リポート18 アリスちゃんと魔法の箒と騒がしき日々 その4
壁に立てかけてある時計を見る、時刻は既に17時45分……おかしいわね……もうとっくに帰っている時間なんだけど……
「……今日は昼までだった筈じゃ無いのか?」
チビを膝の上の乗せて毛並みを整えているシズクがそう呟く。すぐ帰ってくるって言ってたのに……
「確かにね……どうしたのかしら?」
また何かトラブルに巻き込まれた可能性が高いわね……こういう時におキヌさんが居てくれれば直ぐ様子を見に言って貰えるのに……今日は美神さんの家の掃除があるからってお昼から出かけて行ってしまっているし……
(私も時間が無いのになあ……)
なんでもお父さんが何か思いついたらしく、それの研究を手伝って欲しいと言われている。なんでも横島の霊力の覚醒に関係があるとは聞いているけど……1人でやらせると絶対何かやらかすので監視してないと不安で仕方ない
(伝言を残して帰ろうかしら……)
あんなのでも一応魔神だから調子が出るのは深夜になる。だからそろそろ戻らないと絶対何かやらかす……私が焦り始めていると
「ただいまー」
横島がやっと帰ってくる。そろそろ帰ろうと思っていたから良いタイミングで帰って来てくれた……横島の声が聞こえた瞬間。リビングからチビ達の姿が消えている、この早さには正直驚かされるわねと苦笑しながら立ち上がると
「うきゅ♪」
「コン♪」
「みむう♪」
「おーう♪ただいまー」
玄関まで横島を迎えに行くチビ達の鳴声と嬉しそうな横島の声が聞こえてくる。私は帰るために纏めてあった荷物を肩に担いで玄関に向かう
「あれ?蛍今日は帰るのか?」
チビとタマモを抱っこしながら尋ねてくる横島。この言葉が出てくると言う事はもう横島の中では私が家に居るのが当然になっているって事よね……
(これは良い傾向かもしれないわ)
今はまだ通い妻って感じになっているけど、そのうち同棲出来れば……私はもっと有利になる。
(ふふふふ……全て私の計算通り)
心の中でガッツポーズを取りながら、ええっと横島に返事を返す。
「うん、お父さんがなにか研究をするみたいだからそれの手伝いでね。明日は多分家に来れないと思うから、シズクかおキヌさんにご飯用意してもらってね?それとちゃんと課題もやっておくのよ?偶には自分で最後までやってみなさい」
いつも教えてあげてるけど、横島は自分は馬鹿だと言っているが、中々頭の回りが良い。しっかりやる気になって勉強すれば平均点数は楽に取れるはずなのだから
「うっ……判った。頑張って見る」
「うん。よろしい、じゃあまたね?」
顔を顰めて頷く横島の肩を軽く叩いて、私は横島の家の外に停めてあるバイクに跨り、ヘルメットを被りながら
(お父さんにも相談してみよ)
やっぱり横島にもバイクの免許を取って貰おう。そうすれば一緒にツーリング出来るし、その間は横島を独占できる……
横島もバイクは格好良いよなあと乗り気だったので多分大丈夫だ。私は横島にもバイクの免許を取って貰うように誘導しようと心に決め、3日ぶりに家であるビルに向かってバイクを走らせるのだった……
怖いなあ……俺はシズクの用意してくれた朝食を食べながらどうやって話を切り出そうか?と悩んでいた。愛子を迎えに行って、琉璃さんに会うことを考えると、そろそろ出かける準備をしないと不味い
「……今日の味噌汁はどうだ?」
「いつも通り美味いぞ?」
うんうんと1人で頷いているシズク。やっと体調が良くなったらしく、今日は家全体を掃除すると張り切っている……掃除なら俺は邪魔になると思うから出かける……なんかなあ……シズクにどうやって説明すれば良いのだろうか?と悩んでいると
「……ん」
机の上に置かれたのは諭吉さんが2枚。シズクの方を見ると小さく笑いながら
「……なにか出かける用事があるのだろう?それなら今日はチビとモグラちゃんの面倒は私が見よう。それで誰と出かけるんだ?相手によっては……溺死」
水の塊を俺の頭の後ろに浮かべるシズク。ここで嘘を言うと確実にヤラれる……俺は冷や汗を流しながら
「学校の九十九神の愛子だ。前の魔法の箒で迷惑を掛けたからそのお詫びに出かけようって話になった」
「……神宮寺じゃ無いなら良い、気をつけて行って来い」
笑顔でそう言うシズク。うーん、どうしてシズクもおキヌちゃんも蛍も神宮寺さんをそこまで警戒するかなあ……
(良い人だと思うんだけどなあ……)
2回も俺の怪我を治してくれた凄く良い人だと思うんだけど……とは言え神宮寺さんの事を話していると確実に待ち合わせの時間に遅れるので
「じゃあちゃっと着替えて行って来る!夕方には戻るな!」
慌てて自分の部屋に戻って服を着替え、俺は学校まで走るのだった……
残されたシズクとチビとモグラちゃんとタマモはと言うと
「うきゅ……」
寂しそうに鳴いているモグラちゃんの背中を撫でながら、シズクは優しく笑い
「……横島だって出かけたい時もある、私達の気持ちばかりを優先しては駄目」
「みむ……」
「きゅー……」
シズクにそう諭されたチビとモグラちゃんはそのまま部屋の隅に置いてあるボールの元へと歩いていく、そしてそのまま2匹でボールを転がして遊び始める姿を見ながらシズクは横島と自分の食器をトレイに乗せ始める。
「クウ」
そんなシズクをタマモが警戒した様子で見つめる。タマモはシズクの性格を知っているから、こんなに理解が良い筈がないと判っているからだ、何か裏がある。そう思いシズクを警戒していたのだ……
「……そんなに睨まなくても良い。横島だって横島の付き合いがある、それを束縛すれば嫌われるのはこっちと言うことだけ……それに……水があれば私はどこでも見れる」
にやっと悪い顔で笑うシズクにタマモはやっぱりこいつはろくでもないと小さく呟き、そのままソファーの上で丸くなり、ボールで遊んでいるチビとモグラちゃんを見つめるのだった……
駅前の広場のベンチの腰掛けて、横島君と愛子ちゃん?と言う妖怪が来るのを待つ
(んー良い天気ねえ……)
暑くも無く、寒くもない。出かけるにはちょうど良い天気だ……それに何より久しぶりに自分と歳の近い子と出かける事が出来る。それが何よりも楽しみだ……
(最近は一回りも二回りも上の人達ばっかだったしね……しかも人の身体をじろじろと見るスケベ爺ばっかりだった……う
やっぱり同年代と遊ぶのが大事よねと腕を組んで頷いていると
「琉璃さーん!」
横島君の声が聞こえてきたので顔を上げて驚いた……何故なら横島君はその背中に古びた机を背負っていたからだ。しかも横島君の隣には
「大丈夫?重くない?ごめんね?」
長い黒髪をしたセーラー服姿の少女の姿があった。机の九十九神って聞いてたけど……机を運ばないと来れないのね……
(良く2人で出かける約束が出来たわね……)
見た感じかなり古い机なので結構な重量があるはず……忘れていたのか?それとも知っていて出掛ける約束をしたのか?そこが気になる所ね……かなり重いはずの机を持っている横島君の表情を見ると、平気そうな顔をしている感じを見ると、やせ我慢しているのか、それとも本当に平気なのか?と考えていると
「お待たせしました!どうかしましたか?」
私が頭を抱えているのを見て、心配そうに尋ねてくる横島君。私は手を軽く振りながら
(予定は変更しないと駄目ね)
肩から提げている鞄の中の遊園地のチケットと映画のチケットは使えそうに無いわねと思いながら、私の顔を見て首を傾げている少女に
「初めまして、GS協会会長の神代瑠璃です。九十九妖怪の愛子ちゃんでよかったかしら?」
私がそう尋ねると目の前の少女はぺこりと頭を下げながら
「机妖怪の愛子です。よろしくお願いします琉璃さん」
礼儀正しい子みたいね……うんうん。おねーさんとしては割りと好感触ね……こう蛍ちゃんとか、横島君みたいにからかうと面白い子って気がする。大分緊張しているみたいだから、ちょっと冗談でも言って見ましょうか
「ごめんね?2人のデートに割り込んで……私お邪魔虫かしら?」
「いえいえ!?デートなんてそんな大層な物じゃなくてですね!?」
あら?予想よりも良い反応過ぎて私が笑い出すと、からかわれていると理解したのか
「からかったんですね!?琉璃さん酷いです!」
「あっははは!ごめんね?でも肩の力は抜けたでしょ?横島君も、愛子ちゃんも」
私がそう言うと確かにと呟く愛子ちゃんと横島君。このぐらいの年代って異性と出かけるって思うと必要以上に緊張しちゃうのよね……そんな状態で遊んでも面白くないので、まずはリラックスっと
「じゃ横島君って何か考えているのとかあるの?」
机を担いでいる横島君に何か予定はあるのか?と尋ねると横島君は、背負っていた机を自分の隣に降ろして
「えーと、駅前のデパートで小物市と洋服のセールがあるらしいんで、それを見に行くつもりですけど……」
小物ね。うん、まぁまぁの選択かな?初デートとかで何も考えて無いかな?とか思っていたので、ちゃんと考えていたみたいだ
「じゃ、横島君エスコートよろしく?」
「なんで疑問系なんすかね?」
いや……だってねえ?机を背負っているから私と愛子ちゃんより後ろを歩いているし……疑問形がつくのは仕方ないと思うんだけど……
「ごめんね?私の身体を運ばせちゃって……やっぱり私来なかった方が……」
愛子ちゃんが横島君に申し訳なさそうに言うと、横島君は馬鹿言うなと笑いながら言って
「愛子と琉璃さんみたいな美少女、美女と出掛ける事が出来るんやぞ?この位の苦労は全然問題ないって!ほら行こうぜ?」
にかっと人の良い笑顔で笑う横島君につられて笑ってしまう。こういう朗らかな所が横島君の良いところなのかもしれない……私は隣でどうすれば良いのか?と困ったような表情をしている愛子ちゃんの手を取って
「横島君が良いって言ってくれてくれているんだから行きましょ?愛子ちゃん」
「え?で、でも……」
困ったような顔をしている愛子ちゃん。本当に良い子ね……でも横島君の善意を無駄にするのは良くないわ
「俺の事は気にしないで良いから行こうぜ?琉璃さん、愛子の服とか見てやってください。俺直ぐに追いつきますんで」
横島君に繰り返し言われて愛子ちゃんはやっと頷いて
「じゃ、行くね?」
「おう!行った行った」
机を背負う為にしゃがみ込む横島君を見ながら、愛子ちゃんと一緒に駅前のデパートに歩き出すのだった……
てっきりおキヌちゃんか蛍ちゃんを連れてくると思っていたんだけど……私の隣で服を選んでいる女性……神代琉璃さんを見る。神秘的な紅い目と蒼い髪をした見たことの無い女性を連れてきた……琉璃さんと一緒だと、どうも私の方が劣っているような気がする……身長も琉璃さんの方が高いし、スタイルも良い……なんか一緒にいるのが落ち着かない……それにどうしても気になる事が1つ……
(……こんな人居たかなあ?)
私の記憶の中ではこんな人居なかったと思うんだけど……それにGS協会の会長さんっておじさんだったような……
「……子ちゃん?愛子ちゃん?」
「あっ……すいません。考え事をしてて」
どうも深く考え込んでいたようで、琉璃さんに声を掛けられて思考の海から引き上げられる。私だけじゃ判らないから、機会があれば蛍ちゃんとかに話を聞こう。琉璃さんはくすりと笑いながら
「その服で横島君を悩殺することでも考えていたのかしら?」
はい……悩殺?そう言われて自分の手元を見ると、胸元の大きく開いた少しサイズの小さい服を手にしていて……
「ち、違います!!」
そう怒鳴って服を元に戻す。考え事をしながら服を選んでいたから全然見てなかった……あんな服恥ずかしくて着れないわ……それに私の体格じゃ似合わないと思うし……
「えーそうかな?横島君。愛子ちゃんがこの服を着ているのみたくない?」
私が戻した服を手にとって、婦人服売り場の外で私の本体の机に立っている横島君の方に向ける。慌てて奪おうとするがそれよりも早く横島君は
「あー確かに見てみたいかもしれないっすね……愛子ずっとセーラー服だから、偶には違う服を着ているの見ると斬新で可愛いって思うと思うっす」
か、可愛い……横島君にそう言われた瞬間思わず両手を頬に当ててしまっていた。自分でも判る、顔が熱い……多分面白いくらい真っ赤になっているのだと思う。そもそも横島君に可愛いなんて言われたの……これが初めてかもしれない。美少女とかは良く言われたけど、可愛いなんて言われた事が無い
(か、買ってみようかなあ……で、でもお金ないしなぁ……)
そんなに高い服では無いけれど、今の私には所持金が無い。うう……机からもっと離れることが出来ればどこかでアルバイトとかするのに……買いたいけど、買えない……私が悩んでいると
「横島くーん?お買い上げだってー」
琉璃さんがその服を横島君に渡してしまう。横島君も横島君で
「了解っす。ほい、じゃ会計を済ませてくるなー」
迷う素振りも見せず、レジへと向かっていってしまう。
「ななな!!!なんでそんな事を言うんですかー!!」
私は思わず琉璃さんに掴みかかっていた。こうして一緒に出掛ける事が出来ただけでも嬉しかったのに横島君に何かを買ってもらうなんてとんでもない事だ。だけど琉璃さんは猫のような笑みを浮かべて
「元からそう言うつもりで横島君は愛子ちゃんを誘っているのよ?それを断るのはもっとどうかと思うわよ?」
「え?」
そう言われて私は冷静に考え直して、直ぐに琉璃さんが何を言いたいのか理解した。そうだ、横島君は私が学校から離れる事が出来ないのを知っているんだから、最初から出掛ける時の費用は全部自分で持つつもりだった?
「本当横島君がモテない理由が判らないわよね?表面上ばかり見すぎなんじゃないかしら?」
会計をするためにレジに並んでいる横島君を見ながら呟く琉璃さん。確かに琉璃さんの言っている事は判る、確かに横島君はスケベだけど、それを補って余りある魅力を兼ね備えていると思う。優しいし、妖怪とかに偏見も無いし……それに私は知っているけど、子供をとても大事にする良い父親になる事も知っている……ちらりと横島君を見つめている琉璃さんの眼を見ると出来の悪い弟を見つめているような優しい目をしていて……その目は美神さんの目に良く似ていて、私は思わず
「琉璃さんは横島君が……」
好きなんですか?と尋ねようとしたが、それよりも早く琉璃さんは私の口を人差し指で塞いで
「ふふ、どうかしら?まだなんとも言えないのよね。割と好感が持てるって言うのは認めるんだけどね」
小さく笑う琉璃さんを見ていると会計を終えた横島君が歩いてきて
「会計終わったぞ、ほら、愛子」
デパートの袋に入った服を差し出され、それを受け取ると胸が急に高鳴るのを感じた……うるさいくらいに響く自分の心音がうるさい、机妖怪なのに心臓の音がするんだとどこか冷静な部分の私が告げるが、今の私はそれ所ではなかった
(好きな人に貰うプレゼントってこんなに嬉しいんだ……)
横島君に初めて貰ったプレゼント……同じクラスの友達とかに貰った物とは全然違う……不思議そうな顔をしている横島君と私の今の心境が判っているのか、にやにやと笑っている琉璃さん。私はプレゼントの袋を胸に抱き締めながら
「ありがとう……横島君」
「おう!今度またそれ着ているところ見せてくれよ」
「う、うん……」
今度出掛けるときは机をなんとかして、横島君と並んで歩きたい……どうすれば良いのか判らないけど、なんとかしたいって思う
「良い雰囲気のところ悪いんだけど、おねーさん無視されると悲しいなあ?」
琉璃さんが業とらしくそう言う、でも良いタイミングで声を掛けてくれたと思う。このままだとお互いに気まずい感じのままだから
「いやいや!無視してたわけじゃ無いですからね!?」
「えー?本当かなあ?じゃあ横島君。おねーさんの服も選んでくれる?そうねー最近胸が苦しいと思ってたからブラジャーを……「さいならー!!!」
ぴゅーっと逃げていってしまう横島君。スケベだけど、変なところで初心なのも全然変わってないのねと苦笑しながら
「横島君をからかいましたね?」
「さー?どうかなー?」
にやにやと笑う琉璃さんは絶対横島君をからかっているのだと判る。大人っぽいと思ったら変な所で子供っぽい人で掴み所がない人だ
「それよりも横島君を探しに行きましょうか?」
「ですね、どこに行っちゃったんでしょうね?」
婦人服売り場の近くには居ない、ちゃんと私の机も運んでくれているみたいだから、見つけるのはそんなに難しくないと思う
「じゃ、横島君を見つけたら小物売り場を見に行って見ましょうか?なんかデパートのイベントみたいだし、良いものあるかも?」
そう笑う琉璃さんに頷き、私達は横島君を探してデパートの中をゆっくりと歩き出すのだった……なおその後直ぐ横島君を見つける事が出来て、そのままデパートが開催している小物の露天商を見て歩き、琉璃さんと一緒だったけど、私の初デートは大満足の結果で終わり。私は学校の前で横島君と琉璃さんと別れ
「今日は本当に楽しかったなあ」
横島君に買って貰った服とリボンやブローチなどの小物が入った袋を抱えて、私は自分の教室に向かって歩き出すのだった……今度は2人きりでデートしたいなあ。その為にはどうすれば良いんだろうか?と考えて思い浮かんだのはドクターカオスとマリアさんの姿
「ドクターカオスならなんとかしてくれるかなあ……」
黒魔術と錬金術を扱えるドクターカオスなら、私の身体もなんとかしてくれるかもしれない。横島君に頼んで今度ドクターカオスを紹介して貰おうと思うのだった……
愛子を学校まで送り届けて、琉璃さんを家の近くまで送ることにしたんだけど……
(ぐう……さすがに限界が……)
ずっと我慢してきたが、手足が震えているのが判る。愛子の机に琉璃さんと愛子の荷物……除霊の道具よりかは軽いのだが、琉璃さんが悪戯なのか、それとも無意識なのか、下着がチラチラと視界の隅に入るように渡されて、集中出来ず。普段よりも軽い荷物の筈なのに、俺は普段以上に疲れていた。そしてなによりも気になっているのが、琉璃さんの言っていた俺の霊力を覚醒させる方法についてなにも話してくれない事が、今一番気になっていた
「ん、ここまでで良いわ。ありがとね?」
そう言って立ち止まる琉璃さん。ふっと顔を上げるとそこには何も無い道が広がっているだけで
「えーと大丈夫っすか?」
結構な量があるから家まで送ろうと思っていたんすけどね?と琉璃さんに尋ねると
「送り狼になられても困るし、それにほら、おねーさんもやっぱり女の子だから、自分の家とか部屋に男の子を招待するのは恥ずかしいのよ?」
「す、すいません!」
くうー俺の馬鹿。蛍とかおキヌちゃんに女性に優しいのは良いけど、状況とかを良く考えろって言われてるのに……
「ま、横島君がおねーさんとお付き合いするって言うなら考えてあげても良いけど♪」
「えう?」
からかわれているって判っているのに緊張してしまう。少しだけ屈んで見上げるような感じで俺を見ている琉璃さんに赤面していると
「あは♪本当横島君って可愛いわね~♪」
……一瞬でもドキドキした自分がなんか恥ずかしい……これが琉璃さんの性格だと判ってるのに……俺が小さく溜息を吐いていると琉璃さんは
「じゃーそろそろ教えてあげましょうかねー、横島君の霊力を覚醒させる方法」
思わず顔を上げて琉璃さんを見ると、琉璃さんは穏やかに笑いながら
「今日は楽しかった?」
「え?ええ……楽しかったです」
霊力の覚醒と今日の買い物に何の関係があるのか?と思いながら頷く、琉璃さんはうんうんと頷きながら笑い
「横島君に足りないのは気持ちの余裕よ。焦り・不安は霊力の覚醒には邪魔になるわ、焦りがミスを呼んで、ミスが不安を呼ぶ、今の横島君はその悪循環に完全に捕まっているのよ」
それに蛍ちゃんとか美神さんとかが近くに居るから余計に焦る気持ちも判るけどね。と笑う琉璃さん
「正直に言うけど、私にだって横島君の霊力が何時覚醒するなんか判らないわ。こういうのは個人差が大きいからね、特に横島君みたいな稀有な才能を持っているGSなら余計その時期なんて判らない。でもね、がむしゃらに訓練していたら才能が目覚める前に潰れてしまうわ。だから今日は遊びに連れて行ったのよ?」
えーとじゃあ俺の霊力の覚醒の邪魔をしていたのは俺自身?琉璃さんに言われて初めて気がついた可能性……昨日シルフィーちゃんにも言われたけど、そんなに俺は焦っていたのか……
「でも大丈夫。おねーさんが保障してあげるわ、きっと君は良いGSになれる。だからいまは地道に頑張りなさい、焦らずに、不安にならずにね。蛍ちゃんや美神さんって言う良い師匠が居るんだからね、自分で無理な修行をしないこと」
「は、うっす。判りました」
判れば良いのよ?と笑う琉璃さんは俺から背を向けて、足元の荷物を軽々と言う感じで持ち上げる。良く見るとその身体にうっすらと光る何かが見える。もしかして霊力で身体能力を強化している?俺の視線に気づいたのか琉璃さんはいやんと言って離れて
「もう、何処を見ているのよ?若いのは判るけど、女性をそんなに凝視しちゃ駄目よ」
「ち、違います!!!」
そんな事をしているつもりなんかなかったのに……慌てたせいか、今は琉璃さんを覆っている光も見えなくなってしまった……
「ふふ♪冗談よ。じゃあね、横島君。今日は楽しかったわ、今度は2人で遊びに行きましょう?」
ウィンクして歩いていく琉璃さんを見ながら、財布を確認する。まだ少し残ってるな
「帰りにチビとかモグラちゃんにもお土産買っていこう」
明日も出かける用事があるからチビやモグラちゃんと一緒に居てあげることが出来ないから、何かお土産を買って行ってあげようと思い、俺は商店街へと足を向け、琉璃さんに言われた事を思い返していた
(ゆっくり頑張ろう)
琉璃さんやシルフィーちゃんが気付いているならきっと蛍や美神さんも気付いているはず、俺だけ焦って空回りしてなんか馬鹿みたいだ、いや、実際馬鹿だけど周りの皆が心配してくれているのにそれに気付かないようでは駄目だ。琉璃さんとシルフィーちゃんには大事なことを教えてもらったなあと思いながら、チビ達が喜びそうな物を探して、ゆっくりと商店街の中を歩くのだった……
リポート18 アリスちゃんと魔法の箒と騒がしき日々 その5へ続く
デートの話って難しいですね。上手くかけたか、不安で一杯です。そして琉璃さんのキャラが良いように動き始めてくれました、自分では結構良いキャラしていると思うのですが、どうでしょうか?
次回はシルフィーの話になりますが、さすがに今回はシズクとかおキヌちゃんがついてくる感じにしたいと思っています。それとシルフィーの属性に面白い物をつけようと思っているので楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします