「Fate/Grand Order 道化と歩む人理修復」
それはありえない出会いであり、決して出会ってはいけない出会いだった……
とある雪山の中に作られた巨大な建造物。その名を人理継続保障機関・カルデア……
時計塔のロードであるアニムスフィア家が主導となり運営している魔術師たちの組織である。人類を存続させ、栄えるための理。すなわち「人理」が正常に働き、そのことによって未来においても人類が繁栄しているということを保障することがこのカルデアの役割である
カルデアは、これまで百年先まで人類が続いていると観測し、保障してきた。しかしながら半年前から突然未来は変わってしまった。百年後、どころか翌年の7月で人類は滅亡する未来に切り替わってしまったのである。今まで百年先の未来を観測し、人類の繁栄を保障してきたカルデア。しかしその観測結果は唐突に変動してしまったというわけだ。これはつまり、なんらかの方法で過去が書き換えられてしまったということに他ならない。
本来の歴史に存在していなかった、人理を脅かす大きな異変。その異変が起きた場所・時代を「特異点」とし、その原因を排除する。もちろん過去へ介入するということはただ事ではない。カルデアに用意された様々な最先端の技術でもって、過去の地球へとレイシフト……乱暴に言ってしまえば、つまりタイムジャンプするのである。
しかし、誰でもレイシフトできるわけではない。過去の魔術師(メイガス)たちは残念ながら専用のシステムに対応することはできなかった。これを行なうことが可能なのは、新世代の魔術を操ることのできる魔術師(ウィザード)だけであった。そのためカルデアは世界各国から適合者を探し、その結果、48人ものマスターを確保することに成功したのであった。
そしてそれは初のレイシフトを控えたその説明の時に現れた
「うんぎゃああっ!ぐへらっ!?」
重々しい音を立てて落ちてきた謎の男。それを見てカルデアの管制室にいた全ての面々は硬直した。突如現れた男、もしや人理を乱す敵が送り込んだ刺客ではと考え警戒するのは当然だ。しかし鮮血の泉に倒れこむその姿を見て、その考えも消えた、どうせ死んでいると……あれだけの高さから落ちてきては確実に死んでいると……だが落ちてきた男は
「この!ハンバーグのクソ爺ーッ!!俺を元の場所に返せーッ!」
ハンバーグのクソ爺と叫んで立ち上がり、額の血を拭いながらきょときょとと辺りを見回し、深い溜息を吐いてから
「おーい皆いるかー?」
間延びした声でそう尋ねる。まさか自分達に声を?と思ったがそれは違っていた
「みーむう」
「ギャーウ♪」
「ぷぎー」
「うきゅー」
「ピーピーッ♪」
「ココーン♪」
男の近くから続々と現れる数多の幻想種としか思えない小動物の数々。その中には竜種までいると言う事で更に管制室にいた面々は絶句し、それと同時にある考えが脳裏を過ぎった
守護英霊召喚システム・フェイト
人理の乱れを正す為に英雄譚・神話の中に存在した英雄を呼び出すシステム。それから呼び起こされた英霊かとしかし
「あーすんませーん。ここ何処か判ります?ワイ、東京に帰りたいっすけど?」
にへらと笑うその姿はどこからどう見ても英霊とは思えなかった。しかも彼が口にした東京の名前にその考えは強くなった
「えっと君は?」
モスグリーンのスーツを着込んだ紳士が引き攣った笑みで男の名前を尋ねた
「ワイ?ワイは横島。横島忠夫や。んでおっさん?ここどこ?えらい寒いけど?」
おー寒い寒いっと自分の身体を抱きしめながら笑う横島。その姿からは覇気や自信を全く感じられず、英霊とは思えない……と言うか思いたくない
「ここはフィニス・カルデアと言って、私はレフ・ライノールと言うのだが、ところで君の言っていたハンバーグの爺とは?」
「あーとたしかー、キシュウ……ゼルリマン?シュハンバーグ?やっべ、ハンバーグの爺としか呼んでねえから名前が判らん」
頬をぽりぽりとかきながらうろ覚えの名前を呟く。しかしここにいる何人かは横島が言うハンバーグの爺の正体に気付いた
「まさかキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグか!?」
「ああ!それそれ!そんな名前だった、あの爺、いっつも俺にトラブル押し付けるっす。本当はた迷惑っすよ」
第2魔法の使い手に送り込まれた横島。それはこの前代未聞のミッションに置いて、魔法使いが協力してくれたという証とも思えた。数多の幻想種を従える何者か?それはきっと魔術師として優秀な人材だと
「良いわ、貴方にもレイシフトして貰うわ。私は「おお!これはこれは美しいお嬢さん。どうか私とお茶でもしませんか?」ふえ!?」
傲岸な態度で自己紹介を始めようとしていた少女の手を掴んでナンパを始める。その仕草はどこからどう見ても優秀な魔術師には思えず、その軽い態度からも信用に値する人物ではなかった。だがそれはその場での話だった……
「「「GI―――AAAAAAAAAAA!!」」」
なぞの襲撃により崩壊したカルデアの観測室。そして偶然いや、必然的にレイシフトしたマスター「藤丸立香」そしてその少女を護る盾を掲げた少女「マシュ・キリエライト」
「先輩!こちらへ!」
迫ってくる骸骨を薙ぎ払い、1人でその少女を護り続けていた……しかし、数があまりに多すぎた。完全に囲まれ絶望的な状況になった時。道化はその真の姿を見せた。道化などではない、その真の姿を
「GO!うりぼー!1000匹うりぼー大行進+αだ!!」
管制室に突然現れた横島が2人の前に現れ、足元の小さな小さな猪に指示を出す
「ぷぎー!!」
とてとてと走り出したうりぼー。あんな一匹で何がと思った、だがその考えは間違っていた……
「「ふ、増えてる!?」」
マシュと立香の驚愕の声が重なる。なぜなら走りながらうりぼーの姿がぶれ始め……
「「ぷぎー!!」」
1匹が2匹になり
「「「「ぷぎー!!」」」」
2匹が4匹になり
「「「「「「「「ぷぎー!!」」」」」」」」
4匹が8匹と倍々に増えて行き、その中を良く見るとドラゴンや鳥にモグラも混じって、まさしく大行進と言うに相応しい勢いとなり骸骨達を薙ぎ払い踏み潰していく
「ぷぎゅううううッ!!!」
「みーむ!」
「うきゅー!」
「ぎゃーう!」
「ピーッ!!」
勝鬨と言わんばかりに粉砕した骸骨の上で雄たけびを上げる小動物軍団に完全に呆気に取られているマシュと立香の前に横島が着地して
「おー良かった無事かー、えーと確かマシュちゃんと立香ちゃんだよな?っ!伏せて!」
急に怒鳴られ、咄嗟に頭を下げた2人の頭上を緑色の刃が通過し、何処かから飛来した槍を両断する。
「よ、横島さん?貴方は?」
その光の刃を見て立香が驚きながら尋ねると横島は子供のような人懐っこい笑みを浮かべて
「ワイはGS、GSの横島忠夫。悪霊退治から妖怪・神様とかの交渉から幻想種の育成から妖怪の保父さんまでなんでもござれ、横島霊障相談所所長や」
キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが連れて来たというか落とした男は紛れもなくジョーカーだった
「まぁ乗りかかった船やし?最後まで付き合うわー♪よろしくなー」
にへらと人の良い笑顔で笑う横島にマシュと立香も釣られて笑ってしまうのだった
人理修復に紛れ込んだ霊能者。それが彼女達の旅にどんな影響を与えるのか?……いやただしくは
「見てくれ!こんなの拾った♪」
「きゃう?」
「「「どこで拾ってきたの!?そのキメラ!?」」」
「森の中。良し!決めた!お前はポン太だ!」
「きゃーう!きゃーう♪」
小さなキメラの赤ちゃんを拾ってきた上に、首輪をつけてポン太と名づけたり……
「へい、お手」
「グルオウ」
「「「ワイバーンがお手してる!?」」」
「はっは!ドラゴンはでっかい犬だ!」
「「「絶対違う!!!」」」
ナチュラルボーントラブルメイカーであり……
「あはー♪お兄さん来ましたよー?」
「んぎゃああああ!!!出たアア!?監禁幼女おおおお!?」
ちょっとおかしいサーヴァントに追い回されて涙するその道化が進む道に何が待っているのだろうか?
「ご用とあらば即参上!貴方の頼れる巫女狐、キャスター降臨っ!です!」
「おお、おおおー!めちゃ美人来たーッ!!これで勝つる!しかも色っぽい!」
着崩した着物を着た狐の耳と尻尾を持つ美女に興奮する横島だったが、その影から小柄な影が飛び出し
「キャットの召喚によくも割り込んで来てくれたな!このオリジナルめ!ご主人はキャットのご主人なのだぞ!」
ぽかぽかと玉藻の前の足を叩く10歳前後のメイド服の少女を見た横島の顔が変わった
「あ、あれ?もしかしてキャット?」
「うむ!やはり聖杯の導きがあったな!ご主人よ!また会いに来たぞ!」
「キャットーッ!!ああ、良かった。良かった、消えてしまったからまた会えて嬉しい」
「うむ!ご主人があたしにくれたリボンが触媒になって会いに来れた♪」
あははーっと笑いながらキャットを抱きしめ、くるくると回転する横島
「あ、あれー!?私は放置なんですか!?放置プレイは嫌ですーッ!!!」
そして私が先に自己紹介したのに!?と言うか私も構ってくださーい!と涙し、横島に突撃するキャス狐
丁度その頃横島達がいる方向とは別方向の瓦礫の山の近くでは……
「すっごい嫌な予感がするわ」
「え、えええ!?き、狐が女の子に!?え、え。えええええ!?」
レイシフトの前横島に無理やり押し付けれた子狐が少女の姿に変わり、目に見えてうろたえるオルガマリー
「ま、ここがどこか?とかは後で聞くわ、とりあえず今は」
「「「GIAAAAAAッ!!!」」」
瓦礫の中から姿を見せた大量の骸骨を前に、顔面蒼白になるオルガマリーに対して、好戦的な笑みを浮かべた少女は
「あの骸骨を吹っ飛ばして、横島と合流しましょ」
その手に青白く輝く炎を集め、骸骨の群れへと打ち出し、骸骨を完全に焼き払う
「す、すご……えっと……貴女は?それと助けてくれてありがとう」
「私はタマモ。横島の所で世話になってる妖狐のタマモ。横島が護れと言ったからやっただけよ、別に護る気は無いわ」
そのドライな口調に引き攣った笑みを浮かべるオルガマリーの手を取ったタマモは
「ほら、行くわよ。あ、喋ると舌かむわよ?」
「え。えええええ!?無理無理無理ぃぃッ!!!いぃやあああああああああ!?!?」
その手を無理やり引いて、瓦礫の山の上から下に向かって飛び降りた。オルガマリーの悲壮な悲鳴が周囲に響き渡るのだった……
元の世界の家族のタマモ。そして奇妙な縁で2人の玉藻の前のマスターとなった道化の進む先に待つのは、絶望のバッドエンドか、幸福のハッピーエンドか!?
「ばっかやなあ。物語の最後はハッピーエンド!それに決まってるやろ!」
大・円・団
翡翠色に輝く伝説の珠がありとあらゆる運命を越える!そして終焉の運命を変えた最強の道化が最後のマスターと共に人理修復の旅を行く!!!
「Fate/Grand Order 道化と歩む人理修復」
とぅーびぃーこんてにゅー?