GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回でリポート22は終了となります、前回の補足と暗躍している魔族のサイドを書いていこうと思っています。この次は日常系の話と「フィルムは生きている」の組み合わせをやって……だいぶ飛ばしている話もあると思いますが、GS試験の話に入っていこうと思っています。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その6

 

リポート22 英雄の見る夢は? その6

 

「あー疲れたー」

 

暗い通路を歩きながら大きく背伸びをする。ここ最近監視が厳しくて、ずっと分霊で行動していたからか、本体の動きがずいぶんと重い気がする

 

「はーでもまた仕事なんだよなあ」

 

ガリガリと髪の毛を掻く、折角本体のほうに戻ってきたのはいいが、極秘の任務があるとかで神魔合同で動くらしい、その中に選ばれているからまた直ぐ分霊に戻らないといけない

 

(まぁ決行日まではゆっくりすればいいか)

 

呑もう呑もうと思っていた魔界の銘酒の事を思い出し、鼻歌交じりで歩いていると

 

「セーレ。丁度良いとこ……どこへ行く!?」

 

背後から声が聞こえた瞬間。全力で走り出す、今の声はガープだ。また何か面倒毎を押し付けるに違いない

 

(あいつだって休ませてやらんと死んでしまう!)

 

僕の能力である自由自在に移動する能力。それは生身でも使用できるが、魔力の消耗が激しい。だからずっと一緒に育ってきた魔界のペガサスと一緒に能力を行使するのだが、ここ最近能力を使いすぎてへばっている。そろそろ休ませてやらんと……部屋の中に逃げ込んで結界を作ろうと思っていると

 

「すまないな。セーレ」

 

「はなせ!放せ!アスモデーウスッ!!!!!」

 

浮遊感を感じ顔を上げると申し訳無さそうな顔をしているアスモデウス、そんな顔をするなら僕を解放してくれ!!

 

「追いついたぞ、セーレ」

 

あ、これやバイ奴です、声が平坦だけどそれが余計に恐ろしい。僕は溜息を吐きながら

 

「仕事は少し無理だよ。僕の馬が死んでしまう」

 

これは逃げれないと悟り、少しでの抵抗とそう告げると

 

「魔界のペガサスだろ?まだ平気に決まっている」

 

「だまーれー!!!天界・魔界・人間界!!!何度僕達に往復させた!?僕もあいつももう限界なんだよ!少しは休ませろ!!!」

 

そもそも天界の動きを探るのだって、かなり難しいのに、更にここの引きこもって研究ばかりしているガープに研究材料を渡すのでくたくただよ!相棒だって馬小屋で倒れてぴくりとも動かない!と怒鳴ると

 

「む、流石にこき使いすぎたか、どこまで行けるか暇つぶしで実験していたのだが」

 

「僕と相棒を実験材料にするなーッ!!!」

 

こいつぶん殴りたい!!魔術師タイプだから、僕の本気の力には耐えれないはずだ

 

「すまん、セーレ。我の秘蔵の酒と休暇を与えるから許してやってくれ」

 

アスモデウスの酒と休暇!?う、それならいいかなーなんて考えていると

 

「社蓄にお前の酒と休暇!どうせこいつにはそんな上等な酒の味もわかるまい!」

 

「放せ!アスモデウス!こいつを!この馬鹿を殴らせろーッ!!!」

 

「アスラ。すまんが頼む」

 

のそりと現れた巨人を見ながら僕は

 

「牢から出してやっただろ!?開放してくれ!」

 

魔神でありながら情に厚いアスラならきっと僕を解放してくれる。そしてガープを殴らせてくれると思ったのだが

 

「酒と食事を用意しよう。お前の愚痴を聞こうじゃないか」

 

「ちくしょう!僕に味方は居ないのかーッ!!!」

 

アスラに鷲づかみにされ引きずられながら僕はそう絶叫するのだった。しかしそれでもアスモデウス達を裏切ろうと思えないのは……やっぱり仲間だからなのかと思うのだった……

 

アスラに無理やり引きずられているときは、扱いが酷い!とか、もっと丁寧に扱え!と叫んでいたのだが、アスラに与えられた部屋には既にたくさんの酒と料理が並べられていて、アスラと並んで愚痴を言いながら、僕はやけ食いを始めた。ここ最近碌に食事もとってなかったので、無心で食べ進めやっと一息ついたところで

 

「美味いか?」

 

さっきまでのガープへの怒りもあったのだが、アスラが用意してくれた酒と料理を口にし始めれば、食事に没頭し始めてしまう自分が居た。今まで味わったことの無い独特な風味を持つ食材に完全に魅了されていた

 

「んぐ。インド料理?だっけ?なんか独特で美味い」

 

慣れ親しんだ味とはまるで違うが、これはこれで美味い。

 

「そうか、なら食え、もっと食え」

 

アスラに勧められるまま僕は食事と酒を楽しむのだった……

 

「ガープ」

 

「判っている。判っているんだ」

 

アスモデウスに声を掛けられたガープは口元を押さえてくっくっくと楽しそうに笑っている

 

「趣味が悪いぞ?」

 

「ふふん、若輩の身の同胞を気遣ってやったまでだ」

 

付き合いの長いアスモデウスは理解しているのだ。ガープはセーレをからかって遊んでいると言う事に

 

 

「だがまぁ……冗談ではなかった。興味深いことがあって下界に向かって貰いたかった」

 

「何か見つけたのか?」

 

「くっくっく……義経に埋め込んだ狂神石の反応が消えた。一時的に霊的物質になって隠れているようだ、それを回収して何があったのか調べたかったのさ」

 

何事も無いように言うガープにアスモデウスは首を傾げながら

 

「ガープ。尋ねたいことがあるのだが?」

 

「ん?なんだ?今の所は全て計画通りだが?」

 

ガープと付き合いの長いアスモデウスは義経を利用した今回の計画の中でらしくない点がどうしても気になっていたのだ

 

「狂神石を隠す仕掛けを施すのならば、義経を強化することも出来ただろう?なぜそれをしなかったのだ?」

 

合理的に計画を立てるガープらしくない、隠す程度に術を使うなら義経を強化する。何故それをしなかった?と尋ねられたガープはきょとんとした顔をしてから高笑いをしながら

 

「あっははは!!おいおい冗談はよしてくれよ、アスモデウス。どうして私がたかが人間霊にそこまでしなければいけない?実験動物にどうしてそこまで思い入れしなくてはいけない?たかがデータ取り、死のうが生きようがどうでもいい」

 

仮にも英霊と呼ばれる高位霊をたかが実験動物と笑ったガープにアスモデウスは肩を竦める

 

「そう言うのなら計画の全てくらい話しておいて欲しいものだ」

 

「くっくっ!何が起きるかわからないそれも楽しみの一つだろう?まぁ良い気が向いたら話すさ、悪いが別の仕事もある。ここいらで失礼する。義経に埋め込んだ狂神石回収はそのついでにでもやってくるさ」

 

そう笑ったガープが翼を振るうとその姿は人の姿になる。それを見たアスモデウスは

 

「何をするつもりだ?」

 

「何、前に私達を探って来た蛇が居ただろ?あれが面倒を見ていた人間共が魔装術を使うそうでな」

 

くっくっくと楽しそうに笑ったガープは懐から紅い石を取り出して

 

「魔装術を扱う人間と狂神石の相性を調べるついでに使えそうな手駒を見つけてくる」

 

禍々しい笑みを浮かべガープは溶ける様に魔界から消えていくのだった……

 

 

 

 

 

 

小さな金属音を立てて兵鬼が記録していた映像が止まる。私は顎の下に手を置いて

 

(全くどうなっている)

 

火傷の痕が残る右手と、破壊された結界を見て眉を顰める。あの時私とドクターカオスの作った結界を眼魂がぶち抜いていった……そしてそれは遠く離れた岩手の横島君の下へと飛び、そして

 

「義経の中から牛若丸を引っ張り出し、再び眼魂へ……か」

 

あの白い眼魂が何個あるのか判らないし、そして何よりも幼年期の魂だけを呼び出す。そんな事は神魔でも無理だ

 

「あのベルトはなんなんだ」

 

この私が理解できないあの謎のベルト。あれが眼魂を生み出したのは判る。そして眼魂は分析が出来たが、あのベルトの存在が理解できない……いや、理解したくない。あれだけの力が出せるのは間違いなく世界の修正力が原因だろう、逆を言えばあれだけの力がなければかつて私の起した神魔大戦の代わりとなる事件を乗り越えることが出来ないと言う証明で……

 

「どうしろって言うんだ」

 

珍しく苛立ちを感じながら考え事に没頭していると、窓ガラスが叩かれる音がする。

 

「ん?」

 

言っておくがここは高層ビルで窓なんて叩けるわけがない。考え事を中断して振り返ると

 

「シャー」

 

「……ドン引きだよ」

 

無数の眼を持つ白い蛇が窓の外に浮いていた。慌てて窓を開けて部屋の中に招き入れると

 

「シャー」

 

こっちを見つめてくる蛇。その口には封筒が咥えられていて……

 

「ああ、メドーサからの手紙だね?ありがとう」

 

「フシャー」

 

私が手紙を受け取ると白い蛇の使い魔は煙と共に消えて行った。私は手紙の封を切り中身を確認する、夜光院と契約する事になり思うように動けないが、未来視の能力を持つ夜光院を護りながら情報を集めると聞いていた

 

(良い判断だね)

 

ガープは人の心を操る。夜光院がガープに捕まって洗脳されたとなると、未来視の能力を持つ夜光院を護ると言う選択肢は正解だ

 

「ふんふん。なるほどなるほど」

 

白龍寺と言う所に伊達 雪之丞・鎌田 勘九郎・陰念がいるのでその様子を見ておいて欲しい……か

 

(戦力としては……残念ながら伊達君だけなんだよなあ……)

 

蛍に聞いた話では伊達君は魔装術を更に進化させ、その先へと至った。確か鎌田と陰念は魔装術を制御出来ず魔族に……陰念は知らないな、誰だ?

 

(ふむ、だが鍛えようによっては物になるか……)

 

魔装術の適正があるだけで人間としては十分。良い機会だから見に行ってもかもしれない、ついでにドクターカオスの所に兵鬼を渡して、今回の戦闘データの分析を頼めばいいかと思い私は白龍寺へと向かったのだが……

 

「あれは!?」

 

もう少しで白龍寺と言う所で寺の中に入っていくモノクルを身につけた青年の姿を見て、私は咄嗟にその場にしゃがみ込んだ

 

「うん?……今懐かしい魔力を感じたような……気のせいか」

 

遠くから聞こえてきた呟き、そして人間の姿に化けているがあれは間違いない

 

(ガープ!なぜ奴がここに……)

 

どうしてガープが白龍寺に居るんだ!?そもそもなんで私は気付かなかった?

 

(ちっ……これは不味いことになったかもしれないな)

 

芦グループとして白龍寺を傘下に収めることで伊達君達をGSとして鍛えるつもりだったが、ガープが絡んでいる以上それをすれば私にまで辿り着かれる可能性が出てくる

 

(今は接触するわけには行かない……)

 

表だって動いている振りをしているのがガープにばれては私も魔界で思うように動けなくなる。出遅れたことに舌打ちしながら、私はその場を後にした。メドーサが積極的に動かないから、今回のGS試験は平穏無事に終わるかもしれないと思っていたが……

 

(どうもそんな事は言ってられなくなったな……)

 

ガープが絡んでいるとなるとどう考えても、前よりも酷いことになる。恐らく小竜姫だけでは対処しきれないはずだ……

とりあえずこの事を最高指導者に報告して、何人か援軍を送って貰ったほうがいいかもしれないな……それにもしかすると

 

(私にも声が掛かるかもしれないな……)

 

ガープのことだ、私がこの街に拠点を持っているのは既に気付いているだろう。もし声を掛けられたのなら、協力しなければ私が疑われるし、手を抜けばそれで更に疑われる……

 

(ドクターカオスのところに寄ったら胃薬を作って貰おう……)

 

なんか急に胃が痛くなったので、胃薬を作って貰おう。人間用だと効果があるか判らないから……

 

 

 

 

 

 

机の上に転がっている黄色と白と紫の丸い物体。優太郎さんとカオスのじーさんが眼魂と名づけたと聞いたが

 

(これ何なんだろうなー?)

 

あのベルトと使うことで不思議な力を発揮してくれたが、あの後ベルトは消えたし……身体は痛いし……本当これ何なんだろう?

 

「……もう大丈夫なのか?」

 

昼食時だからか鍋を持っているシズクがそう尋ねてくる。んー?少しだけ身体を動かして見て

 

「前よりかは大分ましかな?筋肉痛だけど」

 

机の上に上半身を預けながら呟く、前みたいに動けなくなるほどの激痛ではないけど、それでも身体は痛いし、動きたいとも思えない

 

「……それなら良いが……食欲はあるか?一応肉うどんを作ったが」

 

肉うどん……俺はその言葉を聞いて、眉を顰めながら体を起こし

 

「食べる食べる」

 

丁度腹が減ってたんだよと返事を返し、机の上の眼魂を片付けようとして

 

「あれ?」

 

さっきまで3つあったのに……今は黄色と白しかない。あれ?牛若丸のどこ行った?周囲を見ていると

 

【たぁすけぇてえええええ!】

 

悲壮そうな牛若丸の声が聞こえて振り返ると

 

「みむーみーむ♪」

 

「うきゅうきゅ♪」

 

モグラちゃんとチビが楽しそうに紫色の眼魂を転がしていて、そこから牛若丸の悲鳴が聞こえてくるので

 

「こらー!それで遊んだら駄目ー!!!」

 

痛む身体を引きずりながら、俺はチビとモグラちゃんから牛若丸眼魂を取り返し、そのまま遊び道具入れから

 

「これなら遊んでいいから」

 

毛糸のボールをチビとモグラちゃんの前に置いてやると

 

「みーむー♪」

 

「うきゅー♪」

 

ボールを転がして遊びだすチビとモグラちゃんを見ながら机のほうに戻る

 

【助かりました……恐ろしいですね。あの妖怪】

 

眼をちかちか光らせる牛若丸眼魂を見ながら、うどんを啜る。美味いけど……なんかちょっと大阪の味とは違うな

 

「……お前成仏しなかったのか?」

 

【はい!主殿のおかげで未来の私を解放して貰えました!なのでその恩返しをするまでは成仏いたしません!今はこんな姿ですが、霊力が回復すれば人の姿になれると思います!】

 

元気よく言う牛若丸眼魂。人の姿かぁ……きっと美神さんが戦力が増えるって言って喜びそうだなあ……

 

「と言うか、主殿って何?」

 

俺主殿って呼ばれるほどえらくないんだけど?と思いながら尋ねると牛若丸眼魂はチカチカと光りながら

 

【主殿は主殿です、これでも武士なので己が仕えると決めた主人を主と呼ぶのは当然です】

 

なんかふんって胸を張ってる姿が容易に想像できるな……とは言え、この感じは何を言ってもだめそうなので、好きにさせておくことにする

 

「ふーご馳走様」

 

考え事をしながらも無心でうどんを啜っていたからか、あっと言う間にうどんは空になっていた。どうも自覚はなかったが、空腹だったみたいだ

 

「……ちゃんと全部食べたな。食欲がある用で何より」

 

小さく笑うシズク、目つきは鋭くて普段はちょっと怖いって感じがするけど、こういうふとしたときに見る笑顔とか見ると可愛いよなあ……仮にも神様に抱く感想じゃないと思うけど……

 

【横島さん?鼻の下伸びてますよ?】

 

「ほわああああああ!?」

 

急に机の下から顔を出したおキヌちゃんに、絶叫して後ろにひっくり返る

 

「ぎゃふ!?」

 

「ああー!?た、タマモー!?」

 

後ろで寝ていたタマモを押しつぶしてしまい、痙攣しているタマモを慌てて抱きかかえる。えっと、骨とか折れてないよな?ちょっと手足を触って見るが痛そうな素振りはないし……大丈夫だよな?

 

「……行き成り来るな。それに玄関から入って来い」

 

【あーすいません】

 

シズクに説教されているおキヌちゃん。本当心臓に悪いから、玄関から入ってきて欲しい

 

「それで何か用なのか?」

 

霊体痛の事もあるし、家で療養するように言われてるんだけど……こうして尋ねてきたってことは何かの用事があるのかな?と思い尋ねると

 

【美神さんと蛍ちゃんが眼魂の事で話があるそうですよ?】

 

眼魂の事で?俺は机の上の3つの眼魂を見て、何の話だろうな?と思いながら、不満そうにこっちを見ているタマモを膝の上に乗せて、その8本の尻尾にブラシをかけてやりながらごめんなーと謝るのだった……なおチビとモグラちゃんはと言うと

 

「みーむーッ!」

 

「うきゅ!?」

 

ソファーの壁をゴールに見立てて、PKの様な物をやっていた。なんか最近賢いって言葉で片付けられないくらい成長しているなあと俺は心の中で呟くのだった……

 

 

 

 

 

義経の封印を終えた事でGS協会と岩手のGS支部から報酬が払われた、本当は嫌だけど今回はエミにも大分迷惑をかけたので、その報酬の一部をエミに譲ることにした

 

「これ、一応私からのお礼」

 

私のリポートを琉璃に提出した帰りにエミの事務所によって、小切手を渡す。苦渋の決断だったが0を7個エミの目の前で書き込んだ。まぁ琉璃と岩手のGS支部からあわせて億単位で収入があったからいい物の、今回は本当に失敗したと思う

 

「まぁ良いけどさ、あんまり無理難題を持ち込むの辞めてよね?」

 

「今回見たいなのはそうそう起きないわよ。所で……タイガーは?」

 

姿の見えないエミの助手の事を尋ねると、エミは小切手を金庫の中に隠しながら

 

「今回の独断専行で暫くGSの修行なし、ちょうど編入試験があるらしいから勉強させてるわよ」

 

まぁ今回は上手く行ったから良かった物の、怨霊と精神を繋げるなんて正気の沙汰じゃないからね。とは言え、横島君が命令した所だからあんまりキツク言えないのが辛いところね

 

「それであの石のことと義経の事はどうするつもり?妙神山にでも行くの?」

 

うーん、確かに妙神山に居る小竜姫に話をするのが早いんだけど、そうそう妙神山にはいけないし……

 

「とりあえずは保留ね。それに相談に行っても信じてもらえるか怪しいしね」

 

神魔を操る物質。そんなのがあると言っても証拠が無ければ信じてもらえないかもしれないし

 

「そうよね、神魔を操る者なんて、正直言って信じたくないわよね」

 

私も信じたくない気持ちは一緒だけど、実際何回も見ているから信じるしかない

 

「じゃ、また今度。琉璃と飲みに行く時にでも誘うわ」

 

車でいつまでも蛍ちゃんを待たせるわけにも行かないので、事務所を出ようとすると

 

「令子。オタクの所の横島……ちゃんと見ておきなさいよ」

 

エミの言葉に判ってるわよと返事を返し、車に乗り込むついでに、おキヌちゃんに先に横島君の家に行くようにお願いして、蛍ちゃんと一緒に横島君の家に行くと

 

「みーみー!?」

 

「うっきゅー!!」

 

「「おおー」」

 

毛糸のボールでPKをしているチビとモグラちゃんを熱心に見てる横島君が居て

 

(な、何をしているのかしら)

 

最近チビの賢さがどんどん上がっているのは知ってたけど、まさかPKを出来るレベルまで知性を上げているなんて思ってもなかった

 

「あ、美神さん!見てください!チビとモグラちゃんがサッカーを覚えました!」

 

「そ、そう見たいね」

 

弾ける笑顔の横島君の反応に正直悩む。ハムスターと同じサイズの生き物がPKをしている事に、もう少し驚いて欲しい

 

「あら、可愛いわね?」

 

「だろー?もうチビもモグラちゃんも可愛いよなー」

 

……頭痛が、いや別に良いんだけどね?ちゃんと最近除霊でも活躍してくれるようになってるから、でもこれ以上もっとなんか増えて行きそうな気がするのは気のせいかしら?はぁー……まぁ次の除霊の相談の事もあるし、前の義経の除霊の件もあるからさっさと本題の話をしましょうか

 

「横島君。あの時のベルトってどうしたの?」

 

あの時は間違いなく横島君はあのベルトを持ってなかった。それなのにいつの間にかベルトを身に着けていた、それをどうしても聞きたかったのだ

 

「また消えました」

 

消えたね……嘘はついてないわよね、横島君が嘘を言う理由がないし……じゃああのベルトはどこへ消えたのかしら

 

【あの奇妙な物なら、主殿の魂の中ですよ?】

 

突然聞こえてきた横島君でも、おキヌちゃんでもない声に驚いていると

 

「喋ってる?もしかして牛若丸?」

 

蛍ちゃんがその声の主に気付く、それは机の上の紫色の眼魂から発せられていた。と言うか主殿って何?

 

【はい!牛若丸とお呼びください、主殿に助けられた恩返しをするため、現世に留まっております】

 

眼の部分をちかちかと光らせる眼魂。あの時は調べている時間がなかったけど、まさか眼魂の中に留まっているとは……てっきり成仏しているのかと思った

 

「……魂の中とは?」

 

牛若丸が言うにはあのベルトは横島君の魂の中にあるという、それはどういうことなのか?とシズクが尋ねる

 

【ですから主殿の魂の中に眠っているのですよ。主殿の霊力と意思で出てくると思いますよ?】

 

横島君の霊力と意思か……ちらりと視線を向けるときょとんとした顔をしている横島君。何のことか理解してない見たいね

 

「ま、良いわ。繰り返し言っておくけど、あのベルトはよっぽどじゃないと使用禁止。判ったわね」

 

あれは霊力をかなり消耗させる、まだ霊力を使うことにすら慣れてないのに、あれだけ膨大な霊力を使っているといつかかならず後遺症が出るのでしっかりと釘を刺しておく

 

「う、うっす」

 

「判ればよろしい。それと暫くは療養する事、ここの病院に通いなさい」

 

もう元気なんですけどねー?と言う横島君の頭に拳骨を叩き込む

 

「あいだあ!?な、なななな!?なんで殴るんすか!」

 

頭を押さえて涙目の横島君を睨みながら

 

「肉体が元気でも、霊体が消耗しているからよ!!良いわね、ちゃんと病院に通わないと、今度から除霊には連れて行かないわよ!それに今回の独断専行!それ含めて暫くは大人しくしてなさい!」

 

この脅しは流石に効いたのか、判りましたぁと敬礼する横島君。もう動けるから元気とか思っていたんでしょうね、たぶん

 

「と言うわけだからシズク。暫くの間、横島に霊力を使わせないようにして、それとこれ病院の地図。たぶん嫌がると思うから引きずってでも病院に連れて行って」

 

「……判った。横島の面倒はちゃんと私が見る」

 

俺は子供か!?と叫ぶ横島君は無視する。ちゃんと治療させないと後が怖いからね

 

「おキヌちゃんは横島君が勝手に霊力を使わないか監視しておいて」

 

今霊力を使わせると完治するまで時間が掛かるので、おキヌちゃんも様子を見てあげて?と頼むとおキヌちゃんは

 

【了解です!24時間、お風呂までしっかり監視します】

 

「除霊するわよ!この色ボケ巫女幽霊!!」

 

そこまで監視しなくてもいいのよ?とおキヌちゃんに言うが、頬が赤く染まっているのを見ると絶対なんかしでかしそう……ワイのプライベートは!?と叫んでいる横島君の隣で頬を押さえて身悶えしているおキヌちゃんを見て

 

「シズク。頑張ってね?」

 

シズクは疲れたように溜息を吐きながら判ってると返事を返す。どうもシズクもおキヌちゃんが苦手みたいねと苦笑しながら

 

「それと横島君。除霊の本と妖怪の本、それに練習用の破魔札。それと眼魂も全部出しなさい」

 

使っちゃ駄目と言っても今の焦っている横島君ではいつ使うか判らない、だから全部取り上げておいたほうが安心できる

 

「う……「横島君?早くしてくれる?」……判りました」

 

渋々と言う様子で持ってきた除霊道具を見てから一応蛍ちゃんに確認する

 

「これで全部?」

 

横島君の手持ちの道具の管理をしているのは蛍ちゃんなのでこれで全部か確認する。厄珍には横島君だけで来た場合には売らないようにと釘を刺しているので1人で買うことは無い。購入時は蛍ちゃんが付き添っているので横島君やシズクに尋ねるよりも早い

 

「……はい、全部ですね。ちょっと破魔札の減りが早いですけど」

 

減りが早いねえ……私と蛍ちゃんの視線に判りやすく目を逸らす横島君。どうも独断で練習してるみたいね、これも今後しないようにシズクに監視してもらわないといけないみたいね

 

「さてと、じゃ私達は仕事があるから。いいわね大人しくしているのよ」

 

「うっす……」

 

【薔薇色の生活の始まりですー♪】

 

納得して無い様子の横島君と頬を紅く染めていやんいやんと身を捩っているおキヌちゃん。そしてそんなおキヌちゃんをみて青筋を浮かべている蛍ちゃん。いつもどおりすぎるけど、これを普段と思ってちゃおしまいよねと溜息を吐き

 

「じゃシズク。後は任せたわよ」

 

おキヌちゃんと横島君の問題はシズクに丸投げし、私は蛍ちゃんと一緒に依頼主の元へ向かうのだった

 

「美神さん。あの色ボケ巫女幽霊、本気で除霊したいんですけど?なんかいい方法無いですかね?」

 

なお待ち合わせの場所に移動するまでの間。私はおキヌちゃんを本気で除霊しようとしている蛍ちゃんを説得する事になり、精神的にかなり疲れることになるのだった……

 

 

リポート23 フィルムの中の剣士 その1へ続く

 

 

 

 




今回はあんまり内容が無かったかな?暗躍サイドとかを書いて見たかったのですが、GS風にしてみたのでかなりコミカルになっていると思いますが、どうでしょうか?後はほのぼのをチビとモグラちゃんを書いて見たかったので、こんな感じになりました。次回はフィルムの中の剣士と言う事で、フィルムは生きているの話になります、その後に別件をやって、GS試験の話に入っていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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