GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話で戦闘回は終わりにしようと思います、あんまり長引いても良くないですからね。
それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします



その5

リポート19 開眼!疾走する魂! その5

 

突然目の前に現れた化け物に思わず俺は身震いし、恐怖で絶叫しながら

 

「無理や!?あれは無理だ!!!でかいし!?」

 

俺の倍近い背丈をしてるし、爪も鉄とかも切り裂きそうなくらい鋭いし……どこからどう見ても勝てる要素が見当たらない、さっきの人間と同じ大きさならまだしも、なんでこんなに巨大化しているんだ!?

 

(だ、だいじょうぶ!いまのよこしまくんのれいりょくなら)

 

八兵衛も目の前の化け物に動揺しているのか言葉がおかしい気がする、神様がこんなにうろたえるなんて、とてもじゃないけど、俺が勝てる相手じゃないんじゃ……

 

「うう……ここは……なんだ!?あの化け物は!?」

 

気を失っていたもう一人の韋駄天が目を覚まして絶叫する。なんと言うか収拾が着かなくなっている気がする……とりあえず今出来ること……今出来ること……どうするかを必死に考える。この謎のスーツで大分強くなっているとは言え、あんな巨体を相手に戦って勝てるとは思えないし……つうか怖いから逃げたい

 

【イヒヒー♪】

 

(とりあえず戦うしかなさそうだぞ!?横島君)

 

頭の中に響く笑い声と八兵衛の声。いや、無理!無理だってあれと戦うってどう考えてもアグレッシブな自殺だぞ!?

 

【ウォオオオオンッ!!!】

 

突然狼のような咆哮を上げて突進してくる化け物。あの巨体が凄まじいスピードで突進してくるのを見て

 

「ぎゃあああ!?来たああああ!?」

 

咄嗟に地面を蹴って後ずさろうとすると浮遊感を感じて

 

「と、飛んでいる!?いや、浮いてるのか?」

 

ふわっという感じで身体が浮かぶのが分かる。さっき新幹線の中に潜り込んだのも思い出して

 

(幽霊みたいになってるって事なのか?)

 

おキヌちゃんを見ているから思ったんだけど、この姿になっている間は幽霊に近くなるのか?と考えていると

 

【グオオッ!】

 

「がはあっ!?」

 

咆哮と共にあの化け物の巨体がぶれる。そして次の瞬間には思いっきり背中を殴りつけられ地面に叩きつけられていた

 

(これは超加速!?馬鹿な!何故あの化け物が使える!?)

 

八兵衛の驚愕の声が脳裏に響く、新幹線の中で何度も見たが、これだけ広い場所だと本当に何が起こっているのか判らない

 

【シャアアッ!】

 

さらにその化け物は倒れている韋駄天のほうに突進していく、さっきまで戦っていたダメージが大きいのか呻くだけで動く気配が無い

 

(横島君頼む!九兵衛は某の友なのだ)

 

そう言われては助けないわけには行かない、怖くて本当は逃げ出したいが歯を食いしばって拳を握り締める

 

「でやあッ!」

 

大口を開けて韋駄天の噛み付こうとする化け物の前に回りこんで拳を繰り出すが、まるで鉄を殴りつけたように、俺の手が痺れる

 

【ギロッ!】

 

真紅に輝く瞳に睨みつけられる。しかも全然効いているとも思えない……

 

【ギャオオオオッ!!!】

 

俺を敵と認識したのか凄まじい雄たけびを上げる化け物。その凄まじい咆哮に後ろに弾き飛ばされながら

 

(ハ兵衛!あの倒れている韋駄天の方に!)

 

(しかし!某の補助が無ければ!?)

 

そうは言うがまたあの倒れている韋駄天を狙われてはどうしようもない。反対する八兵衛にもう一度行ってやってくれと言うと体から何かが抜け出す感覚がして身体が少し重くなる。でも動けないわけじゃない……それにこのスーツ?見たいなののおかげで防御力とかも上がっているのは、さっきの攻撃を受けたときに理解している

 

(美神さん達が来るまで耐えれば良いんだ……それならきっとなんとかなる!)

 

ぎろりと俺を睨む化け物。俺は震えながら拳を握り締め

 

「来るなら来い!この犬の化け物が!!!」

 

なけなしの勇気を振り絞ってそう叫ぶのだった……あーくそ!これが美女・美少女なら!と叫ぶ余裕が無いほどに、俺は追い詰められているのだった……

 

 

 

 

 

横島と化け物の戦いを見つめている金色の蝙蝠。ガープの使い魔だ、その視界を通して戦いを見ていたガープはにやりと笑いながら

 

「実験は成功だな……あのパイパーとか言う悪魔はいい研究データを残してくれた」

 

机の上の書類を見ながらくっくっと笑うガープ。パイパーに渡されたのは試作型の狂神石。それはパイパーの体が持たないと判断するや、周囲の悪霊などを食らって別のなにかへと変化した。それを周囲の悪霊を取り込むのではなく、所有している存在の神通力や魔力を喰らい、ある程度力を蓄積したらその力をベースに身体を構築するキメラ。それが今横島の戦っている化け物の正体だ。この能力を引き出すために、自分達を捕らえようとした、魔界と天界の部隊を拉致し、何度も何度も実験を繰り返したおかげでやっと想定した能力を満たした。1つ計算外の事があったが

 

「まぁ、それも仕方ない、実験に想定外の事が起きるのは当然の事だ」

 

あの韋駄天……九兵衛の身体ごと狂神石に取り込ませて、証拠隠滅と神族の気を完全に取り込ませたキメラを作り上げるのが目的だったが、まさか蹴りを腹に叩き込んで石を吐き出させるとは……おかげで少しばかり想定していた能力を下回ってしまったが、映像を見る限りでは戦闘力には何の問題も無い様に見えるので、一安心だ

 

(これが上手くいけばかなりの兵力を得ることが出来る)

 

魔族は我が強い物が多い、いつ反乱が起きるかもしれないという状況で戦争は出来ない、それは魔界統一を賭けた戦争に参加していたガープがその身を持って学んだことだ。故に自身の指示に忠実で、しかも戦力が高い手下を作る、それがガープが計画していたことだ。しかし通常のキメラでは限界がある、その限界を超える為に封印されていたアスラを開放し、彼の狂気の波長を利用することを考えたのだ。実験し殺し尽くした軍の者達も本当にいい実験材料になってくれた

 

「それがお前の考えていた面白いことか?」

 

「アスモデウスか、ビュレトはどうだった?」

 

聞こえてきたアスモデウスの声に振り返ることなく尋ねると、アスモデウスは

 

「駄目だった……当然の結末だ。あの時より我らの道は遠く離れている」

 

ビュレトに会いに行ったのは迷いを振り切るためだった。そのおかげか今のアスモデウスは晴れ晴れとした顔をしている

 

「それでガープ。あの人間はどうなっているんだ?」

 

魔法陣の中に浮かぶ戦いの光景を見て尋ねてくるアスモデウス

 

『どひいいっ!くっ!このこのこのッ!!!』

 

『シャアアッ!!!』

 

みっともなく泣き叫びながらキメラと戦っている人間。その身体は奇妙な装甲で覆われている。物質をすり抜ける……おそらく一時的に幽霊と同じ存在になっていると思うのだが、そんなことが出来る人間が居るとは実に興味深い

 

「判らんが、何かの特殊能力を身につけたのかもしれない。いい機会だ、回収させよう。実験材料として悪くないからな」

 

キメラに目の前の人間を捕獲するように指示を出し、私は再び戦いを映している魔法陣に視線を向けるのだった……

 

 

 

 

俺は動かない身体を八兵衛に支えられて何とか座ることが出来ている状態だった。立ち上がることも、韋駄天の足の速さも全く発揮できない……

 

【シャアッ!!】

 

「うわあ!?」

 

俺に埋め込まれた赤い石が変化した化け物が振るった爪に吹き飛ばされる人間。あの人間が俺を助けてくれたのは理解している……だがあれを倒すのは不可能だ。俺の神通力を吸収して超加速を覚えてしまったあの化け物を人間が討伐できるとは思えない

 

「くっ!?うっくそッ!」

 

その瞬発力を生かして一撃当てるごとに離れて、人間をいたぶっている化け物……あの鎧のような物のおかげで耐えることが出来ているが、それも限界が近いだろう

 

「は、八兵衛……あの人間を逃げさせろ……あのままだと死ぬぞ」

 

俺を支えている八兵衛は俺の言葉を聞いて、小さく首を振る

 

「横島君は臆病だ。それでもこうして踏み止まって戦っている……もし逃げるならとうの昔に逃げている」

 

「だが、あのままでは死ぬぞ!?」

 

俺が動く事が出来るならば、あの人間を逃がそうとしただろう。俺は鬼でもあるが、それでも神だ。人間にずっとかばわれるような存在ではない

 

【ギシャアア!】

 

「がっがふっ!?」

 

化け物の回し蹴りが完全に命中し、吹っ飛ばされる人間。地面に手を着いて無理やり立ち上がろうとしているのが見える

 

「うっ……くっ……くそ……」

 

ふらふらで立ち上がり。まだ拳を構える人間に俺は訳がわから無くなった、力の差は歴然。それなのにまだなぜ立ち上がる……

 

「彼は臆病だ。戦うことだって怖い……それでも勇敢なんだ。戦わないといけない時、立ち上がらないといけないとき……彼はそれを知っている。九兵衛……お前だってそうだったはずだ……何故そんなに逃げようとする」

 

脳裏に過ぎったのはガープに無理やり石を埋め込まれた瞬間の恐怖と苦痛……

 

「……お前は横島を逃がしたいんじゃない。お前が逃げたいんだ」

 

突然聞こえてきた声に振り返るとそこには小柄な少女がいた。だが外見は少女だが、彼女が放っているのは紛れも無い竜気だ……

 

「ミズチ殿。力を貸して「……馬鹿を言え、お前達なんか死のうが生きようが私には関係ない」

 

その目に冷酷な光を宿して言い放つミズチ、その威圧感に思わず動かない身体を引きずって逃げようとしてしまう……

 

「……神たる者が恐怖に負け、人間に全てを押し付け逃げようとする。なんと無様なことか……」

 

ゆっくりと歩き出しながらミズチがそう告げる。歩く事にミズチの周囲を大量の水が浮かび上がる……

 

「……横島は私が助ける。臆病者はそこで震えていろ、お前はもう韋駄天でも、鬼でも、神でもない。ただの戦いから逃げた無様な敗北者だ」

 

手が振るわれた瞬間大量の水が氷の矢となり化け物に降り注ぐ。その背中を見て、自分の手を見て

 

(情けない……いつから俺はこんなに臆病者になったんだ……)

 

ぶるぶると震える自身の手を見て、怒りと情けなさがない交ぜになった複雑な感情が胸を過ぎる。地面に叩きつけて震えを止めようとするが、叩きつける度に震えが大きくなっていく……それが更に俺を惨めにさせる

 

「止めろ。九兵衛……お前の気持ちは痛いほど分かる」

 

八兵衛が俺の手を握り締めながら言う。だがその同情が更に俺を惨めにさせる

 

「俺は!俺は誇り高い韋駄天だ!それがなんだ!なんと見っとも無い事か!情けない!俺は俺が情けなくて堪らない!」

 

俺達韋駄天の技を真似し、それが自分の力のように振るっているあの化け物が気に入らない、自分の代わりに人間に戦わせていると言う事が自分の惨めさを知らしめる……

 

「俺だって……俺だって戦いたい……俺が……俺が……」

 

あの化け物は俺のせいで生まれた……ならば俺が倒すのが道理だというのに、俺の意思に反して俺の身体は震え戦うことも出来ない……それが悔しくて堪らない。

 

「うわあっ!?」

 

人間の悲鳴が聞こえた瞬間。その方角から何かが飛んで来て……俺と八兵衛の間に転がり落ちてくる……

 

「これは……さっき横島君が……うぐっ!?」

 

八兵衛がそれを拾い上げた瞬間。八兵衛が苦しそうに呻き、手にした何かを落とす

 

「これは力が吸い取られた……」

 

八兵衛の足元に落ちている球体が淡い光を放つ。それを見て、俺はその球体を拾い上げる

 

(こ、これは……)

 

俺の力を凄まじい勢いで吸い取っていく球体……俺の力を吸い取る度に輝きを増していくその球体を見て

 

「八兵衛!お前の力も貸せッ!」

 

凄まじい勢いで力が吸い取られていくが、それに伴い輝きを増していく球体。それはさっき人間の姿が変わった時に見た球体と同じだった。ならば俺達の力を吸い取ればあの球体と同じ存在になるのでは?と説明すると

 

「判った。その可能性に賭ける!」

 

どうせ俺も八兵衛も録に戦う体力も力も残っていない、ならばそれに賭けるしかない……俺と八兵衛の力を吸い取って眩い光を放つ球体を握り締め

 

「人間!これを……使えッ!!!」

 

俺と八兵衛の神通力を限界まで込めたその球体を人間へと投げる。その瞬間俺と八兵衛はその球体の中に吸い込まれ消えて行くのだった……

 

 

 

 

 

【美神さんこっちです!】

 

おキヌちゃんに案内されて横島君の所まで向かうと其処には

 

【ウォオオオオッ!】

 

鋭い爪と牙を持つ鬼のような異形が月を見上げて雄たけびを上げていた

 

「な、なによあれ!?」

 

「お、鬼ですか……」

 

蛍ちゃんがぼそりと呟くが、外見は鬼だが、それ以上に禍々しい何かを感じる……

 

「……来たなら手伝え!こいつ……強い!」

 

シズクが水の槍を放ちながらそう叫ぶ。その全てが命中しているのに、鬼は全く効いている素振りを見せない、いや……あれは

 

(これは……回復してる!?)

 

ダメージは受けている、だがそれ以上のスピードで回復しているのだ……これはもしかすると勝てないかもしれない……精霊石などはあるが、それでもどれだけのダメージを与えることが出来るのか?それが判らない。かと言って逃げてあの異形を暴れさせるわけには行かない……どうやってあの異形を倒すか?そして撤退するとして、どうやって撤退するのか?それを必死に考えていると

 

「人間!これを……使えッ!!!」

 

倒れていた韋駄天が何かを横島君に投げつける。なにか強力な霊具を横島君に渡したのかと思っていると

 

「これ……もしかして」

 

渡された何かを受け取った横島君は自分の手の中のそれを握り締める

 

【アーイッ!シッカリミナー!シッカリミナー!!】

 

横島君の上半身を覆っていたパーカーが消え去り、のっぺらぼうのような顔をしたスーツ姿に変わり、そんな横島君の周りを白いパーカーが踊りながら回転する。どうなっているのか判らず呆然として見つめていると

 

「こうだよな!」

 

【カイガン!韋駄天!疾走!神速!天の飛脚!!】

 

横島君がそのパーカーを着込むと背中には赤字で八の文字が浮かび、顔には赤い棒のような物で八の模様が描かれている

 

「うお!?」

 

腰のベルトから剣が飛び出てきて、それが分裂し両足に装着される。横島君はそれを見ていたと思ったら

 

「あ、うん、そっか……」

 

誰かと話しているような素振りを見せる。どうしたのかと思って見つめていると横島君は異形のほうを向いて、気合を入れるかのように自分の頬を叩いて

 

「しゃあ!行くぜ!俺達韋駄天を舐めるなッ!!!」

 

そうして発せられた声は横島君のものではなく、3重に重なった奇妙な男性の声だった……

 

「……憑依……降魔させた……のか?」

 

降魔……それは自身の身体を器とし、高位の存在を呼び寄せる神卸しの一種……

 

【じゃあ。まさか今の横島さんは……韋駄天様なんですか?】

 

シズクの言葉を聞いたおキヌちゃんがそう呟く。私としても信じられないが、今の横島君は横島君であって、横島君ではない……

 

「どうして……未来の横島はこんなこと出来なかったのに……」

 

呆然と呟く蛍ちゃんの言葉が聞こえたような気がしたが、私は目の前の戦いに完全に気を取られその呟きを完全に聞き取ることは無かった……

 

 

 

 

へんな感覚だ……自分の身体なのに自分で動かせない……まるでTVを見ているかのような奇妙な感覚がする。身体を貸してくれと叫ぶ八兵衛と九兵衛に身体を貸すと言った瞬間。俺の身体は自分で動かせなくなった……たぶん2人が使っているのが理由なんだろうと思う

 

「はっ!でやああッ!!!」

 

【ガッ!?うぎい!?】

 

目の前の化け物を凄まじいスピードで殴りつけ、脚に装着されたブレードで切り裂いていく……だがその動きは当然俺に出来る動きではなく、八兵衛と九兵衛の物だと判る……

 

【ギイイイイッ!!!】

 

雄たけびと共に異形の姿が消える、その瞬間脳裏に八兵衛と九兵衛の声が響く

 

(行くぞ!八兵衛ッ!)

 

(応!某と九兵衛の力を合わせればッ!)

 

勝手に俺の腕が動き、腰のベルトのレバーを4回引く……その瞬間世界が止まった……

 

【超加速ッ!!!】

 

【ギイッ!?】

 

化け物が驚愕する声が聞こえる。この発動すれば絶対に勝てると思っていたんだろうから、この反応は当然だ

 

『貴様の紛い物の』

 

九兵衛のその一言の間に、何十発と言う拳が化け物を貫き……

 

『超加速で某達を捉える事が出来ると思っていたかッ!!!』

 

化け物がその腕を振るってくるが遅い……拳を一回放つ間に俺の拳が4発化け物の顔面を捉える

 

「『はあああああああッ!!!』」

 

凄まじいスピードで叩き込まれる連続蹴りが化け物の身体をずたずたに切り裂いていく……

 

【シャアアッ!?!?】

 

悲鳴を上げながら連続蹴りから逃れ、力強く地面を蹴って背を向けて走り出す、その方向には美神さん達が見えた。俺が慌てているのを八兵衛と九兵衛も感じている筈なのに、2人は全く動揺した気配が無い

 

『確かに貴様の走りは速い』

 

『ああ。きっと俺や八兵衛よりも速いだろう、だがッ!!!』

 

軽く跳躍したと思った瞬間。景色が凄まじい勢いで吹っ飛んで行く

 

【ケヒャッ!】

 

目の前に回りこまれたことに気付いた化け物の驚愕の声が聞こえる

 

『貴様の走りは速いだけだ!』

 

『お前には何もかも足りていない!!それは!!!』

 

反撃にと拳を素早い動きで交わしながら、頭の中で八兵衛と九兵衛の声が重なる

 

『『お前に足りないものは、それは!情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!そしてなによりもォォォオオオオッ!!』』

 

腰のベルトのレバーを力強く引きながら八兵衛と九兵衛の叫びが重なった

 

『『正義の心が足りないッ!!!』』

 

【韋駄天!オメガソニックッ!!】

 

化け物に叩き込まれていた蹴りのスピードがどんどん上がっていく

 

【グッ!ガッ!ギギギイイイイイイイッ!!!】

 

蹴りが叩き込まれる事に上へ上へと蹴り上げられていき

 

「『はあああああッ!!!』」

 

力強く地面を踏み込んだ一撃が化け物を更に上空に蹴り上げ、それと同時に跳躍し

 

「『消えろおおおおッ!!!』」

 

両足のブレードが展開され、高速回転しながら蹴りを叩き込み、その化け物の身体に風穴を開ける

 

【ギャアアアアッ!!!!】

 

断末魔の雄たけびを上げて爆発する化け物を見ながら地面に着地する。そして

 

【オヤスミー】

 

ベルトからそんな声が聞こえたと思った瞬間。凄まじい激痛が俺を襲う

 

「あ、あががががあああ!?」

 

痛いとか、苦しいとかそういうのを超えて、もう何がなんだか判らない。このまま死んでしまうんじゃないか?と思うほどの激痛に襲われ、俺はそのまま地面に倒れこみ意識を失うのだった……

 

 

 

 

突然現れた白い衣装に身を包んだ横島と空中で爆発した異形……

 

(これはお父さんの?それとも横島の力?)

 

とりあえず今は横島を労わないと……そう思って近づいた瞬間

 

【オヤスミー】

 

ベルトからそんな間の抜けた声が聞こえたと思った瞬間

 

「あ、あががががあああ!?」

 

横島が苦悶の絶叫を上げて倒れのた打ち回る。咄嗟に駆け寄り

 

「横島!?どうしたの!?大丈夫!?」

 

抱き上げながら尋ねるが、横島から反応が無い……腕の中で痙攣している横島を見てどうすればいいのか判らず、それでも大丈夫だと言う事を伝えるように横島を抱きしめる

 

「あ……ぐう……」

 

小さくそう呻くと気絶した横島。このままだと危険だ……

 

「シズク!お願い!あのミズチタクシーって奴を!」

 

「……判ってる!だけど場所が判らない、蛍。お前がしっかりイメージしろ」

 

美神さんもただ事ではないと判断したのか険しい声でそう叫ぶ。シズクに言われた通りお父さんのビルをイメージした瞬間。私達は水に包まれ、一瞬でお父さんのビルへと移動していた。周囲が水浸しになっているけど、そんなことを気にしている時間は無い

 

「どうした!?なにがあった!」

 

ただ事ではないと思ったのかお父さんが階段を駆け下りてくる。私は抱きしめている横島をお父さんに見せて

 

「お父さん!横島が!横島がぁ……」

 

普段は何事も無いように立ち上がってくる横島がぴくりとも動かない事に不安と恐怖ばかりが胸を締め付ける

 

「判った。横島君は私に任せろ!」

 

横島を担いで地下へと走っていくお父さんの背中を私は呆然と見つめていることしか出来なかった……あんな力は横島は持ってなかったし、あれが原因で横島が傷ついたのがわかっている。判らないことばかりが重なって、どんどん不安が大きくなっていく……

 

「蛍ちゃん。私達も休みましょう?横島君は芦さんに任せて……ね?」

 

【蛍ちゃんのお父さんを信じましょう?】

 

美神さんとおキヌさんの言葉に頷き、目に浮かんでいた涙を拭い

 

「そうですね……お風呂はこっちです……ついて来てください」

 

ミズチタクシーって奴でびしょ濡れになっているので私は美神さんを浴場へと案内する為にビルの中を歩き出すのだった……

 

だが蛍は気づかなった、横島の事が心配すぎて注意力が下がっていた事もあるが、シズクだけは蛍のあとをついて行かず、1人だけ地下へと向かっていることに……

 

なお八兵衛と九兵衛はと言うと

 

「引っかかったぁ!」

 

「馬鹿か貴様は!?細い俺が先に出るというのに無理やり突っ込んできた挙句がこれだ!」

 

「すまぬ!誰かー!誰かー!?某たちを引っ張ってくれぬかー!?」

 

「来るわけ無いだろう!?横島の治療に向かっているんだから!!」

 

韋駄天眼魂の中に引っかかって、誰も居ないエントランスの中で助けを求めていたりする……

 

 

 

 

 




リポート19 開眼!疾走する魂! その6へ続く

変身後のデメリットはあれです、両手両足の骨がポキッと折れて、ちょっと苦しくなってうずくまったところに小錦がドスンと乗ってきた~って言う。八兵衛のあれに加えて、酷い霊体痛による。肉体と霊体に酷いダメージを受けているって感じですね。次回は横島の治療の話とシズクが優太郎の正体を探り始めるとかのイベントをやっていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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