GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!!   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話はバブルアイランドに到着して、記憶の風船を見る辺りまでは進めて行こうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その4

 

リポート17 ハメルーンの悪魔 その4

 

目的地であるバブルランド遊園地と言う所はかなり遠いらしく、今は電車と言う車より大きい機械の箱を使って移動している。正直こんなものが動くのか?と思ったが、今の人間の科学力と言うのは中々凄まじい物だと感心する。横島の家にある、コンロとか炊飯機とかいう物も便利だ。霊的な力を失った代わりに、それよりも便利な力を手にしている人間には正直驚かされる……

 

「ひゃー……」

 

椅子の上に立って窓の外眺めている横島。その隣で詰まらなそうに横島の服を掴んでいる神宮寺、その行動は子供その物で、私の加護である程度の抵抗力があるはずだが、それでもここまで幼くなっている姿を見るのは複雑な気分だった

 

(狐、あのハゲは許せないと思う。お前はどうだ?)

 

私の向かい側で、子供になった美神に撫で回され、若干不機嫌そうに目を細めながらも、心配そうに横島を見つめているタマモにそう問い掛ける。タマモは窓の外を見てはしゃいでいる横島を見て

 

(許さない。私は潰す、燃やし尽くす)

 

鋭い気配を放つタマモ。それは私の知っている時のタマモの気配……妖狐の頂点。九尾の狐たるタマモの姿……今でこそこうして愛らしい子狐の姿をしているが、そこはやはり九尾の妖狐。神族に近いと言われただけはある、ただ美神に抱き締められてもふもふされて無ければきっともっと迫力が合ったと思う

 

「かわいー狐ちゃーん。えへへー♪」

 

子供の抱き枕にされても、反撃せずに我慢しているが、私の知っているタマモと言えば、その膨大な妖力と凄まじいまでの知識を武器にしていたもっとも神に近い妖怪。その時の鋭い気配をまだ纏うことが出来たのかと感心しながら、頭の中でタマモに返事を返す

 

(気が合うな。私も同じ意見だ)

 

このままでは横島は幼くなりすぎて命の危機を迎えるだろう。一瞬だったから、一気に子供になる事はなかったが、時間でどんどん子供になっている。今は私とタマモの霊力を与えて幼くなるのを抑えているがいつまでも持つ物ではない、早急にあのハゲを潰さないと……

 

「シズク殿。気を静められよ、幼子が怖がっておるぞ」

 

ロンにペットボトルの水を向けられ我に帰る、さっきまで楽しそうな顔をしていた横島が泣きそうな顔で私を見ている。良く見るとさっきよりもまた幼くなっている

 

「おこてるの?それともどこか痛いの?」

 

舌足らずと言う感じでチビを抱き抱えながら尋ねてくる横島の頭を撫でながら

 

「……怒ってないから大丈夫」

 

優しく頭を撫でると横島はにこっと笑いながら、私に抱きついてくる。その背中に手を回して

 

(大丈夫。お前は直ぐに元に戻れる……私が助けてあげる)

 

今回は私の落ち度だ。横島が成長するまで私が護れば良いと思っていた……横島は強くなる、きっと誰よりも……それが判っていたから弱い内は私が護ると決めていたのに、それなのにあんなハゲに出し抜かれ、横島を危険に晒してしまった……その事に苛立ちを感じていると、腕の中の横島が顔を上げて

 

「シズクねーちゃー……痛い……」

 

知らないうちに力を込めてしまっていたようだ。苦しそうに痛いと言う横島に謝り、椅子の上に座らせると

 

「みむ!」

 

「ぴい!」

 

チビとチビと同じ程度の大きさになったモグラが横島の膝の上に乗る。モグラは最初混乱していたが、横島と言う事でとても懐いて、横島の腕を登って肩の上に移動したり甘えるようにしている。子供の時から妖怪に好かれるとは、さすが横島っだ

 

「モグラ~チビ~」

 

嬉しそうに笑いながら二匹を抱っこしている横島。それを見て更に不機嫌そうにしている神宮寺、何か言いたそうにしているけど、それを言えずにもごもごと口を動かしている。自分に構えとか何かを言いたいんだろうけど、それを口にすることが出来ないと言う感じだ、まぁ神宮寺はどうでも良いチビとモグラを抱き締め幸せそうに笑っている横島を見ながら、窓の外を睨む。今僅かだけど、あのハゲの魔力を感じた……今度はあんな不覚を取りはしない……先ほど買った水のペットボトルに手を伸ばし、戦闘に備えその中身を一気に飲み干すのだった……

 

 

 

 

 

後ろの席から聞こえてくる横島の楽しそうな声に笑みを零しながらも、周囲を警戒するのを緩めない。おキヌさんの話ではパイパーの使い魔の鼠の襲撃で電車が停まってしまうらしい。そうなるとバブルアイランド遊園地に向かうのが難しくなる

 

(この大人数だもんね)

 

飛ぶことが出来るマリアさんとテレサが運べるのは精々2人だろうし……そうなるとあぶれる人数が多くなる……

 

(戦力が増えたのはいいけど……移動が問題になるわね……)

 

パイパーの妨害があってからどうやって移動するかを考えていると、私の前の席に座っているロンさんが

 

「余り考えすぎるのは良くないぞ、肩の力を抜くが良い。1人で出来ない事も仲間が居れば出来ることもあるのじゃからな」

 

にこにこと笑っているロンさん。確かに判っていると言ってもそれは逆行前の世界の話だ……確実な事と思って行動すると痛い目を見るかもしれない……

 

「そうですね。アドバイスどうもありがとうございます」

 

うむと頷いて微笑んでいるロンさん。本当に優しいおじいちゃんって感じよね……

 

「うーん……」

 

私の隣で腕を組んで悩んでいる素振りを見せるマリアさんとテレサ。もしかしてもうパイパーの襲撃が……

 

「どうかしたの?」

 

念の為に破魔札のホルダーに手を伸ばしながら尋ねると、テレサが窓の外を見つめながら

 

「どうもこの列車の近くに生き物の気配が集まって来ているんだ……」

 

小さい生き物……パイパーの使い魔は鼠と聞いている……やはり仕掛けてきたようだ

 

「蛍ちゃん、荷物を纏めて多分来るわ」

 

神代さんの言葉に頷き、荷物棚の上に手を伸ばして荷物を取った瞬間

 

キキキイイイイッ!!!!

 

「うわとととと!?」

 

凄まじい音を立てて電車が停車する。荷物を取ろうとしていたドクターカオスが倒れてかけるが、マリアさんが立ち上がって受け止める

 

【ひう!?ほ、蛍ちゃん……そ、そとそとを見てください!】

 

窓の外を見ていたおキヌさんがそう叫ぶ、何が居るのだろうかと窓の外を神代さんと一緒に見て

 

「「ひい!?」」

 

私と神代さんの引き攣った悲鳴が重なる。窓の外にはおぞましい数の溝鼠がいて気持ち悪くなってくる

 

「これはまたとんでもないな。子供にさせる能力を持つ魔族とやらに操られているようじゃな」

 

窓の外を見つめながらロンさんが呟く、しかしこのまま電車の中に居るわけには行かないし……

 

「危険だけど突っ切るしかないわね。魔力で操られているのなら破魔札で効果が出るはずよ」

 

「それはその通りじゃが、子供になっている美神達は如何するつもりじゃ?歩きで行くとなると小僧達が危ないぞ」

 

確かに子供になっている美神さんや横島が噛まれたり、操られているのなら攫われる可能性もある。

 

「どうしますか?ドクターカオス。私とテレサの装備ではあれだけの数の鼠を撃退することは出来ません」

 

「確かにね。火炎放射機をアタッチメントにするべきだったね、姉さん」

 

火炎放射機か……もしそれをマリアさんとテレサが装備していたら、あの鼠を蹴散らすのも楽なんだけどなあ……

 

「じゃあ試しに聞くけど、マリアさんとテレサは今何を装備してるの?有機ボディなら武器を身体の中に搭載するのは無理でしょ?」

 

私がそう尋ねるとマリアさんとテレサは自分の持っていた鞄から重火器を取り出して

 

「この装備を腕に装着する事で以前と同じように使用できます」

 

はーなるほどねえ。有機ボディに換装してから武器をどうするのか?と思っていたけど、鎧みたいに身に着けるこういう形にしたのか……

 

「まぁ今後はバイクとか車に搭載して持ち運ぶ形にしようと思っているぞ、今の鞄とかに入れて運ぶのは辛いし目立つからの……」

 

まぁそれはそれで面白いかもしれないわね。今度機会があれば私のバイクにも除霊具を搭載出来る武器って言うのを考えてみてもいいかもしれないわね

 

「……蛍。如何するつもりだ?そとのあの鼠を蹴散らすのは可能だけど……それをすると私が蓄えている水が殆ど無くなる」

 

シズクの水鉄砲は確かに強力で鼠を蹴散らす位は楽勝だろうけど、そうするとパイパーに対する備えが無くなる、しかし破魔札で吹き飛ばすにしても手持ちが足りないし……チビとタマモの電撃と火炎を使うとしても、妖力が底を突く可能性の方が高いし……ここからどうやってバブルアイランド遊園地に向かうかを考えていると

 

「ふむ……ここはワシがなんとかしよう」

 

ロンさんがそう言って電車の出口に向かっていく、何をするつもりなのか見ていると

 

「では行くとするかの」

 

右腕だけを竜の爪にし電車の扉を粉砕したロンさん。見た目は老人なのに流石は竜族と言う所だが、ここからどうするつもりなのだろうか

 

「「「「チュー!チュー!!!!」」」

 

出てくるなら来いと言わんばかりに鳴いている鼠の集団を見て

 

「う……こわい」

 

「だいじょうぶ、だいじょうぶやで」

 

神宮寺が怖いと言って身体を震わせる。生理的嫌悪感が凄まじいから、この反応はおかしくない。横島が抱きしめてその背中を撫でているのを見て、子供の時から女性に優しかったんだなあと思う反面。ほんの僅かだけ嫉妬してしまう……

 

「直ぐに飛び乗ってくれ、その後は一気に走りぬける。道案内は頼むぞ」

 

そう言って電車の外へ飛び出したロンさんの身体が光り輝くと、モグラちゃんの数倍の大きさを持つ、巨大なモグラの姿になる。だがモグラちゃんと違って、鱗を伴った尾に頭部に生えている角のせいか、巨大な4足歩行のドラゴンに見える

 

「さぁ!乗るんじゃ」

 

声のトーンが大分低いがロンさんの声が竜の口から聞こえてくる……着地の衝撃か、凄まじい竜気のせいか、一瞬鼠の群れの姿が散って見えなくなる。今がチャンスだ

 

「さ、行くわよ。横島」

 

しゃがみ込んで横島に来るように呼びかける、パイパーの狙いは金の針。そして子供になった美神さんや横島を人質にして、交換するように言って来る可能性がある。だから今護るべきなのは横島達になる

 

「う、うん……ほら、いこう?くえすちゃん」

 

「はい」

 

横島と神宮寺を抱き抱えてロンさんの背中の上に飛び乗る。それに続いて神代さんと美神さんとシズク、最後にドクターカオスとマリアさん、テレサがロンさんの上に飛び乗る。結構な重量な筈だけど、流石は竜族ね。全然平気そう

 

「みむ!」

 

「ピィ!」

 

モグラちゃんはチビが抱えて、その翼で横島の上へと移動して頭の上に着地し、最後にタマモがロンさんの頭の上に飛び乗って

 

「コーン!」

 

力強く鳴くとロンさんの周囲に青黒い狐火が展開される。如何にパイパーに操られていても、所詮は鼠。動物が本能的に怖がる、火の恐怖には勝てないと判断したのだろう。その証拠に鼠は近づくことが出来ず、鳴きながらこちらを睨んでいる

 

【ロンさん!バブルアイランド遊園地には私が先導します。ついて来てください】

 

「心得た。ではしっかりと掴まるのじゃぞ」

 

おキヌさんに先導され、道路を凄まじい勢いで駆けて行くロンさん。毛を掴んでいるだけで安定感もなく、しかもかなり揺れるので怖い!マリアさんとテレサが私や美神さんを掴んでくれているけど、これはかなり怖い。シズクは全然平気そうにしているのは、やはり人間と神族の違いだと思いたい……美神さん達も私達の腕の中で完全に硬直している中横島だけは

 

「うおおお!早い!はやいぞ!でっかいモグラ!」

 

「うきゅー!」

 

「みむうううう!!!」

 

ロンさんの頭の近くにしがみ付いて、モグラちゃんとチビと一緒に何かを叫んでいて、私は子供って凄いと思わずにはいられないのだった……

 

 

 

 

 

道路を凄まじい勢いで走っていく巨大なモグラ。途中までその姿を追いかけていたが、オイラの飛ぶスピードよりも早い……目の前に転移する……駄目だ。あのモグラの前に浮いている炎……転移してもあの炎に焼かれる可能性の方が高い。

 

「くっ!これ以上は無理だ」

 

使い魔の鼠に列車を止めさせたのに、まさかあの爺が竜族だったとは予想外にも程がある。下手に若返らせてより力をつけられると危険だ……だから笛を使うわけには行かない……

 

(どうする……どうやって金の針を取り戻す)

 

笛の効果で幼くなって行ってる美神令子達だが、モグラに乗っている子供……いや、あの力は神族か。あの神族がそれを抑えているから思ったよりも効果が出ていない、それに何よりあのスピードでは追いかけるのも辛い……

 

「くっ!仕方ない!」

 

くやしさでどうにかなりそうにながら、オイラは分身に回していた魔力を解除した。その瞬間意識が薄暗い洞窟の中に戻って来る

 

「くそくそ!!ここまで来たのに!500年耐えてきたと言うのに!!!」

 

500年前。ほんの僅かな油断……その油断のせいでオイラの魔力の源の金の針を奪われ、残った魔力をやりくりして復讐する機会を窺っていたのに……どうして!どうしてこんな事になるんだ!

 

「オノレェ!人間共メッ!!!」

 

もうこうなったらこの遊園地におびき寄せて、何としても金の針を奪い返すしかない、この周囲に浮いている記憶の風船を奪いに来るのは判っている。だからここで待ち伏せするのが、今のオイラに出来る最善の手段だ

 

「あっははは!!!誇り高き魔族ともあろう者がそんなことしか出来ないのかい?」

 

突然聞こえてきた声に顔をあげ、オイラは恐怖に震えた。オイラの頭上に浮いていたのはペガサスに跨った仮面をつけた若い子供……

 

(な、なんだよ!?なんだよこいつはあ!?)

 

姿こそ子供だけど、オイラなんかより遥かに魔力が高い。高位の魔族がどうしてこんな所に……まさか粛清に……今神族と魔族はデタントに向けて動いている。そんな中で人間に復讐しようとしているオイラは魔族の中でも指名手配になっている……表立って動いていたから粛清部隊に見つかったかと恐怖していると

 

「そんなに怯えなくても良いだろう?僕は君の味方さ。僕はスカウトしに来たのさ。ハメルーンの悪魔パイパー君」

 

柔らかい笑みを浮かべて、優しくオイラの名前を呼ぶ魔族に驚く、オイラは魔族の中でも嫌われ者だ。そんなオイラをスカウト?その信じられない言葉に

 

「へ?」

 

間抜けな返事をしてしまう。お、オイラをスカウト?こんな高位の魔族様が?正直言って、信じられない……

 

「とは言っても、この程度の危機を切り抜けることが出来ないと仲間にする事は出来ないね。他の仲間に見る目が無いと怒られてしまうからね、だから試験を行わせてもらうよ。この窮地……君の力で乗り超えて見せておくれ」

 

その言葉に一瞬助かったと思ったが、再び絶望する。今のオイラには金の針も魔力も足りない……こんな状態であれだけの人数の退魔師を退けることは出来ない

 

(ちくしょう!金の針が!金の針さえあれば!!!)

 

あれさえあれば、オイラはあの魔族様の庇護を得ることが出来るかもしれない、そうすればもっと力の強い魔族へと進化することだって出来るかもしれないのに……

 

「魔力が足りないのかい?なら君にこれをあげようじゃ無いか」

 

ペガサスの上から放り投げられた何かを両手で掴む。それを見てオイラは目を見開いた、それは信じられないほどの魔力を秘めた宝石。これを取り込めばオイラの魔力は、今までの限界を超えて回復するだろう、金の針が無くても全盛期に戻れる……

 

「ど、どうしてオイラにこんな物を……」

 

これだけの宝石。高位の魔族でも手にするのは難しいはずだ、それをどうしてくれたのか?と尋ねると

 

「仲間を探しているのさ、僕は君の能力に目をつけた。だからだよ、さぁ?君の力を見せておくれ、僕を落胆させてくれるなよ」

 

そう笑って消えていく魔族とペガサスを見つめながら、オイラは手の中で脈打つルビーを見て、躊躇う事無くルビーを飲み込むのだった……

 

 

遊園地の地下に雨水が溜まって出来た巨大な湖……その中心で吼える巨大な鼠。この鼠こそが悪魔パイパーの正体なのだった……

 

 

リポート17 ハメルーンの悪魔 その5へ続く

 

 




パイパーに力を与えた魔族の特徴はペガサスですね。この魔族知っている人居るかなあ……オカルトに詳しい人なら知っているかもしれないですね。次回は戦闘開始まで進めていこうと思っています、これもオリジナル展開を多くしていきたいですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

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