GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はモンタージュへの対策とかをメインにした話を書いて行こうと思います。今回は少し短めになると思いますが、どうかよろしくお願いします


その3

 

リポート23 フィルムの中の剣士 その3

 

謎の少女に突き飛ばされた横島が心配になって坂を駆け下りていくと横島の様子がおかしい事に気付いた。普段の明るさがまるでなくて非常に暗い表情をしている、それに服も血まみれなのでどこか大怪我をしているのかと心配になる

 

「横島?どうかした?どこか怪我をしたの?」

 

【大丈夫ですか?横島さん】

 

心配になっておキヌさんと一緒に尋ねると、横島は私達にやっと気付いたのか、その顔に少しだけ明るい表情を浮かべるが、私にはすぐ判った。たぶん、いや確実におキヌさんも気付いただろう。横島が無理をして笑っているのが

 

「俺は大丈夫やで?でもな……モグラちゃんがな……」

 

座り込んだ横島の膝の上のモグラちゃん。普段元気にしているのが嘘のようにぐったりしてぴくりとも動く気配が無い。チビがその隣で心配そうにモグラちゃんを見つめ、タマモは横島が心配だからだろうか、さっきから擦り寄って横島を元気付けようとしているように見える

 

「……無茶をしたから、身体の中の竜気と外の竜気が反発しあってる。治療はしているから大事には至らないと思うが、竜種の回復力があると言っても、状況はあんまり良くない。出来ればどこかで休ませておくべきだ」

 

外と中の竜気が反発してる?その言葉の意味が判らず困惑していると横島がモグラちゃんの背中を撫でながら

 

「俺がモンタージュに喰われそうになった時モグラちゃんが炎を吐いただろ?でも本当はモグラの姿じゃ炎なんて吐けないんだって、無理やり身体の一部を龍に変換して炎を吐いたから、身体の中がずいぶん傷ついているんだってさ」

 

あの時私もシズクも目の前の光景に驚いて反応することが出来なかった。あの時咄嗟に反応し、横島を守ろうとしたモグラちゃん、自分を護ろうとしたせいでモグラちゃんが傷ついた、それが横島を酷く苦しませているのだ。でも私には何も言えない、いや言ってはいけない

 

(私はあの時動けなかった)

 

突然の光景に驚き、動けなかった、だから私が何を言っても、横島は自分を責めるのを止めないだろう

 

(なにやってんのよ私は……)

 

横島を守ろうと思ってここまでやってきたのに、あの一瞬どうして動く事が出来なかったのだろうか……距離的にも近かった破魔札を投げることくらい出来ただろうに

 

「横島君?どうかしたの?」

 

坂を下ってきた美神さんが様子のおかしい横島とモグラちゃんを見て、何か起きたのだと即座に理解し

 

「土方さん。場面が切り替わるまでどれくらい?」

 

【む……5分ほどで……その後にもう少し長いシーンが同じ場所でありますが】

 

それなら都合がいいかもしれない、今モグラちゃんを連れまわすのは得策とは言えないし

 

「それなら丁度良いわね。ところで次のシーンって何?」

 

【あーそのですね。そこで伸びている沖田の家でのシーンに……】

 

横島の近くで口と服に僅かに血痕を残し目を回している少女。これがこの映画での沖田総司らしいけど

 

(なんで女の子にしたのかしら?)

 

沖田総司と言えば私でも知っている薄幸の美少年として有名だったはずだけど、なんで女の子にしたのかしら?まぁ私には関係ないし、映画の住人だから私に敵になるわけじゃないし、そこまで警戒しなくても良いかと心の中で呟き

 

「大丈夫よ。横島。きっとモグラちゃんは元気になるわよ」

 

こうして少し時間が経っただけだけど、モグラちゃんの様子は少しずつ良くなっているように見える。さっきまでぴくりとも動かなかったのが少しずつ動き始めて、辛そうに閉じられていた目がゆっくりと開き始めている

 

【モグラちゃんは竜種だから絶対に元気になりますよ。大丈夫ですよ!絶対】

 

「……うん。だよな」

 

落ち込んでいる横島をそのままにしておけるはずも無く、私は横島の隣に座って落ち込んでいる横島を励ます為におキヌさんと一緒に大丈夫だというと、僅かに普段の横島とおんなじ雰囲気になったことに少しだけ安堵して、横島の膝の上で丸くなっているモグラちゃんに横島を守ってくれてありがとうと小さく呟くのだった……

 

 

 

 

 

周囲の光景が歪んだと思ったら、俺達は河川敷から古い日本家屋の中に座っていた。場面が変われば、一気に場所が変わるとは聞いていたけど、なんか乗り物酔いみたいな感じがして気持ち悪い気がする……それもあるし、血まみれの服が血生臭いのも余計に気持ち悪さを強くしていると思う。

 

【うー頭がふらふらします……】

 

「わ、私も気持ち悪い……」

 

蛍とおキヌちゃんが俺よりも重症で床の上で蹲っている。平気そうにしているのは美神さんだけで、家の壁に立てかけてある刀を手にして何かを調べている

 

(珍しい)

 

美神さんが普通の武器を手にしているのは初めて見たかもしれない。ずっと神通棍を使っているし、他の道具を使っているとしても大概破魔札だし……俺は膝の上に乗っているモグラちゃんを撫でようとすると

 

「……横島。モグラから離れろ、たぶんもう小さい姿を維持し続けるのも難しいはずだ」

 

いつの間にか俺の側に立っていたシズクが頭を振りながら呟く、小さい姿を維持するのが難しい?それってあの巨大な姿になるって事?なんか嫌な予感がしてモグラちゃんを床の上に降ろして、近くに居たチビとタマモを抱きかかえて離れると

 

「うきゅ~」

 

ずもももっと言う音を立てて、モグラちゃんの身体が巨大化して行き、最近あんまり見ることのなかった巨大な姿へと変化した……これ近くに居たら完全に押し潰されていたな……セーフと心の中で思っていると悲痛な叫びが家の中に木霊した

 

【ああああーッ!?わ、私の家がぁ!?】

 

日本家屋の床がその重さに耐え切れず底が抜け、いつの間にか立ち上がった少女が頭を抱えて絶叫するのだった……

 

「すいません、モグラちゃんが家を壊しちゃって」

 

【そうやって言うなら私の家の床をこれ以上壊さないで!?】

 

着物の少女が涙目で叫ぶが、俺はその言葉に首を振って

 

「だって床壊さないとモグラちゃんが……」

 

完全に嵌っていて動けないモグラちゃんが、小さくうきゅーうきゅーと泣いているので、少しでも早く回りの床を取り除かないとモグラちゃんが可愛そうだ

 

【別の方法が!って土方さぁん!?【諦めろ沖田。私が許可します、どうぞモグラを助けてやってください】

 

沖田ちゃんって言うのか、そう言えば美神さんが新撰組の映画とか言ってたなあと思いつつ、俺は腕まくりをして

 

「じゃ、蛍とおキヌちゃんは俺が外した床を外に出してくれる?うーし、一気にやるぞー」

 

止めてーと叫んでいる沖田ちゃんにごめんと呟き、俺はモグラちゃんが嵌っている周囲の床板を掴んで力任せに引っぺがすし

 

「じゃ、ここに積むから」

 

蛍とおキヌちゃんの前に取り外した床板を置く、それに手を伸ばした蛍に

 

「あ、結構尖っている所とかもあるから運ぶ時気をつけてな」

 

蛍の白くて綺麗な手に傷をつけるわけには行かないので、注意するように言うと蛍は少し驚いた顔してから

 

「ありがと、気をつけるわね」

 

にっこりと笑う蛍の顔を至近距離で見てしまって、お、おうっと小さく返事を返し俺は妙な気恥ずかしさを誤魔化すように無心で床板を剥がし始めるのだった……

 

【ああ……どうして私幽霊なんでしょ……私も横島さんに気をつけるように言って欲しい……】

 

頭の上でぶつぶつ言うおキヌちゃんになんか声を掛けたほうがいいのかなと悩んでいると

 

「……そんな事を考えている間に早く床を剥がしてやった方がいいぞ?」

 

床のしたから辛そうにしているモグラちゃんを見て、こんな事を考えている場合じゃないと判断し、急いで床板を剥がし始めるのだった……

 

「うきゅー……」

 

ようやく動けるようになったモグラちゃんが床下から這い出てくる。さっきよりも少し元気そうに見えるな

 

「……身体を小さくするのに回していた竜気を回復に当てているんだろう。暫くは大きいままだと思うが、怪我は治っていくはずだ」

 

シズクの言葉に安堵の溜息を吐きながら、壊れた床から顔を出しているモグラちゃんの頭を撫でながら

 

「もうあんまり無茶しないでくれよ?」

 

「みーむ!」

 

「コーン!」

 

俺の言葉に続いてチビとタマモが鳴く、その鳴き声は普段よりも大きい物で若干怒っている様な響きを伴っていた

 

「うきゅ……」

 

ごめんねと言いたげに頭を下げるモグラちゃんの近くに座り込んで、その巨体を撫でていると

 

「これで少しは横島君も落ち着いたわね、じゃっ早速モンタージュの対策を話し合うわよ。えーと土方さん、そこで泣いてるのも話し合いに参加してくれるように言ってくれます?」

 

破壊された家を見て私の家ー!と泣いている沖田ちゃんを掴んで居間に上がって来る土方さんを見ながら

 

(後でちゃんと謝っておこう)

 

ぐすぐすっと号泣している沖田ちゃんを見て、凄まじい罪悪感を感じてしまうのだった……

 

 

 

 

 

土方さんが応援として連れて来た霊能者。私達だけでは確かに対処出来なかったからそれは当然の事なんですけど

 

【私の家がぁッ!!】

 

でっかいモグラを救出する為に破壊された我が家の無残の姿に涙があふれる。なんだかんだで気に入って暮らしていたのに……

 

【仕方ない事なのだ。沖田】

 

【仕方ないことなんかないですよぉーッ!!!】

 

諭すように言う土方さんに詰め寄りながら怒鳴ると、紅い布を頭に巻いた少年が

 

「本当すいません。その……どうしてもモグラちゃんを助けたかったから……本当に家を壊してすいませんでした!」

 

本当に申し訳ないと思っているのか、私に向かって頭を下げている少年。土方さんが私を見ている、これは私が良いと言うまでこの少年は頭を上げないだろう、それに

 

「みーむう」

 

「コン」

 

狐と見たことのない生き物が少年の真似をして頭を下げている。ちらりと周りを見ると

 

「【ジトーッ……】」

 

【沖田……】

 

幽霊の少女と黒髪の少女の責めるような視線に土方さんもいつまでも家家言っているなと言う感じに呆れられた目で見られているのに気付いて、私も慌てて少年の肩に手を置いて

 

【いえ、その私も家にこだわり過ぎてましたから、頭を上げてください】

 

「でも俺の家族が家を壊したんだし、これはやっぱり俺の責任だと……」

 

本当に申し訳無さそうにしている少年を見て、私は自分が幼稚すぎたと反省しながら

 

【ここは映画の世界ですから、またフィルムが巻き戻れば私の家も元に戻りますから】

 

ほえっ!?っと驚く少年。映画の中なのだから、元の形が決まっている。だからフィルムを巻き戻せば元に戻るんですよ?と言うと

 

「そうっすか!良かったー、このままだとどうしようかと本当に焦ったんですよ」

 

良かった良かったと心底安心した表情で笑う少年。頭の上に飛んで来た謎の生き物と一緒に笑う少年。その明るい笑顔につられて笑ってしまっていると

 

「じゃ家については私達の責任は無いと、んで土方さんはモグラちゃんの治療費と依頼料をちゃんと払うって事で」

 

うえっ!?まさかの条件に振り返ると土方さんは目を閉じて腕組をして

 

【当然のことですね。無理やり映画の中に引きずり込み、更には怪我を負わせた。私達の責任ですからきっちりと払わせていただきます】

 

無理やり……映画の中から出ることも出来たんだからちゃんと交渉してきて下さいよ……思いついたら即行動ってところがあるんだから……やっぱり私が行くべき……

 

【かはっ!?】

 

「っおおおーい!?なんで急に吐血!?横に!横になって!!!」

 

私の隣で慌てながら、自分の着ていた着物を脱いでそれを丸めて枕にして私に寝転ぶように言う少年

 

「えーとハンカチで良いか!」

 

ばたばたと瓶の所に行って布を冷やして絞って私の頭の上に置いて、押入れから布団を引っ張り出して私に被せながら

 

「身体の調子が悪いんだから無理しないでな、えーと喉とか渇いてない?」

 

あ、それかお腹空いてる?と甲斐甲斐しく聞いてくるその姿に私は思わず

 

【ありがとうお母さん】

 

「だれがお母さん!?」

 

びっくりした様子のその姿に吊られて笑いながら私は心配そうにこっちを見ている少年を見て

 

(なんて真っ直ぐな心根の持ち主なんでしょう)

 

真っ直ぐで清らかな心の持ち主だと言うのが判る。みむう?と鳴いている奇妙な生き物を見て、動物に好かれる人間に悪い人は居ないといいますし、きっと信用できる人間だから土方さんが協力を頼んだんだなあと思いながら

 

【少しだけ喉が渇きました】

 

「じゃ水だな!少し待ってて」

 

そう言って井戸に向かっていく少年を見ながら小さく笑って

 

【……土方さん、助けて……】

 

どんよりとした目でこっちを見ている幽霊と少女を見て、背筋が凍る思いをして土方さんに助けを求めるのだった……

 

 

 

 

 

家を壊してしまったお詫びとして調子の悪い沖田ちゃんとモグラちゃんの看病をしている横島君を見て、思わず苦笑してしまう

 

(ずいぶんと落ち着いてきたのね)

 

最初のほうの女の子にむやみに抱きついたり、セクハラ発言をする回数が減っている。それはきっとチビやモグラちゃんなどとの出会いが大きいのだろう、自分よりも幼い(?)二匹をとても可愛がって育てている内に精神面に変化が出てきたのだと思う

 

「ほら。蛍ちゃん、いつまでも沖田ちゃんを睨んでないで作戦会議に戻ってくれない?」

 

横島君の看病を受けている沖田ちゃんを嫉ましそうに見ている蛍ちゃんにそう声を掛ける。おキヌちゃんも蛍ちゃんの上に浮いてジトーっとした目で沖田ちゃんを見つめている

 

(微笑ましい様な……なんと言うか……複雑な感じね)

 

横島君に想いを寄せているから、沖田ちゃんが羨ましくて仕方ないって感じね、でもいつまでもそんな事をしてられると場面が切り替わってしまう。そうなると作戦会議をすることも出来なくなるので

 

「ほら!いい加減にしなさい」

 

嫉ましいと呟いている蛍ちゃんの頭を引っぱたき、モンタージュ対策についての話し合いに参加させたのだった

 

「映画の中じゃ精霊石はろくな効果を発揮しないわ。だから別の方法でモンタージュを倒すわ」

 

さっき土方さんに持って来て貰った物を目の前に並べる。それを見た蛍ちゃんが

 

「美神さん。これで戦うつもりなんですか?」

 

目の前に置かれている刀を見て、本気ですか?と言わんばかりの表情をしている蛍ちゃんに

 

「ええ、これで戦うわ。神通棍もモンタージュを倒せるほど出力が上がらないし、これで仕留めるしかないわ」

 

普通に使用する分には問題ないが、モンタージュを倒すほどの出力は発揮できない、これは精霊石と同じでこの世界の霊力が少ないからだろう。だから神通棍もある程度の攻撃力を持つが、倒すには足りない

 

【これはちゃんとした名刀ですから、モンタージュにも効果があると思いますぞ】

 

名刀と言うのはそれ自身も霊力を通す媒介として優秀だ。とは言っても実態のあるものではなく、映画の中の代物だから霊刀としての性能は期待できないが、霊力を刀身に通せば十分に効果が出ると思う。更に言えば映画の中だからこそ効果を発揮する、モンタージュも映画の登場人物として割り込んでいるのだから、外から持ち込んだ物よりも映画の中の武器を強化したほうが効果が出やすいはず。それに今回で重要なのは攻撃ではなく、護りになる

 

「護りの要はこれ」

 

土方さんに頼んで持って来て貰った誠の文字が染め抜きされた羽織を見た蛍ちゃんは

 

「それ新撰組の羽織ですよね?それどうするんですか?」

 

真面目に話し合いに参加してくれているけど、まだ横目で横島君を見ている。どうもおキヌちゃんも横島君の背中に引っ付いているのが相当気に食わないようだ。まぁ気持ちは判らないでもないけど、今はこっちに集中して貰わないとね

 

「これの中にモンタージュ避けの文字を書き込むわ、これで少なくとも行き成り飲み込まれるって事は無いはず」

 

モンタージュ避けと言うのは既に確立しているのだが、それには高度な霊能力の操作が出来、なおかつ古代文字にも精通していないと駄目なため世間一般には流通していない技法。正直言うと私もうろ覚えだけど、無いよりかはましな筈だ

 

「土方さん。頼んでいた物は?」

 

戻ってきた土方さんに尋ねると、土方さんは額の汗を拭いながら

 

【これでどうでしょうか?】

 

差し出された水と筆と墨を見る。筆と墨は……うん、良さそうね。大分上質な物なのが見るだけも判る、水のほうは……

 

「シズク。これどう?」

 

水の事はシズクに聞くのが一番早く、そして正確だ。シズクは水を一口口に含んで、ぺっと吐き出してから

 

「……上質な水だ。しかもこれは神聖な場所から汲んできた物だな」

 

【はい、唯一残っていた神社に湧いていた湧き水です】

 

そうかと呟き、これが本当の水なら良かったんだがと呟くシズク。水神だけに水にはうるさいシズクが口惜しそうに見ているのを見ると、どうもかなり上質な水のようだ。名残惜しそうに見ているシズクを見てこの事件が無事に終わったら、この撮影に使った神社の場所を聞いて水を汲みに行っても良いかもしれないわねと思った

 

「着物の方は?」

 

【それもこちらに】

 

横島君の服が血まみれなので着替えることが出来る着物を用意して貰ったのだ

 

「横島君、血まみれの服だと邪気が篭りやすいから着替えて、土方さんに着替え方を教えて貰えば良いから」

 

うっすと返事を返し、土方さんと奥の部屋に向かっていく横島君を見送ってから、墨を溶いて文字を書く準備をする

 

「蛍ちゃん。そっち押さえてて、ぴっちり伸ばしてたるまないようにしてて」

 

一発勝負だから失敗は許されない。大きく深呼吸をしてから羽織の中に文字を書き始めるのだった……

 

「ふー……終わり」

 

まずは一着。凄まじい汗が床の上に滴り落ちるのが判る。これは思ったよりもしんどいわね……とは言え、これがないと出会った瞬間飲み込まれる危険性を回避する為だ。準備を怠るわけには行かない

 

「土方さん。あと何分?」

 

横島君の着付けが終わったのか、奥の部屋から出てきた土方さんにあとどれくらい時間があるのか?と尋ねる

 

【後15分ほどです】

 

後15分……ギリギリ、蛍ちゃんと横島君の分が準備できるかどうかね……私はもう1度深呼吸をしていると

 

「どうっすかね?おかしくないですかね?」

 

着物に着替えた横島君が部屋の奥から出てくる

 

「似合うじゃない、良いわよ。横島、かっこいい」

 

「え、ほんま?似合う?」

 

うん、似合う似合うと言いながら横島君を褒めている蛍ちゃん。普通逆だと思うんだけどなあと思いながらも、ほほえましいものを見る気持ちになったが、今は時間が無い

 

「さ、蛍ちゃん。次ぎ行くわよ。蛍ちゃんも集中を切らさないでね、横島君も少し休んでなさい」

 

「はい……」

 

すいませんと言う、蛍ちゃんと横島君。まだちょっと除霊現場にいるって言う心構えが足りないわね、今後そう言う所もちゃんと指導していかないといけないわね。真剣な顔をして頷く蛍ちゃんによろしくと声を掛け、私はもう一着の羽織に文字を書き始めるのだった……

 

リポート23 フィルムの中の剣士 その4へ続く

 

 




次回でモンタージュ戦を終わりまで書いていこうと思います。その後は映画に関する日常変の話を書いて、別件に入っていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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