GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話は「魔法の箒」の話に+αとして「アリス」とその他のキャラも出して、短編の話をやって見たいと思います。バイパーの話の前で頑張った「シルフィー」とかも出して行こうと思います、それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


リポート18 アリスちゃんと魔法の箒と騒がしき日々 
その1


リポート18 アリスちゃんと魔法の箒と騒がしき日々 その1

 

ジリリリリっと目覚ましが鳴る音が部屋の中に響き渡る。

 

「うあーっ」

 

布団から顔を出して目覚ましを止めてもう1度布団の中に潜り込み、布団の中に潜り込んでいたタマモを抱き抱える

 

「くう……」

 

布団の中が毛だらけになるから、シズクが嫌がるが……このまどろみタイムの中のこの暖かさは実に気持ちが良い……

 

「横島?そろそろ起きなさいよ?学校に遅れるわよ?」

 

んあ?……蛍う?ゆっくりと目を開けるとエプロンを着こんで腰に手を当てている蛍の姿が見える

 

「いまなんじい?」

 

布団から顔を出して欠伸をしながら尋ねると、蛍は仕方ないわねと呟きながら俺の頬を突きながら

 

「7時20分。早く起きないと遅刻するわよ?」

 

その言葉に一気に意識が覚醒する。がばっと布団を跳ね除けて

 

「うお!?それはやべえ!」

 

提出するリポートを折角仕上げたのに、今日学校に行かなかったら意味が無い

 

「ほら、早く着替えて降りてきなさいよ?朝ご飯の準備をしておくから」

 

そう言って部屋を出て行く蛍の背中を見ながらベッドから立ち上がり大きく背伸びをする

 

「うあーボキボキ行ってるなあ……」

 

若干身体が痛いけどまぁ仕方ない。明日は半日で学校が終わりだから今日だけ頑張るか……

 

「スプー……スプー」

 

部屋の隅で鼻提灯を作って眠っているモグラちゃん、昨日寿司屋で刺身をもりもり食べてたな……しかも俺の倍以上は食べていた。若干美神さんの顔が引き攣っていたのはきっと見間違いではないと思う

 

(モグラちゃんって意外と大食いなんだなあ……小竜姫様も大変だろうに……)

 

普段は妙神山で暮らしているのだから、きっと食事の用意だけでも大変なんだろうなあっと思いながら制服に着替え、俺はリビングに向かうのだった……

 

「おはよう。体の調子はどうだ?」

 

ソファーに座っているシズクにそう尋ねる。昨日の大人の姿になった事でかなり体調を崩しているらしいシズクは顔だけを俺に向けて

 

「……少し休めば良くなる。私の心配よりも自分の心配をしろ」

 

そうは言うけどなぁ……やっぱり心配になるよな。帰りに何かシズクが喜びそうな水を探しに行くかなあ……

 

【横島さん?シズクちゃんは美神さんが何か薬を用意してくれるって言ってましたから心配ないですよ?それより早くご飯を食べないと遅刻しますよ?】

 

朝食を持って来てくれたおキヌちゃん。確かに急いで食べないと間に合わない

 

「いただきまーす!」

 

座ると同時に手を合わせて味噌汁に手を伸ばす。豚肉と豆腐か……んん?これは

 

「今日は蛍?」

 

「そうよ?口に合わない?」

 

少しだけ不安そうに尋ねてくる蛍に首を横に振りながら

 

「いや?やっぱ白味噌が一番好きだなあ」

 

おキヌちゃんもシズクも赤味噌が多いのだが、俺はやはり大阪人だから白味噌の味噌汁が一番口に合う

 

「そう、良かった」

 

嬉しそうに笑う蛍に赤面しながら、本当は味わって食べたいのだがそんな時間も無いので豚肉で一気にご飯をかき込み。汁も同じように一気飲みして

 

「ごっそーさん!じゃあ行って来るわ!」

 

今ならまだ走らなくても間に合う!俺は玄関に置いてある鞄を拾い上げ、行ってきまーすと叫んで家を出た。後ろから聞こえてきたおキヌちゃんと蛍の「行ってらっしゃい」の言葉がなんかとても嬉しかった……

 

「はよーっす!」

 

SHRの前に何とか到着し、教室の扉を開きながら言うと

 

「おはよう。横島君」

 

俺に気づいていた愛子が振り返り手を振りながら声を掛けてくる

 

「おう!愛子おはよう」

 

机妖怪の愛子は既にこの学校の生徒として登録されており、しかも俺のクラスになっていた。最近GSの事ばっかりしてるからなぁ……もう少し学校に顔を出すようにしないと……知らない内になんか色々変わってるし

 

「課題は出来たの?出来てないなら見てあげるけど?」

 

心配そうに尋ねてくる愛子に大丈夫大丈夫と返事をしながら

 

「ちゃんと蛍に教えてもらってるから大丈夫だよ」

 

自分の席に座り鞄を開けると元気良く鞄の中から黒い影が2つ飛び出してくる

 

「うきゅ!」

 

「みむう!」

 

いつの間に鞄の中に潜り込んでいたのか、チビとモグラちゃんが姿を見せる。愛子はモグラちゃんを見て

 

「えーと……モグラ?」

 

「そうそう、モグラちゃんだ。はい、ご挨拶」

 

「うきゅ!」

 

俺の手の中で愛子の方を見て一鳴きしたモグラちゃんはそのまま、俺の腕を登って肩の上で丸くなる。チビは頭の上で丸くなっている。眠いなら家で寝てろよ……っと俺が溜息を吐いているとちょうどチャイムが鳴り

 

「皆揃ってるなー?HRを……横島。その肩の上のはなんだ?」

 

「モグラちゃんです」

 

「うきゅう!」

 

俺の肩の上で前足を振るモグラちゃん。その仕草に周囲の女子からかわいーと言う言葉が飛び交う。モグラちゃんは可愛いからこれは当然の事だ、無論もチビも可愛いが

 

「また妖怪か……あんまり連れて来るなよ?」

 

「ういっす」

 

呆れたように言う教師にそう頷きながら肩の上で前足を振っているモグラちゃんを摘みあげる

 

「うきゅ?」

 

「ちょっと大人しくしてような」

 

机の上に乗せるとうきゅっと鳴いて筆箱の近くで丸くなるモグラちゃん。俺は溜息を吐きながら鞄から教科書を取り出して授業の準備をするのだった……後頭の上で寝ているチビはよだれを垂らしているのか、少しだけ頭が冷たくて少し泣きたい気分になるのだった……

 

 

 

 

 

横島が嫌々授業を受けている頃。魔界のベリアルの宮殿では……

 

「よしよし♪」

 

「ブルルルル……」

 

ビュレトの小童から半ば無理やり奪い取ったあいつの愛馬の子供の世話をしているアリスに笑みを零す。やはりゾンビばかりではと思って生きた動物を与えたのは正解だった

 

(今度お礼に何か持って行くか)

 

ビュレトの小童は最近なにか困りごとが多いらしいので、ベリアルの酒蔵から何か持って行くかと考えながら

 

「アリス?」

 

小さく声をかけるとアリスは直ぐに私だと気付いたのか笑顔で振り返り

 

「黒おじさん!見てみて!可愛いでしょ♪」

 

毛並みが整えられた馬の頭に赤い大きなリボン……少し悩んでから

 

「ああ。可愛いな」

 

「ブルウ!?」

 

嘘だと言ってくれと言わんばかりに鼻を鳴らす馬は無視する。正直かなり似合ってないのだが、アリスが喜んでいるならそれを優先する。馬の意思は無視だ

 

「よーし!これでOK。お兄ちゃんにも見せてあげたいなー、お馬さん」

 

馬の背中を撫でながら呟くアリス。よほど横島の事を気に入っているのだな……しかし

 

(ベリアルのやつがうるさいからなあ……)

 

アリスは絶対に嫁にやらんとかかなり気の早い事を言い出しているあの馬鹿。ただ横島に会いに行くでは駄目だろうな……

 

「ふむ。アリス。私のお願いを聞いてはくれないだろうか?」

 

「なーに?黒おじさん?」

 

不思議そうに首を傾げるアリス。いつか役に立つと思い取り寄せた人間界のお金とメモを渡す

 

「そこに書いてある人間界の酒を買って来て欲しい、だがアリス1人では買えない筈だ。だから横島を探して一緒に買って

来て欲しい。お願い出来るだろうか?」

 

私の意図に気付いたアリスの口に指を当てて静かにと呟く、アリスは私の渡したお金とメモをポシェットに入れて

 

「判った!お使いだね!頑張って行ってくる!良い子でお留守番しててね?」

 

「ブルル」

 

馬の鬣を撫でてからアリスの前にゲートを作り人間界に送り出す。さてと……後は……私はマントの中から愛用の杖を取り出し、軽くストレッチして身体を解し、杖を数回振るって構えた所で

 

「アリスをまた人間界に送ったな!ネビロースッ!」

 

「子供の成長において束縛するのは愚策。その事を教えてやろうベリアル」

 

全身から炎を吹き出し、得物の三つ槍の槍を手に馬舎に飛び込んできたベリアル。第117回目のアリスの育成方針における物理的会話を始めるのだった

 

~2時間後~

 

「すいませんでした」

 

目の前で土下座しているベリアルを見下ろしながら、私とベリアルの激突で吹き飛んできた宮殿の壁の一部に腰掛ける。そもそも私とベリアルでは相性的に私の方が圧倒的に有利なのだ、火炎を得意とするベリアル。だが私には火炎は効かない、更に力任せの槍術と炎で広域攻撃を得意とするベリアルと、魔術とネクロマンシーに加え、杖を剣に見立てた接近戦も出来る私。純粋な攻撃力と魔神としての格はベリアルの方が上だが、ベリアル本人と私では私の方が有利なのだ

 

「アリスが可愛いのは判るが、もう少し常識の範囲内で行動してくれ、さもなければ……」

 

マントの中から木箱を取り出す。するとベリアルの顔が青くなってぶるぶると震え始める

 

「壷を出すぞ?」

 

木箱を少しだけ開けて、その口をベリアルに向ける。するとベリアルは頭を抱えて

 

「い、いやだあああああ!!!」

 

絶叫しながら走り出す、あの方向はビュレトの小童の宮殿の方角だな。昔なじみに助けを求めたか……ベリアルのトラウマ「脇見の壷」これはベリアルを封印するために作られた壷で昔これに人間に封じ込められてから、あいつは暗所恐怖症に加え、壷恐怖性を発症した。あまり苛めるのも可哀想だから持ち出すことは無かったが、最近のあいつは眼に余るのでこうして脇見の壷を持ち出したのだ

 

「さてとアリスはちゃんとお使いを出来るかな?」

 

今まで殆ど魔界から出る事の無かったアリスがちゃんとお使いを出来るのか?少しばかり不安になり私は使い魔を飛ばして、宮殿の中へと戻ることにしたのだった……

 

 

 

パイパーのリポートを纏め終え椅子に背中を預け大きく伸びをする

 

「あーやっと終わったぁ……」

 

くえすの事を書けないのでリポートの流れを考えるのに少しばかり疲れた。後はこれを琉璃に渡せば終わりね

 

「……退魔師どの……」

 

のそっと顔を出したロンさんの顔を見て絶句する。魂が抜け落ちたかのような青白い顔をしている

 

「大丈夫?」

 

「……あまり大丈夫ではないのう……」

 

今にも倒れそうなロンさん。さっきまでモグラの姿をしていて今やっと人の姿になる事が出来たみたいだけど、絶対まだモグラの姿で寝ていたほうが良いと思う

 

「おはようございます」

 

【おはようございます。美神さん】

 

ソファーに座り込んでぐったりしているロンさんを見ていると蛍ちゃんとおキヌちゃんが出社してくる。蛍ちゃんとおキヌちゃんもぐったりしているロンさんを見て

 

「大丈夫ですか?」

 

「……うむ。寝ていればなんとか……あのボケ猿に川に落とされてからな、水は苦手なんじゃ」

 

ボケ猿?もしかして同じ中国の妖怪に知り合いでも居るのかしら?なんか蛍ちゃんとおキヌちゃんの顔が引き攣っているように見えるけど、気のせいかしら?

 

【ロンさん。おじやでも用意しましょうか?】

 

「気遣い感謝します。じゃが今は食欲が無いので大丈夫じゃ」

 

そう言うとソファーに深く腰掛けて動かなくなるロンさん。相当弱っているみたいね……自分の孫のモグラちゃんの姿がないのも聞かない当たりかなり弱っているのが良く判る

 

「折角来て貰って悪いけど、今日は特に依頼は……ジリリリリ……あるかもね?」

 

依頼はないわよ?と言おうとしたら急に鳴り出す電話に苦笑しながら電話を取る

 

「はい、美神除霊事務所です」

 

折角の依頼だけど、除霊だったら時間を空けて貰わないと身体が持たないし……

 

『スペイン秘法展を開催している者なのですが、貴重な道具を損失してしまったのです。捜索をご依頼お願いしたいのですが?』

 

霊具の捜索か……窃盗とかだと面倒だけど……なんか窃盗とかじゃないと思うのよね

 

「判りました。お伺いして詳しく話を聞きます、場所は……はいっ……はい。直ぐに伺います」

 

受話器を元に戻して電話で聞いた地図を見ながら

 

「そう言う訳だから、疲れていると思うけどお願い出来る?」

 

「良いですよ。なにか依頼があるかもと思って出て来たんですから」

 

【私もお手伝いしますよ。美神さん!】

 

蛍ちゃんとおキヌちゃんが快く手伝ってくれる事になり、私は除霊具を纏めてロンさんの前に出かける旨の手紙を置いて、スペイン秘法展が開催されている場所へと向かうのだった……

 

「お待ちしておりました。美神令子さん」

 

秘法展の前で待っていた初老に入りかけと言う感じの役員に案内され、スペイン秘法展の中を見て

 

(これはまた随分色々集めたわね)

 

念入りに札を貼って封印している骨董品の数々に正直呆れる。恐らくこの中の何品かは曰くつきの物が混じっているだろうな……

 

(美神さん、指摘しなくていいんですか?)

 

蛍ちゃんもそれに気付いたのかそう尋ねてくる。本当なら指摘する所だけど、今は疲れているからまた今度機会があれば指摘することにしよう……まぁあれだけしっかり封印しているだからよっぽどじゃなければ何の問題も無いだろう

 

「美神さんならご存知だと思いますが、中世の魔女狩りなどの暗黒時代に存在していた道具の大半は既に壊滅しております」

 

まぁそれはオカルトビジネスに関わる人間なら皆知っている。だからその時代の道具は稀少な道具であり、現存している道具もその数は100にも満たない数しか存在しない

 

(カオスなら作れそうだけどね)

 

ちょうどその時代を生きていたカオスなら中世の時代の道具を作ることが出来るかもね。道具を探すならカオスに協力要請すれば大分楽になるかも……

 

(7-3くらいで引き受けてくれないかしら……)

 

昨日の寿司屋のモグラちゃんの食費が思ったよりも高かったから、なんとかそれくらいで引き受けてくれないかしら?と考えていると

 

【美神さん?蛍ちゃんと案内してくれてる人先に行っちゃいましたよ?】

 

おキヌちゃんに声を掛けられて、正面を見るとその2人の姿は無い。慌てて2人の後を追って歩き出すと

 

「何か変な道具がありましたか?」

 

心配そうに尋ねてくる役員さんにいえいえと手を振りながら

 

「余りに見事な除霊具がありまして、つい」

 

私らしくないミスだったと内心苦笑しながら大広間に展示されている魔具に目を向ける

 

「その稀少な道具の中でも魔法の箒に至っては2本しか存在しない極めて貴重な物です」

 

目の前に飾られている青き稲妻に目を向ける。ガラスケースの中に収められているけど、それがその身に秘めた魔力をひしひしと感じる……流石2本しか現存しない魔法の箒って所ね

 

「青き稲妻ですか……凄い一品ですね。美神さん、青い稲妻でこれなら炎の狐はどんな物なんでしょうね?」

 

飾られている箒を見てそう呟く蛍ちゃん。2本しか存在しない魔法の箒……炎の狐きっとさぞ見事な魔法の箒なんでしょうね?

 

「それで?その炎の狐は?」

 

「……炎の狐は青い稲妻と違って意思のある箒です。中世の中でもこれと同格の箒は3本と存在しない一品でしょう……文字通り魂を持った芸術品と言えるものでしょう」

 

そんな事は私も知っている。私が聞きたいのはそうじゃなくて……

 

【その炎の狐はどこにあるんですか?役員さん?】

 

おキヌちゃんが首を傾げながら尋ねる。そう本来飾られていた炎の狐はその台座に存在せず、破壊されたガラスケースの破片を見て

 

「逃げられたんですか?」

 

蛍ちゃんが溜息を吐きながら尋ねると2人の役員は号泣しながら

 

「は、はい……その通りです!秘法展の開催まで後2日なんです!どうにかよろしくお願いします!!!」

 

「まー最善は尽くしますよ……」

 

号泣しながら私の手を握りに来る役員2人に後ずさりしながら、捜査依頼を引き受けることにしたのだった……

 

「おキヌちゃん先に行って探してくれる?多分空の上だと思うから」

 

おキヌちゃんに見鬼くんとインカムを渡して炎の狐を探すように頼み。ガラスケースの中に眠っているもう1つの魔法の箒に視線を向ける

 

(使うんですね?)

 

(まあね?あれじゃ無いと無理だから)

 

恐らく炎の狐を捕まえるには同じ魔法の箒が必要だ。まぁなんとかしてあれを借りるとして……後はアフターフォローの準備かしら

 

「蛍ちゃん。悪いけどドクターカオスを呼んで来てくれる?この2人に正しい魔法の箒の保管方法を教えるから」

 

「判りました。直ぐに戻りますね」

 

そう言って走っていく蛍ちゃんの背中を見ながら、ガラスの破片を片付けている役員2人に

 

(これだから素人は……)

 

意思のある箒を閉じ込めるなんて正気じゃない。閉じ込められるのが嫌だから逃げ出したって事を理解してない、それは全部カオスに説教して貰おうと思い。おキヌちゃんからの連絡を待つために近くの椅子に腰掛けて待つことにしたのだった……

 

 

 

 

キーんコーンカーンコーン……

 

「あー終わったぁ……」

 

校舎の中に響くチャイムの音を聞きながらそう呟く、やっと長い授業が終わったなあ……

 

「みむ?」

 

「うきゅ?」

 

どーしたのー?と言わんばかりに擦り寄ってくるチビとモグラちゃんを膝の上に乗せて撫でていると

 

「和んでいる所悪いけど横島君。今日掃除当番よ?」

 

「うげ!?マジで!?」

 

愛子が箒を俺に向けながらそう言う……うそーん……もう帰れると思ったのに……

 

「私も掃除当番だから手伝ってあげるから早く掃除しましょう?」

 

う、うーん……今日はアルバイトも無いし……掃除をサボれる理由が無いなあ……なんとかして帰ろうと思うが、愛子に迷惑を掛けるのもなぁ……

 

「しゃーない。掃除を「横島ッ!」うお!?なんだ!?」

 

突然殴ってきた男子生徒の拳を咄嗟によける。何で急に殴られなあかんねん!

 

「みむーッ!」

 

「ほぎゃああああ!?」

 

俺に殴りかかった生徒はチビの電気ショックで黒焦げになっている。ナイスチビ、だが少しやりすぎか……まぁピクピクと痙攣しているから生きている筈だから問題ないだろう

 

「うきゅー」

 

「「「で、……でかっ!?」」」

 

ずもももっと言う感じで大きくなって前足を俺を囲んでいる男子生徒に向けて威嚇しているモグラちゃん。チビもモグラちゃんもなんて良い子なんだと俺が感動していると

 

「やっほー!おにいちゃーんっ!」

 

「がばあ!?」

 

男子生徒の中から金色の影が飛び出してきて、しかもお兄ちゃんと呼ばれ。完全に混乱してしまった俺はその何者かの体当たりを直撃で貰ってしまう

 

「う、うう……あいだだ……「遊びに来たよ!」あ、アリスちゃん?どうしたの?」

 

痛む腹を擦りながら身体を起こすと、アリスちゃんが笑いながらこっちを見ていた。どうしてここに?と思いながら立ち上がると

 

「よ、横島君?その子は?」

 

なんか引き攣った顔をしている愛子。どうしたんだろ?あ、もしかしてアリスちゃんが人間じゃ無いって気付いたのかな?

なお横島はかなり見当違いの事を考えているが、愛子は突然現れた横島をお兄ちゃんと呼ぶ少女に完全に混乱しているだけである。

 

「横島てめえ!そんな美少女にお兄ちゃんやばわりだと!死ね!いや!殺してやる!」

 

「横島ってサイテー。ロリコンじゃない」

 

……なんでやねん、俺はロリじゃ無いって!しかしここで説明してもきっと誤解が深まるだけだ。なので

 

「アリスちゃん。お願いがあるんだけど?」

 

アリスちゃんが普通の人間ではなく、こういう言い方をすると嫌だが幽霊なのだと説明したほうが早いと思い、しゃがみ込んでアリスちゃんの視線に合わせながらそう言うと

 

「なに?」

 

アリスちゃんに耳打ちでお願いをするとアリスちゃんは良いよっと笑いながら

 

「あのねー?アリスはねー?……幽霊なんだよ?ねー皆ー?」

 

【ニギャー】

 

【ガルルル】

 

「「「「で、出たあああああ!?!?」」」」

 

アリスちゃんの背後に無数の動物のゾンビ達が姿を見せ教室の中に絶叫が木霊するのだった……

 

「そうなんだ。アリスちゃんは幽霊なんだ?」

 

「そうだよ?愛子お姉ちゃん。アリスは幽霊なんだよ?」

 

ゾンビを見て誰独り居なくなった教室で会話しているアリスちゃんと愛子。愛子は人間じゃ無いって言うのに気付いていたのか、ゾンビを見て驚いてはいたがやっぱりと言う感じで納得していた

 

「うきゅう!」

 

「えへへー可愛いねー」

 

モグラちゃんの頭を撫でているアリスちゃん。とりあえずなんでここに来たのかは後で説明を聞くとして、まずは掃除をしないと……廊下で待ってて貰おうかな?と思っていると

 

バリーンッ!

 

「どわああ!?」

 

突然窓ガラスが割れて箒が飛び込んでくる。なんじゃこら……思わず拾い上げようとすると愛子が

 

「横島君!駄目!」

 

「え?」

 

そう叫ばれるが俺は既に箒を手にしている。何が駄目なんだ?と首を傾げると箒が回転して俺の下に潜り込む

 

「わー!魔法の箒だ!久しぶりに見たよ!」

 

「ま、魔法の箒!?」

 

それってあれか!?魔女とかの奴か!?俺を乗せたまま浮き上がる箒にアリスちゃんが飛び乗りながら教えてくれる

 

「箒さーん?レッツゴー!」

 

俺の手の中で震えて開いている窓から飛び出していく箒、凄まじい風圧が顔面に当たるのを感じながら

 

(な、なんでこんなことに……)

 

その凄まじい衝撃で全身に走る痛みに泣きそうになりながら、教室の窓のところで鳴いているチビとモグラちゃん。そして

 

「横島くーん!?」

 

窓の所で俺の名前を叫んでいる愛子にすまない、掃除を押し付けるなどと考えながら、背中にしがみ付いて

 

「あははー♪空中散歩だー」

 

楽しそうに笑っているアリスちゃんの声を聞いて、もうどうにでもなれと諦めの境地に達するのだった……

 

 

 

 

 

凄まじい勢いで飛び去っていく箒その上で泣きそうな顔をしている横島君と対照的に嬉しそうに笑っているアリスちゃん

 

「ど、どうしよう……」

 

今日が横島君と私の掃除当番の日だから、他の女の子にお願いして2人きりにして貰ったのに……どうしてこんな事に……生身の横島君ではあのスピードは危険だ。かと言って私では何も出来ない、しかも私は机の九十九神なので助けを呼びに行くことも出来ない

 

「みむう……」

 

「うきゅう……」

 

窓際に座り込んでめそめそと泣いているチビとモグラちゃんを見て

 

「チビちゃん!モグラちゃん!美神さん達は判る?」

 

ぽろぽろと涙を流しながら頷くチビちゃんの涙をハンカチで拭って上げてから

 

「ちょっと待ってて!」

 

横島君の机から大学ノートとシャーペンを取り出して、今起こった事態を慌てて書いて小さく畳んで

 

「これを美神さんに届けて!貴方達が横島君を助けるのよ!」

 

私の渡した手紙と私の顔を交互に見たチビちゃん。自分の隣でプルプルと震えているモグラちゃんを見て

 

「みむう!みむむうう!」

 

「う?うきゅ?」

 

「みむう!みむむ!みみー!」

 

何を言っているか判らないけど、多分横島君を助ける為に美神さんを探しに行くと言う話をしているのだと思う

 

「みむ!みむうー!」

 

「うっきゅ!」

 

気合を入れて鳴いて私の渡した手紙を大事そうに抱えて教室を出て行くチビちゃんとモグラちゃん。これで多分大丈夫……後は……箒の突撃で荒れに荒れている教室を見て溜息を1つ吐いて

 

「貸し1なんだから……」

 

仕方ないから掃除は1人でするけど、今度の休みとかに絶対買い物とかそう言うのに付き合ってもらうんだから……私は心の中でそう呟き、教室の掃除を始めるのだった……

 

 

リポート18 アリスちゃんと魔法の箒と騒がしき日々 その2へ続く

 

 




今回は少し長めでしたね。色々とはなしの展開を考えると長くなってしまいました。次回で魔法の箒の話は終わりまで持っていって、短めの短編を組み合わせた話を書いていこうと思います。本当に話数が多くなって来ましたが、どうか第1部の完結までお付き合いしてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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