ノイズに襲われている基地内部。ノイズは簡単にいうと、通常兵器が一切通じない上、触れた人間を炭素の塊に変えて殺害してしまう存在。
人類に対応できるのは唯一、シンフォギアのみである。
話を戻す。基地内の一室は、ノイズに襲われた人間のなれの果てである炭素だけ残されていた。
・・・否、一人いる。しかし、その者も人では無かった。
体がステンドグラスで出来ている、「怪人」だ。
「全く・・・ノイズの連中ったら・・・私たちの『食材』を全部炭に変えて・・・予定が全部パーだわ!」
声からして女性だ。足下の炭素を蹴り飛ばす。
「せっかくここの人間のライフエナジーを、吸い尽くしてやろうと思ったのに。ノイズは私たちファンガイアにとっては、食料を食い散らしていく害虫ね」
ファンガイアと言う怪人は、もはやここに用は無いとばかりに立ち上がり、去ろうとした。
その時・・・・・・
「・・・・・・っ!?」
ファンガイアは、「大きな力」を感じて後を振り返る。すると・・・
『―――』
いた。それは、バスケットボールくらいの大きさのステンドグラスの玉だ。プカプカと宙に浮いているが、怪しく輝きを放っている。
「・・・・・・まさか、どうしてあなた自らが・・・?」
『―――』
「そう・・・見つかるといいわね。私はもう帰るわ。・・・後ろからおそったりしないでよ」
『―――』
球体は宙を飛びながら、空きっぱなしの扉から出て行った。ファンガイアは深くため息をはいて、今度こそ去っていった。
「計画に支障が出ない範囲内で、頼むわよ・・・」
一方、直人達はD300区画を目指していたが、場所が判らずに悩んでいた。
そこに津山が現れて、モニタールームへ案内してくれた。
「安全なルートを検索して、そこまでの道を隔壁を操作して作ります。それに従って進んで下さい。」
「待って下さい。津山さんは・・・!」
「この足では足手まといです。自衛官の一人として、覚悟は出来ています。どうか・・・」
「そんなのは願い下げだっ!!」
「お断りします!!」
奏と直人が、強く叫んだ。翼も津山も、二人の迫力に気圧されている。
「私らは一人でも多くの命を守るために戦っているんだ!その中に、あんたも入っているんだよ!」
「僕たちは諦めません。最後まで、戦います。だから、あなたも諦めないでください!」
「・・・・・・はい!」
二人の言葉に感化され、うなずく津山。そして、完成した道をたどり、走っていく。
「さっきの直人、かっこよかったぜ!」
「そういう奏も、かっこよかった!」
「二人とも・・・」
「私さ、思うんだ。助けた人の心に、記憶に残るのなら・・・歌える。戦えるって。いつ死んでもおかしくない分、余計に」
「歌・・・か」
走っている内に、目的地へ到着。赤い髪を持つ大男・・・風鳴 弦十朗がシンフォギアを持っていた。
「ダンナ!」
「司令!」
「おじさん!」
「奏!翼!直人!受け取れぇ!!」
赤い結晶・・・シンフォギアの待機状態をしっかりキャッチする三人。
「行こう・・・翼!奏!」
「「あぁ!」」
三人の歌が響く。強く、気高く、「聖唱」が・・・
シンフォギアを発動するための、始動キーとなる聖唱を歌い、その身にまとう。
シンフォギアは古代の遺産・・・聖遺物の欠片を加工した物であり、適合者の歌によって起動する。
奏は槍・・・ガングニール。翼は刀・・・天ノ羽々斬。直人は、剣・・・天叢雲剣。
過去の遺産の力を持って、シンフォギア専用の武器・・・アームドギアを持って、彼らは戦う!
床を打ち破り、ノイズに襲われていた津山を救出。
「う・・・歌・・・」
「必ず助けるって言っただろ?」
「後は任せてください!」
「必ず・・・守ります!」
再び歌い、戦いを再開する。その様子を、弦十朗と了子、そして防衛大臣や内閣情報官といった政府の関係者も、モニターで見ていた。
「ノイズを・・・次々と倒していくとは!」
「ノイズの接触による炭素化を阻止し、防御特性を無視して倒せる。そして、その源が―――歌」
了子は全員に向けてこう言った。
「歌は、シンフォギアを流れる血であり、力の源。そして、彼の言葉を借りるなら・・・心の音楽に耳を澄ませて、心のままに歌う!」
了子の言葉を聞いて、弦十朗が言った。
「それは、直人の言葉だろう」
「そうですよ!」
「・・・やはり直人は、音也の息子だな。あいつと同じ事を言いやがって・・・」
弦十朗は、昔出会った「悪友」の顔を思い浮かべながら、懐かしそうにつぶやいた。
三人の実力は圧倒的だった。個々の実力はもちろん、連携も完璧だった。
奏が討ち漏らしたノイズを翼が切り裂き・・・。
着地した隙を突こうとしたノイズを、直人が先読みして倒していく。
そして、翼と奏の背中に向かってくるノイズを直人が天叢雲剣を投げて、一気に倒す。壁に刺さった剣を抜き、切っ先をノイズに向けて言う。
「裁きの刻だ・・・」
真剣な表情で問う直人。その姿に、二人の少女は胸の高鳴りを押さえられない。
(直人・・・かっこいい・・・!)
(な、何だよ!私までドキドキしちゃうくらい、かっこいい・・・)
残ったノイズは一体。その一体も、直人の一閃によって消え、これでようやく全てのノイズを倒したのであった。
「ふう。二人とも、大丈夫?」
「う、うん・・・」
「あ、あぁ。ありがとうな・・・アハハ・・・」
真っ赤な顔を隠す様にうつむく翼。同じく顔を少し背けて、隠す奏。
二人とも、妙にしおらしい。
直人は二人の変化の意味がわからず、首をかしげた。
その後、三人は弦十朗・了子と共に、広樹防衛大臣達と話をしていた。
「では、project;Nの実行を、承認していただけるのですか!」
project;N・・・二課で行おうとているプロジェクトであり、今回のデモンストレーションはその承認を得るためにやっていた事なのだ。
「うむ。計画承認に向けて、私が総理に働きかけよう」
矢薙内閣情報官の言葉に、了子は直人達をほめる。
「いいのか?少々性急すぎないか?」
「ノイズの脅威を少しでも早く無くせるならば、急ぎすぎる事はあるまい・・・」
すると、弦十朗の携帯に連絡が入る。
「失礼。・・・・・・何だと!?三人とも!緊急事態だ、現場へ急行せよ!」
その言葉の本当の意味に気付いた三人は、すぐに走り出す。
「ど、どうしたんだね一体!?」
「これから東京のライブ会場で、リハーサルがあるのです」
「あたし達、二人で一人のアーティストなんでね!」
「ちなみに、僕は二人のマネージャーみたいな感じです!」
三人が急ぐ中、先ほど助けた津山が声を掛けてきた。
「・・・っ、君たちの歌とバイオリン、絶対忘れません!」
手を振って答えた三人は、心の中で同じ事を思っていた。
「守れて良かった」と・・・。
『・・・・・・ミツケタ』
おそらく、次回が序章の最終話になるかもしれません。