GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話は全快の別件リポートの天界サイドの話になります。GS試験は殆ど原形をとどめていないオリジナルベースの話にしていこうと思っているので、その為の準備の話になります。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



別件リポート その2

別件リポート 対抗策会議

 

その日。神魔の最高指導者の執務室に直接2匹の使い魔が出現した。それは自分達だけが発行できる、特殊な紋章を身につけており、首から手紙を入った袋を下げていた……それを見たキーやんとサッちゃんは即座に信用出来る……正しくは逆行の記憶を持ち、更に絶対に裏切らず、操られていないと確信できる部下を集めるのだった……

 

 

「無茶なことをしましたね。アシュタロスは」

 

「でもそれしかなかったんやろ?」

 

腕を組んで苦しげに呟くキーやんにそう言いながら召集した面子が揃うまで待ちいと諭す。

 

「しかしですね。いくら過激派と行動している事にしたとしても、直接乗り込むのは無謀でしょう?」

 

届けられた手紙に書かれていたのは、簡潔でそして慎重かつ冷静なアシュタロスらしからぬ一言

 

『ガープ陣営に乗り込む、GS試験にて増援求む』

 

その決断をしなければならないほどに、今人間界でガープが動いている。そうなれば、時期的には早いが、動かない訳には行かない

 

「失礼するぞ」

 

空間に扉が現れ、民族衣装に身を包んだ猿が姿を見せる

 

「お!ハヌマンが一番乗りか!早かったなあ?」

 

丁度セーブした所じゃったからの?と返事を返すハヌマン。天界風に言えば斉天大聖やけど、まぁワイ的にはハヌマンの方が言いやすいし……つうかゲームって……キーやんを見るとサッと目をそらす。ま、まぁ良いやろ……ゲームが好きでも能力は高いから問題ない筈……大分前に面会要請が来ていたが、忙しくて今まで先延ばしになってたけど、その事についても話せばいいわなと思っていると

 

「遅れてはいないようだな。失礼する」

 

それから少し送れて姿を見せたのは甲冑に身を包んだ長身の男性だった……ワイが呼んだ魔界側で今一番事情を知っている男……その名は

 

「オーディン。久しぶりですね」

 

オーデイン。北欧神話で主神とされる極めて強大な霊核を持ち、魔神であり、神と言う複合属性を持つ存在だ

 

「ああ。そうだな、お前に魔界に行けと言われて……そうだな。200年ぶりか?」

 

くっくっと笑うオーディン。本来なら神族に属する神だが、その軍略・戦術眼の高さからワイが頼んで魔界に来て貰った非常に優秀な軍神だ。とは言え、世間話のために来て貰ったのではない。それが判っているからか、椅子に座るなり鋭い眼をして

 

「して?緊急招集の内容は何だ?」

 

「うむ。ワシだけではなく、オーディンも居るとなると、ついに本格的に動き始めたかの?」

 

「ええ。ガープが人間界で派手に動いているようです。アシュタロスが今潜り込んで密偵を行っていますが、何もしなければ自分が疑われるので一時的にでもガープに協力することになるでしょう」

 

正直言うと、それが一番不安の種やな。アシュタロスとガープ。魔族の中でも屈指の頭脳を持つ者同士、アシュはスパイやけど、そうあから様な行動をすれば疑われる。今回はこれ以上の情報を送ってくることはないだろう。GS試験の際に何かが起きると思って動いたほうがよさそうや

 

「では会議を始めましょうか……とは言え、打てる手段はそんなに多くないですが……」

 

キーやんの言葉に頷く、正規の軍を動かせば、それだけガープ達の警戒を強め、更なる強攻策に出てくるかもしれない。かと言って下級神魔では役に立たない。誰を派遣するか、非常に難しい問題だ。だからその為に軍神として名高いオーディンを呼んだのだ、そしてハヌマンもまた戦略眼に秀でている。これだけの面子なら何か良いアイデアが浮かぶ筈や

 

(前みたいなことにはさせん。絶対に……)

 

よこっちに何もかも背負い込ませて、苦しめるような真似はしたくない。今回は絶対に誰もが皆笑って終われる、そんな結末を目指す。それはここに居る全員が思っていることだ、そしてワイ達は今打てる最善の一手……そしてガープ達を止めることができる面子をいかにしてGS試験にもぐりこませるかの話し合いを始めるのだった……

 

「そうじゃ、確認しておきたかったんじゃが」

 

会議が終わりかけた所でハヌマンが思い出したようにそう呟く

 

「東京にソロモンが良く出現しておるが、魔界の警備はそんなに甘いのかの?」

 

ギラリっと鋭い光を放つその視線。その目を見て怒っているのが良く判る……本当は言いたくないんやけどしゃーない

 

「ガープの転移を捕らえるのは正直言うわ。不可能なんや」

 

魔族の中で伝わっている転移ではなく、ガープのアレンジがされており、事前に探知することは不可能や。それならばと警戒態勢を張って見たものの……

 

「15の部隊が壊滅。その内2部隊を残し、他の部隊は全員行方不明だ。遺体も見つかっていない点からMIAとして認定しているが……判るだろう?ハヌマン?」

 

オーディンの問いかけにハヌマンはまさかと呟き

 

「ガープの実験材料か?」

 

「その可能性が極めて高い、また残っている2部隊も意識不明に加えて四肢の欠損……意識を取り戻したとしても、2度と戦場に立つことは叶わんだろう」

 

こっちだって警戒している。ちゃんとした上級魔族も派遣しているのにも拘らず、壊滅的な打撃を受けている。正直1度倒した相手と油断していたというのはあるが、予想を遥かに上回る戦力を持っていたのも事実。中立のソロモンに交渉を続けているが、良い返事は貰えず。正直今の段階では打つ手が無いと言うのが現実だ

 

「事情は判りました。ですが、警戒の強化の方は魔界の方でも行ってくださいね」

 

キーやんの言葉にわかっとると返事を返し、今回の会議は終了となった。ワイは自分の執務室に戻りながら

 

「オーディン。なんとかなるー?」

 

「ルーンを試して見る。これで駄目ならば、打てる手段が無い」

 

ほんと……恐ろしい相手やな……ガープの知恵や魔術を侮っていたわけではないが、完全に後手後手に回っている現状にワイは深く溜息を吐くことしか出来ないのだった……

 

 

 

 

濁流のように流れていく、これから起きるであろう様々な可能性。それがまるで鑢のようにボクの精神を削っていくのが判る

 

「がっ……ぐううう……」

 

普段耐えているのよりも数段酷い。その余りの痛みにボクらしからぬ苦悶の声がこぼれる

 

「おい!柩!大丈夫なのか!?薬だぞ!?」

 

「く……くひっ!よ……余計な……お世話……だ」

 

契約書で無理やり契約したメドーサが薬のビンを差し出してくるが、それを振り払う。普段飲んでいる薬ではこの痛みを紛らわすことが出来ない、もし出来るならとっくの昔に飲んでいる

 

「……ぎ、ぎぎっ……」

 

目まぐるしく景色が変わっていく、同じ光景なのに、映っている物が違う、人が違う、時間が違う……だが共通しているのが1つだけある

 

(くえす……)

 

金色の姿をした魔族の手を取り、その背に蝙蝠の翼を持ったくえすの姿。それだけがどの未来でも共通している……

 

(駄目……だったのか……)

 

横島なら、ボクが今まで見てきた未来を全て変えてきた横島が居れば……くえすが魔族になる未来を変えることが出来る。そう思っていたのに……映像が止まっていく、もうこれ以上ボクが見る未来はないと言うことなのか……諦めにも似た感情を覚えた頃。

 

「ぎがあ!?」

 

今までの比ではない痛みがボクを襲い。それと同時に1つの光景が浮かび上がった……それは翡翠色に輝く篭手で金色の魔族を殴り飛ばし、くえすをその手で掴んでいる横島の姿

 

「くひ!くひひっ!!!ああ!やっぱり君は凄い!凄いよ!横島ァッ!!」

 

さっきまでの頭の痛みはもう無い。未来とはあやふやで不確かな物が、くえすが魔族になるのはきっと殆どの確率で決まっている未来なのだろう。それはボクが見たくえすが魔族と化した未来の数々でわかっている。だがその中でも1つしかない、だがくえすが助かる未来があった……それだけでボクは十分だ。どうすればあの未来に通じるのか?それはボクにも判らない、現実にその未来に繋がると言う確信も無い。だが確かに存在するのだ、くえすが助かる未来が!ドレほどその確率が低いとしてもその可能性があるだけで十分だ。あの痛みに耐えた価値もある

 

「何を見たんだ?」

 

笑っているボクに若干引いた表情をしながらたずねてくるメドーサを無視して、契約書を取り出し、自分の指を噛み切り血を皿の上に取り筆をとり、契約に最後の一文を追加しメドーサの顔の前に突き出す

 

「くひ!GS試験が終わるまで君はボクの護衛だ。その後はどこへでも行けばいいさ、そうともさ……それこそ横島の所にだって行けばいい」

 

ビクンと肩を竦めるメドーサににやりと笑い返しながら、窓の外を見つめながら

 

「碌な死に方をしないと判っているけど、さすがのボクも魔族に捕まって、演算機械に組み込まれるなんて未来はごめんだからね」

 

はっ?と言う顔をしたメドーサの背中に飛びつくと同時に窓ガラスが弾け飛び

 

【【【【【ギィィッ!!!!】】】】】

 

石の身体を持った悪魔が雪崩れ込んで来る。ガーゴイル……だが並のガーゴイルではない。それこそメドーサでもこれだけの数を相手にするには不利と言わざるを得ない数

 

「ちいっ!もっと先に言っておきな!!」

 

「くひ!襲ってくるのは判っていたけど、タイミングが悪かった!」

 

まさかあそこまで酷い未来視の影響が出ると思ってなかったし、更に言えば近い内に襲ってくるのは判っていたけど、確実な日にちがわかっていなかったというのもある

 

【【【シャアアーッ!!!】】】

 

雄たけびを上げて襲い掛かってくるガーゴイルを手の中に召喚した、刺又で薙ぎ払い窓を蹴り破って空に逃れるメドーサの背中にしがみつきながら

 

「このまま真っ直ぐ!あっちの方角まで逃げ切れれば助かる」

 

「逃げ切れるか五分五分所か、7・3で捕まるよ!」

 

数が多い、今もどんどん数が増えている。魔族にここまで注目されるのはありがたいが、手足を切り落とされて達磨にされて、機械に組み込まれる訳にはいかない。どうせ20まで生きることが出来れば良い方だとは思っている、夜光院の人間はいつだって短命だ。40まで生きれば長生きしたと言えるような家系なのだから……だからと言ってそんな死に様を受け入れるつもりは微塵も無いが……

 

「ちっ!本当にあそこまで行ければ助かるんだろうね!」

 

縦横無尽に空を飛び交いながら、魔力を打ち込んでくるガーゴイルの攻撃。最初は魔力弾を飛ばして反撃していたが、敵の数の方が多いので焼け石に水と判断したのか、今は逃げることに集中しているメドーサがそう怒鳴る。距離的には後2キロ……それまでに追いつかれる確率が高いが……

 

「くひ!心配ない、もう助かった」

 

【【【ギギャアアッ!?】】】

 

派手にドンパチしたのが功を制した。ボク達の目の前に現れる漆黒の馬に跨った騎士。空中を駆ける馬とメドーサがすれ違い、それと同時に鋭い斬撃音が響き、それから少し遅れてガーゴイル達の断末魔の悲鳴が周囲に響き渡る

 

「おう。メドーサとガキ、また会ったな」

 

大剣を肩に背負って話しかけてくる騎士……いや。魔神ビュレト……

 

「くひひ。魔神ビュレト、君に頼みがあるんだ。ボクとメドーサを匿ってくれないかい?」

 

「俺がお前を匿って得があるって言うのか?ええ?チビガキ」

 

「あるともさ、近い内に動くよ。君のかつての同胞が」

 

ピクリと眉を動かしたビュレト。それから肩に担いでいた大剣を腰の鞘に収め

 

「話だけは聞いてやるか、匿うかどうかはその後だ」

 

付いて来いと合図するビュレト。ボクは背負ってくれているメドーサに

 

「じゃ、付いて行ってくれよ。離れると危ないからね」

 

「……お前。本当知ってる事は教えておいてくれないか?流石の私も心臓に悪い」

 

魔神ビュレト。ボクも恐怖で身体が震えている、魔族の中の最上位。魔神に属する存在だ、本当なら何の準備も無く交渉など出来るわけも無く、見捨てられる筈だ。だがボクは未来視でこの光景を見ていて、そしてこれで助かると確信していた

 

(やれやれ、ここから忙しくなるね)

 

ここから正念場だ。まずは魔族の襲撃者から自分の身を護り、そしてくえすが助かる未来の為に動く、その為に横島がGS試験に出るように仕向ける。やることはたくさんある

 

(まずはビュレトとの交渉からだね)

 

ここで躓いたら何もかもが失敗する。何度も深呼吸を繰り返し、平常心を取り戻すことに集中するのだった……

 

 

 

 

 

(もう直ぐですかねー)

 

大分現在の小竜姫が横島さんに好意的な感情を持ち始めたこともあり、魂の奥底で眠るのではなく、共存に近い形で私は現在の私と視覚や感情を共有していた

 

「ふー、一休みしますか」

 

妙神山の道場の中で素振りをしていた私が座禅を組んで意識を集中し始める。それを魂の中で見ながら

 

(私も昔はこんな生活をしていたんですね)

 

自分では普通だと思っていたが、こうして見て見るとなんともいえない気持ちになってくる。朝早く起きて訓練して、食事を摂ってまた訓練しての繰り返し、メドーサにお綺麗な剣術と言われた意味も判ってくる

 

(確かに訓練だけでは見えてこないもの多いですね)

 

老師にアドバイスを受けているようですが、やはり型にきっちりと嵌った剣術なのだ。現在の私の剣術は、実践の中に身を置き続けていた者ならば次にこうしてくる、ああしてくると見切ることが出来る剣術……その欠点を私は実践の中で経験した。それをなんとかして現在の私に伝える、もしくは完全に魂が融合してくれればと思っている

 

「それにしても横島さんですか……」

 

座禅が終わったのか目を開きながら今の私が呟く、天竜姫様の時は私が身体を使っていたから、現在の私はそれを知っているけど、どこかおぼろげな物として見ていた筈だ。

 

「良く覚えてないんですけど、あの光は……とても眩しかったですね」

 

あの光……きっとそれはサイキックソーサーの輝きだろう。私の記憶ではGS試験の時に心眼の力を借りてやっと発現できた横島さんの最初の霊能力。しかしあのときよりも心構えが出来ており、更に霊能力の基礎を学んでいたからか、大分早くそして出力も強力だった

 

(この調子ならあの時よりも優れた霊能力者になっているかもしれないですね)

 

美神さんも私の記憶より優しいし、それに蛍さんが居るからか、霊力の勉強にも余念が無い。これは少し面白くないですけど、仕方の無いことだと割り切る

 

「このままだと本当に夢で見た横島さんに近づきそうですね」

 

くすくすと笑う今の私。私が見せた未来の横島さんの事を考えているのかその顔は楽しそうで

 

「少しの間とは言え弟子として面倒を見ていたのですから、大きく成長して欲しいですね」

 

今はまだ弟子としか思ってないけど、この調子なら好意になって私に近づいてくる、そうすれば魂の融合も楽になる

 

(今度はもう少し成長した姿を見せて見ましょう)

 

20歳を過ぎた頃の横島さんの全盛期の姿を見せて見ようと考えていると道場の扉が開き

 

「小竜姫はいるか?」

 

「老師?どうかしたのですか?」

 

老師が険しい顔つきで道場の中に入ってくる。これはただ事ではないと一目で判る

 

「今最高指導者と話し合っていたのだが、魔界正規軍より、ブリュンヒルデ。そして……ソロモン72柱が1柱ビュレトと共同作戦を取り、GS試験の裏の捜査に当れ」

 

「はっ?魔界正規軍とソロモンとですか?」

 

明らかに戦力過剰と思っているのだろう。ブリュンヒルデは私の記憶には無いが、現在の私の記憶の中には存在している。巨大なミスリルの槍と炎を扱うワルキューレの姉にして魔界正規軍の最高幹部の1人……そしてソロモン72柱の1人。魔界の4大公爵と呼ばれ、剣士として、そしてバイコーンを愛馬とし騎乗兵としても、また魔術師としても最高峰能力を持ちながら、今は中立として神魔の両方からの不干渉を貫いているビュレト。明らかに過剰戦力と言えるだろう

 

「それはその……命には従います、ですが過剰戦力なのでは……?」

 

今の私の問いかけに老師は暗い顔をして

 

「ソロモン72柱ガープ。アスモデウスが出張ってくる可能性があるとしても過剰戦力かの?」

 

その言葉に私も硬直した。現在過激派として追われているソロモンの大御所が2柱。その2人が相手となるとビュレトが居るとは言え、こちらが不利になってくる。魔術師として、そして人の心を操る術に長け、魔界科学に精通した軍師ガープ。そして7つの大罪にも名を連ねる。最上級の魔神……それこそ老師が出てくるレベルの相手だ

 

「ガープとアスモデウスが動くという確証があるのですね?」

 

「うむ。ガープの所で実験台として扱われていた若者が命からがらその場から逃亡し、捕まると言う所で運よく東京に訪れていた神父によって救出され、意識を失う前にそう告げたらしい」

 

メドーサと戦うことになるかもしれないと思っていましたが、それよりも遥かに危険な相手と戦うことになりそうですね……しかも勝てる見込みはビュレトが居ることを考えて良くて7分3分と言う所ですね……

 

「早急に魔界正規軍の待機所に向かい、ブリュンヒルデと合流後。下界で待機しているビュレトと合流しろ、そして恐らく援軍を出すことは出来ない。下界の人間とブリュンヒルデ、ビュレトと協力し最悪の場合被害を最小限に抑えることだけを考えろ、良いな。間違えても刺し違えてもなどと言う事を考えるな。神族・魔族の行方不明事件も確実にやつらが関わっている。味方を減らすような事を考えるな」

 

なんども釘を刺す老師の言葉に現在の私は神妙な顔で頷く、私としては自分の宮殿に居るであろうビュレトが下界にいる事に驚きました。中立派を貫き不干渉を宣言しているビュレトが下界にいるなんてきっと誰も想像していなかったと思います

 

「判りました。ではビュレト、ブリュンヒルデの両名と合流後。下界へ向かいます」

 

「気をつけるのじゃぞ」

 

老師の言葉に判っていますと返事を返し、妙神山から出ていく現在の私の中で私は

 

(私の知る歴史と違う。これからどうなるんでしょうか……)

 

メドーサではなく、ソロモンと戦うことになるかもしれない不安を感じつつ、なんとしても横島さんに前回のような悲劇が起こらない様に……そしてその心を傷つけることが無いように護るんだと決意を新たにするのだった……

 

 

 

 

あの夜。柩と名乗るガキから今起きようとしている事態。そしてこれから起きるかもしれないことを聞いた俺は覚悟を決めた。魔界正規軍の総本部に訪れていた……戦いから逃げるのは終わりだ。いつかはあの馬鹿達も諦めると思っていた、だがそれが間違いだったのかもしれない

 

「本当にいいのか?ビュレト」

 

オーディンが最後の確認と言いたげに尋ねてくる。俺は当たり前だと返事を返し

 

「親友だった。親友だったからこそ……俺が止める。サタンのクソ野郎の為じゃねえ、かと言ってキリストの為でもねえし、ましてや人間の為でもねえ……」

 

堅く拳を握り締める。俺がアスモデウス、ガープと戦う決意を決めたのは

 

「俺の為だ。俺が俺である為にな……」

 

友の為に戦う。それが俺だ、そして俺はあいつらを裏切った、もう神魔の戦いは終わりだと、平和を受け入れるべきなのだと……あいつらからすれば俺は裏切り者だしな……

 

「間違ってもベリアルに声を掛けんなよ。あいつはもう休んでいい……」

 

もっとも過激にそして激しく戦ったベリアルの身体はもうボロボロだ。かつての小山のような巨大な身体も今は随分と小さくなったし、魔力も弱くなっている。とてもではないが、今アスモデウスやガープと戦うのは不可能だ。それにあいつには守る者がある。家族が……娘が居るのだから……再び戦場に立たせるような真似はしたくない

 

「判っている。お前も気をつけろ」

 

「はっ!オーディンともあろうものがそんな事を言うとわな!」

 

傑作だと笑う。軍神たる者が部下でもない、ただ自分の過去を清算するために、どこまでも自分勝手な理由で戦おうとしている相手を心配するなんてなと笑いそのまま魔界を後にし、GS協会とやらを目指す、そこで神魔から派遣されたやつと合流する予定だからだ

 

「さーて……行くとするか」

 

覚悟は決めた。後は最後までその道を貫くだけだ、その道が例えどこかで途切れていたとしても、どこにたどり着く事が無いとしても……自分の決めた道は最後まで貫く。それが1度自分の意に反し、くすぶっていた俺が俺に戻るために必要なことなのだから……

 

「ま。約束は守ったよな」

 

俺に情報を与えた柩とメドーサはオーディンにも、神界のやつにも話を通しておいた。未来視の能力者だ、ガープの事を考えればちゃんと護衛が付くだろうしな……後はまさしく

 

「神のみが知るか……」

 

ま、魔神だからどうなるかは知らんがなっと呟き、ゆっくりとGS協会に向かって歩き出すのだった……

 

 

別件リポート 選ばれた者

 

 




次回は人間サイドの別件リポートになります。主に美神や琉璃に唐巣神父とかですね。その後からは、第一部の最終リポートとなるGS試験の話に入っていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします


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