GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回からは3件続けて別件リポートになります、一つ一つの話は短いですしGS試験とその後の話の繋がりに重点を置いているので若干「ん?こんな設定あったかな?」と思う所があるかもしれないですが、GS試験編で判ると思うので。この場はスルーしていただけると嬉しいです、それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


別件リポート その1

 

 

別件リポート 闇の胎動

 

「……ふむう……」

 

窓から入ってきた巨大な白蛇「ビッグイーター」が持ってきた手紙を見て眉を顰める

 

「すまないね。少し待っていてくれるかい?」

 

「シャーッ」

 

足元のビッグイーターにすまないねと呟き、机の上の飴を置いてやるとバリバリと噛み砕き始める

 

(後手に回っているか……)

 

メドーサに頼まれて白竜会を見に行ったが、既にガープの手が入っていた。となると迂闊に手を出せず、そのまま逃げる帰るようにその場を後にした。そしてメドーサに確認の為に手紙を送ったのだ

 

【伊達雪之丞 鎌田 勘九郎 陰念の3人に魔装術を教えたか?】と

 

返事はまだ完全には教えてないとの事だったが、さわり程度と自分との契約は済ませてあると言う内容だった

 

(これは不味いかもしれない)

 

そもそも魔装術と言うのは、憑依・降魔術に近い物であり、強力な魔族が自身の配下に自分の力を貸し与え、その能力を上げる為に作られた物だ。主に神魔大戦の際に数で劣る魔族がその数の差を補う為の術だ。理論上は人間でも使用可能だが、その場合その人間の魂に強い負荷を与え、更にはその身体が魔族に変質する危険性を秘めている。ガープの事だ、さわり程度でも魔装術に触れている人間が居ると知れば、嬉々として実験対象に選ぶだろう……

 

「これしか無いか……」

 

メドーサに返事の手紙書いてビッグイーターに渡しながら

 

「良いかい、急いでそれを君のご主人に渡すんだ。そして読んだ後は処分するように」

 

「シャーッ」

 

良く躾けられてるなと思わず苦笑する。返事を返し、私の机の上の飴を包みごと3個口に咥えて窓から出て行く

 

「躾けられてるのか良く判らんな」

 

躾けられてるなら勝手に飴を持っていくということは無いだろうし……いや、あれはあれで面倒見の良いメドーサの事だ。自分の使い魔にちゃんと躾と指示は出しているだろう

 

「少しやんちゃ者って事かな……」

 

ビッグイーターにも性格と言う物がある。今回来たのはたまたまやんちゃな性格をしたビッグイーターなんだと納得する

 

「さてと……今回は少しばかり危険かな」

 

虎穴に入らずんば虎子を得ず……だが私が飛び込むのは虎穴所か、地獄の中。戻ってこれる保証もないが……これしかない

 

(恐らく横島君……それに蛍。これもまた試練だ……乗り越えて見せてくれ)

 

使い魔に手紙を持たせ、直接最高指導者の元へと跳ばす。

 

「暫く戻らん。蛍には最高指導者からの指示で動いていると伝えてくれ……あと、ビュレトに後は頼んだと」

 

「……ご武運を……アシュ様」

 

深く頭を下げる土偶羅魔具羅に

 

「ああ、行って来るよ。かつての同胞に会いにね」

 

覚悟を決める時が来た。今までは情報収集として動いていなかったが、ここで初めて過激派魔族としての肩書きが役立つな……目指すは白竜寺

 

 

 

 

階段を上ってくる何者かの気配を感じる。これがただの人間ならば異界と化したこの寺に入ることが叶わず、彷徨い続け元の場所に戻るだろうが

 

(真っ直ぐ来ている?何者だ……)

 

逃亡した人間を追いかけたガーゴイルは全滅。魔界正規軍か……いや、だがそれでは1人と言うのはおかしい……

 

(報告……否)

 

私はこの場を任されている。GSであろうが、神族だろうが、魔族だろうが倒すのみ……愛用の杖に手を伸ばした所で

 

「やれやれ、随分と好戦的だな。ビフロンス」

 

肩を竦めながら姿を見せたのは金髪で長身の男……一瞬誰だ?と思ったが、冷静になって見れば判らない筈が無い

 

「アシュ!アシュタロスか!?」

 

「その通りだよ。ビフロンス」

 

にやっと笑うその顔は私の記憶の中のアシュタロスの顔と合致する。そしてそれと同時に

 

「同胞よ!ガープ様の力になりに来てくれたのだな!」

 

同じく過激派と追われ、魔界から姿を消していたアシュタロスがまさか人間界に居るとは……そしてこうして来てくれた事に素直に喜びを感じる。

 

「ああ。と、言っても今ガープが何をするつもりかわからない。まずは計画を聞きに来ただけだが、状況によっては私も協力しよう。ガープに会わせてくれるか?ビフロンス」

 

「勿論だとも、さぁこっちだ。ガープ様の部屋へ案内しよう」

 

門を離れる前にガーゴイルを5体召喚する。3体に空中を見張るように指示を出し、2体に門を護れと命令し私はアシュタロスを連れて白竜寺の中へと足を踏み入れたのだった

 

「生気がないな。何をしているんだ?」

 

一番奥のガープ様の部屋に案内しているとアシュタロスがそう尋ねてくる

 

「ああ。人間が大勢居るが、魔装術に適合しない物ばかりだ。精々ガーゴイルの餌として霊力と生命力を与える程度しか役に立たんからな。魔術で体の自由を奪ってこの光景を見せている、そのうち適合者になるだろう」

 

魔装術を人間が扱おうと思えば、それに相応しい心の闇が必要だ。憎悪・怒り・絶望・嫉妬・そして闘争を望む心……そういったマイナスの負の念が必要不可欠だ。魔装術に足りる闇を育てる為に、あの絶望の光景を見せるのは最も効率がいい

 

「……適合者は居ないのか?」

 

「居るには居るぞ、3人な。だがその内の2人は駄目だな、役に立たん」

 

ガープ様が直接調整している3人の人間を思いだす、1人はガープ様に忠誠を誓い、もう1人は強くなれるという証明を見せろと言った。本来ならその場で殺してやる所だが、ガープ様が面白いと言って気に入った様子を見せているのでそのままだ。そして最後の1人は本当に不可解だ

 

「心に光を持ちながら、魔装術に高い適正を見せた。全くこれだから、人間と言うのは理解できん」

 

魔装術を扱うだけの心の闇を持ちながら、それで居て心に光を持つ。こんな馬鹿な話があるものかと最初は憤ったものだ、闇と光は相反する物。その両方を持ち合わせる人間など悪い冗談としか思えない

 

「が、がああああああああッ!!!」

 

そんな事を考えながら歩いていると道場の奥から叫び声が響いてくる

 

「この声は?」

 

「最後の1人さ。ガープ様が偉く気に入ったようでな、今2重契約を結ばせているのさ」

 

「2重契約!?そんな事が出来るわけが無い!」

 

アシュタロスが信じられないと叫ぶのも判る。魔装術は本来は1柱の魔族と契約し、その力を借りて擬似的な魔族に至る術。魔界大戦の時は高位の魔族が下位の魔族と契約し、自分の劣化コピーとして戦力にしていた。と言うのは有名な話だ、私自身も配下と契約し自身の力を分け与えた

 

「だが出来るやも知れぬだろう?光と闇を内包する物だ。2重契約出来るかも知れん」

 

元々この場所に居た魔族「メドーサ」との魔装術の契約に加えて、畏れ多くも人間ごときがガープ様と契約出来る。死したとしてもそれは人間にとっては至高の褒美と言えるだろう。魔族として最高峰のお方の力を一時でもその身体に宿すことが出来るのだから

 

「しかしガープにしては珍しい、あいつにしてみれば貴重な実験材料だろうに」

 

「ふふふ、あの人間が言い出したことよ。自分の仲間を1人この場所から逃がす代わりにとな」

 

正直言って逃げ切るとは思わなかったが、逃げ切られた所で問題がある訳でもない。強いて言えば、正規軍の警戒心を強めることになるが、それでいい。万全の警戒の中ガープ様達の会戦の意志をあのサタンの愚か者に知らしめる事が出来るのだから

 

「少し待て」

 

アシュタロスにそう声を掛け、ガープ様の部屋の扉を叩く

 

『ビフロンスか?何様だ』

 

魔術で部屋の中から返事を返すガープ様に同じく魔術を使い返事を返す

 

『古き同胞が尋ねてまいりました。会う価値は十分にあると思います』

 

『古き同胞?ふむ……いいだろう、私が迎えに出る。お前は下がれ』

 

『はっ、それでは失礼いたします』

 

ガープ様との短い話を負え、私はその場を後にしながら

 

「直にガープ様が見えられる。ゆっくり話をすればいい。ではな、アシュタロス。お前と私達の道が重なる事を祈っている」

 

ソロモンの殆どが中立を貫くと声明を出し、自身の宮殿に閉じ篭っている。その大半の考えている事は判っている、私達がどこまで正規軍と戦うことが出来るのか?それを見極める為だろう。そしてこれからの戦いの内容によってはもっと仲間が増える。そうすれば正規軍も最高指導者も敵ではない

 

「む?悲鳴が止まった?死んだか?」

 

さっきまで響いていた絶叫が収まっている。死んだか?と思いその部屋の中に入り

 

「くっ!くはははははっ!信じられん!信じられんぞ!!!人間!!!」

 

そこに居たのは2重の魔装術を展開し、肩で息をしている人間の姿。まさか、まさか!!!

 

「2つの魔族との契約を成立させたか!!」

 

真紅に輝く瞳を光らせることで返事を返した人間を見て、思わず私は笑わずには居られないのだった……

 

 

 

 

 

古き同胞と聞いて、誰が尋ねてきたと思ってみてみれば……

 

「は!ははははははッ!!!ビフロンスの奴め!随分と茶目っけを出した物だ!!」

 

人間の姿をしているが、見間違えるわけが無い。この魔力の波動は

 

「恐怖公アシュタロス!古き同胞よ!良く訪ねてきてくれた!」

 

私らしい態度ではないが、思わずアシュタロスの背中に腕を回して抱きしめる

 

「お前らしい反応じゃないな。ガープ」

 

若干嫌そうな顔をして私の抱擁を片手で振り払うアシュタロスに笑いながら

 

「くっくっ!そうなりもするさ、同じ過激派に属する魔神が尋ねて来てくれ、しかも私と同じ知恵を持つ者なら尚の事!」

 

アスラにしろ、アスモデウスにしろ、考えるよりも行動するタイプだし、元より深く物を考える事が出来ないタイプだ

 

(まぁ無理も無いが……な)

 

アスモデウスもアスラも魔神の中でも特異すぎる存在だ。私の様に訓練し、知識を深め、自身の力の使い方を十全に扱う術を身に着けなくても、最初から自分の力を十全に扱える。訓練も、修行も、知恵を深める必要も無い。それが羨ましいとは言わない、私に出来ることをアスラとアスモデウスは出来ない、だがアスラとアスモデウスに出来ることを私は出来ない。様は適材適所と言う奴だ

 

「さて、アシュタロス。お前が尋ねてきた理由は何だ?」

 

「なに、近くにお前の気配を感じて尋ねて来たのさ。前にお前も感じただろ?」

 

む……あの時か、私がこの白竜会とか言う人間の組織に入り込んだ時に感じた同属の気配……気のせいだと思っていたが、どうやら違っていたのか……私はビフロンスが用意してくれていたワインを口に含んでから

 

「なんだ、その時に声を掛けてくれれば良かったじゃないか」

 

どうせならその時に声を掛けてくれれば、私の研究ももっと進んでいただろうにと思いながら、ワインのグラスをアシュタロスの方に差し出しながら言うとアシュタロスは真剣な顔になって

 

「勘違いしていないか?ガープ。私はまだお前達と協力すると決めたわけではない、私には私のプランがある」

 

私の差し出したグラスを受け取りはしたが、口に含むことは無く、そう問いかけてくる

 

「すまなかったな。ああ、これは私の非だな。申し訳ないことをした」

 

同胞に会えて興奮していたが、冷静になればわかる。アシュタロスは警告に来たのだと、自分の領域に勝手に入ってきて、挨拶も無く、勝手に行動している私に腹を立てて来たのだと

 

「では協力してくれるわけではないのか?」

 

「内容によるさ、私も今の魔界のあり方に納得しているわけではないし、更に言えば神族を好いているわけでもない。だから私が訪ねて来たのは、お前の計画を聞き、そして内容によって協力するか、否かを決めるために来たのだよ。動くのだろう?GS試験に」

 

ニヤッと笑うアシュタロス。そうか……やはりお前もそう言う計算か

 

「その通り、GS試験で仕掛けるさ。確保したい人材も居るしな」

 

神宮寺と言う人間は実に興味深い。人間でありながらあれだけの魔力。恐らく先祖にソロモンクラスの魔族と契約していた者が居るだろう。ならば先祖返りで魔力を解放してやればいい戦力になる

 

「いいだろう。全面的な協力は無理だが、私も手伝おう。何をすればいい?」

 

気合十分と言うところか、ワインを飲み干してから尋ねてくるアシュタロス。それならば早速お願いするとするか

 

「神族の力を押さえる結界と逃亡用の魔法陣そしてGS試験会場を爆破する火角結界をGS試験会場に仕掛ける。お前は何を手がける?」

 

「火角結界を引き受けよう、最高の物を準備する」

 

流石アシュタロス。私が唯一私と同格の知恵を持つと認めた男だ。最も調整の難しい火角結界の方を受け持ってくれるとはありがたい。これで少しは楽になるなと私は小さく笑みを浮かべ、結界の構築を始めるのだった……

 

 

 

 

「ったく、これで何日目だ」

 

メドーサの代わりに白竜会に訪れた魔族は、ニヤニヤと笑うむかつくヤローでしかも同門の下っ端を実験材料にしてやがる。俺は俺でこの部屋に軟禁状態……身体を動かすのは監視付きで許可されているが、このままだと身体が鈍っちまう

 

「うるさいわね、静かにして」

 

口調は女だが、その声は野太い。俺と同じ時期に白竜会に入門したオカマ「鎌田 勘九郎」だ。体格も恵まれているし、何よりも霊力のコントロールが抜群に上手い。認めるのは癪だが、俺よりも数段強い

 

「陰念はどうなったんだろうな」

 

「知らないわ、あの落ちこぼれを逃がすために自ら実験台に志願するなんてね」

 

勘九郎は落ちこぼれと言うが、正直にいうと俺はそうは思っていない。霊力の扱いは今一だが、体力もあるし、根性もある。口だけのやつよりよっぽど見所があると思うぜ

 

「ん?」

 

突然部屋の真ん中に魔法陣が浮かび、其処からぐったりとした意識の無い陰念が姿を見せる

 

「おい!陰念ッ!てめえ生きてるか!?……あっつぅ!?」」

 

慌てて駆け寄って揺さぶろうとしたが触れたが、その凄まじい熱に思わず手を押さえて後ずさる

 

「馬鹿ね、魔装術の契約の後は気絶したでしょうよ」

 

「……それはそうだが……」

 

だがこの熱は命に関わるんじゃなかろうか……口は悪いし、性格も馬が合っていたとは言いがたいが同門の人間が死んでしまうかもしれないのを黙って見ているわけには

 

「だからほっときなさい、あんたは気絶してるから知らないけど、時期に収まるわよ。眠いのよ、静かにしてて」

 

そう言って静かにしろと繰り返し言う勘九郎

 

「お前変わったな」

 

メドーサのやつが居た時は、態度はおかしいが、それでも仲間想いの面もあったのによ

 

「変わったんじゃないの、賢いって言ってくれる?ガープ様なんていうソロモンの大御所に逆らったら死ぬのは目に見えてるでしょ?長い物には巻かれろ。誰だって命は惜しいわ、雪之丞」

 

そうかい、そうかい。そんなにガープが怖いかよ……

 

「はっ!とんだ臆病者だな!あれだけメドーサ、メドーサって言っておいてよ。居なくなったらすぐに別の奴に「黙れって言ってるのが判らないかしら?」がっはっ!?」

 

いつの間にか俺は首を捕まれ道場の壁に叩きつけられていた。ぜ、全然見えなかったぞ

 

「あたしは貴方達と違うの判る?自分の命が大事、確かにメドーサ様はあたしを鍛えてくれたわ、でもガープ様はそれよりも私を強く、そして美しくしてくれる。お前はその誘いを断った、ならもう良いじゃない?死ぬ覚悟でもしてここを出れば?従わないくせに、目を掛けられてるお前はむかつくのよ!」

 

そのまま首を締め上げられ、碌な休息も与えられず、食事も少なかった為、抵抗することが出来ず。俺はあっさりと意識を失うのだった……

 

雪之丞の手がだらりを垂れたのを確認した勘九郎は、雪之丞が息をしてるのを確認してから

 

「ごめんなさいね、あたしも気が立ってるのよ」

 

小さく謝ってから、胴着からハンカチを取り出して荒い呼吸をしている陰念の額の汗を拭い

 

「馬鹿ね、真っ向から逆らうからそうなるのよ」

 

監視されている可能性もあるが、このままでは陰念が死ぬ可能性の方が高い、胴着から取り出した小さい瓶……それは一番最初に魔装術を覚え、雪之丞と陰念が魔装術の契約の際に最悪の事態になりかけたら、飲ませろとメドーサから受け取っていた医療薬だ。ビンの中身を陰念に飲ませた勘九郎はそのまま離れて、壁に背中を預けてその場に座り込み、窓から空に浮かんでいる満月を見つめた……その眼は黒く濁り切っておらず、そして確かな決意の色が浮かんでいるのだった……

 

別件リポート 対抗策会議

 

 

 

 




アシュ様が一時敵サイドに協力することになり、白竜会が乗っ取られました。雪之丞・勘九郎・陰念は性格の変化があります、次回は神界サイドの話になります。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします


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