GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話は「カモナ・マイ・ヘルハウス」の話にしようと思います。上手く日常のどたばた具合を表現できるように頑張りたいと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


リポート21 ああ、騒がしき日常
その1


リポート21 ああ、騒がしき日常 その1

 

俺は全く覚えてないんだが、どうもあの義経を吹き飛ばしたサイキックソーサーのおかげで僅か、本当に僅かだが霊能力の操作が上手くなった……らしい。病院の検査でも全く異常がなく、念の為に数日療養したが今日やっと霊力を使ってみようと言う話になったのだが……

 

「蛍。本当に上手くなってるのか?」

 

「あ、あははは。うん」

 

霊力を通すなり爆発した破魔札を手に蛍に尋ねる。気まずそうに笑っている蛍……本当に上手くなっているのか?と思わずにはいられない、あと若干こげた髪から嫌な匂いがしているのがとても気になる

 

「……霊力の出力が上がっているからだ。もう少し弱くイメージしろ、今までのままだとまた同じことの繰り返しだ」

 

シズクのアドバイスを聞いて、普段使っている霊力よりも遥かに弱く霊力を込めて札を投げると

 

バンッ!!

 

「おお!?」

 

今までの音と全然違う命中音が響く、今まではパンとかポンの間の抜けた音だったけど、今のはかなり鋭い音だった

 

「流石シズクね。良いアドバイスだわ」

 

「……当然」

 

蛍とシズクの言葉を聞きながら次の札を拾おうとすると

 

「うきゅ」

 

「ありがと、モグラちゃん」

 

札を咥えてこっちを見ているモグラちゃん。俺に渡そうとしてくれていたんだなあと小さく笑みを浮かべて札を受け取り、もう1度破魔札を投げるのだった

 

「みむー」

 

お疲れ様と言う感じでタオルを摘んで飛んでくるチビからタオルを受け取り、汗を拭う。ほんの少しの運動なのに凄い汗だなあ……

 

「霊力がいい具合に循環しているからよ。たぶん今までよりも霊力の扱いが楽になっていると思うわよ」

 

そっか……実感は無いけど、蛍が言うなら間違いないな

 

(これで少しは足手まといにならないですむ……かな?)

 

何も出来ない俺でいるのは嫌だ、少しでもいい蛍や美神さんの力になりたい

 

「さーて、じゃあ横島そろそろ教会に帰って今日の訓練の結果を美神さんに報告するわよ」

 

訓練の後は美神さんへの結果報告だ、俺は蛍の言葉に頷き

 

「クウ?」

 

「さー、そろそろ起きようなー?」

 

ベンチの上で寝ていたタマモを抱き上げ、肩の上にチビとモグラちゃんを乗せて唐巣神父の教会に向かうのだった

 

 

「なぁ?蛍。俺とシズク帰って良い?」

 

教会に着くなり窓ガラスをぶち抜いて転がってきたピートを見て、美神さんが荒れているのだと判り逃げたいと思ったのだが

 

「駄目よ。私でも怖いんだから逃げないで、お願い」

 

俺の腕を掴んでそう言う蛍。俺は心底逃げたいと思ったが蛍にここまで言われたら逃げると言う選択肢は無い

 

(逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……)

 

自分に言い聞かせるように何度も繰り返し心の中で呟き

 

「うっし!いくぜ!」

 

気合を入れて教会の扉を開けると、目の前に広がる白

 

「は?はっ!?」

 

突然のことに困惑しどうすればいいのか判らないうちに、その白い何かとぶつかりその場に倒れこむ、なんか凄い柔らかいし、甘い匂いがするけどこれなんだろうか?

 

「なんでどいつもこいつも私の入居を認めないのよーッ!!」

 

がーっと怒鳴る美神さんの声が聞こえる。ああ、駄目だったんだ……

 

「投げられたのは不幸だけど、これはこれで役得♪いただきまーす」

 

ん?この声は?目を開くと真紅の眼を光らせ、牙を光らせるシルフィーちゃんの姿

 

「ぎゃあああああ!!助けてええええ!!!」

 

美少女は嫌いじゃない、でもいろんな意味で自分の危機を感じるシルフィーちゃんは苦手だ。迫る牙を見て思わずそう叫んだ、俺はきっと悪くない

 

「この馬鹿吸血鬼がー!!!」

 

「ぎゃん!?」

 

蛍の怒声とシルフィーちゃんの悲鳴が聞こえる。覆い被さっていたシルフィーちゃんが離れたことで俺は四つん這いで蛍に近づいて

 

「うう、怖かった。怖かったんだ」

 

「うんうん、大丈夫よ。もうあの馬鹿吸血鬼はいないからね」

 

よしよしと背中を撫でてくれる蛍。その感触に心を落ち着けながら、俺が蛍達の手伝いができるようになるのはかなり先になるんだろうなと俺は思うのだった……

 

 

 

 

し、しまった……どこのビルも入居を断られてつい、ピートとシルフィーちゃんを投げてしまった

 

「ぐう、か、神よ……これが試練だというのですか」

 

「うう。今度こそ横島君の血を飲めると思ったのに……」

 

蹲っている吸血鬼兄妹はどうでもいいんだけど……首筋に当てられているひんやりとした氷の刃に涼しいのに冷や汗が流れているのが判る

 

「……なにか言うことは?」

 

「ごめんなさい」

 

凄まじい威圧感を放っているシズクに私はすぐに降参して謝るのだった……やっぱり感情的になるのは駄目なのだと改めて学ぶのだった……

 

「うーむ、しかし琉璃君を頼っても駄目だったんだろ?都心部で事務所を開くのは難しいんじゃないか?」

 

唐巣先生が渋い顔をして告げる。た、確かにその通りなのよね。一番最初に琉璃に連絡したけど結果はごめんなさいだったし……

 

「でもなんでなんでしょうね?美神さんって有名なGSでしょ?ビルに入居してくれればいい宣伝になるんじゃないんですか?」

 

横島君が首を傾げながら呟く、GSにとって有名って言うのはある意味考え物なんだけど……こういうのは確かに説明してなかったわね

 

「GSって言うのは霊的な仕事に関係するからね、呪いとかそう言うのをオーナーさんは怖がるのよ。それに今回のビル倒壊も私の入居を断る理由ね」

 

しかし正直言うと、あんなことがあってもどこかのビルは入居OKしてくれると思っていた。

 

(うーん。最悪どこかの土地を買って事務所を……でもなぁ)

 

ビルのオーナーに大分お金を払ってしまった上にこれ以上財産を放出するのは出来れば避けたい

 

「横島君の血を吸わせてくれるならお金出すよ?」

 

「頭カチ割るわよ。ボケ吸血鬼」

 

「……氷の棺で封印しよう。それがいい」

 

唐巣先生は入居先が決まるまでいてくれてもいいって言ってくれているけど、いつまでも先生に迷惑をかけるのいやだし、蛍ちゃんとシズクはシルフィーちゃんはよく喧嘩するし

 

「うーきゅー!」

 

「みむう!」

 

「コン」

 

「ブルブルブル」

 

【大丈夫ですよ、横島さん。私が側にいますからねー】

 

巨大化したモグラちゃんの後ろに隠れている横島君とそんな横島君を護ろうとしているチビとタマモ。そして横島君の上で浮遊しているおキヌちゃん……

 

(……何時かこの教会壊しそうで怖いわ……)

 

この教会が唐巣先生の唯一の財産なのだから、これを壊すわけには行かないし。仕事の打ち合わせのたびにこんな状況になっていてはいつか壊してしまう

 

「シルフィーッ!!本当にいい加減に「うるさい!」へぶう!?」

 

同じ吸血鬼と人間のハーフでも、血の濃さが違うピートとシルフィーちゃんでは腕力とか魔力とか体力とか色々違う。吸血鬼の力全開で殴られているピートも色々と危ない、シルフィーちゃんのアッパーで教会の天井に突き刺さっているその姿を見て私はそう確信した

 

(冥華おば様に相談しようかしら……)

 

出来れば頼りたくない相手だけど、この際四の五の言ってられない。明日にでも冥華おば様に相談しようと思った瞬間

 

「「「「!?」」」」

 

「ブルブル」

 

凄まじい霊気を感じて振り返る、横島君は相変わらず震えたままだが……

 

【ごめん……ください……こちらに……事務所を求めている……霊能力者がいる……と聞いて……参りました】

 

コートと帽子で顔を隠した人間でも幽霊でもない気配を放つ何かが、途切れ途切れの声でそう呟くのだった……

 

 

 

 

 

渋鯖 人工幽霊壱号が来たわね。向こうから来たとは聞いていたけどこういうことだったのね

 

【事務所へ……案内します……】

 

私達の返事を聞かずに歩いていく渋鯖 人工幽霊壱号。ちらりと美神さんを見ると

 

「面白そうじゃない、行くわよ。蛍ちゃん、横島君」

 

予想通りの返事だ。やっぱりこれくらい美神さんは勝気じゃないとね、私は床に蹲っている横島に

 

「ほら、行くわよ。横島」

 

「あ、うん。判った……」

 

まだシルフィーさんを見て怯える素振りを見せている横島。この調子でどんどん怖がってくれれば、横島からシルフィーちゃんにちょっかいを掛ける事は無いわねと安堵し、渋鯖 人工幽霊壱号に案内され私達は教会を後にしたのだった

 

「うわーお化け屋敷見たいやなー……「そう?私は島の城を思い出すよ」のおおおおお!?」

 

横島のお化け屋敷みたいなっと言う言葉にかぶせてシルフィーさんが横島に近寄ると、横島は絶叫しながら飛びのいてチビをシルフィーさんのほうに向けている

 

(チビは武器じゃないのに……)

 

寄るな、寄ったら電激するぞと言わんばかりに放電しているチビ。なんかずいぶん勇ましくなったわね……

 

「オンボロだけど……場所は一等地じゃない、これを本当にタダで?」

 

【さよう……しかし条件が……最上階にこの土地の……権利書がおいてあります……それを取って来れたら……です】

 

そう言うと渋鯖 人工幽霊壱号はその姿を消す。器用ねー、自分をコートに憑依させて操る。渋鯖 人工幽霊壱号って人工幽霊だけどかなり強力だった見たいね

 

「うーむ、かなり特殊な幽霊だったみたいだね」

 

地面に落ちているコートと帽子を拾い上げながら唐巣神父が呟く。

 

「確かに霊波が単調で作り物みたいでしたよね」

 

「カオスさんみたいに魂を作り出した人が居るのかな?」

 

渋鯖 人工幽霊壱号について話し合っている唐巣神父とピートとシルフィーさんに対して美神さんは

 

「よし、じゃあ行きましょうか。シズクよろしく」

 

「……私はお前の部下じゃない」

 

むすっとしているシズクを先頭に事務所のほうに向かって歩き出す

 

「美神さーん!?調査とかしないんですか!?」

 

普段アレだけ調査を大事にする美神さんがなんの準備を模せずに向かっていくのを見て、横島がそう叫ぶ

 

「んー普段はね。でも悪意も感じないし……それになにより、向こうが待てないみたいだしね」

 

ゆっくりと開く扉を見て笑う美神さん。まぁ確かに悪意も感じないし……それに話では今渋鯖 人工幽霊壱号は消えてしまいかねない状況らしいし、早く行ってあげよう

 

「皆いるから大丈夫。さ、行きましょう。横島」

 

若干怯えている横島にそう声を掛けると、調査の準備をしていた唐巣神父達が

 

「やれやれぶっつけ本番は出来れば避けたいんだが仕方ないね」

 

「大丈夫ですよ、先生。これだけの人数だから何とかなりますよ」

 

まぁ確かにその通りよね、唐巣神父と美神さんと言う最高峰のGSが居るんだから、何が起きても大丈夫でしょと思い建物中に入るが……

 

「「「うわあ!?」」」

 

一緒に入ってきた唐巣神父達が建物の外に弾き出され、それと同時にバタンと大きく音を立てて扉が閉まる

 

【あの3人は君達の事務所のメンバーではない、これは君達への試練だ。君達だけでやるんだ】

 

本体の中に戻ったからかさっきまでの途切れ途切れの言葉ではなく、すらすらと喋る渋鯖 人工幽霊壱号

「さて、じゃ皆行きましょうか?なーに心配ないわよ。ちゃっちゃっと権利書を貰っちゃいましょ?」

 

勝気な笑みを浮かべる美神さんに頷き、私達は建物の最上階を目指して歩き出すのだった……

 

 

 

 

 

「うわ……やだなあ」

 

ぼろぼろの廃墟と言う感じの建物の中を歩きながら俺は思わずそう呟いた、すると美神さんがこっちを向いてきょとんとした顔をしながら

 

「いっつもこれより酷い中探索してるじゃない?」

 

確かに仕事の時は我慢できる、だけど仕事とか関係なしで、しかもくもの巣や鎧が飾ってあり、しかも妙にひんやりしているこの空気……これは俺の苦手とする……あの雰囲気に良く似ている。不思議そうに尋ねてくる美神さんに頬を掻きながら

 

「いや俺、お化け屋敷とか苦手っす」

 

全くそんなんじゃ先が思いやられるわねと苦笑する美神さんを先頭に最初の扉を開くと

 

「うわ……」

 

これはいかにも動きますって言わんばかりの鎧が置いてあって思わず顔が引きつる

 

「あーこれはいかにも動きますって感じね」

 

蛍もそう思ったのかのほほんとした表情で呟くと鎧の兜がこっちの方を見て

 

「ガチャガチャ!!!」

 

腰の鞘から剣を抜いて突進してくる。動くと思っていたけど、その凄まじい勢いの突進と周囲の雰囲気に呑まれて思わず

 

「ぎゃーっやっぱ来たぁ!?」

 

頭を抱えてしゃがみ込もうとすると、それよりも早く

 

「……くだらない」

 

シズクのぼそりとした呟きと同時にシャッと言う鋭い音が響き鎧はガラクタ同然でその場に転がった

 

「流石シズクね。頼りになる♪」

 

「……お前を助ける気はなかった。横島が危ないから手伝っただけだ」

 

ふんっと腕組するシズク。本当頼りになるロリおかんだ……もう少し愛想が良ければ完璧だと思う

 

【!合格です。どうぞ先に】

 

ぎいっと音を立てて開く扉をくぐりながら、気になった事を尋ねて見ることにした

 

「準備とかしなかった理由ってもしかして?」

 

俺が美神さんに尋ねると美神さんはにこっと笑い

 

「もちろんシズクとかチビとかモグラちゃんに頑張って貰うつもりよ!今おキヌちゃんが先の階を見てきてくれてるから、楽に攻略できると思うわよ」

 

俺は自分の肩の上にいるチビとモグラちゃんを見て

 

「危ないことはさせないでくださいよ」

 

大事な家族なんだからと念を押してから、チビとモグラちゃんに協力してくれな?と呟くのだった

 

「みーむ♪みみみむうー♪」

 

次の部屋の飛んでくる家具の部屋はチビがぱたぱたと飛びながら器用に家具をすり抜けて

 

「みむうッ!!!」

 

その家具を操っているであろう水晶を電撃で粉砕し、その破片の上で

 

「みむう♪」

 

ピースと言わんばかりに短い手をこちらに向けている。電撃の精度も飛ぶ速度も大幅に上がっていたことに今気付き、正直かなり驚いた

 

【はーチビちゃん。いつの間にかずいぶんパワーアップしてますね】

 

俺の横に浮かんでいるおキヌちゃんが呟く。それは俺も感じていた、賢くなっているし、空を飛ぶ早さも上がっている。マスコットみたいに思っていたけど、ずいぶんと成長している

 

【使い魔を操るのもその人の実力。合格です、どうぞ】

 

そして再び扉が開き、新しい道が開かれるとチビは俺の前に飛んできて

 

「みむー♪みみむうー♪」

 

褒めて褒めてと言わんばかりに俺の前の前でくるくる回っているチビの頭を撫でながら、次の階に向かうのだった

 

「んー今度は上からなのよね」

 

部屋の前で美神さんが腕組しながら呟く、上から何かが落ちてきて小さく爆発している

 

「……微弱な霊力だけど、あれだけ降っていると鬱陶しいな」

 

もしかして目の前を待っているアレ全部霊力なのか……?いや、これはあぶな……

 

「うきゅー♪」

 

ずもももっと巨大化したモグラちゃんは平然と霊力の雨の中を進んでいく、毛皮で爆発しているが全くダメージを受けている素振りは無く

 

「うきゅ」

 

前足でそれを制御しているであろう水晶を粉砕したのだった

 

「うきゅ♪」

 

凄いでしょ?と言わんばかりにこっちを見ているモグラちゃんに思わず俺は拍手してしまうのだった……

 

「本当。モグラちゃんもチビも良く懐いてるわよねー?」

 

先頭を歩いている美神さんがそう呟く。肩の上でうきゅー・みむーと鳴いているモグラちゃんとチビ

 

「きっと大事に育てているからっす」

 

お風呂も入れてドライヤーで乾かしながら毛並みを整えて、食事にも気を配っているからだ

 

「うん、まぁきっとそうね」

 

俺なんか間違った事言ったかな?と蛍を見ると

 

「間違ったことは言ってないわよ?」

 

だよな?大事に育てれば答えてくれるのは道理だよな

 

【次は霊圧で動きを束縛してくるみたいですよ?】

 

天井から顔を出しているおキヌちゃんがそう呟く、霊圧……霊圧。これはチビやモグラちゃん。それにタマモじゃ無理だ……となると……シズクのほうを見ると

 

「……任せろ」

 

にやっと笑うシズクはその部屋の水晶を見て指を鳴らすと、氷の矢が水晶を簡単に砕く、セットされていた水晶はその能力を発揮する前に破壊されたのだった

 

「いつまでこの試練って言うのは続くのー?」

 

蛍が天井に向かってそう尋ねる。1階からここまで来るまでかなりの数の試練を潜り抜けてきた。流石に少し疲れてきた

 

【次が最後の試練です。階段を上り、最上階へどうぞ】

 

音を立てて開く扉、これが最後の試練か……なにが待ってるんだろうな……俺は若干の不安を感じながら、最上階へ続く階段を上るのだった……

 

 

 

 

「これが最後の試練?」

 

最上階に来た私は思わず拍子抜けした。今までの試練で待っていたのは多数の罠にそれを制御する水晶。でも最上階はただの部屋だった

 

【その机の上に権利書があります、それを手にすれば私は貴方達の物です】

 

書類を取るだけ?それだけなら試練でもなんでもないじゃない

 

【ただしこの部屋は一歩歩く毎に年をとります】

 

はい!?年を取る!?いやいや……いくらなんでもそんな能力をこの幽霊が持っているとは思えない

 

(たぶん魂に負荷をかけて、幻術で年をとったように見せるだけ……でもなあ)

 

幻術とは言え、年をとるのは頂けない……たぶん蛍ちゃんも嫌だと思うし……

 

「これ年をとるって死ぬのか?」

 

「う、うーん……たぶん幻術とかそう言うのだと思うけど……霊力とか生命力は吸い取られるかも……」

 

蛍ちゃんも私と同じ考察をしていた……となると幽霊のおキヌちゃんだけど……

 

【すいません。壁があって入れません……】

 

向こうも馬鹿じゃないわね。幽霊のおキヌちゃんは駄目と……じゃあシズクはと視線を向けると

 

「……私も駄目だな。思ったよりも結界が強い」

 

シズクも部屋の中に入ろうとしているが、壁があるようで前に進むことが出来ないでいる。となると私達だけで何とかするしかないわけか……どうやって部屋の中を進むか考える……

 

(私も霊力で抵抗しながら進む。これしかないかしら……)

 

向こうの幻術と霊力に対抗できればきっと年を取ることはない。でも幻術とは言え年を取るのは……私がどうするか悩んでいると

 

「コン」

 

「あ、タマモ!?」

 

横島君の頭の上のタマモが部屋の中に飛び込み、どんどん机のほうに向かっていく

 

「タマモー!戻れー!危ないぞー」

 

横島君がそう声を掛けるが無視してどんどん進む。部屋の半分ほど進んだところでタマモに変化が始まる

 

「「「え?」」」

 

私達の驚愕の声が重なる。見る見る間にその姿が大きくなり、8尾の尾に最後の9尾めの尾が生え、その身体が大きくなっていく

 

「おお……なんかすげえ」

 

私もそう思う。傾国の大妖怪と言われた九尾の狐の本当の姿……眩いまでの金色の毛皮に9尾。それは妖怪ではなく、既に神と言うべきものになっていた

 

「コン」

 

机の上の書類を咥えて戻ってくるタマモ。受け取れと言わんばかりに書類を差し出してくるタマモにありがとと声を掛けて書類を受け取ると

 

【へ、変則的ですが書類を取ったことに変わりはありません。どうぞ、そこの椅子に座ってください】

 

私が座りやすいように動いた椅子に腰掛けると部屋の中に眩い光が走り、今までの廃墟とした姿は一瞬で消え、まるで新築のような綺麗な壁と家具がその姿を見せる

 

「クウウ……」

 

「元に戻ったか。でも俺はこっちの方のタマモが好き」

 

元の子狐の姿に戻ったタマモを抱きかかえて笑っている横島君を見ていると、再び天井から声が響く

 

【人工霊魂である私は強力な霊能力者の波動を受けなければ消耗してしまうのです。貴女のような強力な霊能力者に所有されることを私は望んでいた。これからは貴女の事務所として忠誠を誓います】

 

まぁ私だけの力じゃないけど、霊防御に長けた良い事務所が手に入ったって喜ぶべきよね?

 

「よし、横島君。蛍ちゃん、外で待ってる唐巣先生とシルフィーちゃん達を呼んできて、無事に良い事務所に入居できましたって報告しないとね」

 

まぁ色々あったけど良い物件みたいだし、これからここでまた皆で頑張るとしますか!窓の外から見える青空を見て、これから幸先の良い未来があるような気がして笑みを零すのだった……

 

リポート21 ああ、騒がしき日常 その2へ続く

 

 




マスコットがとても頑張りました。ちゃんと成長してパワーアップしているでしょう?まだまだどんどん成長して可愛くなっていくので楽しみにしていてください、次回はかなり話を飛ばしてチョコレート人間誕生……ではなく、ただのチョコレートの話にしようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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