GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話から本格的に話を動かして行こうと思います。きよひーとかも出して行こうと思っています。メドーサは退場しているので代わりの敵がどう動くのかを楽しみにしていてください。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その3

 

 

リポート20 竜の姫と清い乙女と操られし英雄 その3

 

「……竜神王の娘が下界に?」

 

散歩に行った横島が帰ってくるのを待っているとおキヌがまた面倒事を持ってきた。私は溜息を吐きながら

 

「……あまり竜神には関わりたくない、横島は心配だが、小竜姫がいるなら問題ない」

 

【で、でも!横島さんが危険な目に合うかも知れないんですよ!?良いんですか!?】

 

声を荒げるおキヌ。横島が危険な目に合う、それは確かに許容できる物ではないが……竜神の中でも指折りの強者の小竜姫がいるなら最悪の展開にはならないはずだ

 

「……そういう訳だ。私は天界の竜神には関わりたくない」

 

悪いが帰ってくれと言おうとした瞬間……私の探知結界の中に入り込んできた竜の気配を感じた……

 

(あいつがいるのか……)

 

魔族が動いていることは知っていた。だがまさか天界で幽閉されているはずのあいつを持ち出してくるとは思っても無かった

 

「……気が変わった。横島が危ない、やばい奴が来ている」

 

【え?】

 

驚いた顔をしているおキヌを見ながら、出かける準備をしながら、私は昔の事を思い出していた。私がいて、高島がいて……様々な妖怪が居た1000年前……その中でもとりわけ高島を慕っていた竜族。そして……高島の死を知り、暴れ回り天界の竜神に捕らえられた……

 

(清姫と横島を会わせてはいけない)

 

清姫はきっと横島ではなく高島を見ることしか出来ないだろう。だから高島と違う横島を受け入れることが出来るとは思えない

 

「……急ごう。横島が殺される前に合流しないと」

 

清姫は見た目は大人しい、だがその実気性の荒さは竜族の中でも随一であり……

 

(私を憎んでいる……)

 

高島が生きている時は仲良く喧嘩すると言う感じだった。だがきっと高島の処刑の時にいなかった私を憎んでいるに違いない……なら私が止めないといけない、あいつを……きっと高島をそれを望んでいるだろうし

 

(あの時封印されていた私が出来ることだ)

 

【こ、殺されるって!?そんなに危ない人が来ているんですか!?】

 

驚いているおキヌに説明している時間は無いと呟いて、私は横島の家を飛び出し横島の気配を探して街へと向かって走り出すのだった……

 

 

 

 

「ア、アニキ……オイラ達大丈夫かなあ?」

 

不安そうに話しかけてくるイームに俺は

 

「だ、大丈夫だ!天竜姫様を見つければまだなんとでもなる!」

 

俺とイームは1度竜族を追放され、そして天竜姫様に運よく目を掛けて貰い、再び竜族に戻る事が出来た。今はまだ会談中だから大丈夫だが、終わる前に見つけることが出来なければ

 

(こ、殺される……)

 

竜神王様は天竜姫様を溺愛している。もしも何かあれば確実に処刑だ!

 

「イーム!天竜姫様の匂いは?」

 

「い、今探してるんだな!」

 

人間の姿に化けているからイームの鼻の利きがよくない……このままだと本当に俺達の命が

 

「イーム!ヤーム!」

 

人混みの中から俺達を呼ぶ声が聞こえてきて振り替えり、俺は顔を青ざめさせた

 

(しょ、小竜姫姉さん!?)

 

や、やべえ……もう追いついてきた……こ、殺される……俺とイームが逃げようと思って振り返ろうとした瞬間

 

「同僚として言う逃げるな」

 

「うむ、今の小竜姫様は……本気で殺しに来るぞ」

 

鬼門の余りに悲壮感に満ちた顔を見て俺達はその場に正座し、小竜姫姉さんの裁きを受け入れることにしたのだった……

 

「見失ったと?何をしているのですか!?」

 

「す、すんません!天竜姫様めちゃくちゃ速くて!?」

 

「そ、そうなんだな!超加速を使われたら追いつけないんだな!!」

 

握り拳を作り、今にもそれを俺達に叩き込もうとしている小竜姫姉さんに必死に命乞いをする。これは殺られる、確実に殺られる……俺とイームが死を覚悟していると

 

「……超加速?小竜姫、天竜姫はまだ角も生え変わっていないんじゃないのか?」

 

小竜姫姉さんに話しかける童女。だが俺には判る、この童女も竜神だと……しかもこの威圧感からして小竜姫姉さんに匹敵する竜族の筈だ、イームに至っては顔を青くして今にも気絶しそうだ

 

「天竜姫様は竜族の中でも1000年に1度と言われるほどの天才です。さわり程度ですが超加速の秘儀にも到達しています」

 

小柄な竜神にそう説明している小竜姫姉さんの後ろにいる人間の姿を見て

 

「あ、あの小竜姫姉さん」

 

「なんですか?ヤーム」

 

うっ……やべえ、下手すると本当に殺される。俺達よりも竜神王様に直接面倒を見るように言われていた小竜姫姉さんの方が追い込まれているのは判るけど、もう少し殺気を抑えて欲しい

 

「後ろの人間はどういった関係で?」

 

俺がそう尋ねると小竜姫姉さんはああっと小さく頷いて

 

「今人間界で一番有名な退魔師である美神令子さんとその助手の芦蛍さんです。それと幽霊のおキヌさんです。私もあまり外界に詳しくないので協力をお願いしたのです」

 

あ、なるほど、俺もイームも下界には詳しくないしなぁ……だから鬼門も黒い服を着ているのかと納得していると

 

「それで何か手かがりみたいなのはあるの?えーと「ヤームだ、小竜姫姉さんの協力者なら気軽にヤームと呼んでくれ」

 

あまり人間は好きではないが、小竜姫姉さんが選んだ協力者ならさぞ凄腕なのだろうと判断しそう言うと

 

「じゃあヤームさん。天竜姫様の手がかりはあるんですか?」

 

黒髪のえーと蛍だな、それに尋ねられた俺は隣で泡を吹いているイームの頭を引っぱたき

 

「な、ななんだな!?お味噌汁のおかわりはこっちなんだな!?」

 

「お前は何を言ってるんだ」

 

イームが混乱すると訳の判らないことを言い出すのは知っていたが。これは酷い、なんで急に味噌汁なんだ……

 

「こいつはイーム、土竜族のイームだ。こいつは鼻が良くてな、それで天竜姫様を探しているんだ」

 

俺がそう言うと露骨に嫌そうな顔をする小竜姫姉さん達。どうしたんだ?と思っていると

 

「そういうのは今の下界では変態と言って差別される対象なんだ」

 

な……なんだと!?俺とイームが驚いていると美神が

 

「ま、まあ手がかりが無いからお願いするわ。それでどっちの方向にいるの?」

 

釈然としないが、今は天竜姫様を見つけることが最優先だ。隣のイームに視線を向けると

 

「こ、こっちなんだな!」

 

天竜姫様の匂いを見つけたのか歩き出すイームの後を追ってデパートとか言う建物へ足を向けたのだった

 

 

 

 

 

イームと言う長身の人間に化けた竜族に案内されながら、エスカレーターで上の階に向かいながら、デパートの中に目を通す。平日だが案外親子連れの家族が多い……

 

(デパートかぁ……こういう所で戦闘はいやね)

 

竜神王の娘が下界にいると知れれば、それを利用してやろうと動く魔族がいるだろう。ただでさえ韋駄天が操られてたりしているのだから、その可能性はかなり高い。その証拠に

 

「やばいやばい……は、早く天竜姫様を見つけて保護しないと、わ、私のくびが飛ぶ」

 

ぶつぶつ呟いている小竜姫様を見れば判る。かなり追い詰められているようだ……神界で竜族となればかなりそう言うのに厳しいのかもしれない

 

【あれー?美神さん、あれ横島さんじゃないですか?】

 

考え事をしていると上からおキヌちゃんの声が聞こえてくる。顔を上げるがまだ私には見えない、もう少しで3階だから、そこで見れば良いと判断し、周囲に魔族の気配が無いか?敵意を向けている相手が居ないか?と言うのを探るほうに意識を向けるのだった

 

「あれー?美神さんに蛍?それに小竜姫様?なんでこんなところに居るんすか?」

 

「イーム?ヤーム?どうしたのですか?」

 

「あー蛍ちゃ-ん」

 

……なんか警戒していた私が馬鹿に思えてきたわ。デパートの中のファミレスで幼女2人の面倒を見ている横島君を見て肩の力ががくっと抜けた

 

「何ってその子を探してたのよ」

 

横島君達の座っている席の近くに座りながら言うと横島君は2人を見て、どっちですか?と呟く。私としては普通に竜族と当たり前のように遭遇している横島君に頭痛を感じずに入られなかった。訳が判らないという表情をしている横島君に蛍ちゃんとおキヌちゃんが

 

【横島さん、その女の子。竜神王様の娘さんなんですって】

 

「もし怪我でもしてたらそれはそれは大変なことになってたのよ」

 

2人にそう言われた横島君が目の前でオムライスを頬張っている少女の口元をナプキンで拭ってあげながら

 

「知ってるよ?あった時に名乗ってたし」

 

のほほんと笑う横島君。はぁ……まぁ良いわ。後は会議が終わるまで事務所で保護すれば良いんだし

 

「良かった、本当に良かった」

 

心底ほっとした表情をしている小竜姫様。まぁ自分の首が飛ぶかもしれないと思っていたら気が気じゃないわよね

 

「姫様。お願いだから超加速で走るのは止めてください」

 

「お、おいつけないんだな!」

 

イームとヤームが天竜姫様にそうお願いしているがガン無視してオムライスを頬張っている。話し方は丁寧だけど、性格はあんまりよろしくないのかもしれない……っと思ったら

 

「んく。イーム、ヤーム。食事中ですので少し待っていてください、後でちゃんと話を聞きますので」

 

どうやら口の中に物が入っているので喋らなかっただけのようだ。かなりそういう礼儀には厳しく躾けられているようだ

 

「むぐ、むぐ。ヨコチマ!美味しい!」

 

「そっかー良かったなあ。あげはちゃん」

 

横島君は横島君で見慣れない女の子の頭を撫でているし……この子も竜族なのかしら?

 

「あ、あのこ私の妹です。急に呼ばれたんで横島に預けてきたんです」

 

小さく手を上げて言う蛍ちゃん。小竜姫様が来てからすぐおキヌちゃんに呼びに行って貰ったから、どうも蛍ちゃんには都合の悪いタイミングだったみたいね

 

「まぁ丁度良い時間だし、何か食べる?おごるわよ?」

 

「ありがとうございます」

 

どうもさっきから私の霊感が疼いている、これから何かあるかもしれないからしっかり備えておこう。丁度いいのでここで昼食をとることにしたのだった……

 

「小竜姫姉さん……これどうすればいいんっすか?」

 

「わ、判らないんだなあ」

 

「えっと私も判りません」

 

どうやって注文すればいいのか判らず困惑しているイームとヤームに小竜姫様を尻目に鬼門コンビはさらっと注文していた……適応力が違うのかしら?と考えながら私は小竜姫様達が何を食べたいのか?を聞いてウェイトレスに注文を告げるのだった……

 

 

 

 

 

 

(うーん、これからどうなるんでしょう?)

 

昼食を摂っている横島さん達を見ながら私は腕を組んで考え事をしていた。イームさんとヤームさんは敵で襲ってきたけど、ここでは既に味方だし、天竜童子君は天竜姫ちゃんになっているし……

 

(メドーサさんはどうなったんでしょう?)

 

イームさんとヤームさんを部下にして襲ってきて、美神さんの事務所を破壊したけど、たぶんメドーサさんも逆行しているから味方……

 

(まだ思い出してないんでしょうか?)

 

それなら敵として襲ってくる可能性もあるし……うーん。どうしましょう?どうなっているのか全然判りません。こればっかりはこのとき一緒に居なかった蛍ちゃんに聞くわけにも行かないですし、小竜姫様も記憶を取り戻していると言う確信が持てないので相談するわけにも行きません。うーん記憶があるって言うのもそういい物ではないですね

 

「それにしてもシズク。貴女が協力してくれるとは思ってませんでした」

 

昼食終えた所で小竜姫様がシズクちゃんにそう声を掛けます。最初は断られたんですが、急にOKを出してくれたんですよね

 

「……私の結界に清姫の反応があったから来た。そうじゃなかったら来ない」

 

シズクちゃんが呟いた清姫の名前に小竜姫様やイームとヤームの顔色が変わる

 

「清姫!?んな馬鹿な、あいつは天界で幽閉されてるはずじゃ」

 

「そ、そうなんだな!後100年で開放されるのに、1000年経ったこのタイミングで脱獄するなんてありえないんだな!」

 

「確かにその通りだと思うんですが……そもそもシズクさんはどうして清姫を知っているのですか?」

 

確かに天界に幽閉されているはずの事を知っているのですか?と尋ねられたシズクちゃんは

 

「……1000年前に会っている、私の祠を高島が作ってくれるより少し前に一緒に高島の屋敷で世話になっていて……」

 

高島って……横島さんの前世……昔から妖怪に好かれていたんですね。でも一緒に居たなら……話し合う余地が……

 

「……良く焼かれかけた」

 

仲悪い!?しかも殺意に満ちている!?美神さん達も顔が若干ヒクついている。まぁ私は氷付けにしてやったがなとドヤ顔するシズクさんに皆ドン引きである

 

「……危険な奴だから横島が危ないと思って出てきただけ」

 

高島=横島さん。確かに横島さんに危険が及ぶ可能性はあるから備えるのは大事だと思う

 

「みーむ」

 

「うーきゅー」

 

「はいあーん」

 

横島さんはマイペースにチビちゃんとモグラちゃんに果物を与えていた。自分が高島の転生者であるということ知らないからのこの対応だと思うけどもう少し危機感を持って欲しいと思った

 

「危険な竜神って事は判ったわ。とりあえず一回事務所に戻って準備を整えましょう。今は殆ど手ぶらだから」

 

軽い護身用の装備しか持って来てないので1度事務所に戻ろうと言う美神さん。どうなるのか判らないから準備は万全にしておいたほうがいいだろう

 

「俺はどうすればいいっすか?あとあげはちゃんと天竜姫ちゃんは?」

 

お腹がいっぱいになったのか、うつらうつらと舟を漕いでいるあげはちゃんと天竜姫ちゃんを見て尋ねてくる横島さん

 

(私は横島さんを連れていくべきだと思います。清姫って言うのが来るなら横島さんが危ないです)

 

(……それが良い、清姫は高島と結ばれたいと願っていた。今何をするか判らない、食われるかもしれない、いろんな意味で)

 

シズクちゃんのその呟きを聞いて私達の答えは決まりました、きっと蛍ちゃんも同じ考えのはず

 

「何かあってはいけないので横島さんも一緒に来てください。イーム、ヤーム、それに鬼門。横島さんを護る様に」

 

横島さんが2重の意味で食べられる可能性があると聞いた小竜姫様は即決で横島さんを連れて行くことを決め、イームさんたちに護るように指示を出した。これである程度は安心できるかもしれない

 

「じゃあ、横島君行くわよ?本当に大丈夫?」

 

美神さんが引きつった顔で尋ねる。それは仕方ないかもしれない、頭の上にタマモ、肩の上にチビとモグラちゃん。そして背中に満腹で眠ってしまっているあげはちゃんと天竜姫ちゃんを背負っている。いくら横島さんでも重いと思ったんですが

 

「全然平気っす!行きましょう」

 

にかっと笑う横島さんの姿を見て、私は思わず横島さんの天職はGSじゃなくて保育士さんなんじゃ?と思うのだった。なお周囲を警戒しているイーム達は

 

「あ、兄貴。天竜姫様があんなに穏やかな顔をしているんだなぁ!」

 

「あ、あああ……見てる。見てるぜ……」

 

基本気難しい顔をしている天竜姫がとても穏やかな顔をしているのを見て、涙していたりする。なおその反対側で

 

「おまけ扱いか」

 

「耐えるんだ、右の」

 

自分達の扱いがひどい事に鬼門達が涙しているのだった……

 

 

 

 

 

 

「それでここで待って居ればいいのですか?」

 

私をここに連れてきた何かにそう尋ねる。赤い甲冑姿の人は腕を組んだままこくりと頷く

 

(何者なんでしょうね?いえ何なんでしょうか?)

 

魔力も感じない、妖力も感じない……かと言って竜気や神気も感じない。全くの無……死んでいるのか、生きているのか、それとも人形なのか?それさえも判らない……だからこそ気を許すことが出来ない。いつ攻撃されるか判らないからだ……手にしている扇子を開いて見つめる……私の宝……

 

(高島様……)

 

この扇子は高島様に作っていただいた特別な物……只の扇子ではなく、あの方が用いることが出来る術を使って強化された特別な品……私の竜気を高め、竜にならずとも竜の強靭な鱗と炎を扱えるようになる至宝……これだけは手放さなかった……渡す様に何度も言われたがこれだけは……手放すことが出来ない

 

「来ましたか」

 

私の探知範囲に複数の竜族の気配が入った、私は手にしていた扇子を閉じて大きく息を吐く……その中の竜族の気配に私は覚えがあった……きっと向こうも気付いているだろう

 

(お前が憎かった……シズク)

 

高島様が処刑される時、お前はそこに居なかった……高島様の処刑に反対して処刑場に向かったのは全て高島様の世話になった妖怪や竜族。だがその中でシズクだけはそこに居なかった……私達の中で一番世話になっていたと言うのに!1000年我慢した憎悪が私の中で膨れ上がっていく……高島様がこんな事を望まないことは判っている。だけど私は……シズクを許すことが出来ない

 

(お前だけは殺す……)

 

殺意が膨れ上がっていく……この怒りをこれ以上抑えることなど出来るわけが無い……ガチャリと音を立てて扉が開く。姿を見せたのは神剣を構えた小竜姫と指をこちらに向けているシズクの姿

 

「シャアアアアアッ!!!」

 

あの時と何も変わらないその姿を見た瞬間。私の中で何かが切れて咄嗟に扇子を振うと同時に火炎を打ち出す

 

「!くうっ!?」

 

私の先制攻撃に反応して水の壁を作り出すが遅い、本来私は火の竜。水のシズクには勝てない……だけど

 

「苦しいでしょう、痛いでしょう。今の私の炎……今の貴女の力で押さえれるものではありませんわ」

 

最後の朝。高島様が私に渡してくれた扇子……これが私の炎を増加させている。たとえミズチのシズクといえど耐えることなど不可能

 

「排除する」

 

赤い甲冑の何かが小竜姫へと突進し、腰から抜き放った2振りの刀を小竜姫に振り下ろす

 

「は、速い!?」

 

「違う。お前が遅いんだ!」

 

この狭い建物中でよく刀が振れる物だと感心しながら火炎を打ち出す

 

「……そう何度も!」

 

今度の火炎はシズクの水鉄砲に迎撃されるが、その顔色は悪い。如何にシズクと言えどこんな水も何も無い場所で私の炎を迎撃し続けるのは不可能。なんでか知らないが、神通力が相当減退しているので昔のような水の竜を操るような真似は出来ないはずだ。

 

「……やはり私を憎むか。清姫」

 

部屋の外から渡された水を飲み干すシズク、どうも建物の後ろに味方が居るようですね……気配からして人間。高島様との約束なのですから、私は人間は傷つけません……高島様の命を奪った愚か者は殺しましたがね。それ以外で私は人間を傷つけない、それが高島様との約束の1つ。これを破るつもりは無い、だが問いかけるようなシズクの一言が私の中の憎悪を更に滾らせる

 

「それをお前が言うかぁ!あの時に居なかったお前がぁッ!!!」

 

怒りのまま憎悪のまま扇子を何度も振るい火炎を飛ばし続ける。ここで殺す!燃やして、骨を砕いて、魂さえも焼き尽くす!再生など許さない、今ここで!殺してやる

 

「高島様の墓標にその首を捧げてやる!!」

 

このまま距離をいてもシズクを殺すことなんて出来ない。それにその程度では私の怒りが収まることは無い……左手を竜の手へと作り変え飛びかかろうとした瞬間

 

(え?)

 

シズクの近くに近づいて一瞬感じた。懐かしい高島様の気配……振り下ろそうとした爪がシズクの顔の前で止まる

 

「清姫!散るぞ!」

 

小竜姫と切り結んでいた何かがそう叫んだ瞬間、シズクが一歩後ずさり

 

「……すまない美神。ここを破壊する」

 

「ま!?待ちなさいシズク!!!」

 

女の金切り声が聞こえたと思った瞬間。強烈に嫌な予感がし自身を巻き込みかねない威力で炎を打ち出した瞬間

 

「……現代の術も役立つな!!」

 

シズクが両手を広げて水を放つ、次の瞬間凄まじい暴風が私の炎とシズクの水がぶつかった場所から発生し

 

「な!?きゃあああああ!」

 

「……くっ!?流石にこの距離は……」

 

その爆発に吹き飛ばされ、全身に凄まじい激痛が走る。シズクも同じように吹き飛ばされ、その爆発が凄まじかったのか崩れていく建物……その瓦礫の中私は確かに見た……

 

(高島様……なぜシズクと一緒に……)

 

吹き飛ばされたシズクを受け止めた懐かしい気配を放つ青年の姿……心配そうにシズクを抱き止める姿を見ながら私は意識を失うのだった……

 

 

リポート20 竜の姫と清い乙女と操られし英雄 その4へ続く

 

 




清姫ってこんな感じかなあってのが若干不安です、1000年想っていたからおキヌを超えるヤンデレになるのは確実なんですが、現在シズクへの憎悪がつよいので黒い着物モードですね。その内白くなりますがしばらくは黒いままです。次回であの赤い甲冑のほうの正体も明かして行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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