その1
リポート20 竜の姫と清い乙女と操られし英雄 その1
「ふう、久しぶりに日本に戻って来たけど……なんかごみごみしてるような気がするねえ」
私は久しぶりに戻って来た日本の街並みを見てそう呟いた。ナルニアは自然しかないけど、東京みたいにビルばかりって言うのもなんか落ち着かないね……
(急に来たら忠夫も驚くだろうね)
蛍ちゃんとかからは忠夫の近況は聞いてるけど、やっぱり心配になるしね……
「さーて!ケンちゃんに書類を渡して忠夫の様子を見に行くとしましょうか!」
久しぶりの息子との再会を楽しみに来たんだから、めんどくさい仕事は早く終わらせようと思い、私はそのままキャリーケースを引っ張って村枝商事に向かって歩き出すのだった……
なおその頃ナルニアに残った大樹はと言うと
「はなせー!はなしてくれー!!」
「NO、ボスがお前を監視しろと言っていった」
「ガチムキ集団に囲まれるのは嫌だーッ!!!」
自分が居ないと大樹が何をするのか判らないと判断した百合子によって、ガチムキの現地スタッフに囲まれて絶叫しているのだった……
除霊のリポートの練習として美神さんから受け取った用紙を見て、俺は頭を抱えていた
「うーむ……むむむ」
GS協会から若手のGSの教育用教材として出されている物で、実際の除霊現場の写真とプロのGSの簡易リポート。この2つを見て適切なリポートにすると言う課題なんだけど
(さっぱり判らん)
自分で見ているのなら書くのは簡単だが、写真と要所要所をボカされたリポートでは見ていても混乱してくるだけだ
「みーむ……みみみ」
「うきゅーうううう」
「うん。別に真似しなくてもいいからな?」
みむう?うきゅう?とこっちを見つめてくるチビとモグラちゃん。俺の真似をしているのは判るけど、反応しづらいんだよなあ……でも可愛いから良いかと苦笑していると
「……横島。お客」
シズクが箒と塵取りを持ったままリビングに顔を出す。お客さん?誰……振り返って俺は絶句した
「忠夫元気にしてたかい?まぁ積もる話はあとにして、この女の子はなんだい?事としだいによっては……〆るよ?」
顔は笑顔だが、目が全く笑っていないおふくろの凄まじい殺気に俺は背筋に氷を突っ込まれたような寒気を感じるのだった……
「えーとシズクは……竜神様です」
「竜神?この子が?」
いかん、明らかに俺の話を信じていない……俺が助けてくれとシズクに視線を向けると
「……証拠」
「へ?わわ!?」
シズクがそう呟くとその身体を水に変えて姿を消す。女の子だと思っていたシズクが水に変わって驚いているおふくろ
「信じてくれた?」
「そりゃこれを見れば……」
おふくろは机の上のチビとモグラちゃんを見て、少し考えてから
「忠夫?あんたいつからお化け屋敷をやることにしたんだい?」
「いや、違うから」
とりあえずチビとモグラちゃんの説明もしないとな、課題のリポートを鞄の中に戻していると
【横島さーん、お昼の準備を……へ?】
「は?」
壁から顔を出したおキヌちゃんとおふくろが顔を見合わせる。あちゃー……なんてタイミングが悪い
「えーとおキヌちゃん?」
【は、はい!そうです!前にお電話しましたよね!】
おふくろとおキヌちゃんは知り合いだったのか、電話だけとは言えお互いに声を知っているわけで、俺が懸念したおふくろがお化けと言って絶叫する未来を回避できたことに安堵しながら
「まぁとりあえず、座りなよ、おふくろ。シズクお茶お願いできるか?」
「……判った」
いつの間にか水の状態からいつもの人の姿に戻ったシズクがキッチンに向かっていくのを見ていたおふくろが
「あんな小さい子で大丈夫なのかい?」
心配そうにしているおふくろに俺は笑いながら
「頼れるロリおかんシズクさんは「……ロリおかん言うな」へぐろ!?」
キッチンから投げられたオタマが顔面に命中し、俺はゆっくりとひっくり返るのだった……
GSになると言っていた忠夫の家がいつの間にかお化け屋敷みたいになっているのは正直驚いたけど、仲良く暮らしているみたいだからこれでいいのかも……忠夫は妖怪に好かれるって蛍ちゃんにも聞いていたし……
「……どうぞ」
「あら、ありがとう」
若干顔色の悪い少女。忠夫の話では水神で竜神って言うかなり強大な存在らしいシズクちゃんから湯呑みと煎餅を受け取る
「……改めて、水神シズク。横島の家で世話になっている、よろしく」
ぺこりと頭を下げるシズクちゃん。見た目はこんなに可愛いのに、水神様なんだ……それにしてもどうしてそんな神様が忠夫の家に居候をしているんだろう?当然と言わんばかりにソファーに座り込んで煎餅を齧っているシズクちゃんを見ていると、机の縁に手を掛けて小動物が二匹机の上に上がって来て、私に気付くとそのまま私の前に歩いてきて
「みーむ!」
「うきゅ!」
私の前で手を振っているハムスター位の大きさの小動物。片方は翼もあるから普通の動物じゃないって言うのは判るけど……なんの生き物か判らず尋ねると
「可愛いけど、忠夫。この生き物なに?」
愛嬌たっぷりで可愛いけど、何の生き物?と尋ねると忠夫は煎餅を齧りながら
「グレムリンのチビと竜のモグラちゃん」
グレムリン?話には聞いたことがあるけど、ずいぶんと愛らしいのね……それにモグラちゃんも可愛いし
(忠夫は小動物好きだったからなあ……)
昔から犬とか猫とか好きだったし……あれ?そう言えば
「タマモは?」
子狐のタマモが姿を見せないことが気になり尋ねると、忠夫はソファーのほうを指差して
「ソファーの影で昼寝している。最近良く寝てるんだ」
そう言われて立ち上がってソファーの後ろを見ると籠の中で丸まって寝ているのが見える
「だんだん大きくなってるから成長期だと思う」
のほほんと言う忠夫になんか力が抜けてくる。忠夫の周りで鳴いているチビちゃんとモグラちゃんを見て
「忠夫?あんたGSになるんじゃなかったの?」
蛍ちゃんと一緒にGSになると聞いていた、それなのにこんなに自分の側に妖怪をおいてどうするの?と尋ねると忠夫は
「んー人間にだって良い奴と悪い奴が居るだろ?おふ……ごほん。母さん」
お袋と言い掛けて母さんと言いなおした忠夫はチビちゃんとモグラちゃんを撫でながら
「だから妖怪にも良い奴と悪い奴が居る。んで、チビにモグラちゃんにタマモにシズク、それにおキヌちゃん」
自分の上を浮いている幽霊のおキヌちゃんを見て笑いながら
「皆良い妖怪に幽霊だと思う、シズクは神様だけど……俺は妖怪とも、神様とも仲良くなれるそんなGSになって……妖怪とか幽霊が悪いって言う今の常識を変えたいって思う」
私はその言葉を聞いて少しだけ安心した。ちゃんと目標を持って生活をしていると……でも言わないといけないことがある
「忠夫。その理想はきっと叶わないわよ?」
妖怪に家族を殺された人間が居る、幽霊に取り憑かれて人生が狂った人間がいる。忠夫の理想は確かに素晴らしいだろう、だけどそれはきっと只の理想で終わる
「難しいってのは判ってるよ。でもきっと何時か……叶うと思う。ほら夢は諦めなかったら叶うって言うだろ?」
ちょっと見ない間にずいぶんと逞しくなったわね……これも蛍ちゃんのおかげかしら?
【横島さーん!そう言ってもらえて嬉しい……「……寄るな」きゃふ!?なななな!何をするんですかぁ!!!】
おキヌちゃんが忠夫に抱きつこうとして、その前にシズクちゃんに迎撃される。そしてそのままポルターガイストと水鉄砲に氷の矢が飛び交い始める
「……忠夫?これでも出来ると思う?」
目の前で吹き飛ぶ花瓶や衣装棚を見て、頭痛を感じながら忠夫に尋ねると
「……たぶん、きっと何時かは出来ると思う」
チビちゃんとモグラちゃんを抱えて机の下に潜り込んで答える忠夫。これがいつものやり取りだと判断した私は
「いい加減にせんかいッ!!!この馬鹿共がぁッ!!!」
うちの息子と同棲しているのはぎりぎり認めよう。だが、忠夫に迷惑を掛けるのは許せる物ではないし、それに借りている家を壊されては困るのでそう怒鳴ると
【うひい!?】
「……す、すごい威圧感」
耳を押さえて蹲る2人の頭を軽きながら、ここには居ない蛍ちゃんの事を思い出して
(やっぱり蛍ちゃんのほうが良い子やなあ)
ちゃんと顔を見ているし、忠夫の面倒も見てくれて、それに忠夫がきちんと将来の事を考えさせてくれてあげているみたいだし……義娘として迎え入れるなら断然蛍ちゃんやなぁと思いながら、私は目の前で頭を抱えて蹲っている2人を軽く睨みながら
「説教や、行くで」
今日の夕方にはまたナルニアに向かわないといけないので、時間的にはもうあまり余裕はないけど、もう少し常識ってもんを叩き込まないと行けないようだ
【「……はい」】
俯いて頷く2人を隣の部屋に連れて行き、1時間の間正座をさせてみっちりと説教をするのだった……
「なんか百合子さんの評価が上がった気がする」
べスパとパピリオの調整が終わり、近い内に目覚めさせる事が決まったので横島の家に行かず2人を目覚めさせる準備をしている中急に褒められて感じがしてそう呟くと
「ああ、それはきっと今百合子さんが日本に居るからだね」
はい?私の知らないことをサラッと言うお父さんを見ると、お父さんはキラリと光る歯を見せながら
「今日早朝に百合子さんが日本に戻ってきたからね!きっと横島君の様子を「なんでそれを言わない!この馬鹿親がぁ!!」へぐろお!?」
私は思わず机の上に転がっていたスパナを掴んで全力で投げつける。部屋の隅で手伝ってくれていた土偶羅魔具羅がアシュサマーとか叫んでいるけどそれを無視して、私の足元に転がってきたスパナを拾いながら
「何で教えてくれなかったの?」
百合子さんがいるなら挨拶にいくのは当然の事だ。それなのにこの馬鹿親はそんな大事な事を伝えなかった……しかもなんであんな良い笑顔でそんなことを言えたのかが理解できない
「いや、百合子さんが居る間までにパピリオとかの調整を手伝って貰おうと思って、ほら姉妹が揃うのは大事じゃないか」
それは確かに判る、判るけど……私は手の中のスパナを軽く振るいながら
「調整って2時間前に終わってるよね?」
調整と言ってもとくにすることはなく、魔族としてではなく、あくまで人間としての認識を強くし、魔力とかの制御に制限を掛ける程度の物。昼少し過ぎには終わっていた、それではここまでの時間私を拘束するのはおかしいんじゃない?っとお父さんに尋ねるとだらだらと冷や汗を流しながら
「わ、忘れて「懺悔の準備は出来てる?」いいぇ!いやいや!?ま、待って!は、話を!!!」
この期に及んで命乞いをするお父さんを見下ろして、私はニコリとワライながら手にしていたスパナを遠慮なく!全力で!更に魔力と霊力で自身の身体能力を強化してから、その顔面に向かってスパナを振り下ろすのだった……
「もう!最悪!まだ日本に居るかなあ!」
もう完全にスパナとしての機能を失った鉄くずを投げ捨て、白衣から出かけるようの見栄えの良い服に着替えようと思ったが、壁掛けの時計を見て
(ギ、ギリギリ過ぎる!?)
ナルニアに発つ飛行機は午後4時。それに対して今の時間は午後2時45分……搭乗時間などを考えると着替えている時間はない、仕方ないので白衣だけ脱いで、ジーンズとシャツと言うとてもではないが、意中の相手の親に会う格好と言えない姿でビルを出てバイクで空港へと向かうのだった……
「百合子さん!」
何とか3時15分に空港が着く事が出来た。そのままナルニア行きの搭乗口の所で座っている百合子さんを見つけて声を掛ける
「あら!蛍ちゃん。忠夫に聞いて見送りに来てくれたの?」
あ……な、なんて言おう……お父さんに聞いてじゃおかしいかな?私が返事に困っていると
「優太郎さんに聞いたの?昨日ナルニアを出る前にちゃんと連絡しておいたけど……こんな時間にくるなんて何か用事があったの?」
……家に帰ったらもう100発ほどハンマーで殴ろう。ちゃんと聞いてるじゃない!お父さん
「ちょっと妹を迎えに行っていたので」
私がそう言うと百合子さんはそうっと小さく笑って自分の隣の椅子を叩いて
「あんまり時間はないけど話をしましょう?」
「はい!」
直ぐに搭乗口に向かわないといけない時間だから話を出来る時間はもう10分もない、本当ならこのまま見送ってお別れだと思っていたのに話をしましょう?と言ってくれる百合子さんの隣に座って話をするのだった
「あーあ……もう少し話をしたかったなあ……」
夕暮れの中飛んでいく飛行機を見送りながら思わずそう呟く、あと1時間でも早くビルを出ていればもっと話が出来たと思うと残念でならない……やっぱり100発じゃなくて1000発くらい行っておこう……
「えへへ……これからも頑張ろう」
最後に百合子さんに言われた言葉に頬が緩むのが判る。なんか急に横島に会いたくなったし……私は百合子さんに言われた言葉を思い出して、自分でも判るほどにだらしない笑みを浮かべて居ることに気付き、ヘルメットをかぶって顔を隠した
【色々ライバル見たいの増えちゃってるみたいだけど、私は蛍ちゃんが義娘になってくれるとすごく嬉しいわ。だから頑張ってね?】
これはもう親公認って事よね!この時点で私は誰よりも有利にたったも同然!これからはもう少し積極的にアピールしても良いし……前々から考えていた横島にバイクの免許を取って貰って2人でツーリングとかも良いわよね。これからもっと横島と仲良くなることを考えながら私は夕暮れの道を横島の家へ向かってバイクを走らせるのだった……
「……小竜姫。この写真の人誰?」
うかつでした……私は目の前の少女が手にしている写真を見て、己の不覚を深く反省していた。今の小竜姫が昼寝をしていたので少し身体を借りて横島さんの写真を見ている時に竜神王様が訪れて自分の娘を預けていった。息子ではなく、娘だ
(なんで女の子に……)
私の記憶では天竜童子。つまり男児だったのに……目の前に居るのは天竜姫。名前の通り女の子だ……これも逆行の影響なんでしょうか?と頭を抱えながら
「その人は横島さんと言うんですよ?」
「邪?」
「違いますよ?横島さんです」
名前の響きから邪と勘違いしていると理解し繰り返しそう言うと天竜姫様は私の写真を私に返してくれながら
「お話聞かせて」
にこっと笑う天竜姫様。前の時は妙神山を飛び出して下界に行ってしまったけど、TVを見ていないからデジャブーアイランドに行きたいとも言い出さなさそうですし……横島さんの話を聞いて大人しくしていてくれるならと思い
「良いですよ、良い天気ですし、縁側で話をしましょうか?」
「うん!行こう。小竜姫!」
楽しそうに笑う天竜姫様と一緒に縁側に向かいながら、私が思い出したのはメドーサの事。彼女も逆行しているなら天竜姫様を攫う事もないだろうし……それに……庭の掃除をしている2人の竜族に視線を向ける
「姫様!掃除終わりやした!」
「お、お……終わったんだな!」
「御苦労。下がっていいよ?」
「「はっ!」」
メドーサの手下として動いていたイームとヤームが既に天竜姫様の護衛として妙神山に訪れている。なんでもずっと前の地上の視察の時に見つけて、可哀想だからと言う理由でペットと同じ感覚で拾われてから天竜姫様直属として働いているらしい
「小竜姫姉さん!夕食の準備はお任せを!」
「お、美味しい!山菜を探してくるんだな!」
籠を持って裏山に突撃していくイームとヤーム。働き者なのでとても助かりますねと思いながら、天竜姫様と一緒に縁側に腰掛けて
「じゃあお話を始めますね?」
「うん!」
嬉しそうに笑う天竜姫様に私は横島さんの話をするのだった。ちょっとスケベだけど優しい良い人だと……そして翌朝
【よこしまに会いに行ってきます てんりゅー】
【天竜姫様が心配なので着いていきます ヤーム】
【し、心配しなくてもいいんだな!直ぐに戻るんだなあ イーム】
「わ、私の馬鹿ぁッ!!!」
メドーサが居なくても、イームとヤームが竜神として迎えられていても、天竜姫様が下界に行くという結末を変えることは出来ない、そしてまさか天竜姫様が外界に興味を持つきっかけが私だとは予想外すぎる。無理やり今の小竜姫の意志を乗っ取り身体のコントロールを得る。そしてそのまま荷物を纏めて
「鬼門!早く下界に行きますよ!天竜姫様が何かあっては遅いですから!」
「「はっ!!」」
なんとしても横島さんに会う前に天竜姫様を見つけないと……
(横島さんが危ない!)
横島さんは年下に加えて、人外に好かれる。天竜姫様は両方の条件を満たしている!これは急がないと私の恋が始まって直ぐ終わる!!!私は天竜姫様の身の安全よりも自分の恋愛が何も始まる前に終わってしまうことを恐れ、私は慌てて下界へと向かうのだった……
小竜姫が下界に向かっている頃魔界では……
「見つけた……魔人復活に……狂神石……」
メドーサはなんとか潜り込めたアスモデウス一派のアジトの最深部の書庫から、アスモデウス一派の計画を裏付ける資料を回収していた……だが
ギイ……
ゆっくりと扉が閉じる音がし、メドーサは手にしていた資料を落とす。普段飄々としている彼女の額には凄まじいまでの汗
が浮かんでいた。振り返らなくても判ってしまったのだ、背後に居るのがアシュタロスと同格の魔神だと
「死ぬ前に目的の物は見れたか?小うるさい鼠」
「そうかい、最初からいぶりだすつもりで」
メドーサはこのとき自分の失態に舌打ち仕掛けたが、自分の主が誰かばれてない事に安堵した、だが……自分が今どうやっ
ても逃れることが出来ない死地に誘い込まれていることも理解した
「さて、得れた物を持っていくが良い。主にでも差し出せるのならな」
「趣味悪いね」
メドーサは自分をこの場で見逃し、狩りだして殺すことを企んでいると
「ゲームだよ。さ、逃げるが良い鼠。この場は見逃してやろう」
そう言って去っていく魔神の気配に深く溜息を吐いたメドーサはそのまま超加速に入り、魔界から脱出しようしたが……その超加速の中に乱入してきた何者かの気配に振り返り、自身を追っている何かを確認したメドーサは驚愕の悲鳴を上げた
「なんて化け物だい!?そもそもなんで!?え……「失せい」う……あ」
すれ違い様に一閃……その一閃でメドーサは両断され、更に手にしていた資料までも奪われた……たがメドーサを一閃した何者かの表情は暗かった
「なるほど、蛇を侮ったか……」
メドーサを両断した何者かは自身の刀についている血を見て、小さく笑みを零した。両断された瞬間にアシュタロスに施さ
れた緊急離脱用の転移陣が発動しメドーサは人間界に飛んだのだ、だがその傷は浅くない、数分で死に絶えることが判っている襲撃者はメドーサを両断する前に奪い取った資料を手にした刀で引き裂き、アジトへと引き返していくのだった……
「く……なんで……あんな化け物が……」
アシュタロスに施された転移魔法。それは確かに効果を発揮しメドーサを人界まで連れ戻したが、それだけだった。空を飛ぶ体力も魔力も残されていない上に、深い刀傷を受けていたメドーサは意識を保つことが出来ず、そのまま川へと落下しその姿を消すのだった……
リポート20 竜の姫と清い乙女と操られし英雄 その2へ続く
グレートマザー一時帰国、何にもしてないのに蛍の好感度が上昇しました。イームとヤームは味方ルートですが、その代わり強大な敵がメドーサの代わりに登場します。最後にメドーサを両断した何者かがその1人ですね。次回はパピリオが登場しますので楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします