることが出来ている……だがそれにも恐らく限界がある……横島は気付いていないが、昨晩シズクから貰ったチビ達の牙入りのお守りが淡い光を放っており、シズクとタマモの加護に加えて、このお守りが横島を守っていたのだ

 

「うわっちちち!や、やばあ!?」

 

GジャンとGパンの裾が焦げて来てる。それにさっきまでよりも周りの熱を感じて来てる……もうそんなに持たない

 

【どう考えても自力での脱出は無理だ。横島、悔しいと思うがここは降参しよう。私が全力でお前の霊力を放出する、そうすればこの火炎を弾き飛ばせるはずだ】

 

心眼が俺を心配しているのかそう言う。確かに諦めるのが正しい選択だろう、でも……

 

(あーくそ!なんでやねん)

 

髪の毛をがしがしと掻き毟る。男なんて見捨てればいい、これが姉ちゃんなら美神さんに使うなと言われていた切り札だって使おうと思う。寧ろ迷わず即断で使用しただろう、後で激しく後悔したとしても……でも男を助ける為に自分の身体を痛めつける切り札なんて本当は死んでも使いたくない。でも……

 

「あーッ!くそ!俺の馬鹿たれ!!!」

 

Gジャンの上着に手を突っ込みウィスプ眼魂を取り出し、少し考える。きっとこのまま待っていればシズクや美神さんが俺を助けてくれるだろう……でもそれじゃ今までと何も変わらない……

 

「力を貸してくれよ、ウィスプ」

 

正直言ってまだあのベルトの出し方はまだ知らない。俺の感じではウィスプが力を貸してくれる時だけベルトは姿を見せてくれる。だから手の中のウィスプに声を掛ける

 

【横島?何を言って?【イッヒヒー!!】しゃ、喋ったぁ!?】

 

お前も似たような物だろうと思わず苦笑していると、いつの間にか腰にベルトが現れていて

 

「しゃッ!行くぜウィスプ!」

 

【イッヒヒーッ♪】

 

【どういうことか説明しろーッ!!】

 

混乱してる心眼を無視して、俺はベルトのカバーを開き、ウィスプ眼魂を押し込む。すると聞きなれた陽気な音楽が流れ始める

 

【アーイッ!シッカリミナー!シッカリミナーッ!!】

 

本当男なんて死んでも助けたいなんて思わない、思わないけれど……

 

(助けてっていってたよな……)

 

それでも助けてっと言われて……見捨てることが出来るほど、俺は薄情な人間じゃない……

 

「行くぜ!変身ッ!」

 

【なんだあ!?私が消える!?】

 

全力でレバーを引く。なんかその瞬間頭に巻いていたバンダナが消えて、心眼の驚愕の悲鳴が聞こえた気がするけど、うん。多分気のせい、っと言うかそう思いたい

 

【開眼ウィスプ!アーユーレデイ?】

 

炎の壁を突き抜けて姿を見せたウィスプをハイタッチを交わす

 

【OKッ!!レッツゴー!イ・タ・ズ・ラ!ゴ・ゴ・ゴーストッ!!!】

 

パーカーを着込んだと同時に霊力が嵐のように吹き出し、俺を囲んでいた炎を中から打ち消す。心眼がどっかに消えた気がするけど……うん。多分大丈夫、うん、問題ないと思う。

 

【どうなってるんだ!?私はどうなった!?っと言うか!?なんだこのかぼちゃ頭は!?】

 

【イヒヒー!】

 

頭の中でガンガンと心眼とウィスプの声が響いているので無事だというのは判るので、今は何の問題も無い。だから今俺が何とかしないといけない問題はただ1つ

 

「ウルルルッ!!!」

 

全身をとげとげしい鎧に包み、僅かに見えた口元から吸血鬼のような牙を向けて威嚇の唸り声を上げている陰念。それをなんとか正気に戻す……と言うか、殺されないように相手を倒す。それはかなり難しいことだと思うが……やるしかない

 

「しゃあッ!行くぜッ!!」

 

気合を入れる為に掌に拳を打ちつけ、フードを取り払い目の前の異形に向かって走り出すのだった……

 

 

 

 

よ、良かったぁ……炎の中からウィスプへと変身した横島が姿を見せた事に私は深く溜息を吐いて観客席に向かって倒れるように腰掛けた……

 

「し、心臓に悪すぎるわね……」

 

美神さんも同じように心臓を押さえて大きく深呼吸をしていた。タイガーさんが一撃で戦闘不能になった漆黒の炎……横島がそれに呑み込まれた瞬間。冗談抜きで心臓が止まるかと思った……

 

「……今回ばかりはこの駄狐に感謝だな……私の加護だけじゃ駄目だった」

 

「くー」

 

シズクとタマモも大きく深呼吸しているのが見える。シズクの額に珍しく大粒の汗が浮かんでいるのが見えた……

 

【あのーでも美神さん、それに蛍ちゃん。こんな大勢人の居る所であれ使っても大丈夫なんですか?】

 

……おキヌさんの言葉に一瞬何を言われたか判らなかったが、近くで観戦していた琉璃さんを見ると口をぱくぱくとさせていて……周りの人も同じようで何度か目を擦って会場を見てから

 

「「「なんじゃありゃああああッ!?」」」

 

驚愕の悲鳴が会場全体に響き渡った。出来ればその何かは横島じゃなくて、陰念の方が良いなあと現実逃避気味に考えていると

 

「み、美神さん!?あれなんですか!?あんなの報告書に無かったですよ!?」

 

琉璃さんが美神さんに詰め寄っているのが見える。あ、美神さん、横島のあの姿の事報告してなかったんだ……でもそれは無理ないかもしれない、神魔に英霊の力を宿すなんて能力を持っていると知られたらやばいと判断した美神さんのいい判断だ。

 

「説明は後!と、とりあえず琉璃!試合中止!魔装術の現行犯で……「ふむ?止めてしまうのですか?折角面白くなって来たのに?」

 

突然聞こえてきた第三者の声に振り返る。だけどそこには誰の姿も無い……だが私達を見下ろしている奇妙な生物の姿を見つけた……金色の身体をした蝙蝠。その姿を確認した瞬間、私も美神さんも琉璃さんも完全に動きが止まった……この蝙蝠がなんなのか本能的に理解してしまったから……身体がとんでもなく重い、それに凄まじく息苦しいし……頭も痛い……

 

「……ッ!!」

 

「フーッ!!」

 

【え?な、なにこれ……!?】

 

シズクの髪が逆立ち、タマモが威嚇の唸り声を上げる。チビとモグラちゃんは目を回してその場で倒れこみ、おキヌさんは溶けるように消えてしまった……私達よりも先にこの蝙蝠が何か理解したのだろう、故に圧倒的強者を見た事で自分の死を感じ取ったのか、チビとモグラちゃんは意識を失うと言う事でその恐怖から逃れ、おキヌさんは周囲の霊力のバランスが崩れたことで姿を維持できなくて消えてしまったのだ……それは存在するだけで周囲のバランスを崩す公爵級……魔神と呼ばれるクラスの魔族が蝙蝠に化けているのか、それとも蝙蝠を通じて見ているのか?その2つに絞られてくる。だが私はそれとは異なる恐怖を感じていた……

 

(不味い不味い不味い不味い……)

 

自分の正体がばれてしまう、お父さんと同じソロモンならば私が何者か判るはずだ。ここでそれがばれてしまえば、私は横島の側に居れなくなってしまう……どうやってこの場を切り抜けるか?それを必死に考えていると

 

「おう、なにやってやがる。この陰湿ヤロー」

 

まるで氷が割れたような音が響いたと思うと、感じていた身体の重さや息苦しさがほんの少しだけ和らいだ……

 

「おやおや、古き友よ。人間にそこまで肩入れするのか?」

 

「うるせえ、研究馬鹿。とっとと失せろ、蝙蝠に憑依してくるんじゃねえ」

 

カズマさんが腕を振ると私達を見つめていた蝙蝠が両断され、魔力となって霧散していく。それを見た美神さんが信じられないと言う様子で呟いた

 

「ま、魔力だけで完全に具現化した使い魔を?」

 

使い魔と言うのは本来なんらかの生き物や媒介を基に作成されるとお父さんが言っていた。魔力だけでも用意できるが、それだと活動時間に制限が掛かるし、知能にも問題があると言っていた。正直作るだけ魔力の無駄だとも……

 

「ははははは!!それは失礼した、ああ、そうだな。淑女の前に現れるのに使い魔と言うのはいささか無礼だったな!!これは私としたことがとんでもない非礼だった」

 

両断された蝙蝠が楽しそうに喋りながら消えて行く……その口調は穏やかな物だが、どこまでも冷酷な響きを伴っていた……もしこれが使い魔じゃなくて、本人だったのならと思うと怖くて仕方ない……

 

「GS試験の中断。それ即ちこの場にいる人間全ての死と知れ!ははは!!この余興そうそ……「いいから消えとけ」

 

蝙蝠の身体が更に両断さればらばらに切り刻まれる。ま、全く見えなかった。これがソロモンの実力……蝙蝠の姿が完全に消えたことで漸く身体の重さや息苦しさが消えた……観客席の椅子にもたれかかりながら

 

「た、助かったわ……カズマ」

 

美神さんがやっとと言う感じでそう呟く、私と琉璃さんも感謝の言葉を口にしたかったが、喋るだけの気力が残ってなかった……それほどまでに公爵級との邂逅は私達の精神力を削っていた……

 

「いや遅れて悪い。あっちこっちに起爆の術式を刻んだ蝙蝠が飛んでやがってな、あらかた潰してきたがまた定期的に送り込んでくるだろう」

 

試験会場の中にいたから気付かなかったけど、どうもガープが本格的に動き出していたようだ。でも結界が張ってあるのになんで使い魔が潜り込めたのだろうか?

 

「試合会場はルーン魔術で強化してますけど、敷地内は通常の結界だからですか?」

 

「まぁそんな所だ、あいつにとって人間の結界なんて紙にも劣る。潜り込ませる位わけない、それよりもだ。試合中止は絶対するな、起爆の術式を持った蝙蝠が自爆する」

 

そうなれば試験会場にいる全員が死ぬ。試験中止で終わらせるということは無理になった……

 

「判りました。今私に何か出来ることは?」

 

琉璃さんがそう尋ねるとカズマさんは少し考える素振りを見せてから首を振り

 

「下手に動くな、あれだけ精密な動きが出来る使い魔がいると言う事を考えれば、あいつは近くに居る、間違いなく試験会場の中にいる。下手に動いてなにか仕掛けられると面倒だ。動くなら小竜姫とブリュンヒルデが合流してからだな。言いにくいが、俺1人では分が悪い……相性的には最悪なんだ。1対1なら……俺は負ける。確実にだ……」

 

カズマさん……いやビュレトさんがそこまで言うなんて……同じソロモンでもそんなに力の差があるというの……?

 

「まぁ単純に相性の問題なんだが……まぁそれを詳しく説明するまでも無いだろう……今問題なのは……横島の方が問題だな」

 

カズマさんの視線につられて試験会場を見ると、そこには次々と打ち出される火炎に徐々に追い詰められている横島の姿があった……

 

 

 

やべえ……めちゃっやべえッ!!!俺は心の中でそう叫んでいた……韋駄天の時も、義経の時も何とかなった。だから今回も何とかなると思っていたのだが……それがとんでもなく甘い考えだと思い知らされた

 

「シャアアアアッ!!!」

 

背中に巨大な黒い炎を展開し、そこから無数の火球を打ち込み続けている。距離が詰められない、ベルトから出した剣を銃に変形させても届かない……圧倒的までの技術の差

 

『これは面白い展開になってまいりました!なんらかの霊具を使い、お互い鎧を装着しての射撃戦!!今年のGS試験はいつから特撮番組になったのかーッ!!』

 

「うっせえ!馬鹿解説者!!!黙ってろ!!」

 

こいつの声で何度も集中が途切れる。いい加減に黙ってろと叫び銃を向けてトリガーを引く。結界のせいでそれたが、馬鹿解説者の頬を掠め壁に命中した。白目を剥いて倒れる馬鹿解説者……これでやっと集中できる。そう思った瞬間

 

【横島!飛べッ!】

 

心眼の焦った声が脳裏に響く、咄嗟に地面に蹴り、宙に浮かぶと同時に足元からとんでもない粉砕音が響く、おそるおそる足元を見るととんでもないことになっていて、思わず俺は汗なんてかいてないが、汗を拭う仕草をしながら

 

「セーフ!超セーフッ!!!」

 

炎を纏った両拳を振り下ろした陰念の姿があった。試験会場の床を完全に破壊しマグマのような地形にしている……あそここもう歩けないな……つうかとんでもない攻撃力だな……義経とかより上なんじゃないか……?しかし一気に踏み込みのスピードが増したような気がする、さっきまで近づこう近づこうとしていたのに、それが出来ないから射撃戦になっていたのになんで急に近接を仕掛けてきたんだ?

 

【あの魔物……成長してる。時間を掛ければ不利になるぞ?】

 

心眼の忠告を聞いて陰念の姿を見ると、最初の時よりも身体が大きくなって全体的に鋭利な突起が増えているのが見える……あれが出来るようになったから踏み込んできたのか……となると俺の技量じゃ間違いなく捕まる……

 

「牛若丸……頼めるか?」

 

韋駄天は確かに強いが、反動も凄まじく大きいし、牛若丸のように意志があるわけでもないので控え室に置いてきた。とんなると今頼りになるのは牛若丸だけだ。手の中の牛若丸眼魂に声を掛ける

 

【はい!この牛若丸にお任せください!】

 

その言葉に頷きベルトのカバーを開きウィスプを取り出し、牛若丸眼魂を押し込む

 

「これならどうだ!?」

 

俺だと駄目だが、牛若丸の剣術と身のこなしなら行ける!そう思いながら腰のベルトのレバーを引く

 

【アーイッ!開眼!牛若丸!シュバっと!八艘ッ!壇ノ浦ッ!!】

 

手に持っていた剣が変形してより細身の刀を思わせる形状に変化する

 

【ぬお!?お前が牛若丸か!?お、おんなだったのか……!?】

 

【主殿ーッ!目の前に巨大な目玉の化け物が!?】

 

……これまじでどうなってるんだ?頭の中でガンガン声がする。ウィスプが笑ってるだけだったが、牛若丸と心眼だと至近距離で叫ばれてるみたいで頭がガンガンする……

 

「それは後!とりあえず目の前に集中!」

 

周りから何言ってんだ?って言う感じの声がする。頭の中で会話したっなんて言ったら可哀相な子扱いだよなーと思わず苦笑する。暫くすると冷静になった牛若丸の声が脳裏に響く

 

【失礼しました、面妖な光景に動じてしまいましたが……もう大丈夫です。参りましょう、主殿】

 

身体が軽くなったような気がする。これは義経と戦った時と同じ……いや少し鈍いかな?と俺が首を傾げていると……

 

【これくらいの憑依に抑えておきましょう。美神殿から聞いているでしょう?】

 

あーそうだよな……あんまり身体を貸すと危ないと言われていたから、完全に俺の身体を乗っ取る事は止めたのか……あの時ほどの高揚感と身体の軽さは無いけど……多分大丈夫だよなと考えていると

 

「グルオアアアアアアッ!!!」

 

咆哮を上げて襲ってくる陰念、っとと考え事をしている場合じゃない。小さく深呼吸して気持ちを切り替える

 

【私も補助する気持ちで負けるな!】

 

【この牛若丸も全力でお手伝いしますので!頑張ってください!】

 

咆哮を上げて飛び掛ってくる陰念と頭の中で響く牛若丸と心眼の激励……や、やるしかねえな……タイガーだってあれだけ頑張ったんだ。俺だって怖いからって理由で逃げたくねぇ

 

「くっそおおお!やったるわああ!!掛かって来いやぁぁッ!!!」

 

「ガアアアアアアアッ!!!」

 

返事とばかりに咆哮が放たれ、俺はやっぱ怖えぇーッ!!と仮面の下で泣きながら走り出したのだった……

 

 

 

 

「くっくく……はは……はーははははッ!!!だ、駄目だこれは!面白すぎる!素晴らしい!なんと素晴らしい余興か!!!」

 

ビュレトの予想通りガープは試験会場の中に居たが、中に居なかった。存在しているが、存在していない。

 

「全く恐ろしい技術だ。ガープ」

 

私は目の前で上機嫌に笑っているガープにそう声を掛けた。昨日急に日本に帰って来たと思えば直ぐこれだ……私も相当な偏屈だし、天才と自覚しているが、ガープは間違いなくその上を行っている。あるいは小さな閃きの差がここまでの差となってしまったのか……しかしそれにしても横島君はよく戦っている

 

「こ、このおッ!!!」

 

「グルアアアア!?」

 

素早い身のこなしで間合いを詰めて、深いダメージとは言い難いが、ヒット&アウェイで確実にダメージを積み重ねている

 

(このまま行けば、その内調伏できるな……流石私の義息子)

 

少し見ない間に随分と成長しているじゃないか?と心の中で喜んでいるとガープが笑いながら話しかけてくる

 

「そうだろう?アシュタロス。亜空間を応用した封鎖結界……中にいる者は何者にも探知できない」

 

あっと、ちゃんと話をしないと疑われるな、横島君の成長を喜んでいる場合じゃないなと小さく苦笑してから

 

「ああ、実に素晴らしいと思うよ。よく実用できる段階で持ってきた物だ」

 

今まで何者にも解明することが出来なかった亜空間を応用した結界。これは恐ろしい技術と言わざるを得ない、そして亜空間を解析するのに成功したガープの恐ろしい頭脳と科学力の高さにも正直驚愕していた……同じくらいだと思っていた、私とガープの科学力だが、ガープの方が数段上を行っている事をこの数日で嫌って言うほどに思い知らされた……まさか亜空間の解析に成功しているなんて夢にも思っていなかった……

 

(下手をすれば最高指導者も無力化される)

 

如何に最高指導者とは言え、亜空間に封じられては無力化されてしまう。今は自分の姿を隠すために使用しているが、これを攻撃に利用されると考えるとほぼ全ての神魔を無力化出来る。なんと恐ろしい技術なのだろうか……

 

「まぁ膨大な魔力消費に、陣地の作成に、小型化出来ない事と高価な魔具を使い捨てしなければならない欠点もあるのだが、亜空間を理解したのは神魔でもこの私が初めてだろうな」

 

今はその欠点があるからこそ何とかなっているが、ガープの事だ。その内この技術を攻撃に応用するようになるだろう……

 

(一緒に行動していて良かった……)

 

亜空間を制御するいくつかの素材は魔界でも稀少とされる鉱物と液体で、入手できる場所は魔界正規軍によって厳重に管理されている。その場所の強化をするように最高指導者に伝えておこう……これである程度はガープが攻撃に転化する方法を見つける為の時間稼ぎとなるだろう……

 

「それにしてもだ。横島忠夫……邪なただの男と言うのは、聊か愚かしいと言わざるを得ない」

 

むう?また訳の判らないことを言い出したぞ?私が首を傾げているとガープは

 

「名は体を現す。それは神魔に置いても人間に置いても同じ事……しかし横島忠夫は全く異なる。優秀だ、飛びぬけて優秀な男だ。時代が異なれば英雄として、それこそ神の末席に迎えられるほどの才を秘めている。これはありえない、ありえないのだよ。今の時代これだけの素質を持った人間が生まれるなどありえないことだ」

 

それは私も感じ取っていた、逆行された世界と言うことを知っている私だから言える、今の横島君は異常だと……

 

「ありえない能力に恐ろしいまでの勝負度胸、それに神魔の魂を憑依させても死なないその身体。ありえない、ああ、言い直そうありえてはならない……今の神魔が数を減らし、そして自然の神が下界を見捨て天界に帰っている中……これだけの能力を持つ人間が生まれるなど、ありえない話なのだよ。神魔がもっとも力を効かせていた神代の時代にいた巫女でさえ、これだけ破格の能力を持つものはいなかった……だから私はある推測をした……」

 

ガープは上機嫌にワインを煽りながら横島君の戦いを見ながら

 

「横島忠夫は時の特異点。そして星から支援……いや支援などとは生ぬるい……愛された男だ。ああ、それこそ宇宙意志にすら愛されているのかもしれない」

 

特異……点?聞いた事の無い言葉だ……だがガープの瞳に宿る光に危険な物を感じ

 

「ガープ。特異点とはなんだ?」

 

私がそう訪ねるとガープはやれやれと首を振り、勉強が足りないぞと呟いてから

 

「時間は巨大な大樹に例える事が出来る。一本の大きな道筋を持ち、そこから数多の分岐をしていく、それが平行世界の理論だ。それは判るな?」

 

「ああ。それは知っている、1度平行世界に干渉して、私達が神と言う世界があるかどうか調べた事もある」

 

とは言え、それはコスモプロセッサを利用した物……逆行前の世界で見たものだ

 

「ほう?そんな技術が?ぜひ見たいものだが?」

 

「実験中の事故だ。恐らく再現は出来ないし、私以外では無理だ。固有能力だからな」

 

固有能力。私やダンタリアンと言ったソロモンの中でも特殊な固体のみが持つ能力。ガープなら人間の記憶の操作や技能の喪失……72存在するソロモンの中でも所有するのは極僅かと言う極めて特殊な能力だ。

 

「ふむ、それならば仕方あるまい。固有能力の再現。それは確かに研究しているが、今の段階では机上の空論だからな」

 

固有能力の再現か……そんな事をされたらますます神側に勝機はないな。本当に恐ろしい男だよ、ガープは

 

「まぁそれについては今後聞こう。特異点についてだが、簡単に言えば時間の修正力を受けない存在。そう、一言で言おう……歴史改変を許された存在。それが特異点だと私は考えている」

 

「歴史改変?そんな事はありえないだろう?」

 

歴史改変は間違いなく宇宙意志や最高指導者に阻まれる。それこそ机上の空論だ

 

「まぁ確証は無いさ、今後実験して調べていく段階だがな……さてとこのままでは不味いな、データが取れない」

 

私とガープが話している間も横島君は魔装術に取り込まれていた陰念君を少しずつだが押し込んでいた。それは牛若丸眼魂のスピードに魔装術に取り付いている悪魔が対応できていないから。このまま行けば押し切れると私は考えていた……

 

「アシュタロス。良いことを教えてやろう。私が開発した狂神石は生き物だ、石だが生き物なのだ、そして取り込んだ物の遺伝子情報や、魔力情報を取り込みその性質をコピーする」

 

それは聞いている、ガープ達の切り札なのだから。どうして今その話を……?私が首を傾げているとガープはニヤニヤと笑いながら

 

「そしてあの男には、消滅したあるソロモンの魔神の魔力情報を定期的に狂神石を摂取させ、それを取り込ませた」

 

ガープが指を鳴らすと同時に陰念君が苦しみ始める

 

「魔族を模倣する魔装術。そして取り付いた者の力を吸収して変化する狂神石……その2つの実験だ。アスモデウスの炎、メドーサの石化……そしてそれに加えて消滅し、眠っているソロモンの力を狂神石に取り込ませ、情報取り込ませた。さてさてその3つの要素が統合されるのか?どれか1つに特化するのか、それとも3つの能力がバラバラに効力を発揮するのか?楽しみだとは思わないか?」

 

狂気的な笑みを浮かべるガープを見て、私は思わず横島君の無事を祈らずには居られないのだった……

 

 

 

いける、なんとか押さえ込める。俺は数秒前まではそんな風に思っていた……だが

 

「う、嘘……だろ?」

 

肉を裂く不気味な音が響き、苦悶の叫びが響き続ける。陰念の背中が裂けそこから7本の竜を思わせる首が現れ、全身をずんぐりとした丸みを帯びた装甲に覆われる

 

「ウルルルウォオオオオオンッ!!!」

 

狼のような咆哮と共に両手が真紅に染まり、漆黒の炎を吹き出し始める。その余りの熱で周囲の風景が歪んでいるのが見える……あんなの掠っただけでも死ぬぞ……

 

「魔族!?魔族だったのか!?」

 

「精霊石を!ありたっけの精霊石を持って来い!」

 

周囲の人間が陰念の姿を見て魔族と決め付け道具を集め始める。だがそれは不味い!それはしてはいけない!竜の首が動き出した関係者を見つめその口を開いた。そこから涎が垂れているのを見て、餌と認識したのだと本当的に理解した。このままではあの人達が喰われる。そう思った瞬間

 

『止めなさい!全員その場を動くな!!』

 

琉璃さんの怒声が試験会場全体に響き渡る。全員の視線が解説席の琉璃さんに集中する、このタイミングで何を言うというのだろうか

 

『陰念選手はとある術の制御の失敗で暴走状態になっています。これはドクターカオスの分析で断定出来ています。そうですよね?ドクターカオス』

 

『うむ、決して魔族などではないとワシが証明する。何よりもだ、今下手に動くと襲われる危険性がある、良いか。絶対に動くなよ』

 

あのー俺はどうしたらいいんですかね?審判はとっくの昔に逃げているけど、俺逃げたら絶対に失格ですよね?俺の視線に気付いた琉璃さんとカオスのジーさんは露骨に目を逸らして

 

『『頑張れ』』

 

何を!?何を頑張って言うんだ!?あの見るからに化け物を何とかして倒せと!?最初はいやいや助けたいと思ったけど、ここまで化け物になっちまうと絶対俺だと無理だと思うんだけど!

 

「横島ー!頑張って!なんとか出来るわよー!」

 

「……落ち着いて、よく見ろ!大丈夫!きっと何とかなる!」

 

【死んでも生きれますからー!死ぬほど痛いですけどー!】

 

蛍とシズクの応援?すっごい頼りない声援と、おキヌちゃんの応援なのか良く判らない声……と、とりあえず……どうするか?ちらりと横目で確認すると向こうもこっちを見てて……

 

「ニタアッ!」

 

「ぎゃー!来たぁッー!?」

 

変身してるけど、向こうも変身している。だから条件はイーブン、更に言えば向こうの方が遥かに好戦的だ。なんで判るかって?だっ俺てを見て僅かに見えている口元が大きく歪んだ。酷く好戦的で邪悪な笑顔……そしてそれと同時に7本の竜の首のうち、2本が口を開き炎を吐き出してくる。咄嗟に飛んで避けようとした瞬間

 

【横島駄目だ!その場に留まって護りを固めろ!】

 

【主殿!早く!】

 

心眼と牛若丸の警告の声によく反応できたと思う。腕をクロスして護りを固めた瞬間

 

「がっはああ!?」

 

試験会場を覆っている結界に背中から叩きつけられていた。な、なんだ何が起きたんだ?頭を振りながら目の前を見ると

 

「うっそお!?」

 

『わ、ワシの作った試験会場の床をぶち抜いたじゃと!?』

 

床をぶち抜いて竜の首が2本俺の背後から奇襲を仕掛けてきていたのだ。やばあ……これ絶対やばい……距離を取っても駄目。近づいたら……絶対あの炎の拳で殴られる……牛若丸の身のこなしがあったとしても……

 

【横島ぁ!止まるな!動けーッ!!】

 

【主殿!戦闘の中で考え事をしていたら駄目です!】

 

「横島避けなさい!早く!立って逃げるのよ!」

 

【横島さーん!立って!早く!前を見てぇーッ!!】

 

心眼と牛若丸、それに蛍とおキヌちゃんの悲鳴にも似た声が聞こえて、顔を上げるが……それはあまりにも遅かった……

 

「シアアアアアアッ!!!」

 

目の前に迫る炎を纏った豪腕……もうそれはどう考えても回避できるタイミングではなくて

 

「う、うわああああッ!?」

 

反射的に腕をクロスして、直撃だけは防いだがアッパーのように降りぬかれたその衝撃で、腰のベルトから牛若丸眼魂が飛び出して試験会場の外に転がっていく

 

「うっぐう……ほ、本格的に不味い……」

 

牛若丸眼魂が弾き飛ばされた事でウィスプに戻ってしまった……ウィスプではあの攻撃に対応しきれない……韋駄天眼魂を持って来なかったことを後悔していると

 

「あ、あれ!?な、なんで!?」

 

パーカーがいつの間にか脱げて最初のノッペラボウのような姿に戻っていた。それにベルトから勝手にウィスプ眼魂も飛び出している……も、もしかして時間切れ?ここまで長く変身してた事なんてないし……このままだと確実に死ぬ?俺がそんな不安を感じているとウィスプ眼魂が俺の左腕の周りを回転する

 

「う、え?な、なんだ!?」

 

いつの間にか腕にランタンか?それを思わせる篭手が装着されていて……

 

【イヒヒー!!】

 

ウィスプ眼魂がランタンの真ん中に飛び込むと同時に篭手から音楽が響き始める。だがその音楽はベルトの物よりも激しいものでエレキギターのような音だと思った、それに言ってることも微妙に違う……

 

【アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!】

 

うーん。これどこ引けばいいんだ?ベルトみたいにレバーないんだけど……って!考えてる場合じゃねえ!

 

「ガアッ!!」

 

咆哮と共に放たれる火炎を転がりながら回避する。えーと、どこだどこだ?レバーはないし……ん?開いてる?眼魂が嵌っている窪みの上と下が開いていて、もしかしてこれを閉じるのか?直感を信じてカバーを閉じると

 

【アーイ!開眼!ジャック・オー・ランターンッ!トリック・オア・トリートッ!ハ・ロ・ウ・ィ・ン!ゴ・ゴ・ゴースト】

 

ランタンから黄色いパーカーが飛び出したと思ったら、目の前で反転する。すると黄色いパーカーは黒いパーカーへと変化する、それを身に纏うと顔の上半分が何かに覆われる

 

「んん?なんだ?」

 

視界が狭くなったという感じはしない、何だこれ?バイザーか?でもこれで何とかなるのか?いや、ウィスプがこの姿になったということは何か意味があるのだと判断する

 

「ええい!出たとこ勝負だ!行くぜ!ウィスプ!】

 

【イッヒヒー!】

 

この眼魂の能力が何か判らないが牛若丸眼魂は無いし、韋駄天も手元に無い。なら今はこれに賭けるしかない、自分がどんな姿をしているのか判らないが、とりあえずこれにも何か特別な力があるに違いないと思い。俺はウィスプにそう声を掛け陰念と再び対峙するのだった……

 

 

 

次回仮面ライダーウィスプは!?

 

 

戦いの中更なる変化を遂げた陰念と対峙する横島。無数に放たれる火球それはさっきまでの横島には回避することの出来ない攻撃だったが……

 

「み、見える!?見えるぞ!?」

 

ジャック・オー・ランタン魂の持つ能力のおかげか、その攻撃を避けることが出来た!ジャック・オー・ランタン魂の未知なる能力とは

 

【ダイカイガン!ジャック・オー・ランタン!オメガバースト!!】

 

そして長い戦いの末。漸く陰念を倒すことが出来たが……

 

【ギャハハハーッ!!!】

 

陰念の身体から離れた何かはそのまま横島の体を奪おうと迫るッ!!

 

 

次回仮面ライダーウィスプ「呪いの眼魂」

 

 

リポート25 GS試験本戦 ~終焉の前奏曲~その6へ続く

 

 




戦闘の予定だったのですが、全然戦闘がありませんでしたね。反省です……やはり戦闘シーンは難しい、特に仮面ライダーとなると更に難しいですね。ガープとアシュタロスの話で枠を使いすぎたかな?と反省しております。その分。次回こそは戦闘メインで行きたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。