紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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シンフォギア起動時の歌である「聖唱」、及び「劇中歌」の歌詞は、省略します。


第二話 防人の歌、共鳴

ノイズに襲われている基地内部。ノイズは簡単にいうと、通常兵器が一切通じない上、触れた人間を炭素の塊に変えて殺害してしまう存在。

 

人類に対応できるのは唯一、シンフォギアのみである。

 

 

 

話を戻す。基地内の一室は、ノイズに襲われた人間のなれの果てである炭素だけ残されていた。

 

・・・否、一人いる。しかし、その者も人では無かった。

体がステンドグラスで出来ている、「怪人」だ。

 

 

 

「全く・・・ノイズの連中ったら・・・私たちの『食材』を全部炭に変えて・・・予定が全部パーだわ!」

 

声からして女性だ。足下の炭素を蹴り飛ばす。

 

 

「せっかくここの人間のライフエナジーを、吸い尽くしてやろうと思ったのに。ノイズは私たちファンガイアにとっては、食料を食い散らしていく害虫ね」

 

 

ファンガイアと言う怪人は、もはやここに用は無いとばかりに立ち上がり、去ろうとした。

その時・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・っ!?」

 

 

 

ファンガイアは、「大きな力」を感じて後を振り返る。すると・・・

 

 

 

『―――』

 

 

 

いた。それは、バスケットボールくらいの大きさのステンドグラスの玉だ。プカプカと宙に浮いているが、怪しく輝きを放っている。

 

 

 

 

「・・・・・・まさか、どうしてあなた自らが・・・?」

 

『―――』

 

「そう・・・見つかるといいわね。私はもう帰るわ。・・・後ろからおそったりしないでよ」

 

 

『―――』

 

 

球体は宙を飛びながら、空きっぱなしの扉から出て行った。ファンガイアは深くため息をはいて、今度こそ去っていった。

 

 

「計画に支障が出ない範囲内で、頼むわよ・・・」

 

 

 

 

 

一方、直人達はD300区画を目指していたが、場所が判らずに悩んでいた。

 

そこに津山が現れて、モニタールームへ案内してくれた。

 

 

 

「安全なルートを検索して、そこまでの道を隔壁を操作して作ります。それに従って進んで下さい。」

 

「待って下さい。津山さんは・・・!」

 

「この足では足手まといです。自衛官の一人として、覚悟は出来ています。どうか・・・」

 

「そんなのは願い下げだっ!!」

「お断りします!!」

 

 

奏と直人が、強く叫んだ。翼も津山も、二人の迫力に気圧されている。

 

 

「私らは一人でも多くの命を守るために戦っているんだ!その中に、あんたも入っているんだよ!」

 

「僕たちは諦めません。最後まで、戦います。だから、あなたも諦めないでください!」

 

「・・・・・・はい!」

 

二人の言葉に感化され、うなずく津山。そして、完成した道をたどり、走っていく。

 

 

「さっきの直人、かっこよかったぜ!」

「そういう奏も、かっこよかった!」

 

「二人とも・・・」

 

「私さ、思うんだ。助けた人の心に、記憶に残るのなら・・・歌える。戦えるって。いつ死んでもおかしくない分、余計に」

 

「歌・・・か」

 

走っている内に、目的地へ到着。赤い髪を持つ大男・・・風鳴 弦十朗がシンフォギアを持っていた。

 

「ダンナ!」

「司令!」

「おじさん!」

 

「奏!翼!直人!受け取れぇ!!」

 

 

 

赤い結晶・・・シンフォギアの待機状態をしっかりキャッチする三人。

 

 

「行こう・・・翼!奏!」

「「あぁ!」」

 

 

三人の歌が響く。強く、気高く、「聖唱」が・・・

 

 

 

 

 

 

シンフォギアを発動するための、始動キーとなる聖唱を歌い、その身にまとう。

 

シンフォギアは古代の遺産・・・聖遺物の欠片を加工した物であり、適合者の歌によって起動する。

 

奏は槍・・・ガングニール。翼は刀・・・天ノ羽々斬。直人は、剣・・・天叢雲剣。

 

過去の遺産の力を持って、シンフォギア専用の武器・・・アームドギアを持って、彼らは戦う!

 

 

 

床を打ち破り、ノイズに襲われていた津山を救出。

 

「う・・・歌・・・」

 

「必ず助けるって言っただろ?」

「後は任せてください!」

「必ず・・・守ります!」

 

 

再び歌い、戦いを再開する。その様子を、弦十朗と了子、そして防衛大臣や内閣情報官といった政府の関係者も、モニターで見ていた。

 

 

 

「ノイズを・・・次々と倒していくとは!」

 

「ノイズの接触による炭素化を阻止し、防御特性を無視して倒せる。そして、その源が―――歌」

 

 

了子は全員に向けてこう言った。

 

 

 

「歌は、シンフォギアを流れる血であり、力の源。そして、彼の言葉を借りるなら・・・心の音楽に耳を澄ませて、心のままに歌う!」

 

了子の言葉を聞いて、弦十朗が言った。

 

「それは、直人の言葉だろう」

「そうですよ!」

 

 

 

「・・・やはり直人は、音也の息子だな。あいつと同じ事を言いやがって・・・」

 

 

弦十朗は、昔出会った「悪友」の顔を思い浮かべながら、懐かしそうにつぶやいた。

 

 

 

 

三人の実力は圧倒的だった。個々の実力はもちろん、連携も完璧だった。

 

 

奏が討ち漏らしたノイズを翼が切り裂き・・・。

 

着地した隙を突こうとしたノイズを、直人が先読みして倒していく。

 

そして、翼と奏の背中に向かってくるノイズを直人が天叢雲剣を投げて、一気に倒す。壁に刺さった剣を抜き、切っ先をノイズに向けて言う。

 

 

 

「裁きの刻だ・・・」

 

 

真剣な表情で問う直人。その姿に、二人の少女は胸の高鳴りを押さえられない。

 

 

(直人・・・かっこいい・・・!)

 

(な、何だよ!私までドキドキしちゃうくらい、かっこいい・・・)

 

 

残ったノイズは一体。その一体も、直人の一閃によって消え、これでようやく全てのノイズを倒したのであった。

 

 

「ふう。二人とも、大丈夫?」

 

「う、うん・・・」

「あ、あぁ。ありがとうな・・・アハハ・・・」

 

 

真っ赤な顔を隠す様にうつむく翼。同じく顔を少し背けて、隠す奏。

 

二人とも、妙にしおらしい。

直人は二人の変化の意味がわからず、首をかしげた。

 

 

 

 

その後、三人は弦十朗・了子と共に、広樹防衛大臣達と話をしていた。

 

 

「では、project;Nの実行を、承認していただけるのですか!」

 

project;N・・・二課で行おうとているプロジェクトであり、今回のデモンストレーションはその承認を得るためにやっていた事なのだ。

 

 

「うむ。計画承認に向けて、私が総理に働きかけよう」

 

矢薙内閣情報官の言葉に、了子は直人達をほめる。

 

 

「いいのか?少々性急すぎないか?」

 

「ノイズの脅威を少しでも早く無くせるならば、急ぎすぎる事はあるまい・・・」

 

すると、弦十朗の携帯に連絡が入る。

 

「失礼。・・・・・・何だと!?三人とも!緊急事態だ、現場へ急行せよ!」

 

その言葉の本当の意味に気付いた三人は、すぐに走り出す。

 

「ど、どうしたんだね一体!?」

「これから東京のライブ会場で、リハーサルがあるのです」

 

「あたし達、二人で一人のアーティストなんでね!」

 

「ちなみに、僕は二人のマネージャーみたいな感じです!」

 

 

三人が急ぐ中、先ほど助けた津山が声を掛けてきた。

 

「・・・っ、君たちの歌とバイオリン、絶対忘れません!」

 

手を振って答えた三人は、心の中で同じ事を思っていた。

 

「守れて良かった」と・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・ミツケタ』

 

 

 

 

 

 

 

 




おそらく、次回が序章の最終話になるかもしれません。

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