GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はブリュンヒルデ事聖奈と横島の試合をメインに書いていこうと思います。どういう結果になるのか楽しみにしていてください、それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その2

 

リポート25 GS試験本戦 ~終焉の前奏曲~その2

 

いつもの時間に目覚まし時計の音が鳴る。早く寝たおかげかすんなりと起きることが出来目覚まし時計を止める

 

「う、うーん……」

 

いつもどおりの時間なので朝5時に起きてしまった。もう少しゆっくり休んだほうが良かったかな?とも思うが

 

「いや、何時も通りが1番だろ」

 

変な風に生活リズムを変えるとそこから全部崩れてしまいそうに思える。ベッドから抜け出してジャージ上下に着替え

 

「うっし、行くか。牛若」

 

ウィスプや韋駄天ではなく、牛若丸眼魂を選んだのはちゃんと意思疎通が出来て、なおかつ兵法(?)を教えてくれるので、散歩のついでに軽く体を動かす時のアドバイザーとしてとても助かっている

 

【はい、お供します】

 

牛若丸眼魂をジャージのポケットに押し込み部屋を出ると

 

「みーむう?」

 

「うきゅ?」

 

リードを持って待機していたチビとモグラちゃんがいた。普段なら部屋に入ってくるがシズクに注意されていたのか部屋の外で待っていたようだ。チラチラっとこっちを見ているのは散歩に連れてってくれる?と尋ねているように見えて

 

「散歩行こか?」

 

どうせランニングに行くつもりだったので散歩に行くか?と尋ねるとガバっと顔を上げて

 

「みーむう♪」

 

「うきゅー♪」

 

嬉しそうに返事をするチビとモグラちゃんの首輪にリードの紐を繋ぎリビングの前を通ると

 

「……散歩に行くのか?」

 

驚いた表情で尋ねてくるシズク。まぁGS試験当日に朝早く起きてランニングに行く馬鹿は居ないよなあと苦笑しながら

 

「いつも通りが1番力が出ると思ってさ、7時までには戻るから」

 

結局の所普段通りが1番リラックス出来ると思う。シズクは納得して無さそうな感じだったけど頷いて

 

「……一通り身体を動かしたほうが本番で力が出せるな。気をつけて行って来い、だが7時30分までには戻れよ?美神達が迎えに来る」

 

判ってると返事を返す、普段の散歩のコースなら今の時間で往復してもまだ時間が余るから全然余裕の筈だ。俺はそう考えチビとモグラちゃんのリードを持ち、いつも通りの散歩のコースを走り始めるのだった

 

「うきゅーうきゅきゅーッ!!!」

 

「みみむううーッ!!!!」

 

土手に座り込んでタオルで汗を拭う。蛍の決めてくれた散歩のコースだが、坂が多くあり歩いているだけでも汗が出てくるが、今日は軽く走ってきたのでかなり汗をかいてしまった。土手で並んで競争しているチビとモグラちゃんを見ながら呼吸を整えていると

 

【あれー?横島君じゃないですか?こんな朝から何してるんです?】

 

少し能天気な声で俺を呼ぶ声……この声って……もしかして振り返るとそこにはやはり予想通りの人物が居た

 

「沖田ちゃん。おはよう」

 

【はい。おはようございます、横島君】

 

竹刀袋って言うのかな?それを背中に背負って、ニコニコと笑う沖田ちゃんがゆっくりとこっちに降りてきながら手を振っていた。着物姿なのが実に惜しい、スカートなら見えたかもなぁと思わず思ってしまうのだった……

 

【ほえーGS試験ですかー、沖田さんは良く判りませんが、新撰組の入隊試験みたいな物ですかね?】

 

隣に座った沖田ちゃんにGS試験の話をすると、予想通りと言うか、案の定と言うか反応があんまり良くない。元々は映画の登場人物が魂を得て具現化した映霊と言う存在だから、現代の知識はやはり乏しいのかもしれない。その代わり映画の年代の知識は恐ろしいまでの博識らしいけどな

 

「ああ、なんか受験生同士の組み手があるらしいから、試験の前に身体を暖めておこうかなあってさ」

 

軽く走りこんだおかげか身体が良い感じにほぐれていると笑う。だけど沖田ちゃんは真剣な顔をして何かを考え込む素振りを見せている。どうしたんだろうか?

 

「みむーッ!」

 

「うきゅ!?」

 

ぺいっとチビにコロンと転がされるモグラちゃん。シズク曰くトレーニングらしいけど、見ている分には可愛いだけだよなーと思って笑いながらその光景を見ていると

 

【判りました横島君。ここであったのも何かの縁。少しばかり私が稽古を付けてあげましょう】

 

はい?どうしてそうなるの?俺は膝の上におかれた木刀を見て間抜けな声で返事を返すのだった……

 

【握りは適当でいいです、横島君はそう言うの判らないと思いますから】

 

なんでえ……?なんで俺は木刀を持って沖田ちゃんと向かい合っているのだろうか?

 

「みーみー♪」

 

「うきゃー♪」

 

俺の真似をしているのか、チビが木の棒を持って振り回し、モグラちゃんが前足で軽くそれを弾いて遊んでいるのを見て、どうしてこうなったんだろう?と思っていると

 

【良いですか横島君。そこから動かず、木刀を私に向けたまま立っててください。良いですね?】

 

立ってるだけ?まぁそれくらいならと頷いた直後。周囲の空気が一気に冷えた感じがして

 

「う……あっ……」

 

そのままよろよろと後ずさりして尻餅をついてしまう。チビとモグラちゃんが毛を逆立てて唸っている、い、今何が起きたんだ?

 

【これが殺気です。GS試験というのは私には判りません。ですが、悪霊と戦うという職業上こういう機会は多くあるでしょう。悪霊のようなおぼろげな殺意ではなく、人間の殺意と言うのはこうも強烈な物です。横島君立てますか?】

 

地面に手を着いて立ち上がろうとするが、手にも足にも力が入らず立ち上がることが出来ずにいると

 

【どうぞ】

 

手を差し出される。少し気恥ずかしい気持ちになったが、沖田ちゃんの手を取って立ち上がる。すると沖田ちゃんはまた元の場所に戻って

 

【ではもう1度。下がっても良いですが、決して尻餅など着かぬ様に】

 

「ま、待ってってうお……」

 

再び強烈な寒気を感じ、俺は今度は木刀を落としてしゃがみ込んでしまった。こええ……なんか、説明しにくいんだけど今めちゃくちゃ怖かった

 

【主殿。牛若をお出しください】

 

ジャージの中から聞こえてきた牛若丸の声に頷き、眼魂を取り出すとそのまま肩の上に乗せてくださいと言われ、落ちないのか?と思いながら肩の上に置くと吸い付くようにして肩にくっつく。すげ……こんな事が出来るのかと感心していると

 

【では次です、行きますよ】

 

再び凄まじいまでの沖田ちゃんの眼光が俺を貫く、息が出来ない、目の前がチカチカする……再び倒れそうになった時

 

【主殿。大きく深呼吸をしてください、貴方もまた修羅場を通って来ている。殺気に気圧される必要などありません】

 

牛若丸の助言で一瞬だけ我に返る。大きく深呼吸と言われたが、本当に小さい……それこそ溜息程度だが呼吸をすると身体の強張りが緩んだ気がした

 

【助言のおかげとは言えお見事。良く私の殺気に耐えましたね】

 

【人斬りめ。貴様何をするか、今の殺気。心臓の弱いものなら死んでいたぞ】

 

え……そんなにやばかったの……沖田ちゃんを見るとあははっと笑っているが、明後日の方向を向いて、吹けもしない口笛を吹こうとしているのが見えて

 

「沖田ちゃん……」

 

俺がジト目で見つめていると沖田ちゃんの良心が耐えられなくなったのか

 

【すいませんでした】

 

ちょっと調子に乗ってましたと謝ってくる沖田ちゃん。思わず苦笑していると

 

【お詫びと言っては何ですが……横島君。貴方にしか出来ない必勝の策をお教えしましょう。これなら格上が相手でも決まれば勝つ事が出来ると思いますよ】

 

必勝の策?……なんだろう。気になるな……俺はどう考えても他の参加者よりも数段劣っている。何か一手欲しいと思っていた所だ

 

【私は信用できないと思いますけどね】

 

牛若丸の意見を聞いて少し悩んだが、俺は沖田ちゃんの言う必勝の策とやらを聞くことにした

 

【っとまあこんな感じです。多少危険ですがやってみる価値はあると思いますよ、じゃ、GS試験とやら頑張ってくださいね】

 

そう笑って次の仕事があるのでーと言って歩いて行く沖田ちゃんを見送り、俺も家へ戻るのだった……

 

「どこ行ってたの!早く準備しなさい!」

 

どうも沖田ちゃんとの稽古で思ったより時間が経ってしまったようだ。家の前で腕を組んで怒ってる美神さんと

 

「横島。シズクがおにぎりを用意してくれてるから車の中で食べて、とりあえず着替えてきて」

 

蛍からジャージから着替えてくるように言われ、判ったと返事を返し自分の部屋に駆け込むと

 

【あ。横島さん。お着替え用意しましたよー?】

 

おキヌちゃんが部屋で俺の着替えを用意してくれていて、これも美神さんの指示なのか?と思って服を受け取ったけど、車の中で聞いたらおキヌちゃんの不法侵入だという事が判り車の中が一時騒然としたのだが、あまり関係のないことなのでここは割愛しておこうと思う……とりあえずおキヌちゃんの不法侵入を防いで、なおかつチビ達に悪影響に無い何かがないか?今度カオスのじーさんに相談してみようと思うのだった……

 

 

 

 

さて……そろそろですね。先ほど抽選で私と横島忠夫の試合が決定した。と言ってもこれは最初から決まっていたので、殆ど八百長に近い物がありますが……未熟なGS見習いと聞いているので安全に敗退させるには事情を知る私が1番好都合と言うことなのでしょうね

 

「良いですかブリュンヒルデ、お願いですから横島さんに怪我だけはさせないでください。彼はこれから伸びる逸材なのですから、自信をへし折るのも駄目ですからね」

 

小竜姫がうるさいくらい注意してくるので、明後日の方向を指差して

 

「蛍が……速いですね……」

 

蛍と聞いた瞬間帽子をかぶって逃亡する小竜姫。よほどトラウマになっているんでしょうね……竜族にとって角は誇り、それをへし折られる恐怖はきっと凄まじい物があるんでしょうね。まぁ来ていると言うのは嘘なのですが……

 

「あら?」

 

よく見ると私の目の前に手紙が……相当慌てていたのか字がかなり崩れていますが、小竜姫の文字と言うことは判りました

 

【唐巣さんと再び白竜寺の周辺を調査してきます。緊急事態なら使い魔で連絡してください】

 

超加速を使ったのか紙がプスプスと焦げている。正直使うところが間違っていると思いましたが、そこは混乱していると言う事で無理やり納得し

 

「さてと……行きましょうか」

 

丁度リングに呼び出しのコールが掛かったのでゆっくりと立ち上がり、壁に立てかけてあった槍を手にする

 

「うーん。やはり軽いですね……」

 

普段愛用しているミスリル銀の大槍を使うわけには行かないので、急遽ドクターカオスに作成してもらった鉄の槍。形は私の愛用している槍と同じなのですがやはり軽い。片手で掴んで軽く振り回しますが、やはり軽くて感覚が心もと無い

 

「さてと……確かめさせて貰いましょうか……私の英雄……」

 

無論私とて魔族、人間が勝てる相手ではない。まず勝つことは間違いないだろう……だから私はこの戦いで横島忠夫が私の英雄足りえる存在なのか?それを確かめて見ることにした。私の見立てでは横島忠夫は窮地の中で己の力を解放するタイプ……適度に追い詰めればその才能を開花させる筈だ

 

「楽しみですね」

 

小竜姫からも才能に溢れると聞き、韋駄天の時の勇敢な姿……実際手合わせするのが楽しみですと呟き、私はリングの上に上るのだった……

 

「あー緊張するー」

 

ふーっと溜息を吐きながら屈伸運動をしている横島に

 

「春桐聖奈です。どうかよろしくお願いしますね」

 

「あ、横島忠夫っす。よろしくお願いします」

 

軽くお互いに挨拶をしてから距離を取り、槍を手にして霊力で刀身を覆う。これで結界の中でも打撃として認められる。

 

「うっは……コワ……」

 

距離を取って拳を構える姿を見て、まさか素手で戦うつもりなのですか?と問いかけると

 

「いや。俺神通棍使えないし、破魔札のコントロールも大して出来るわけじゃないんで」

 

……丸腰相手ですか……一応除霊道具は3つまで持ち込めるので何か持っているかもしれないですが、武器ではなく、護りを固める系の除霊道具ですかね?

 

(少し気勢を削がれた気分ですね)

 

何か武器を持ってきていると思ったんですが……丸腰相手だと少しばかり……っとここまで考えたところで思い出す。あのバンダナには小竜姫と天竜姫様の竜気が込められている。生半可な攻撃なら有効打になりませんね、それを思い出した所で試合開始!の合図があったのでまずは様子見と言う意味も込めて

 

「はっ!」

 

強く踏み込むと同時に槍を足元目掛けて突き出すと

 

「のわっ!?トトトッ!?」

 

足に当る直前に飛びのいてかわされたのでそのまま連続で足を狙って突いてみる

 

「あぶな!?ああばばばっ!?」

 

ぴょんぴょん跳ねて私の攻撃をかわす、その姿はみっともない姿と言えるがその動きに対してその目は真剣その物

 

(見切っているのですね)

 

私の一撃は決して遅いものではない、それは人間に化けている今もそれは変わらない。見てからかわすそんな不可能なコトを平然とやってのけている

 

(素晴らしい動体視力ですね)

 

心眼のサポートがあると考えても、その声を聞いてから避ける。それは普通の人間の反射神経では不可能だ、そう考えると横島は目で見て、耳で聞いてから避けると言う事を平然とやっている。それは神懸り的な動体視力とそれに反応できるだけの身体能力を持っているという証拠

 

(少しばかり試して見ますか……)

 

心眼がサポートしているか、それとも自前の反射神経で避けているのか?それを試す為に1度本気で攻撃して見る

 

「シッ!!!」

 

一息に4連続の突き。これは人間なら回避できる一撃じゃない、必中を確信した一撃だったが

 

「うっひい!?どひゃっ!?のおおおっ!?!?」

 

情けない声を上げながら3つの突きを回避した。だが胸への一撃は当る!そう思った瞬間

 

【させん!】

 

バンダナから目が浮かび、そこから放たれた霊波が槍の穂先を弾く。やはり心眼の補助を受けて……

 

「バンダナが喋ったあああああああ!?!?」

 

横島の動揺しきった悲鳴が周囲に響き、私はさっきまでの攻撃を横島が自分の実力で回避していたのを知って、横島の評価を上昇気味に修正するのだった……

 

 

 

情けなく逃げ回っていた横島だけど、ちゃんと聖奈さんの攻撃を見て回避していたのか、ただの一撃も有効打を喰らってはいない。これは正直予想外だった、いや私が横島の能力を低く見すぎていたのかもしれない

 

「美神さん。ちょっとこれは想定外ですね」

 

仮にも魔族。早い段階で横島をダウンさせて敗退させてくれると思っていたんだけど……試合開始から10分。ただの一撃の有効打が無い事に聖奈さんの雰囲気が鋭くなっていっているのが判る。このままだと横島を本気で攻撃しそうで怖い

 

「……そうね。横島君の反射神経を少し甘く見てたわね」

 

でもこのままなら判定で横島君の負けになるわと呟く美神さん。私もその意見に賛成だ。攻撃するという意志が見えないからか、審判が鋭い視線を向けている。このままなら減点されて横島の負けになる

 

(出来れば怪我をする前に負けて欲しいわ)

 

横島には怪我をして欲しくない。だから今の内に敗退してくれたら後はシズクとかに護って貰えば、安全にGS試験を終わることが出来る。そう思って試合を見ていると

 

「……あの馬鹿!本気になったぞ」

 

シズクの言葉にリングを見ると、聖奈さんの目付きが変わり、4つの閃光が横島に向かって放たれた……そのスピード、一撃でも当れば致命傷になりかねない一撃に思わず

 

「聖奈さん!?」

 

観客席から聖奈さんの名前を呼んでしまう。当る、横島が吹き飛ばされる光景を想像した瞬間

 

【させん!】

 

バンダナから目が浮かび、そこから放たれた霊波が槍の穂先を弾く。心眼が横島を助けてくれた……そのことにホッとしていると

 

「バンダナが喋ったあああああああ!?!?」

 

横島の絶叫が試験会場に響く、普段は怪生物とかとか気にしないのに、ああいうのは本当に駄目なのね。っと言うか予選の段階で出現していたのに、横島と話をしてなかったのね……あのバンダナ……バンダナが喋ったことに動揺している横島に聖奈さんの攻撃が迫る

 

「みーむうー!!!」

 

「うきゃーう!!」

 

「コーン!」

 

【横島さん!避けてぇーッ!!!】

 

チビ達の鳴き声とおキヌさんの声が聞こえたのか、横島はしゃがむでも、防御するでもなく、上半身を反らすという方法でその一撃を避けた

 

「とあああああ!?あぶねーええええ!?ふがっ!?」

 

上半身をそらして穂先を回避し、そのままの勢いで地面に頭を叩きつけて頭を抱えて転がり回っている。試合を見ていた同じ関係者から失笑の声が聞こえてくる。でもそれは表面上しか見てないから笑う事が出来ているのだろう

 

「令子。あんた弟子にどういう指導してるワケ?格闘家にでもするの?」

 

エミさんが私と美神さんを見つけて隣に座りながら尋ねる。横島はあの神速の槍を見て避けている。臆病なのと怖いのが合わさって情けない悲鳴を上げているが、本来なら楽勝で避け続けることが出来ている

 

「普通の霊能力の指導しかしてないわよ」

 

「じゃあなに?あの反射神経と動体視力は素なワケ?」

 

エミさんのまさかと言う言葉に頷くとエミさんは溜息を吐きながら。令子より先に会ってスカウトしたかったワケと呟いている。膨大な潜在霊力に恐ろしいまでの運動神経……スカウトしたいと考えているGSはエミさんだけじゃなくて、一部のGSは食い入るようにして横島を見ている。そう才覚に気付いたほんの一部の優秀なGSだけが横島の本質を見極めんとしている

 

「はっ!」

 

「ぐっ!?」

 

横島の苦悶の声に思考の海から引き上げられる。リングを見ると聖奈さんの横薙ぎの一撃が横島の胴を捕らえ弾き飛ばしているのが見えた。でもこれで決まった、横島が安全にGS試験を終われる……そう思った

 

「ふーこれで1つ不安が……」

 

美神さんも安心しきっていた。魔族の一撃を受けて横島が耐えることが出来ないと……それは聖奈さんも同じだった。ゆっくりと近づき石突で横島に止めを刺そうとした瞬間

 

「っしゃあッ!!」

 

吹っ飛ばされた横島が素早く立ち上がり走り出す。よく見るとGジャンの内側に翡翠色の光が見えていた……

 

(部分展開!?)

 

サイキックソーサーを攻撃が当る場所だけに展開していた。だから横島はあの一撃を受けていない

 

「クッ!?」

 

槍を反転させて穂先を横島に向ける聖奈さんだったが、もう遅かった……横島の右手はうっすらと輝く翡翠色の光に包まれていて……横島が最初からこの一撃だけに全てを賭けているのが判った

 

「いって……このおっ!!!」

 

穂先が横島の肩を掠るが、横島は既に聖奈さんの懐に飛び込んでいて……今まで攻撃しなかったのも、避け続けていたのも……この一瞬のチャンスを確実に掴むため

 

「すんませんッ!!!」

 

謝ってからうっすらと光る翡翠色の拳で聖奈さんの顎を打ち抜いた……ここから見ていても判る最高の角度とスピードだった……いかに魔族と言っても身体の作りは人間と同じ。顎を打ち抜かれ脳を揺らされた聖奈さんの手から槍が零れ落ち……

 

「……刹那の一撃……お見事……です」

 

顎を打ち抜かれ意識を失ったのか、ぐらりとその長身が崩れ落ちる。横島はそれを抱きとめて、リングの上に横にして審判の方を見る。劣勢だった横島が勝った事が信じられないのか呆然としている審判に

 

「おい。ワイの勝ちやろ?」

 

確認と言う感じで問いかけると、審判はその一言で我に返ったのか気絶している聖奈さんを確認してから

 

「横島忠夫選手の勝ち!!」

 

横島の手を掴んで。今漸く横島の勝利宣言が試験会場に響いた

 

「美神さん……どうしましょう?」

 

「……最悪の展開だわ」

 

ここで横島が負けて聖奈さんが勝ち進む物だと思っていた。横島じゃ勝てないし、向こうも負ける訳ないと思っていた。それが行き成りひっくり返ってしまった事に私も美神さんも頭を抱えるのだった……

 

「……良し、横島よく頑張った」

 

「みーむー♪みーむー♪」

 

「うきゅうー♪うきゅー♪」

 

「ココーン♪」

 

【横島さんが勝ちました!やったやった♪】

 

横島が勝ったら駄目だって説明していたのに、いざ勝つ所を見たら喜んでいるシズクやおキヌさんを見ながら、計画が行き成り狂ってしまった私達はどうやって狂った計画を修正するかで頭を悩ませることになるのだった……

 

 

 

 

「へ、へへ……やった。俺もやれば出来るもんだな……」

 

沖田ちゃんに朝言われたこと。それはシンプルな言葉だった

 

【相手が圧倒的格上なら勝機は一瞬にも満たない刹那です。死んだ振りをしてもいい、逃げ回っても良い。相手の気が緩んだその瞬間……もしくはトドメを刺す為に近づいたその一瞬。その数秒にも満たない時間に全てを賭け、渾身の一撃を全力で叩き込めばいいんです。相手の懐に飛び込んで、全力の一撃を叩き込むのです。自分も危険ですが、それしか横島君に勝つ手段はないです】

 

様は捨て身で突っ込めという話だった。痛いのは嫌だけど、その一瞬に勝機があるならその一瞬に賭けて見たかった。流石に相手が女性だったので全力で攻撃するということが出来ず、かと言って一撃で倒すことを考えると意識を刈り取るしかない。悩んだ結果顎を打ち抜いたけど……やっぱり女性の顔を殴るのは良くなかったと少しだけ反省しているとドッと疲れが出てきて立っていることが出来ず

 

「も、もうこんな綱渡りはごめんだな……」

 

通路の壁に背中を預けてそのまま座り込む、聖奈さんの槍は速くて恐ろしかった。朝沖田ちゃんの本気の殺気を受けてなかったら、足が竦んで動く事が出来なかっただろう。

 

「んで……えっと……なんて呼んだら良い?」

 

視線を上に上げて尋ねる。試合中急に喋りだしたバンダナには驚いたが、そのバンダナが霊力を制御してくれたことで聖奈さんの薙ぎ払いの一撃を耐えることが出来た。もしあれが無かったら反撃するまでもなく、あの一撃で終わっていた可能性が高い。それほどまでにあれは強烈な一撃だった……急に喋りだして我が防ぐと言ったバンダナに問いかける

 

【そうだな。自己紹介がまだだったな、我は小竜姫様と天竜姫様の竜気によって生まれた、お2人の命により、お前を護り導く者……心眼とでも呼んで貰おうか?】

 

言葉は硬い感じだけど、その口調は柔らかい物でなんか不思議と安心できた。最初は無機物が喋ったと言う事で大分動揺したけど、あんがい落ち着いてくると怖いとか不気味とか思わなかった。やっぱり妖怪とかに慣れてるからかなあと思いながら、心眼の言葉で気になったことをたずね返す

 

「竜気?……え?小竜姫様にキスされた時?」

 

あのキスで心眼が生まれたのか?じゃあ。やっぱりあれは儀式だったんだな、なんかがっかりした気分だけど……うん。まぁそうだよなーあの小竜姫様が俺なんか好きな訳ないよなー……いやまぁ大分がっかりしたけど、なんか安心した自分もいてなんか複雑な気分を味わっているとふと気になった

 

「なんで天竜姫ちゃんの竜気が?」

 

小竜姫様はとはキスしたけど、天竜姫ちゃんとはキスなんてして……え?じゃあ、まさか小竜姫様と天竜姫ちゃんがキスしたのか?と考えていると

 

【竜族同士の竜気の受け渡しはそんなに難しい物じゃない、決してお前の想像しているようなことはしていない】

 

心眼の鋭い突っ込みにそりゃそうだよなと納得する。うんうん、そうだよな……なんかものすごく安心した

 

「じゃ心眼は俺を護ってくれるのか?」

 

【出来る限りの範囲だがな。そしてお前の霊力の導きを行おう。お前が真の霊能者となる為に】

 

真の霊能者か……今の俺にはその真の霊能者がなんなのかは判らないが、頼もしい味方が出来たと思えばいいんだよな。俺はバンダナに手を伸ばし紐を解く

 

【む?どうした?】

 

紅いバンダナの中心に浮かぶ眼。この絵を見ると少し怖いけど、でもこういうのは大事だよな

 

「じゃ、改めて、俺は横島忠夫。これからよろしく頼むな、心眼」

 

【……ああ。よろしく横島。我は心眼。お前を護り導く者……我が存在する限り、お前を護り導く事を誓おう】

 

ああ。よろしくなともう1度返事を返し、バンダナを頭に縛りなおして俺は美神さん達がいるであろう観客席に向かって歩き出すのだった……

 

リポート25 GS試験本戦 ~終焉の前奏曲~その3へ続く

 

 




ブリュンヒルデ事聖奈さん敗退しました。朝の沖田ちゃんとの出会いと、心眼の覚醒によりブリュンヒルデを撃破することに成功【?】しました。ですが本来は上位魔族のブリュンヒルデがあんな一発で撃破されるわけがないですよね?ブリュンヒルデにはブリュンヒルデの目的があり、わざとKOされた感じですね。それについては次回の話で書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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