GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話で予選の話は終了になり、本線の話に入っていきます。今回は横島が拉致された場所から始めていこうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その6

 

 

リポート24 GS試験予選 ~渦巻く悪魔の思惑~ その6

 

目を開くとそこには見覚えのない真っ白い天井……

 

「知らない天井だ」

 

何となくそう言わなければと思いそう呟く……ここはどこだ?ショウトラに突進されたのは覚えているんだけど……俺どこに運ばれたんだ?そしてショウトラは何故俺に突進してきたんだ?ショウトラの突進のダメージが残っているのか、まだ痛む背中に顔を顰めながら身体を起すと

 

「あ~まだ駄目よ~横島君~ちゃんと寝てないと~」

 

メイド服?いや、何か違うな……なんだろう?あの格好……フリルの付いたエプロンと赤い十字の付いた帽子……ナースさん?そんな格好をした冥子ちゃんが俺の前に来て、まだ寝てないと駄目よと言ってベッドに向かって軽く押す

 

「おわっととと……」

 

俺を押した力は本当に弱い物だったが、バランスを崩してベッドに倒れてしまう。結構ショウトラの突進のダメージは大きかったようだ

 

「ショウトラちゃんが~迷惑をかけてごめんね~?久しぶりに横島君にあえて嬉しかったみたいなの~私も~久しぶりに会えてすっごく嬉しいし~♪」

 

嬉しかったのか、あれ……じゃあ俺に体当たりをしてきたのって俺を冥子ちゃんの所に連れて来ようとしたから?

 

「クウーン……」

 

ベッドの近くで伏せているショウトラ。どうも冥子ちゃんに怒られたのか、元気がない

 

「本当にごめんね~」

 

手を合わせてごめんねと言う冥子ちゃん。そう言われても俺自身はそんなに気にしてないしなーそれに俺もモグラちゃんとチビの散歩の時に最近ショウトラと冥子ちゃんに会わないなーって思ってたし……ショウトラも式神だけど犬だし、懐いてくれているのは正直言って悪い気はしないし……

 

「じゃ、また今度散歩する時にジュースでも奢って貰おうか」

 

ついでにチビとモグラちゃんのお菓子もと付け加えると冥子ちゃんは一瞬きょとんとした顔をしてから

 

「ええ~約束するわ~♪また一緒にお散歩しましょ~♪」

 

にこっと笑う冥子ちゃん。俺よりも年上なのに本当に可愛い人だよなー……

 

(美神さんやエミさんとは全然違うなぁ)

 

あの2人はどっちかと言うと格好良い美人だ。冥子ちゃんは本当にぽわぽわしてて、なんか一緒にいると和むというか……心が穏やかになるような気がする

 

「バウ」

 

ベッドの縁からひょこっと顔を出したショウトラ。ちらちらとこっちを窺っているのを見て苦笑しながら

 

「もう突進は止めてくれなー?痛いから」

 

そう笑って頭を撫でるとバウッ!と元気よく鳴いて尻尾をぶんぶん振るのを見て本当犬だよなあと思わず笑ってしまう

 

「そうそう~横島君。凄い霊力出して試験合格したんだってね~凄いね~私のときと同じ~」

 

にぱっと笑う冥子ちゃん。え、もしかして毎回こういう試験合格者っているのか?と首を傾げていると冥子ちゃんが詳しく説明してくれた

 

「式神の皆が大暴れして大変だったのよ~今思うと良く合格できたわ~」

 

それはきっと冥華さんが頑張った結果だと思う。きっと当時のGS協会の人と話をしたのだと思う

 

「ショウトラちゃんなんて~100キロはある巨漢を体当たりでふっ飛ばしてたし~」

 

「バウバウッ!」

 

ショウトラそんな力強かったのか……流石式神……

 

「前なんて~私が車に轢かれそうになった時~トラックを体当たりで~ふっ飛ばしてくれたわ~ショウトラちゃんは~本当に優しいでしょ~?」

 

……トラックを吹っ飛ばせるほどの体当たりを食らって良く俺の背骨は砕けなかったな……人体の神秘か?それとも手加減してくれたのか?

 

「バウ♪」

 

凄いでしょ?と言わんばかりに尻尾を振っているショウトラの頭を撫でながら

 

「もうお願いだから突進して来ないでくれよ?」

 

「バウ?」

 

きょとんと首を傾げているショウトラに本当お願いだから頼むぜ?と呟くのだった……

 

 

 

 

 

ピートさんとタイガーさんに横島がショウトラに拉致されたと聞いて、早足で医務室に向かっていると

 

「あ、蛍ちゃん。横島君は?」

 

関係者以外立ち入り禁止のエリアから美神さんが出てきて横島の事を尋ねてくる

 

「ショウトラに拉致されてらしくて……多分医務室にいると思うんですけど……確か冥子さんが救護係で待機しているんですよね?」

 

確認の為に尋ねると美神さんははぁっと溜息を吐きながら

 

「本当横島君は人外に好かれすぎでしょ?」

 

「あ、あははは……私にはなんとも言えないですね」

 

ショウトラが横島に懐いているのは知っていたけど、まさか横島を拉致していくまでとは思ってなかった

 

「みーむう!」

 

「うきゅきゅーっ!!」

 

「ココーン!!」

 

横島が拉致されたと聞いてタマモとモグラちゃんの上に乗って走っていくチビ。場所判ってるのかしら……?匂いか何かで横島を探すのかな?と思っていると

 

「……横島はどこにいる?」

 

【冥子さんと一緒……何か、嫌な予感がします!早く医務室に行きましょう】

 

シズクとおキヌさんも関係者の通路から歩いて来て横島の所に行こうと言う。私も少し心配なので

 

「私達は医務室にいきますけど、美神さんは?」

 

何か用事があるのかもしれないと思って一緒に来るのか?と尋ねると美神さんは

 

「ちょっとエミとかカオスと話があるから、後で観客席に来るように伝えてくれる?横島君とCグループの事で参加者が減ったから、今日横島君とかの試合はないの、勉強の為に試合を見ておいた方が良いし」

 

判りました。横島にちゃんと伝えますと言って美神さんと判れて医務室に向かう

 

「みーむ!みみむー!!!」

 

「うきゅきゅきゅ!!」

 

「クウーン」

 

ベッドの上に乗ったチビとモグラちゃんが小さい手を振るってショウトラの鼻をぺちぺちと叩いている。ショウトラはショウトラで自分が悪いと思っているのか、2匹のしたいようにさせているのだが、あの短い手足の割りに破壊力があるのか、若干ふらついているように見える

 

「コーン」

 

タマモはタマモで横島の膝の上で丸くなって甘えているし、横島は横島で

 

「あ、蛍!おキヌちゃん!シズク!審査通ったぞ!!」

 

イエーィって嬉しそうに笑う横島だったが、次の瞬間にどんよりとした空気を纏って

 

「破壊した試験会場って俺の借金になるのかな?」

 

……それどうなんだろ?確かにあれって横島の責任よね?……借金になるのかしら?言われてみると判る。とんでもない破壊の跡が今も残っていて、今日の試合が削られたのは間違いなく横島の霊力の暴走のせいだろう。となるともしかすると横島の責任として借金が発生する可能性が出てきた

 

「……私が何とかするか?竜の牙は稀少品だから、お前の為なら牙抜くぞ?」

 

借金と聞いてシズクが牙を抜くか?と横島に尋ねている。確かにシズクの牙なら竜の牙として最上級の素材だ。間違い無く高額で取引されるだろう、だけどそれは横島がストップを掛けた

 

「いやいや、あかんあかん。これはワイの責任になるから自分でなんとかせんと……いくらくらいになると思う?」

 

その責任感は大事だと思うけど、アレだけの破壊の損害賠償となると相当な金額になるかもしれない……

 

【美神さんが手伝ってくれれば何とかなりますかね?】

 

おキヌさんがそう呟く。確かに今の美神さんは大分優しいけど、流石にそこまで手伝ってくれるだろうか?私達がうーんと唸っていると冥子さんが

 

「大丈夫よ~GS試験で出た損害賠償って全部GS協会持ちだから~♪」

 

「本当っすか!?」

 

「コン!?」

 

がばっと横島が顔を上げて冥子さんに詰め寄りながら尋ねる、タマモは膝の上から落とされて不満そうな鳴き声を上げて

 

「……ニヤア」

 

そんなタマモを見てにやりと悪い顔で笑っているシズク。本当シズクは横島以外には反応がドライよね……そんなこんなでバタバタしている中冥子さんは横島を見て、穏やかに笑いながら大丈夫~と笑って横島の頭を撫でながら

 

「本当よ~だから何の不安も心配もなく~GS試験頑張ってね~♪」

 

にこにこと笑う冥子さんに教えてくれて本当にありがとうございますっと頭を下げている横島

 

(あれ?冥子さんって包容力高い?)

 

冥子さんは私の中では子供っぽくて、包容力とか、母性とか皆無だと思っていたんだけど、今こうして優しい顔をして横島の頭を撫でている姿を見ると母性とか包容力がとんでもなく高いように見えてくる

 

【くっ!?こんな所に意外すぎる伏兵が……】

 

「……むう。これは不味い……」

 

どうもシズクとおキヌさんも冥子さんの溢れる母性を感じ取ったのか、面白く無さそうな顔をしている。意外すぎる強大な伏兵の存在を始めて認識するのだった……

 

「みむきゃーっ!!」

 

「うきゅーッ!!!」

 

「きゃいんッ!?」

 

バシィっと言う強烈な打撃音に振り返るとショウトラが目を回して倒れており、チビとモグラちゃんが勝鬨を上げていて

 

「え?チビとモグラちゃん……つよ……」

 

ショウトラをKOしたのが信じれなくて思わずそう呟くのだった……

 

 

 

 

チビとモグラちゃんがショウトラをKOした頃くえすはと言うと

 

(合格しましたか……まぁそれくらいはして貰わなければ困りますわね)

 

神代琉璃の要請でGS試験会場に待機こそしている物の、警護に加わる事も、周囲の警戒もせず私は予選を見ていた。無論それにはちゃんとした理由もある。

 

(何がしたくて私に声を掛けたのやら)

 

今日の早朝会場入りし、本選の試験会場とやらの仕掛けの手伝いをした後は一次審査が終わるまでは帰る事は許さないと言われたが、それ以外は自由にして良いと言われ、本当に何の為に私を呼んだのか?と言う疑問を感じながらも帰る事が出来ないのでこうしてGS試験の予選を見ていた

 

「横島忠夫……随分と力をつけましたわね」

 

あれだけの霊力の放出。しっかりとコントロールすることが出来れば見習いの枠を超えた攻撃力を手にすることになるだろう。コントロールすることが出来ればですけどね……

 

(竜気が霊力に混ざっている……それにあのバンダナ……使い魔の一種でしょうか?)

 

膨大な霊力に混じって存在感を発揮していた竜気に、バンダナに具現化した目……アレだけの竜気となるとシズクだけではないでしょうね……

 

(小竜姫辺りですかね……)

 

あの武神は人間に随分と肩入れしているから、きっとその辺りでしょう。ま、あの男の潜在霊力は膨大ですから力の解放の手助けにでもなればいいですけど……古今東西女神の加護を受けるというのは一種の呪いに近い物。横島の今後を大きく左右するかもしれないですね……

 

(ってなんで私はここまであの凡人を気に掛けているのですか)

 

理解できない不快感を理解するには、あの馬鹿が大きく関係していると思う。だから生きていて欲しいと、私がその何かを理解するまで死なれては困るからこうして神代琉璃の要請を受けてここに居る。ええ、それは良い。でもなんで私がそこまであの馬鹿を気に掛ける必要が……

 

(もやもやしますわ……)

 

形にならない何かが胸の中にあるような気がする。魔法使いとは深い理性で感情さえも支配してこその物、その魔法使いの私が自分の中に訳の判らない感情を抱いている……それが不快で不快で仕方ない……

 

「もう帰りましょうか」

 

つまらない審査を見て、おままごとに近い試合を見ているのだから不快なのだと判断する、丁度一次審査も終わり、今日の最後の試合になっているんでもう帰っても問題ないと判断し、階段を下りていると、途中で芦蛍達とすれ違うが、お互いに挨拶をするような仲でもないので、無視してすれ違い通路を歩いていると

 

「あれー?神宮寺さんじゃ無いですか」

 

この声は……!?振り返ると頭の上にグレムリンを乗せ、モグラと狐を抱えた横島がゆっくりと姿を見せる。芦蛍が居るのだから、この男が来るのは判り切った事なのに何故か驚いている自分が居て、それが更に不快感を強くさせる

 

「どうも御機嫌よう。中々面白い見世物を見せて頂きましたわ」

 

霊力の暴走なんてした割には元気そうですわね?と付け加えると

 

「んーあはは……一瞬マジで借金背負うことになるかと思って怖かったっす」

 

借金?ああ、試験会場を破壊したからですわね。でもアレは毎年GS協会が補修する決まりになっているので、参加者が借金を背負うことなんてありえない。まぁ参加者が試験会場を破壊することの方がありえないことですが……

 

「それで神宮寺さんは?神宮寺さんはGS免許を持ってるから会場にくる必要が無いんじゃ?」

 

横島は今回のGS試験にソロモンが関係していることを知らないのですか、まぁその判断は正しいでしょうね。この能天気な男ではどこで口を滑らせるか判らないですし

 

「まぁ役に立つかもしれない助手を探しにきたと言う所ですわね。役立たずばかりですけどね」

 

ふーん?そう言うものなんっすかね?と笑う横島は私が降りてきた階段を見て

 

「観客席ってこっちっすか?モグラちゃんとチビが逃げて蛍と別行動になっちゃって、俺初めてここに来るから随分うろうろしてるんですけど、こっちで合ってます?」

 

迷子……何をやっているんだか……軽い頭痛を覚えながら

 

「ええ、合ってますわよ」

 

「そっかー良かったー、じゃあ神宮寺さん。また」

 

そう笑って私の隣を通っていこうとする横島……その肩を無意識に私は掴んでしまっていた

 

「え?えーとなんっすか?何か美神さんに伝える事でも?」

 

……美神令子になんか伝えることなんて無いですし、かと言って何もないと言える状況でもない。私は小さく溜息を吐いてから

 

「疑うは揺らぎですわ」

 

「疑うは揺らぎ?」

 

不思議そうに首を傾げる横島。そしてその腕の中でこっちを睨んでいる狐を睨み返しながら

 

「霊力は魂の力。疑うな、揺らぐな、信じた1つを持ちなさい。一度弱気になれば霊力は弱くなる」

 

なんでこんなことを言っているのでしょう?アドバイスするような仲でもないと言うのに……

 

「恐ろしくても、逃げ出したくとも。前を見なさい、後ろには道はありませんわ」

 

それだけですわと言って試験会場を出ようとすると

 

「やっぱ神宮寺さんは優しいっすね!アドバイスありがとうございました!」

 

その明るい声に返事を返すことなく、私は試験会場を後にし、空を見上げた

 

「不快感が……消えましたわ」

 

さっきまで感じしていた不快感が消えている事に気付き、その不快感を消したのが横島だということに気付き、苛々を感じていると、ファー付きのジャケットを着た青年が試験会場に近づいてくるのが見え、私もすれ違おうとした瞬間

 

「!?」

 

胸……そこに激しい痛みが走り、思わず振り返る。歩き去ろうとしている青年の姿がぶれて、甲冑を纏った魔族の姿が私には見えた……間違いない。胸の中に抱えている魔道書も共鳴しているから間違いない……あの青年は……いや、あの方は……

 

「ソロモン72柱ビュレト様とお見受けしましたが?」

 

ゆっくりと振り返った男の眼が私を射抜く、まるで心臓を鷲づかみにされたかのような息苦しさを感じながら

 

「神宮寺カズマの子孫。神宮寺くえすと申します。少しお時間を頂けませんか?」

 

「……ちっ、確かにカズマの面影があるな。良いぜ、着いて来いよ」

 

試験会場から背を向けて歩き出すビュレト様の背中を追って、私はゆっくりと歩き出すのだった……

 

なおくえすは気付くはずも無いが、横島と話をしていなければくえすはビュレトと会う事も無く、そのまま試験会場を後にしていただろう。そしてこの出会いがあったからこそ、くえすの運命が大きく変わることになるのだが、当然くえすはその事を知るはずも無いのだった……

 

 

 

 

 

なかなかえぐい試合をやってくれるわね……琉璃を説得し、白竜会の3人を今日の予選の試合に出場させたんだけど……

 

「やばいですね。白竜会の3人……レベルが高すぎる、私でも勝てるかどうか……」

 

鋭い視線で観察していた蛍ちゃんの言葉に頷く、蛍ちゃんは例年なら楽勝で合格するだけの知識と能力を持っているけど、今出場している伊達雪之丞、鎌田勘九郎、そして陰念……ソロモンの手下と疑われる3人は蛍ちゃんよりも更に能力が高かった

 

「はっ!ウォーミングアップにもならねえな」

 

伊達雪之丞は霊力を拳に集めた打撃であっさりと撃破し

 

「ふふ。ま、苦しまないように一撃でね」

 

「う、うわあああああ!?」

 

特大の霊波砲で一撃で気絶させる鎌田勘九郎……どちらもGS試験の参加者と言うには余りにレベルが高すぎる、そしてその中でもあの陰念とか言う青年はとても正気とは思えなかった。

 

「がっ!?ぐうっ!?げっはっ!?」

 

「……」

 

どこまでも機械的に対戦相手を徹底的に叩き潰す。その目には対戦相手の姿は映っておらず、ただ自分の前に立っているから叩き潰す。そんな感じに感じ取られた……隣で見ていたブリュンヒルデに

 

「あいつは?どう思う?」

 

魔族と言う事で本当は隣になんか座りたくないけど、今は協力者。ポーカーフェイスを貫きながら尋ねると

 

「重度の魔装術の弊害ですね。もはや魂は残っていないでしょうね」

 

魔装術……魔族と契約し、霊的防御力は勿論。その戦闘力を大幅に上げる禁呪……それは制御に失敗すれば魔族になるという危険性もさることながら、寿命を大幅に削るというのも禁呪になっている理由だ

 

「……つまりあの陰念って言うのは?」

 

シズクがそう尋ねるとブリュンヒルデは目を閉じて、小さく首を振りながら

 

「既に生きた屍でしょうね。となるともう殺してやるが救いでしょう」

 

生きた屍……殺すことが救いか……とは言え、そんな事を横島君や蛍ちゃんにやらせるわけにいかないので

 

「もしそうなったらブリュンヒルデが何とかして」

 

「ええ。判っています。まだ人の命をやり取りさせる訳にはいかないですから」

 

ええ、そうしてくれるとありがたいわ。横島君と蛍ちゃんには人の命を背負うには早すぎる

 

「所で横島君随分遅いわね?どうしたの?」

 

一緒に来る様に言っていた横島君が居ない理由を尋ねるとおキヌちゃんが

 

【チビとモグラちゃんを追いかけて行きました。直ぐ捕まえて戻るって言ってましたけど……】

 

何やってるのよ……1番見せたかった白竜会の3人の試合は今終わってしまった……

 

「すいませーん。ちょっと迷子になってて」

 

間が悪い……もう少し早ければ、あの試合を見せることが出来たのに……

 

「もう試合全部終わっちゃいました?」

 

椅子に座りながら尋ねてくる横島君。まだ試合は2つ残っているけど、正直勉強になるとは思えないし……

 

「……まだ少し残ってる。ちゃんと見ておけ」

 

まぁ格は落ちると言ってもある程度の能力を持っている、それでも勉強になるか

 

「ちゃんと見るのよ。明日は横島君が試合をするんだからね?気を緩めないで集中しなさい」

 

うっすと返事を返す横島君を横目に見ながら、明日の試合の組み合わせをどうするかを考える、参加すれば東京壊滅の未来は回避できると柩は言っていた。そう考えれば、既に横島君はその役目を終えたと言える。

 

(悪いけど、横島君はここまでね)

 

明日の試合に2回勝てばGS免許だけど、正直横島君には白竜会の相手と戦うには圧倒的に経験が足りない。少しでも勝機があるなら横島君に試合に出しても良いと思っていたけど、白竜会の相手は今の横島君ではどう足掻いても勝つことが出来ない

 

(明日の初戦で負けてもらうわ。横島君)

 

横島君のやる気は認めるけど、やる気だけではどうしようもならない事がある。明日の一番最初の試合で聖奈と戦って貰って脱落して貰おう。そもそも横島君が出場すればソロモンの襲撃を回避できるのだからもう役割は済んだといえる。後残っているのは……

 

(自分で協力してるのか、操られているのかよね)

 

ソロモンの手下と思われる3人だが、自ら協力しているのか?それとも操られているのか?それを断定するのが難しかったが、今日の試合を見て確信した。ソロモンにとってあの3人は実験材料程度の認識だと

 

(陰念って奴は自我崩壊。伊達は自分じゃ気付いてないけど……って所ね)

 

ブリュンヒルデの言うとおり陰念ってやつはもう自分の魂なんて残っていないだろう。ただそこに存在しているだけ、なにかのきっかけで霊気が崩れればそのまま死ぬだろう。伊達のほうは回りに変な霊力が漂っていることを見ると恐らく直接操られているか、洗脳されているという所だろう。鎌田はちょっと判らないわね、あんまりに自然体すぎて自発的に協力しているのか、従う振りをして保身をしているのかが判らない

 

(ここまで判ってても手を出せないのよね)

 

ソロモンに操られていると断定したけど、今手を出すと返り討ちにあう可能性がある。もう少し試合を進めて向こうの手札を全部切らせてから確保するのが1番安全だろう。カオスが試合会場に設置した結界も相手の体力が万全では破壊される可能性もあるしね……

 

「頑張りは認めてあげるわ。でも今回は諦めてね」

 

試合で勝てない相手をぶつける、それは決して褒められた事ではないだろう、でもこれは横島君を護るためだから仕方ない、来年にはちゃんと安心して試験に出すことが出来るから今年は諦めてと貰おう……私はそう判断し、試合を真剣な表情で見ている横島君に心の中でごめんねと呟くのだった……

 

「うっは……めちゃ厳しそうやな……俺大丈夫かな」

 

試合を見て不安そうに呟く横島君にシズクとおキヌちゃんが

 

「……大丈夫だ。お前だってそう悪いものじゃない、良い成績を出せると思う」

 

【もし落ちても来年がありますよ。だから今出来る全力で頑張りましょ?】

 

横島君を励ましているのを見ながら、私は隣のブリュンヒルデと蛍ちゃんに明日の初戦で横島君を脱落させる事を決めたということを伝えるのだった……

 

別件リポート 崩壊の序曲 

 

 




予選は大幅にカットしているので内容が少し薄いかもしれないですね。あくまで本選への繋ぎなので全体的に繋ぐ感じの話が多くなったのが原因かもしれないですね。次回は別件リポートです、勘九朗達とガープの動きを書いていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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