GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回からはGS試験予選に向けての動きになります。この後に本選リポートとなり、第一部は終了となります。戦闘メインで頑張っていこうと思っているので、どうか楽しみにしていてください。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


リポート24 GS試験予選 ~渦巻く悪魔の思惑~
その1


リポート24 GS試験予選 ~渦巻く悪魔の思惑~ その1

 

その日事務所に出社すると美神さんが真剣な顔をして、手紙を書いていた。私が入ってきたのに気付いて少し顔を上げたが、少し待っててと言ってまた手紙に集中していた。邪魔しても悪いので、キッチンでお茶でも入れようと思ってキッチンに向かうと

 

【んー、ちょっとお塩が足りないですねー、あ、蛍ちゃん。いらっしゃい】

 

キッチンで料理をしていたおキヌさんが笑顔で迎え入れてくれる。美神さんにお茶を入れるわねーと声を掛けて、紅茶の葉が入っている戸棚に手を伸ばし、紅茶の準備をしながら

 

「今日は随分とご機嫌ね。何かあったの?」

 

料理が完成したのか、コンロの火を止めて鍋に蓋をするおキヌさんに尋ねる。するとおキヌさんはうーんっと首を傾げながら

 

【そういうつもりは無かったんですけどね。最近は前の事も殆ど思い出せなくなってきて、もうなるようになれって開き直ったから、気持ちに余裕が出来たんだと思います】

 

それは私も同じだ。昔横島に聞いた事件の話や、逆行前に調べた美神さんの除霊のリポートの資料。その内容をしっかりと覚えて、対処法を考えてから逆行した筈なのに、その記憶は虫食いのように穴だらけになり、そして今ではぼんやりとしか思い出すことが出来ない状況になっている

 

【優太郎さんなら判りますかね?気にしないようにしているんですけど、なんか怖いじゃないですか?】

 

確かに覚えているのに、知っているのに、それを思い返すことが出来ないと言うのは恐怖を感じるだろう。私も正直言うと少し怖いと思っている。芦蛍ではなく、横島蛍だった時の学校の友達や、どんなことをしたのかがどうしても思い出せない。確かに知ってはいる、知ってはいるが思い出せない。まるで本か何かを見て、知識としては知っているが、それはどうしても自分の体験した事だと実感を持つことが出来ないのだ

 

「今は居ないから相談できないけど、これが何なのかは私は知っているわ」

 

もう大分前にお父さんに相談して、この症状が何なのかを聞いている。出来上がった紅茶とカップをトレーの上に載せながら

 

「時間の修正力。徐々にだけど、確実に……逆行前の世界とこの世界の繋がりが断たれて来てる」

 

逆行した時点で逆行前の世界とは平行世界の関係になっている。平行世界であれ、大本は逆行前の世界と同じだから、私もおキヌさんも最初は逆行前の記憶をしっかりと持っていた。

 

【……あの義経さんとかの影響なんですか?】

 

確かにあの事件も私もおキヌさんも知らなかった事件だ、だがそれを言えばブラドー島の事件に、パイパーに、韋駄天の事件の真相。数え切れないほどのイレギュラーが続けて発生している。そのイレギュラーを発生させている何かが修正力の動きを活発にさせているのだろう

 

「もっと大きな何かが原因だと思うわよ」

 

小さく苦笑する。神魔であるお父さんや小竜姫様は修正力に対して対抗がある。ある意味世界の抑止力であり、滅びの原因であるが故に、半分だけ魔族の私やおキヌさんもある程度抵抗力があったから、ここまで持ったが……

 

「たぶんだけど、GS試験。そこで完全に逆行前の世界との繋がりが断たれるかもね」

 

今までが奇跡と言う状態だったとお父さんは言っていた。シズクや琉璃さん、それにシルフィーと言った逆行前の世界では存在しなかった人々。そして起きた事件と起きなかった事件。それだけの矛盾を抱えてこの世界は、頑張った。何とかして逆行前の世界との繋がりを保とうとした。そうすれば、対策を取ることが出来る。きっと横島君は世界にも愛されたのだろうね、でもそれも限界が来たと言う事だ。あと1つ何か大きな事件があれば、完全に逆行前の世界との繋がりは断たれる。そうなれば記憶は記録となり、思い出すことが更に難しくなるだろうとお父さんは言っていた。大きな事件……それが起きるであろう何かと言えばGS試験しかない

 

「私も頑張るけど、おキヌさんも気をつけて、何が起こるか判らないから」

 

【忠告ありがとうございます】

 

ぺこりと頭を下げるおキヌさんにお互いに頑張りましょうと声を掛けてから、私は美神さんに紅茶を届けに行くのだった……

 

 

 

「ふう。こんなものかしら」

 

手紙を書き終え、背もたれに背中を預けて大きく伸びをする。絶対何か起きると判っているGS試験に横島君と蛍ちゃんを参加させる事になった以上。私を信用して横島君と蛍ちゃんを預けてくれている百合子さんと優太郎さんに連絡をするのは当然の事だ。同じ東京に居る優太郎さんには直接出向いたんだけど、用事で海外に出掛けているらしく、祖父を名乗る小柄な老人に説明をして、GS試験に参加させる許可を貰った

 

(横島君の方はどうかしらね)

 

柩の予知では横島君が参加しないと被害が大きくなると言っていた。でも私としては本当は横島君を今回のGS試験には参加させたくなかった……

 

「美神さん?手紙は書き終わりました?」

 

「蛍ちゃん。ええ、終わったわよ?」

 

机の上に置かれた紅茶のカップを受け取り、一息ついた所で

 

「今度のGS試験の事で琉璃や唐巣先生と打ち合わせをしたんだけどね」

 

正直今でも横島君と蛍ちゃんを何とかGS試験に参加させない方法は無いだろうか?と考えているが、柩の未来予知はほぼ完璧だ。どうしても参加させないといけないと判っている。もう私に出来ることは限られている

 

(出来る限り、横島君と蛍ちゃんを無事に家に帰すこと……ううん、出来る限りなんて甘えは許されない。無傷で家に帰すこと)

 

それが上司として、2人を預かっている者としてやらなければならない事だ

 

「柩の予知でパイパーや義経を操っていた魔族が動く可能性が凄く高いの、本当なら今回のGS試験は見送りたい所なんだけど……「柩さんの予知に私と横島が関係してるんですか?」

 

私の言葉を聞いて蛍ちゃんが私の言いたかった事を口にする。私はその言葉に頷き

 

「無事にGS試験を終わらせる為には、横島君と蛍ちゃんの出場が条件の一つらしいの、上司としては本当は参加なんかさせたくないわ、でも今回ばかりはそうも言ってられないの……危険だと判っているけど、GS試験に参加してくれる?安全は琉璃や冥華おば様に掛け合って、最高の防具や札を用意するから」

 

今回ばかりは断られるかもしれない、GS試験まではまだ時間がある何度も何度も説得するしかないと思っていると

 

「判りました。私は参加します」

 

蛍ちゃんの返事に驚いていると、蛍ちゃんは心配そうな顔をして

 

「美神さん、酷い顔をしてるじゃないですか」

 

今回の事を言うのに、相当悩んだ。誰が弟子を死地に送り込みたいと思うだろう?なんとご両親に説明しよう?なんと蛍ちゃんと横島君に言えば良いのだろうか?それをずっと考えて、夜も寝れない日が続いていた。その顔色を隠すために普段しない化粧をしていたのに……どうして判ったのだろう

 

「ずっと一緒に居るんですから判りますよ」

 

顔を見るだけで……蛍ちゃんのその言葉に思わず、ぐっと来た。今思えば、もう2年間横島君と蛍ちゃんと一緒にGSとして行動してたのよね……2人とも人の心の機微に敏感だから私の今の心境を感じ取って……

 

「蛍ちゃん」

 

「はい」

 

目の前の蛍ちゃんの手を握り締め、真剣な顔をして私を見つめ返している蛍ちゃんに

 

「ありがとう。私も全力でサポートするから、GS試験頑張って」

 

もっと色々出来れば良かったんだけど、残念なことに変装してGS試験に潜り込んだりすることが出来ない。完全に蛍ちゃんと横島君に全てを委ねるしかない

 

「大丈夫です!頑張ります!だから美神さんも頑張ってください、これから大変だと思いますけど」

 

これから大変。そうね、GS試験とか準備とか、除霊具とかの準備をしないとねと返事をすると蛍ちゃんは

 

「いや、シズクを説得する事ですけど……」

 

……そうだった。あのモンスターペアレントと化しつつある、水神を説得しなければいけないことを思い出し、私は思わず冷や汗を流すのだった……

 

 

 

 

目の前でボロボロになって崩れ落ちているミズチ達を見下しながら

 

「……いい加減に諦めるんだな。私はお前達の統率者に戻るつもりは無い」

 

凝りもせず、また横島にちょっかいをかけようとしていた……同属とか関係なしに私は殺すつもりで攻撃した。私は横島を傷つける者を決して許しはしない、近くの広場に結界を張って、全員そこに引きずり込み叩きのめし、さて帰ろうとすると、息も絶え絶えと言う様子で顔を上げるミズチの1人が私の足を掴んで

 

「お。お願いします……シズク様……お戻り……ください「……黙れと言っている」

 

戻ってくださいと言って私の足を掴んだミズチの顔を踏みつけ、完全に意識を刈り取ってから

 

「……もう二度と顔を見せるな」

 

倒れているミズチ達からギリギリ存在を保つ事が出来るラインまで、霊力と水を奪ってから横島の家に帰ろうとすると

 

「シズクさん。良かった、丁度会いに行こうと思っていたんです」

 

「……小竜姫?なんのようだ」

 

妙神山に居るはずの小竜姫に……その隣に居る銀髪の長身の女を見て

 

「……魔族と何故一緒に居るんだ?」

 

人間に化けている……いや、元々人間と同じような姿をしているのか?穏やかな笑みを浮かべている女を観察しながら尋ねると

 

「お初にお目にかかります、。八岐大蛇の系譜のミズチ様。私、魔界正規軍副指令ブリュンヒルデと申します」

 

魔界にはあんまり関わりを持ってこなかったから知らないが、魔界正規軍の副指令と聞けば、かなりの大物だと判る。だが何故そんな相手と小竜姫が一緒に居るのかがわからない……しかし嫌な予感がする

 

「……改めて聞こう。なんのようだ」

 

繰り返し尋ねると小竜姫が沈鬱そうな顔をして

 

「GS試験と言うのはご存知ですか?」

 

「……ああ、知ってる。蛍が参加するつもりだと聞いているが?」

 

一人前の対魔師として認められる為の試練らしいが、蛍なら問題ないと私は思っている。横島は正直まだ早いと思うが……土壇場で力を発揮するタイプだからもしかすると合格するかもしれないなと思っていると

 

「そのGS試験に横島さんと蛍さんが出なければ、ソロモンの魔神が動くと言う予知が……「……貴様!何を言っているのか判っているのかッ!!!」

 

小竜姫の言葉を遮って怒鳴りつける、顔をしかめて後ずさる小竜姫とその隣のブリュンヒルデを睨みつけながら

 

「……ソロモンが動くと判っている場所に横島を出せだと?冗談も大概にしろ!私は認めない!参加もさせない!!」

 

一緒に暮らしているから判る。横島はどこまでもまっすぐで優しい人間だ。現代でこんな人間が居たのかと思わずに居られないほどに心が清らかな人間だ。口では色に囚われているようなことを言っているが、そうじゃないことを知っている

 

「判ってます!!判ってますよ!私だって参加させたいわけじゃないんです!!!」

 

私の大声に負けない大声で怒鳴り返した小竜姫ははーっはーっと大きく肩で息を整えながら、その目には涙を浮かべていた

 

「横島さんが妙神山に訪れて、少しの間だけですけど面倒を見て、その本の僅かな教えでどんどん成長して、韋駄天の時だって活躍したと聞いて、私は嬉しかったですよ。弟子の成長は師の喜びですから……」

 

徐々に小さくなっていく小竜姫の声を聞いたせいか、頭に上っていた血が引いていくのが判る。小さく頭を振ってから

 

「……すまない。感情的になった、詳しく話を聞かせてくれないか」

 

ソロモンの存在で一気に頭に血が上ってしまったが、こうして会いに来たという事は何か理由があるはず。小竜姫だって横島や蛍を死なせたいわけじゃないはずだから、ちゃんと話を聞けば納得できるかもしれない

 

「ありがとうございます。ミズチ様」

 

「……シズクでいい。様を付けられるほど私は偉くない」

 

どうせなら小竜姫だけで来れば良かったのに、あのブリュンヒルデと言う女……なにか気に食わないと思いながら、水で椅子を作り出し、2人に座るように促し、小竜姫とブリュンヒルデの話を聞くことにした

 

「……大体判った。仕方ないと割り切れる問題ではないが」

 

横島と蛍がGS試験に出なければ東京が滅び、更には横島と蛍が100%死ぬと聞けば、怪我をする可能性のあるGS試験に出たほうがまだ救いがあるという物だろう。無論、それでも納得できる内容ではないが……死と怪我では比べるまでも無く怪我の方がましだからだ

 

「GS試験の受付が始まるまで後3日。私と小竜姫で少し事前調査を行うつもりです。出来る限りに備えをし、参加してくれる人間の方の被害を下げれるように努力します」

 

「……当たり前だ。中途半端なことをして見ろ、お前を殺す」

 

肝に銘じておきますわと返事を返すブリュンヒルデと、お願いですから魔界正規軍に喧嘩を売るのは止めてくださいと呟く小竜姫。話は終わったのだからこれ以上ここに居る意味も無いと判断し椅子から立ち上がり

 

「……私も私のほうで準備する、横島は傷つけさせない」

 

ソロモンにもお前達にもとだ。長い事一緒に居て大分気持ちも変わってきたと自覚している、最初は手の掛かる弟か何かを見ている気分だったが、今はめきめきと成長していく横島を見ると誇らしくもあり、そして嬉しいと思える

 

(神が人に恋をしたか……)

 

ああ、これは認めないといけないかもしれない。私は横島を愛し始めているのかもしれないと、だからこんなにも怒ったのかもしれないなと心の中で呟きながら

 

「……美神と横島たちにはいつ話をするんだ?」

 

私に先に話に来たと言うことは、まだ美神達には話していないと判断してそう尋ねると小竜姫が懐から手帳を取り出して

 

「会場とその周辺の調査を終え次第、横島さんに話をします。美神さんにはもう話は済んでいますから」

 

それなら良いがと呟き、横島の家に戻りながら横島を守る方法は何があるかと考え……思いついたのは1つだった

 

(……竜気を分け与えるか?……だけどな……)

 

竜気を授ければ、私の加護と合わさって横島を更に護ってくれるだろう。だが問題があるとすれば

 

(……横島が耐えれるだろうか……)

 

竜気と言うのは竜と竜に属する神族が持つ特別な気の事だ。無論人間が扱える力ではない……横島の体に強い負荷をかける可能性もある……

 

(……どうしたものか……)

 

私と一緒に暮らしているから、横島は私の竜気に間違いなく耐性があると思うが、もし無かったらと思うとそうそう竜気を分け与えることも出来ない……

 

「……この身体の血が憎いと思ったのはこれで2回目だな」

 

八岐大蛇は竜は竜でも邪竜に含まれる、その血を引いている私は神族ではあるが魔力も持ち合わせている。1回目は高島が怪我をした時に後悔し、今またその転生者である横島の為に自分の力を分け与えたくともそれが出来ない

 

「……ままならないものだな」

 

私は深く溜息を吐いて、早足に横島の家へと戻るのだった。なにか急に横島の顔が見たくて仕方なかったから……

 

※トトカルチョの倍率が変化しました

 

シズク 5.5倍→ シズク 3.7倍

 

 

 

シズクが小竜姫とブリュンヒルデと話をしている頃、横島の家には客人が訪れていた。もしGS協会に勤めている人間がこの場に居たら驚くと同時に怒鳴っていただろう。何故ならば、今魔族から狙われている夜光院柩。その人がなんの警戒した素振りも見せず、横島の家に訪れていたからである

 

「くひ!やぁやぁ、ありがとう。寒い時はあったかいココア、これに限るね」

 

炬燵に入ってニコニコと笑いながらココアを口にしている柩ちゃんを見ながら

 

「どこか旅行にでも出掛けるの?」

 

柩ちゃんの体には少し大きいと思える旅行鞄と手提げ鞄を持っていたのでそう尋ねると

 

「うーん、当らずも遠からず。ボクはこれでもGSの中でもかなり貴重な存在でね!身辺警護含めて何処かのホテルに泊まるのさ」

 

そうなのかー。柩ちゃんは未来予知とか出来るって聞いたから、きっとその関連なのかなーと思いながら、俺もココアを口にしようとすると

 

「みーみー」

 

「うきゅきゅー」

 

炬燵の上にモグラちゃんとチビが登ってきて、みかんをころころと転がしてくる

 

「なんだー今日は甘えん坊だなー」

 

チビの頭を撫でながら呟くとみーむーと鳴く。みかんを自分で剥けるのにこうして持ってきたって事は俺に剥いてくれと甘えているのだと判り、みかんの皮を剥き半分に割ってチビとモグラちゃんの前に置き、改めてココアを口にしようとすると

 

「横島」

 

「ん?うおっっと!?」

 

向かい合って座っていた柩ちゃんの声が直ぐ近くで聞こえて、振り返ると目と鼻の先に柩ちゃんが居て、思わず後ろに下がろうとすると、それよりも早く柩ちゃんが俺の手を掴んでそれ以上はなれることが出来ないようにされた

 

「ど、どうかしたのか?」

 

真剣な顔をして、俺の眼を見つめている柩ちゃん

 

「これから横島は大変な事になるのをボクは知ってる」

 

「大変な……事?」

 

嘘ではないだろう。で無ければ柩ちゃんはこんな顔をしないだろう。普段余裕の笑みを浮かべている柩ちゃんの顔が今にも泣きそうに見えたから

 

「ボクは嘘をついた。ああ、そうだ。初めて嘘をついたんだ……自分の見た予知と異なることを口にした。それが間違いだと、やってはいけない事だと知っているのに」

 

嘘?その嘘が俺に関係しているのだろうか?柩ちゃんは小さくごめんと数回呟き

 

「でもそうしなければ全ては変わらない、決まっている一つの結末に向かう、ボクはその結末を回避したかった、たとえ1%満たない可能性でもその可能性に縋りたかった。その為に君を利用することを選んだんだ……本当にすまないと思ってる」

 

柩ちゃんが回避したかった結末?それを回避するのに俺を利用したって事なのか?それを謝罪する柩ちゃんに

 

「利用されたとか、そう言うのは俺には判らん。んでもって謝られるのは更に訳が判らん」

 

まだ何も酷い目には合っていないし、これから起きるかもしれないとしても、それが起きない可能性だって十分にある。だからこんなに謝られても困惑することしか出来ない

 

「俺は俺に出来ることを全力でする、何が起きるかなんて知らないし、どうなるかも聞かない」

 

先入観ってのが怖いって言うのはシズクに何度も言われた、だからこれから何が起きるかとは聞かないし、聞きたいとも思えない

 

「謝らなくても良いよ、柩ちゃんじゃ出来ないから俺を使うって決めたんだろ?」

 

こくんっと頷く柩ちゃんに笑い返しながら、俺はニカッと笑いながら

 

「じゃあ柩ちゃんの変わりに頑張るよ。柩ちゃんが回避したい未来?の為にさ……それにほら、もしかしてその何かが起きる場所ってあれだろ?GS試験」

 

蛍に話には聞いていた。今年のGS試験が近いと、もしかすると俺も参加する事になるかもしれないわね?と言われていたので、柩ちゃんが言っていることがもしかするとGS試験に関係することだと判った

 

「……ボクは君を利用するんだよ?それで良いのかい?」

 

「いいよ、約束したじゃん。前に除霊とか勉強とか教えてくれた時に、また手伝ってって。なら今回もそれだろ?俺美少女との約束はやぶらねえよ?」

 

俺がそう笑うと柩ちゃんは、呆気にとられた表情をしてからクスクスと笑い出して

 

「くひひ!ほ、本当に君は、どうしようもない男だ。自分よりも年下の相手にそんなに優しいことを言って何をするつもりなんだい?このロリコン」

 

「ワイはロリコンちゃうわ!!!」

 

どうしようもないって……なんで罵倒されてるんや!?しかもロリコン呼ばわりまでされなあかんの!?ワイとしては落ち込んでいる柩ちゃんを励ましたかっただけなのに!?俺が泣いているのを見て、柩ちゃんは更に楽しそうに笑いながら

 

「あー笑った、励ましてくれてありがとう。そしてもう1度ごめんよ、ボクは君を過酷な未来へと誘ってしまった」

 

過酷な未来って言ってもなぁ、俺にはその未来が何なのか判らないから、本当に何も言えないんだけどな……まぁここまで言われると少し怖いって思えてくるけど

 

「きっと大丈夫や、蛍や美神さんも居るし、唐巣神父とかも居るから、きっと何とかなると思う」

 

1人で駄目でも2人、3人となれば突破できるかもしれない、困難を乗り越えることが出来るかもしれない

 

「くひ♪ああ、そうだ。君はそれで良いんだ。くひひ♪横島」

 

すっと一歩踏み込んできた柩ちゃんに驚いて一瞬硬直した瞬間。柩ちゃんの手が俺の頭に回され視界が低くなったと思った瞬間額に柔らかい物が当った感触がして

 

「ぬわ!?なななんああーッ!?!?」

 

その何かが柩ちゃんの唇だと理解して、自分でも訳の判らない奇声を発していると柩ちゃんは荷物を担ぎ上げて

 

「額のキスは友情。でも男との女に友情は友情と言えるのかな?くひひ♪GS試験頑張っておくれよ?じゃね」

 

ウィンクしてリビングを出て行く柩ちゃんに何も言えず、その場に尻餅をついたままで

 

「みむう?」

 

「うきゅ?」

 

【どうかしました?妙な声が聞こえましたが?】

 

みかんを食べていたチビとモグラちゃん、そして眠ったままだった牛若丸眼魂が眼を開いてそう尋ねてくる。その声で冷静になった俺は頭を抱えて

 

「ぬわああああ!?なんかすっごい甘い匂いしたあー!ああああーッ!!ワイはロリコンじゃない!ロリコンじゃなあぁぁいいいいッ!!!!

 

自分の正義を砕きに来た柩ちゃんの予想以上の色気とか、それに反するような可憐さを思い出した俺は思わず頭をフローリングに何度も何度も叩き付け、さっきの光景を忘れようとしたのだが、打ち付けるたびにあの光景を思い出してしまって……ちょっと赤面してて可愛かったとか、どんどんときめいている自分を自覚してしまって

 

「ちがうううううううううううううう!!!おれはろりこんじゃなああああいッ!!!!」

 

俺が好きなのは同年代!んで蛍でええええ!!と心の中で叫び続ける事しか出来ないのだった

 

「みーむうう!?」

 

「うきゅー!?」

 

【乱心!乱心でござる!おキヌ殿ー!シズク殿ー!どちらでも良いから早く戻ってきてくださーい!!!】

 

死屍累々という光景になりつつあるリビングでタマモだけは冷静……ではなく、狡猾な光をその目に宿し

 

(あれ使えるかも……引き込みたい子ね)

 

人間化を使えるようになっても、自分は横島の基準で言えばロリと言うことをしっかり把握しており、仲間に引き込む1人として家を出て行った柩を観察しているのだった……

 

なおこの騒動は15分後に買い物を終えたシズクが戻るまで続き、中々落ち着かない横島に痺れを切らしたシズクが氷の中に閉じ込めると言う荒業で強引に沈静化させるまで続くのだった

 

 

夜光院柩の倍率が変化しました

 

4.7倍→3.2倍

 

横島の正義に若干のダメージが入りました

 

 

「もう良いのかい?」

 

「ああ、これで良いよ。後は運命のみが知るってね」

 

横島の家の外で待っていたメドーサと合流した柩をメドーサが観察するように見つめながら

 

「良い顔になってるじゃないか?恋の色が浮かんでいるよ」

 

にやにやと笑うメドーサの言葉に柩は動揺する様子もうろたえる事も、声も荒げることも無く淡々と

 

「そうだね、うん。ボクは……彼が好きになってしまったかもね。あれはとんだ人たらしだ、気が付いたら惹きこまれてる」

 

柩の言葉にメドーサは違いないと笑い、柩の荷物を手にして

 

「それじゃあ行こうか。魔界正規軍の本部で護ってくれるそうだ、だからGS試験が終わるまでは魔界暮らしだ」

 

「……正直倒れるとか、そう言う未来しか見えて無いから凄く不安だよ」

 

命があるだけ我慢しなと言うメドーサの言葉に諦めたように溜息を吐いた柩。そして2人の姿は溶ける様に消えていくのだった……

 

リポート24 GS試験予選 ~渦巻く悪魔の思惑~ その2へ続く

 

 




次回は原作での小竜姫と美神達の話し合いの所と手紙を受け取ってきたグレートマザーとかを絡めて行こうと思います
あと今回ので判ると思いますが、私の書く柩はイケイケなのでどんどん攻めるスタイルになりつつ、ヤンデレ特有の超重いボデイで横島を攻めていくので、今後もどうなるのか楽しみにしていてください、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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