GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話は遊園地に到着するまでの話と到着した後とパイパーを探しての捜索と記憶の風船を割って、戦闘に入る所まで書いていこうと思っています。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その5

 

リポート17 ハメルーンの悪魔 その5

 

ズズン……っと重い音を立ててロンさんが変化したモグラが止まる、止まった時の思いっきり地面が削れているけど気にしない事にしよう。

 

「ここじゃな。ふー老体には疲れるのう」

 

モグラの口から聞こえるロンさんの声。腕時計で確認するけど電車が停まってから1時間と少し……電車では3時間近く掛かる予定だったことを考えると、信じられないことだが、ロンさんは電車よりも早かったのだ……これには正直驚かされる

 

(まぁ乗り心地はお世辞にも良いとは言えないけど)

 

なんせ走っているのだから上下に揺れる。乗り物酔いはしない性質だけどこれは少し厳しい物があったなぁと思いながらロンさんの上から降りる。フェンスで囲われた古びた遊園地……ここがバブルアイランド遊園地

 

(魔力は少しだけ感じるわね……でもこれは……)

 

周囲から感じる魔力。でもそれはパイパーの物ではない、恐らく使い魔の鼠。追いつけないと判断して、使い魔も全て遊園地に集合させたのだろう

 

「でっかいもぐら、すごいなー!」

 

蛍ちゃんに抱き降ろされた横島君がロンさんの顔の近くに抱きついてそう叫ぶ。その姿自体は可愛らしいのだが

 

(また子供になって行ってる……)

 

美神さんとくえすは霊力をコントロールすることで、1日掛けて幼くなって行っているが、横島君はまだ霊力をコントロール出来てない。そのせいか子供になっていく間隔が早すぎる

 

「軽く計算したが、後2時間がタイムリミットじゃな。それを過ぎれば命の保障が出来ないぞ」

 

ドクターカオスの言葉に頷く、今が4~6歳位だ。昨日はまだ10歳前後だったし、今朝でも8歳くらいでまだ言葉の中に今の横島君の気配があったけど……地面に座り込んでいる横島君を見ると、頭の上にチビを乗せて

 

「ぎゅー♪」

 

モグラちゃんとタマモを抱き締めて嬉しそうに笑っている。もう精神までも見た目通りの年齢になってしまっているのだろう

 

「みむ……」

 

「うきゅ……」

 

モグラちゃんとチビもそれを理解しているのか、心配そうに横島君の頬を舐めたり、鼻を押し付けている。一刻も早くパイパーを見つけて、元の姿に戻してあげないと……

 

「じゃが、この遊園地とやらは広い。探す当てはあるのかの?」

 

モグラから人の姿に戻ったロンさんがそう尋ねる。私には心当たりは無いし、蛍ちゃんのほうを見るが首を振る。ここに隠れているのは判るんだけど、パイパーを見つける手段が無い

 

「マリアさん。センサーとかは?」

 

蛍ちゃんがそう尋ねるが、マリアさんは申し訳なさそうに首を振って

 

「残念ながら、ここには魔力を発生させているものが多く、場所の特定が出来ません」

 

マリアさんでも駄目か……しかしがむしゃらに歩き回る訳にも行かないし……どうするか考えていると袴が引かれる

 

「令子ちゃん?どうしたの?」

 

私の袴の裾を引いていた令子ちゃんの前にしゃがみ込む、すると令子ちゃんは肩から提げていた鞄を開いて何かを取り出す

 

「こえ!」

 

差し出された手の中にあったのは金色に輝く小さな針。パイパーが探している金の針……令子ちゃんはそれを私に差し出しながら

 

「こえで見つけて!」

 

これでパイパーを?渡された金の針を見つめているとシズクが私の手の中から金の針を取り上げて

 

「……あのハゲの場所を示せ」

 

人差し指を立てて、金の針をその上に乗せてそう呟く。すると金の針は回転を始める

 

「なるほど、金の針に残っているパイパーの魔力と隠れているパイパーの魔力を同調させるんじゃな?」

 

「……その通り。ん?これは」

 

自慢げなシズク。あーそう言えば、そんな事を習ったような……2年の間に忘れていた。これは本格的に修行をやり直さないと駄目かもしれない。そんな事を考えている間に金の針が止まる

 

【あれは……なんだと思います?】

 

金の針が示した先は巨大な造りでその中に通じるジェットコースターのレール……なにかのアトラクションだとは思うけど、かなり嫌な予感がするわね

 

「うーん。何だろうね……ちょっと判らないかな?まぁ取りあえず。金の針が示したんだから見に行って見ましょう?」

 

取りあえずあそこから調べましょう?と言うが、私の見ている前で更に金の針が回転を始める

 

「え?どういうこと?」

 

なんでまた回転しているのか?それが判らず、思わずそう呟く中金の針は今度は観覧車を指し示す。そしてまた回転を始めるのを見たシズクは金の針を握りこんで

 

「……あのハゲの魔力が上昇している。使い魔の数も増えてきているみたいだし……これ以上は役に立たない」

 

魔力が上昇……金の針が無いのにどうやって……この場所には霊力の通り道の霊脈でもあるのだろうか?

 

「取りあえず行って見ましょう?神代さん、ドクターカオス」

 

蛍ちゃんの言う通りだ。ここでいつまでも考え込んでいても、横島君や美神さんが子供になって行くのが止まるわけじゃ無い……この遊園地自体がパイパーの居城と考えると、罠が仕掛けられている可能性が高い。それでも進まないわけには行かない……

 

「行きましょう。おキヌちゃんと蛍ちゃんは横島君達をお願い。マリアさんとテレサさんは蛍ちゃんとおキヌちゃんの前と後ろに、ロンさんとシズクは私と一緒に前衛をお願い出来ますか?」

 

ロンさんは竜族だから間違いなくこの中で一番強い、私はブランクはあるけど、対魔力にはかなりの自信がある。パイパーの笛を喰らっても耐える事が出来ると思う……

 

「正論じゃな、任されよう」

 

両手が振るわれたと思った瞬間。ロンさんの両腕が竜の物へと変化する。

 

「部分龍化の術じゃ。全身を竜にしてしまっては動きにくいからの」

 

ほっほっほと笑うロンさん。優しい老人って感じなんだけど、あの竜の爪のせいでかなり怖く見えるわね。

 

「……まぁ仕方ない。手伝う」

 

ペットボトルを脇に抱えているシズク、水神だから水が無いと力が出ないのは判るけど……ロンさんのように部分龍化すれば良いんじゃないかな?と思っているとシズクは

 

「……折角横島が買ってくれた服が破ける。それに不気味だから嫌だ」

 

私の考えている事が判ったのかそう呟くシズク。同性としてその気持ちは判らない事も無い、折角買って貰った服が破けるのは誰だって嫌だしね。

 

「ふむ。ではワシは……魔力センサーを用意して奇襲に備えるかの」

 

そしてドクターカオスは笑いながら、コートの中から何かの機械を取り出す。これで準備完了ね……

 

「じゃあ行くわよ」

 

私はそう言うと、出入り口を縛っている鎖を手にした刀で両断し、私達はバブルアイランド遊園地に足を踏み入れるのだった……

 

 

 

横島と美神さんをおキヌさんと一緒に護りながら私は言いようの無い不快感を感じていた。

 

(これ……なに……誰か見てる)

 

神代さんやマリアさんやテレサが気付かないと言う事は私だけを見ている?しかもこの感じはパイパーじゃ無い……まさか他の魔族も居るの?その視線の主を探して周囲を見回すがその気配はどこにもない

 

【蛍ちゃん?どうしたんですか?】

 

子供になっている横島の頭を撫でているおキヌさんがそう尋ねてくる。それと同時に感じていた不快感が消える

 

「ううん。なんでもないわ……」

 

さっきの感覚は何だったんだろうか?……でも凄く嫌な感じだった……身体に纏わりつくような執念深い蛇のような……

 

「蛍ねーちゃ?どうしたの?」

 

心配そうに顔を見上げてくる横島に大丈夫よと笑いかける。さっきの視線も気になるけど、今は横島達を元に戻すことが最優先であり、必須事項だ

 

「さ、行きましょう」

 

横島の柔らかい手を握りながら言うと、にこっと笑い返してくれる横島。この横島もすごく可愛くて良い、惜しむのはカメラが無い事。カメラがあれば写真を撮れるのになぁ……もしかしてマリアさんとかが内臓カメラとかで写真を撮ってないかな?と若干邪な考えが混じるが、ここは敵地なのだからと思い返し、しっかりと意識を切り替える

 

「うん!」

 

横島の手を引いて歩き出す、間違いなくパイパーは横島達を人質にする事を考えている筈だ。となると横島達を護るのが最優先だ、その上でパイパーが隠れている場所を見つけ、記憶と力を取り戻す……かなり厳しい条件だけど、何とか頑張るしかない

 

「タマモ、チビ頑張ってね」

 

横島の頭の上のチビとその前を歩いているタマモにそう声を掛ける。私も勿論横島を護るつもりだけど、パイパーの使い魔は鼠だ。どこから襲って来るか判らないから、タマモとチビにも声を掛ける

 

「コン!」

 

「みむぅ!」

 

気合満点と言う感じで鳴くタマモと放電しているチビ。これで鼠の奇襲は防げると思う

 

「うきゅ!」

 

モグラちゃんが自分も頑張るよ!と言わんばかりに前足を上げて鳴いている。ええっと……ふんすっ!と気合満点のモグラちゃん……だけどどうやって戦うつもりなのだろうか……正直不安ではあるが

 

「うん。頑張ってね?」

 

モグラちゃんがどうこう出来るとは思わないけど、本人のやる気を買ってそう声を掛けると

 

「うきゅーっ!!!」

 

頑張るぞーっと鳴くモグラちゃんに思わず苦笑していると

 

「もうちょっと?はやく元にもどらないと……」

 

「そうですわね……だんだん……頭がぼーっとしてきましたわ」

 

霊力を使ってある程度は抵抗していたみたいだけど、それも限界になって来たのか苦しそうに言う美神さんと神宮寺……

 

「急ぎましょうか」

 

先頭を歩いている神代さんも今の美神さん達の状態を見て、不味いと思ったのかそう声を掛けてくる。私はその言葉に頷き、最初に金の針が指し示したアトラクションの元へ向かうのだった……

 

「ここやわ!ここにパイパーがいゆ!」

 

「そうですわね……ここにいますわ」

 

アトラクション乗り場で美神さんと神宮寺が声を揃えて叫ぶ。私にも判る、アトラクションの奥から漂ってくる魔力の波長にパイパーの物が混じっているのだが

 

(なに、この魔力……!?)

 

さっきまでのパイパーよりも遥かに魔力量が多い。この短時間で何があったのかと思わずには居られない

 

「ふむ……電気系統は生きておるな、それにレールも完成しておるようじゃな……」

 

ドクターカオスがアトラクションの設備を調べている。恐らくパイパーが居るのは地下……このアトラクションを利用すればパイパーの所に行けるだろうけど

 

「全員は乗れないね。どうする?」

 

美神さん達は連れて行かないといけない。地下で何かをして、記憶と力を取り戻すことが出来れば一番戦力になるはずだから、そうなると地下に行けるのは3人だ。重量的な問題でマリアさんとテレサは無理だから人数はかなり限られる

 

「……私が行く、下から水の気配がする。きっと私が一番適任」

 

シズクがそう言うなら間違いないだろう。水脈があるなら、パイパーの棲家であってもシズクの方が有利だ

 

「おキヌさんもお願いね」

 

幽霊であり、壁をすり抜けて行動できるおキヌさんはこういう地下では最適な筈だ。待ち伏せや罠が無いか調べることが出来るから

 

【判ってます。頑張りますね】

 

力こぶを見せるようなポーズをしてからコースターの上に浮かぶおキヌさん。魔族相手だから本当は止めた方が良いんだけど、そんな事を言ってられる状況じゃ無い。ここはおキヌさんにも頑張って貰おう

 

「ではワシもいくかの」

 

ロンさんもコースターに乗り込む、私は少し考えてから神代さんの目を見て

 

「横島を頼みますね」

 

本当なら地下に向かうのを神代さんに任せたいけど、地下の水を少し回収して調査をしておきたい。パイパーの異常なパワーアップには魔族が絡んでいる可能性が高い、それも過激派魔族の……地下の水を回収して来て、なんて頼む事は出来ないから自分で行くしかない

 

「任せて。そっちも気をつけてね」

 

そう笑う神代さんに横島を預けて、コースターに乗り込んで、美神さんと神宮寺を抱き抱える。パイパーが何かを仕掛けている可能性があるから、そのまま椅子に座らせる事は危険だと思うから、そして制御室から顔を出しているドクターカオスが全員が乗り込んだことを確認してから

 

「行くぞ。気をつけてな!」

 

制御版を操作するドクターカオスに頷くとゴトンゴトンと音を立ててコースターが動き始める

 

「ねーちゃ!れいこちゃん!くえすちゃん!きをつけてー!」

 

「横島さんはちゃんと護ります。蛍さん、シズクさん、ロンさん。お気をつけて」

 

横島達に見送られながら、私達はパイパーが待つ地下へと向かうのだった……

 

 

 

コースターが完全に見えなくなった。これで蛍ちゃん達がどうなるかはここからじゃ判らない……

 

(頑張ってね。蛍ちゃん)

 

どうするか判らないけど、上手く美神さんとくえすの記憶と力を取り返してくれれば反撃のチャンスはある。さてと私達がやるべき事は蛍ちゃん達が戻ってくる場所の確保と、横島君を護る事ね。取りあえずは結界を作っておけばいいかしら……

 

「マリアさん。鞄から簡易結界を用意してください。テレサは精霊石の粉末を」

 

簡易結界と精霊石の粉末で結界を作って、蛍ちゃん達が戻るまで篭城しようと思っていると背後に強烈な殺気を伴った魔力が発生する

 

「残念ですが、結界を作っている時間はなさそうです」

 

ガチャンっと音を立てて特性のガトリングを構えるマリアさんとテレサ。私は首から下げていた精霊石のペンダントを引き千切り

 

「横島君。これを持ってて、絶対に手放したら駄目よ」

 

「う、うん!わかった!」

 

精霊石を握り締めた横島君を護るようにチビとタマモが並ぶ、これで使い魔の鼠の攻撃はある程度防げるはずだ

 

「ヒッヒッヒ!!もーいーかーい?」

 

笛を手に高笑いするパイパー。さっきよりも魔力が増えているし、存在感が濃くなっているような気がする

 

「態々待ってくれてありがと、さーて……さっさと倒させて貰うわよ」

 

刀を抜き放つと同時に霊力を纏わせて刀身を巨大化させる。本当なら刀身を巨大化させないで使うのが正しい使い方なんだけど……それではパイパーに有効打を与えれないと思うから、威力重視で刀身を巨大化させる

 

「ヒッヒッヒ!そんな玩具で今のオイラに勝つつもりかーい?おかしくて腹痛いわー♪」

 

宙に浮いてけらけら笑っているパイパー、地下にも魔力が存在することから分身だと思う

 

「そっちこそ分身で私達に勝つつもり?鼠の分際で舐めるんじゃないよ」

 

テレサが両手にマシンガンを持ってそう挑発する。好戦的だと思っていたけど、ここまで好戦的とはね……でもこの状態ならこれくらい強気の方が頼もしいかもしれない

 

「ヒヒ♪勝てるさ!だってオイラは1人じゃ無いからねー♪」

 

パイパーが手にしている笛を吹いた瞬間。物陰に隠れていた鼠達が2頭身のパイパーへと変化する……その数約20……

 

「くうん」

 

「みみ!?」

 

放電していたチビと狐火を展開していたタマモが弱い鳴声を出す。鼠相手ならまだしも、しっかりと2足歩行して、両手を使える小型パイパー相手ではチビとタマモでは正直不利だ

 

「ぬう!?これは計算外じゃ!ええい!!」

 

制御室に居たドクターカオスが飛び出して、鞄から何かを取り出して構える。それは球体で鉛色をした……あれってまさか!?

 

「手榴弾!?」

 

まさかの兵器の登場に思わずそう叫ぶとドクターカオスは焦った様子で

 

「新開発の霊波を放つ物じゃ!多少は効果があるじゃろ!?これはこんな所で使う予定じゃなかったんじゃが……そんな事を言ってられん!」

 

ドクターカオスも焦っているのが判る。まさか分身に加えて、鼠まで自分の分身に変化させるなんて思ってなかった

 

「さーて?遊ぼうか?ヒッヒッヒッーッ!!!!」

 

そう笑うと同時に小型のパイパー達が突進してくる。私は致し方なく刀身を覆っていた霊力の量を調整し、同時に飛び掛ってきた小型のパイパー4匹を両断しながら

 

「神代家当主ッ!神代琉璃ッ!参るッ!!」

 

「さぁ!おいでよ!オイラが遊んであげるからさあ!」

 

馬鹿にするように両手を叩くパイパーに向かって、私は刀を構えて駆け出すのだった……

 

 

リポート17 ハメルーンの悪魔 その6へ続く

 

 




魔族の強化でパイパーはパワーアップしています。金の針がなくても鼠をパイパー化出来るとかですね。次回は美神サイドと琉璃サイドを書いていって……その8くらいで終わりにしたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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