GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は試験を見ていた美神や琉璃の視点をベースに書いていこうと思います。今回は少し短めの話にしようと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その5

リポート24 GS試験予選 ~渦巻く悪魔の思惑~ その5

 

私は試験会場を写しているモニターを見ながら隣で絶句している美神さんに

 

「こ、これどうしてくれるつもりですか?」

 

横島君の身体から噴出した霊力でBグループに参加していた候補生は横島君・ピート君・タイガー君だけになってしまった。殆どが負傷、もしくは棄権してしまった。これじゃあ組み合わせがめちゃくちゃだ、しかもあれだけの破損の修繕費となると相当な額になるから、その金額にも頭を抱えてたくなる……幸いにもドクターカオスが作ってくれた本選用の試験会場じゃ無かったのがせめてもの救いだけど、それでも修繕費は莫大な物になるだろう。ジト目で美神さんを見ると

 

「……わ、私に言われても困るわ!?これ大体全部小竜姫様のせいじゃないの!?」

 

なんでここで小竜姫様の名前が?私が困惑しているとおキヌさんが

 

【私達の目の前で横島さんにキスして直接竜気を授けてまして、ああ……やっぱり角を切り落としてやりたい】

 

……え?なんで小竜姫様。横島君とキスしたの?え?なんで?神様でしょ?驚愕の事実に思わず思考停止してしまった私はきっと悪くない。と言うかそれで責めないで欲しい、こんなの聞けば誰だって思考停止だ

 

「みーむ!みーむ!!」

 

「うきゅー!きゅー♪」

 

「ココーン!」

 

モニターの前で応援していたモグラちゃん達の声で我に返り、大きく溜息を吐きながら

 

「そういうの先に言ってくださいよ……あーっもう。どうしよ」

 

予定人数を大幅に下回ってしまった。もう試験を終わっているAグループから敗者復活……もう半分くらい帰っているし……参加できるほど強い人残ってないわよね。じゃあCグループから……

 

「会長!Cグループも負傷者多数!残ったのは5名です!」

 

報告に飛び込んできた部下の言葉を聞いて、私は思わず机に突っ伏してしまうのだった……

 

 

 

ごとんっと音を立てて机に倒れこむ琉璃。その眼は虚ろでどうして私ばかりこんなに苦労するの?ああ、舞ちゃんに会いたい、ゆっくり有給とって温泉に行きたいとかぶつぶつ呟き始めた

 

(心労すごそうね……)

 

ただでさえGS協会の会長と言う立場で疲れるのに、今回のソロモン騒動に、今の試験の結果。もう完全に琉璃のキャパをオーバーしてしまったのかもしれない

 

「シズク。なんとか出来る?」

 

もしかしたらシズクが回復させられるかもしれないと思い尋ねると、シズクは無言で部屋を後にして

 

「……これだ」

 

数分後戻ってきたシズクの手には饅頭と急須と湯のみ。琉璃の前にそれを置くと琉璃は饅頭に手を伸ばして

 

「ああ、甘い……うん、甘い。私は大丈夫。うん、大丈夫。まだ大丈夫……あ、やっぱ駄目かもしれない」

 

もしゃもしゃと食べながらなんか壊れた感じで呟く琉璃。彼女が再起動するまで15分の時間を有するのだった……

 

「ああ、もうどうしよう。お昼からの試合開始時間を少しずらして、最初からラプラスのダイスを使う?ああ、でもそれだとなあ、なんか凄く嫌な予感がする。美神さんどう思います?」

 

ずずうっと緑茶を啜りながら尋ねてくる琉璃。ラプラスのダイスは運命に干渉する、それを使えば最も適した組み合わせが発表されるだろうが……

 

「リスクが大きいわね、初戦は様子を見たほうがいいかも……」

 

運命の中で横島君達と白竜会が戦うことになるのなら、それが今日に早まってしまう危険性がある。もしそれで組み合わせが早くなって今日になったとしたら、蛍ちゃんならまだしも、予選に合格し浮き足立っている横島君は間違いなく、緊張感などが欠如している。その状態ではあまりに危険と言わざるをえない

 

「一部の参加者を不戦勝にして、悪いと思うけど、白竜会を相手にしてもらう参加者を出すのが一番だと思うわ」

 

それは人道的に認められる作戦ではない、だが敵の事を考え、そしてGS試験までにドクターカオスが用意してくれた霊具を考えれば……ギリギリで認める事が出来る。手元にある参加者の資料を見る限りでは毎年審査は通るけど、予選で落ちている中堅レベルのGSの名前が何人か見られる。師匠の手伝いとして除霊を行っているから、少なくとも今の横島君よりも実戦経験が豊富だ。それに毎年落ちているのなら、今回も駄目だったかと諦めもつくという物だろう。琉璃は私の言葉を聞いて

 

「でもそれは流石に……人道的に考えると賛成できません」

 

まぁそう言うわよね。こればかりは琉璃が若いと言わざるをえない。大きな目的の為に捨て駒を使う、それは戦局しだいでは極めて有効な一手だ。無論人道に反すると言えばそれまでだが

 

「向こうも行き成り奥の手を出すとは思えないし、カオスの造ったプロテクターの能力を考えれば最悪の事態にはならない、それでも反対するの?」

 

向こうも馬鹿じゃない、行き成り全力を出してくるとは思えない。横島君の気を引き締め、警戒させる為にその戦いを見せる。あの子は目が凄く良いから、その戦いの中で1つや2つ戦いのコツを掴むかもしれない。それでも中々頷かない琉璃を見て痺れを切らしたのかシズクが口を開いた

 

「……時に捨て駒を用いることも指揮官としては必要な決断だ。まぁ横島を捨て駒とするのならば、その首を頂くがな」

 

【包丁を凶器として使う時は、斬るんじゃなくて突き刺すイメージで】

 

とんでも無く物騒なことを言っている人外2人組みと

 

「みーむう!みみむー!!!」

 

「うぎゅーッ!!」

 

「グルルルルッ!!」

 

放電しているチビ、口から火の粉を撒き散らしているモグラちゃん、そして狐火を自身の周囲に展開して突進準備OKと言わんばかりのタマモ

 

「アフタフォローするとかで対処すれば良いんじゃない?有名所に研修に行かせて上げるとかさ?」

 

高ランクのGSの元で研修すれば、次のGS試験には受かりやすくなるし、良い勉強になる。捨て駒としたとしても、しっかりアフターフォローすれば良いんじゃない?と言うと

 

「ああ、もう……本当。心労で胃に穴が開きそうです……判りました。そうしましょう」

 

これしか手段が無いのは判ってますからと死んだ目で呟く琉璃。どうも今回の一件で一番貧乏くじを引いているのは琉璃のような気がして

 

「全部終わったら食事に行きましょう。奢るわよ?」

 

「ミシュラン・☆3の●●●でお願いします」

 

うぐう!?流石良家のお嬢様……滅多に予約を取れない店を指名してきたわね……

 

「……なるほど、TVで見たぞ、それは実に楽しみだ。横島への労いになり、更に私は未知の味を知れる」

 

え!?なんでか普通に横島君達も来ることに!?ああ、でも頑張ってくれてるのは一緒だし……知られたら当然バッシング来るだろうし

 

「もう!じゃあ終わったら皆で行きましょう」

 

ああ。散財だ……でもまぁ、頑張ってくれてる皆に何かしてあげないといけない、だから

 

(無事に終わりますように)

 

何かあるということは十分に判ってる。これは未来予知で予言されていたのだから、間違いなく何かとんでもない事が起きるのは判っている。だからせめて横島君と蛍ちゃんが怪我をしませんようにと祈るのだった……

 

 

 

カズマの治療があったからか、東條は恐ろしいスピードで快方に向かっていた。

 

(これが若さという物か……)

 

何を年寄りくさいと一瞬思うが、年が一回り以上離れていることを考えればこの感想は当然の事なのかもしれないと1人苦笑しているとこんこんと病室の扉が叩かれる。

 

「誰だ」

 

拳を握り締めいつでも攻撃できる体勢に入りながら問いかける。すると

 

「あー。私だ、唐巣だ」

 

のんびりとした声が聞こえてきて、少し脱力しながらゆっくり扉を開くと同時に拳を突き出す

 

「っととと!!」

 

顔を狙って放った拳を手の側面で受け止め受け流す。病院の壁を思いっきり貫いた自分の拳と危ないじゃないかと言う唐巣を見て

 

「むっ本物かすまん」

 

悪魔には声も雰囲気も完全に真似をする者が居る。東條を殺す為に唐巣の姿を真似したと思っていたのだ

 

「全く手が痺れて動かないじゃないか」

 

手を振って文句を言う唐巣に修行が足りてないなと呟き、パイプ椅子を作りながら

 

「随分と鈍っているな、昔のお前なら受け流して反撃してくるくらいはして見せたぞ?」

 

眼鏡をかける前のお前はもっとぎらぎらとしていて、勇ましかったぞ?と呟くと唐巣は

 

「私は破門されても神父だ。八極拳を極めるつもりは無いし、どうせ極めるのなら聖句を極めるよ」

 

同じく教会から破門された身だ。だがたどり着く先はどうも遠く離れてるようだ。私は悪魔を倒し、人々に影ながら平穏を与え、唐巣は表に立ち人々の為に力を振るう。それもまた真理だろう

 

「GS試験のほうはどうだ?何か起きているのか?」

 

「んー式神での連絡では、負傷者多数で参加人数が大幅に減少してしまっているようだ」

 

負傷者多数?おかしいな、午前中は霊力の審査で怪我をするような要因は無いはずだが……

 

「小竜姫様に竜気を与えられた子の霊力が暴走してね?」

 

「……なにをやっておられるんだ?小竜姫様は?」

 

おかしいな?あの方は竜神だがそれ以上に武人としても優秀だった筈。竜気を授けるにしても自分の霊力をコントロールできる相手にしなければならないのは判っているだろうに……

 

「なんでも……横島君に想いを寄せているようで」

 

「……神がなにをしておられるのだ?本当に」

 

神であっても、女性であったか等と言うことは出来ない、そのせいで計画がいくつか狂ってしまっているのだから。もう少し自重して貰わなくては……

 

「私は1度白龍寺に向かってから試験会場に向かうつもりだ。なんでも結界の反応が消えたらしくてね。1度様子を見に行って見ようと思っている。その前に様子を見に来たんだ。彼の調子はどうだい?目覚める気配が無いのなら一緒に来てくれないか?」

 

唐巣がそう尋ねると同時にここ数日間意識を取り戻すことなく眠り続けていた東條修二が目を覚ました

 

「うっ……ここは」

 

椅子から立ち上がり、彼の枕元に立ち軽く様子を見る。幸いにも意識ははっきりとしているようだな

 

「目が覚めたかね?気分は……まぁ聞くまでも無いな」

 

どう見ても良いと言える顔色ではない。目覚めはしたが、動けるようになるまでまだ大分時間が掛かりそうだ

 

「あ、貴方はあの時の……そ、そうだ!GS試験!GS試験はどうなっているんですか!?白竜会の皆は!?うっぐう……」

 

急に身体を起して呻きながらベッドに倒れこむ東條。眠り続けていたのだから体力も筋力も落ち込んでいるのでこれは当然の事だ

 

「白竜会はこれから様子を見に行く所だよ。GS試験は残念だがもう始まっている」

 

唐巣の言葉を聞いた東條は震える手でベッドの柵を掴んで身体を起そうとするが、その身体が動く気配は無い

 

「僕は……いかないと……先輩が……」

 

よほど先輩を尊敬しているのだと判るが今動いては後々後遺症が残るのは目に見えていた。だから……

 

「今は休め。今日は幸いにも予選……明日の本選には連れて行くと約束しよう」

 

東條の頭に手を置いて意識を刈り取る。治癒術の応用だが、これはこれで中々便利だ。錯乱している相手とかには特に効果を発揮する

 

「唐巣。東條は私に任せて白竜会に向かってくれ、この男。ほっておくと何をしでかすか判らん」

 

異界を自力で脱出した事を考えると、行動力に加えて、その意志も人並みを超えている。もしかすると自力で目を覚まして向かいかねない、だから1人で向かってくれと言うと唐巣はああっと頷き

 

「生存者が居ればこの病院に運ぶ。その時にどうなっていたのかを話すよ、じゃあ彼は頼んだ」

 

そう言って病室を出て行く唐巣を見送り、連絡用に受け取っていた式神召喚の札を取り出し

 

「六道家当主へ伝えてくれ、東條修二が目覚めた。自力でGS試験会場に向かいそうなので明日東條修二を連れ、GS試験に向かう。結界などの準備をお願いすると」

 

【キュイー♪】

 

甲高い音で鳴いて開いた窓から飛び立つ燕の式神を見送り、ベッドで再び眠っている東條修二を見て

 

「目覚めたのは運命か。なんとも数奇な運命を持つものよ」

 

まだ目覚めるだけの体力が無いのに目を覚ました。それは私が判っている。毎日治療を続けていたが、酷使した筋肉と体力は殆ど回復していない。少なくとも後数日は意識を取り戻すことは無いと予想していただけに、こうして彼が目覚めた事に何か意味があるように思わずには居られないのだった……

 

なお1人で白龍寺に向かっていた唐巣神父だがその途中で

 

「唐巣さん、待ってました」

 

「小竜姫様!ああ。良かった、これで一安心です」

 

さすがの唐巣神父も1人での敵地への襲撃には不安を持っていたらしく、小竜姫と合流できたことを喜び、次に

 

「その帽子は?」

 

似合わないわけではないが、寧ろ似合っていると言えるつばの広い、大きな帽子をかぶっている小竜姫にそう尋ねる唐巣神父。小竜姫は俯きながら

 

「角を隠して無いと切り落とされそうな気がして怖くて怖くて」

 

2人の間に微妙な空気が漂ったのは言うまでも無いだろう……

 

 

 

 

壊れた試験会場を見て俺は呆然とすることしか出来なかった。砕けた電灯に、割れた試験会場の床、まるで台風が過ぎ去ったような有様だ。だがいつまでも受け入れがたい現実から目をそらし続けることはできない

 

「これ俺がやったんだよな?」

 

ピートとタイガーに尋ねるとこくりと頷く。ああ、そっか、やっぱこれ俺がやったんかー……あははっ……

 

「何て日だッ!?これ絶対俺の借金になるだろ!?」

 

何故GSになれるかもしれないって日に借金持ちになるんだよぉっ!?思わず顔を押さえてその場に蹲ってしまった

 

「だ、大丈夫ですよ!きっと美神さんがなんとかしてくれますよ」

 

ピートが励ますように声を掛けてくれるが、間違いなく絶対怒ると思う

 

「ワ、ワッシ!少しは貯金あるんで返済手伝うんじゃー」

 

タイガー……ありがとう。でもな、これだけ立派な試験会場だ。どう見積もっても1千万とか行くだろう。焼け石に水程度の効果しかないと思う

 

(親父とお袋助けてくれるかな……いや、でも俺の責任って言われそう……)

 

あああーどうしよ、どうしよ……チビとかタマモの餌代も洒落にならんし……あああーでも空腹にさせたくない、何が何でもチビ達に貧しい思いをさせてはいけない、しかし借金を返済する当てが無い……

 

「横島さーん?横島さーん?聞こえますかー?」

 

「正気に戻るんじゃー?」

 

ピートとタイガーの声が聞こえるが、今の俺にはそれ所ではない。この確実に借金確定の未来をどうやって回避するか?それを必死に考え、思い浮かんだのは

 

(……六道さんの所か)

 

あれだよな、うん、陰陽術とかので何か助っ人してくれるならお金出してくれるとか言ってたし、うん……それも視野に入れて何とか借金を返済できる手段を考えていると

 

「ワフウッ!!」

 

「ごはあッ!?」

 

突然背後から何かに突進される。すげえいてえ!なんだ!?と振り返ると

 

「ハッハッハ♪」

 

めちゃくちゃ嬉しそうに残像が見えるほどのスピードで尻尾を振っている巨大な犬の姿

 

「ショウトラ!?ショウトラじゃないか!久しぶりだなー」

 

もこもこの大きな犬ショウトラ。久しぶりに会ったなあ、最近冥子ちゃんが忙しいのか散歩の時に会わないしと思っていると

 

「ん?どうかしたのか?」

 

足元にじゃれ付いていたショウトラが急に伏せて、尻尾を振り始めたのでどうかしたのか?と尋ねると

 

「バウッ!」

 

「ぐはあッ!?お、俺が……何を……したぁ」

 

頭を下げたショウトラに腹に頭突きを叩き込まれ、体が宙に浮く。おれ、何かショウトラに恨まれることしたか?薄れ行く意識の中俺は必死でその理由を考えたのだが、当然答えは出ない。何か妙に暖かい物の上に乗ったと感じたのが俺が最後に感じたものだった

 

「横島さはーん!?」

 

「横島さんがでっかい犬に拉致されたんじゃー!?」

 

そのあまりに衝撃的な光景を見て、完全に思考停止していたピートとタイガーだが、数分後に復帰してそう絶叫した。それは奇しくも

 

「ねえ?その話詳しく聞かせて?」

 

横島の労いに来た蛍がBグループの控え室に到着した時だったりする……

 

 

リポート24 GS試験予選 ~渦巻く悪魔の思惑~ その6へ続く

 

 




次回で予選終了となり、リポート25。つまりは第一部の最終リポートとなります。これは結構長めにしたいと思っています。戦闘が多い話なので激しいのを書いてみたいと思うので、次回はショウトラに拉致された横島がどこに運ばれたか?と言うのを書いていこうと思います。まぁどこに拉致されたかなんていうまでも無いと思いますけどね、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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