GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

130 / 205
どうも混沌の魔法使いです。今回はタイガー寅吉や少し早いですが、ピートとシルフィーを学校に登場させようと思っています。そして今回のリポートを通じての敵は前々回のリポートで出た「義経」となります。今回も長編になると思いますが、どうかよろしくお願いします

なおトトカルチョの受付はこのリポート22終了までになるので、参加してくださる方は活動報告にてご参加よろしくお願いします


リポート22 英雄の見る夢は?
その1


リポート22 英雄の見る夢は? その1

 

暗い夜道に響き渡る金属と金属がぶつかる音……それはしかし剣同士が奏でる音ではなく、鎖帷子が擦れ合う音だ……闇夜の中を進む長身の鎧武者……

 

「ぬぐう……わ、私は……」

 

満月の光に照らされたのは紅い鎧に身を包んだ鎧武者……義経だ。横島のサイキックソーサーで弾き飛ばされた衝撃で我を取り戻したが、増大していく破壊衝動と自身を殺した兄への恨み……それは義経の意志を飲み込み、再び破壊だけしか出来ぬ獣へと落とす為にその精神を削る

 

「わ、私は……憎んで……なんか……」

 

歯を食いしばり、その美しい顔に苦悶の表情を浮かべ、義経は足を引きずりながら再び闇夜の中に消えていくのだった……

 

「み、みちゃった……鎧武者のおばけえええ!?!?」

 

そして運悪く、その姿を見た女性の絶叫が周囲に響き渡るのだった……

 

「あーまた目撃情報が増えてきたわね」

 

翌日GS協会に出された紅い鎧武者の亡霊の目撃情報の多さに神代琉璃は

 

「よしっ、そろそろエミさん戻るって聞いてるし、アポを取って置きましょう」

 

呪術師である小笠原エミは公安から依頼を受けることもある、それよりも早くアポを取っておこうと呟き、電話に手を伸ばすのだった……

 

 

 

 

事務所に移転することが決まった次の日。間借りしていた唐巣神父の教会を掃除する為に教会へと訪れていた

 

「ふーん、オカルトGメンねえ?そう言う進路もあるんか?」

 

「ええ。オカルトGメン……正式には国際刑事警察機構の超常現象課に入りたいんです、横島さんもどうです?妖怪とかの保護とかをしている部署もあるそうですよ?」

 

なんであの吸血鬼は余計なことを言うかな?あんまり横島にそう言う話をするのは止めて欲しいんだけど……あーでも横島なら

 

「あーパスパス。俺そういう堅いの嫌だし、そもそもGSになれるのかも怪しいのに、そんなハードル高そうなのは御免だぜ」

 

私の想像通り、ピートさんの提案を断った横島は溜息を吐きながら、教会の隅を指差す。私は見ないようにしていたんだけど、横島の動きにつられてそっちの方向を見てしまう

 

「あれ、なんとかしてくれない?」

 

「すいません。何度も話はしているんですが」

 

ピートさんと横島の視線の先にはかなり衝撃的な光景が広がっていた

 

「みむうううう!!」

 

「しびびび……しびれるううううう」

 

先ほど横島の血を吸おうとしたシルフィーさんがチビの微弱な電撃によって痺れて倒れていた

 

「うきゅ」

 

しかもモグラちゃんも巨大化して、警戒している為とてもじゃないが、動くことなど出来ないだろう。もし動けば、あの鉄さえも引き裂きそうなモグラちゃんの爪の餌食だろうから……しかもシャドーボクシングの様に爪を振るっているのが中々恐ろしい

 

「本当すいません」

 

申し訳なさそうに言うピートさん。本当にお兄さんって言うなら妹をしっかり監視するくらいはやって欲しい物よねと思いながら

 

「オカルトGメンって事はピートさんはどっかの大学とか卒業してるの?」

 

雑巾を絞りに戻ったついでに尋ねると、ピートさんはきょとんっとした顔をしている。ま……まさか

 

「高校くらいは卒業してる?」

 

「いえ。僕はあの島育ちですから、学校とかは行ってないんです。それがどうかしたのですか?」

 

ピートさんの言葉を聞いて、深い溜息を吐く私を見た横島は感づいたようだ

 

「あのさ?それって公務員だよな?」

 

「ええ。そうですが?横島さんも芦さんもどうしたのですか?」

 

……本当島育ちって怖いわ。ここまで何回も聞いているんだから、普通なら何を尋ねているのか判るでしょうに……私はさらにもう1度深い溜息を吐いて

 

「ピートさん。国際刑事警察機構の超常現象課に入る最低条件って……高校卒業ですよ?」

 

「!?!?」

 

今知ったと言わんばかりの顔をしているピートさんを見て、私は再び深い溜息を吐くのだった……

 

 

 

 

その日私は地獄組の組長に霊障について相談を受けていた

 

「やっぱりもう。ワシはやくざを引退するほうが良いんか?」

 

「まぁそうなるかな……私のあげたお札がこの有様だし?」

 

最近うなされると聞くので呪いと幽霊に対するお札をあげたんだけど、真っ黒に染まっていてその効果を完全に失っている

 

「し、しかし……ワシは組長として……」

 

「それで呪い殺されても良いなら続ければ良いと思うわよ?」

 

組長の姿を見ると何人もの幽霊が纏わりついているのが見える。流石にこれを除霊するのは骨だし、除霊してもまた同じ事の繰り返しだと思うし

 

「なんとかならんのか?」

 

「イタチゴッコにしかならないと思うわよ?別に私は何度もお金が貰えるからいいけど」

 

最初はエミが呪いを掛けているのかな?と思っていたが、そういう痕跡は無かった

 

(もう琉璃が連絡してくれたのかな?)

 

エミは1度に1つの依頼しか受けない、オファーを受けた時点で別の依頼を受けることは無い。だから今回の霊障は完全に組長を恨んでいる人間とかの仕業だ

 

「まぁ大親分さんに相談して、そう言う道から足を洗う事を決めたらまたこれば?そうすれば除霊してあげるから」

 

肩を落として出て行く組長を見送っていると

 

【どうして除霊を断ったんですか?何回も来てくれるなら良い儲けになるんじゃ?】

 

壁から顔を出したおキヌちゃんがそう尋ねてくる。確かに何度も除霊に来てくれる相手って言うのはかなり美味しいお客なんだけど

 

「多分だけど除霊の費用よりも除霊に使う道具の方が高額になりそうだからね」

 

1回や2回なら準備してある除霊具でなんとかなると思うけど、何回も来られるとその度に赤字に近づいていく

 

【そんなに厄介な幽霊だったんですか?】

 

「蛇っぽい幽霊だったからね、地上げした土地かなんかに忘れられた神でもいたんじゃないの?」

 

そう言う場合の幽霊って言うのは厄介なパターンが多いから、本当に組長がやくざから足を洗わないと除霊しても除霊しても同じ事。もう組長も足を洗う時期が来たんじゃないの?とおキヌちゃんに説明していると

 

【オーナー。玄関の所に強い霊力を持った女性が訪れていますがどうしますか?】

 

ふーん、思ったよりも早かったわね。義経の実害が出る前にどうするかを話し合いたかったから良いタイミングね

 

「私の知り合いだから通してくれる?」

 

【了解です】

 

さてと、じゃあ後は……っと、私は机の引き出しから今の段階で手にしている義経の情報を用意しながら

 

「おキヌちゃん。お茶を用意してくれる?」

 

【はーい!じゃあ用意してきますねー】

 

キッチンに向かっていくおキヌちゃんと入れ替わりにエミが所長室に入ってきて

 

「令子、ずいぶんと良い場所に新しい事務所を構えたじゃないの」

 

渋鯖 人工幽霊壱号の存在に気付いているエミ。もしかするとこの事務所がエミの物になっていた可能性もあるから、良いタイミングで渋鯖 人工幽霊壱号が尋ねて来てくれたわねと思わず安堵した

 

「それで?琉璃に聞いたけど、今回のヤマは強力な精神感応能力者が必要って聞いてるけど、どんな事件なのよ?」

 

琉璃詳しく話をしてなかったのね。でもこれは良い対処だったかもしれない、義経と聞けばエミでも渋い顔をしていたと思うからね。私がなんと説明しようかしら?と考えていると

 

「まぁ妙神山でパワーアップした私の現場復帰の最初の仕事だから、簡単なのじゃ困るけどね」

 

「ふーん。それなら丁度良かったわ」

 

私は義経の資料をエミの前において、にっこりと笑いながら

 

「魔族に操られて暴走している源義経を正気に戻して、除霊するわよ」

 

あれだけ言ったんだから断らないわよね?と笑いかけるとエミは

 

「……琉璃も令子も碌な死に方しないわよ」

 

「まぁまぁ、報酬はバッチリ出るんだから頑張りましょうよ」

 

はぁぁっと深い溜息を吐きながら資料に目を通し始めたエミに

 

「それで?その精神感応能力者の弟子は?一緒じゃないの?」

 

「学校に行かせてるワケ。まだ未成年だしね」

 

親御さんから預かる条件が、高校に通わせる事だったワケと呟くエミ。学校ねえ……あれ?もしかしてそれって

 

「○○高校?」

 

「……もしかしてオタクの所の横島の学校?」

 

うんっと頷くとエミは少し考える素振りを見せて

 

「まぁ良いか。霊能関係者が居るなら上手く行くでしょ」

 

「なんか訳あり?」

 

こくっと頷くエミ。まぁ霊能力者って案外訳ありが多いから横島君がなんとかしてくれるでしょと思っていると

 

【美神さーん、エミさーん、お茶が入りましたよー】

 

お茶を持って来てくれたおキヌちゃんにお礼を言って、私は義経の目撃情報を纏めた資料に目を通し始めるのだった……

 

 

 

 

 

「ああー久しぶりの学校だなあー」

 

ぐぐーっと背伸びをしながら呟く、前の天竜姫ちゃんの事とか、あの義経の事とかもあってしばらく学校に来てなかったからずいぶんと久しぶりに来た様に思える

 

「みむうー」

 

「うきゅー」

 

机の上に寝転がって真似をしているチビとモグラちゃんに苦笑していると

 

「みんなーニュースよ!ニュース!!!」

 

愛子が机を担いで教室の中に走ってくる、こういう所を見るとやっぱり愛子も妖怪なんだなあと思う

 

「なんだー?どうした?」

 

「よ、横島君!?あら、嫌だ」

 

ほほほっと言う感じで口元に手を置いて机を置く愛子。いや、今更おしとやかに振舞ってももう遅いと思うんだが……

 

「それで?ニュースって何だ?」

 

「え、えーとね。転校生が来るんだって……それより、久しぶりね。元気してた?」

 

そう尋ねてくる愛子に元気に決まってるだろ?と返事を返しながら転校生と聞いて

 

(すぐ動いたのかな?)

 

帰る時に唐巣神父に泣き付いているピートとシルフィーちゃんが居たから、転校生ってその2人何じゃ?と思っていると

 

「あんまり驚いて無い見たいね?」

 

「んー知り合いかもしれないしなー?」

 

そうなの?と呟く愛子と見ているとガラリっと扉が開く音がする。すると愛子の顔が引きつっているのが判る、うん?どうしたんだ?ピートかシルフィーちゃんならそんなに驚くことは無いと思うんだが?

 

「ねえ?あの巨人が横島君の知り合いなの?」

 

巨人?愛子の言葉に首を傾げながら振り返るとそこには……身長2Mは超える巨人がこっちを見ていた

 

「で、でかっ!?」

 

その余りに異様な風貌に俺を含めた全員が停止していると、その巨人は

 

「お、おなご!?……クラスの半分が……おなご!?!?」

 

クラスメイトを見るなりそう呟いて、だらだらと冷や汗を流し始めたと思ったら

 

「わ……わっしは……わっしはまだ、心の準備が出来ておらーんっ!!!!」

 

そう叫ぶなり扉を破壊して廊下へと飛び出していった……

 

「なんやあれ?」

 

「わかんないわよ」

 

俺の呟きに愛子が疲れたように返事を返すのだった……本当、さっきの巨人はなんだったんだろうな?

 

「あれー?先に行かせた転校生はどうした?」

 

あの巨人について考えていると担任が来て不思議そうに尋ねてくる

 

「さっき扉壊して出て行きました」

 

愛子が代表して言うと、後で扉修理しないとなーと呟きながら

 

「まぁ他にも転校生が居るから、そっちを先に紹介するか。おーい、入ってきてくれー」

 

担任が呼ぶと同時に教師に黄色い歓声が響く、予想通り教室の中に入ってきたのはピートで、俺に気付くと

 

「横島さん。良かったです、同じクラスに知り合いが居ると安心しました」

 

「へーへー、それは良かったな」

 

俺としてはクラスメイト全員の視線が集中して、居心地がかなり悪いんだけどな

 

「なんだ?横島知り合いなのか?」

 

クラスメイトのえーと……忘れたからクラスメイトAでいいな、Aが訪ねてくるので

 

「俺のGSの師匠さんの師匠さんの今の弟子」

 

だから顔見知りなんだと説明していると

 

「ふぎゃあ!?目がぁ!?」

 

最近良く聞こえた声が聞こえてくる。ま、まさか……驚きながら振り返ると

 

「うきゅ!」

 

いつの間にか巨大化していたモグラちゃんがその爪を振るっており、その足元を見ると

 

「くう……お、恐るべし……モグラちゃん」

 

目を押さえて蹲っているシルフィーちゃんが居て、俺はピートを見て

 

「ほんといい加減に!お前の妹何とかしろ!!!」

 

「すいません!すいません!!!」

 

学校生活の中でも後ろに警戒しないといけない生活なんて御免だぞ!と俺は思わずそう叫ぶのだった

 

「あーテストケースとして吸血鬼のピエトロ・ド・ブラドー君とシルフェニア・ド・ブラドーさんの編入が決定した。皆仲良くするように」

 

能天気な教師がそんな風にピートとシルフィーちゃんを紹介する中。俺は

 

「少しでいいから、血をーッ!!!」

 

目を紅く光らせて、鋭い牙を向けてくるシルフィーちゃんの腕を掴んで、必死に吸血攻撃を防いでいた

 

「ぬおおおお!!いい加減に諦めろぉ!!」

 

「みむーみむー!!!」

 

「うきゅー!うきゅー!!」

 

俺の血を吸わせまいとチビとモグラちゃんが攻撃しているのにもかかわらず、俺の腕を掴んで首筋に牙を向けてくるシルフィーちゃん。正直言って超怖い、ピート?あの役立たずは

 

「い、息が吸えない……」

 

シルフィーちゃんのボデイブローを喰らって蹲って痙攣している。役に立たないにもほどがあるだろう!?この吸血鬼

 

「てえい!!!」

 

「げふ!?」

 

もう駄目だと思った時。愛子が机の角でシルフィーちゃんを打撃し、意識を刈り取ってくれたことで、俺はこの危機を乗り越えることが出来たのだった……

 

「うう。ありがとう、愛子」

 

「ううん、気にしないで横島君が無事でよかった」

 

この時俺には愛子が聖女に見えてしまうのだった……いや、事実困っている時に結構助けてくれてるから真面目に聖女か女神かと思う時がある。主に課題が多いときに……

 

「あ。横島、さっき逃げた転校生探して来いよ?」

 

「なんで!?」

 

思い出したように手を叩いて言う、担任の指示にそう怒鳴ると担任は

 

「いや、なんか本当に人間なのか怪しいから、ほら、お前が適任。判ったら、さっさと行け」

 

なんと言う理不尽……俺は溜息を吐きながら、肩の上にチビとモグラちゃんを乗せてさっきの巨人の転校生を探して歩き出すのだった……

 

 

 

 

 

 

「うっう……ワシは情けないノー」

 

ワッシの恩人のエミさんの助手になる為に日本に着たのに、こんな有様じゃあみっともなくて話にならない

 

「……頑張って、エミさんの期待に答えんと……」

 

すーはーすーはーっと深呼吸を繰り返していると

 

「おーい、てんこうせー。早く教室に戻るぞー」

 

背後から声を掛けられ振り返ると肩の上にグレムリンと何かの小動物を乗せた、男子生徒がワシを見ていた

 

(グレムリン?それと一緒に居るということは……)

 

もしかしたら勘違いかも知れんのですが……

 

「もしかしてGS関係者ですかノー?」

 

「ん?まぁ一応。GS見習いだな」

 

おお!!まさかまさかの同業者が居るなんて!しかもこの人はさっきの教室に居た人ジャ

 

(し、知り合いがおれば怖くないかも知れん)

 

ワッシは人見知りが激しいから、知り合いが居るとなればそれだけでずいぶん気持ちが楽になる

 

「ワッシは小笠原エミさんの助手をしとる、タイガー寅吉ジャ!名前は?」

 

「俺か?俺は横島忠夫。美神さんの所でGS見習いをしてる」

 

美神……確かなんか依頼があるとかで相談に行くといっていた人の名前がそんなだった気がするノー?しかし

 

「グレムリンなんか肩に乗せて危なくないんですかノー?」

 

ワッシがそう尋ねると横島さんは笑いながら

 

「チビもモグラちゃんも大人しくて可愛いぞー?」

 

肩の上でみむーとうきゅーと鳴いている姿は確かに可愛らしい

 

「まぁチビとモグラちゃんの事は置いといて、タイガー。なんで教室から逃げたんだ?」

 

そう尋ねてくる横島さん。ワッシは少し考えてから

 

「ワッシは女子が怖いんジャー。どうしたらええんですかノー?」

 

しゃーねーなーと呟きながら横島さんはワッシの悩みを聞いてくれるのだった……遠い国に居る両親に初めて友達が出来るかもしれないとワッシは心の中で呟くのだった……

 

 

 

リポート22 英雄の見る夢は? その2へ続く

 

 




た、タイガーの口調がとても難しかったです……次回からは義経についての捜査をメインにしていこうと思っています。

それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。